花はももとせ 汝はちよに

藤雪たすく

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魂の洗浄

一迅の風

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頭を下げた僕の側にコクさん……ルーンヴェイン様が近づいて来た。
「おい……なんの真似だ?」

「今の今まで気が付かずに申し訳ありませんでした。どうかこの国の神として恵み多き国へとお導きください」

覚えていないけれど、きっと兄神に違いないだろう。
今まで見逃してくれていた理由はわからないけれど、攻められて多少でも被害が出る前に僕が全てを開け渡せば、コクさん、この人なら民に手出しは……。

すぐ側にあった気配が消えて、瞬間バチャッ!!と大きな水の跳ねる音が背後で響いた。

「……ぐっ」

「本当に……人間は余計な事をしてくれる」

低くくぐもった声をあげて、うずくまるマルカさんを見下ろすルーンヴェイン様。状況からコク……ルーンヴェイン様が何かをしたらしい事はわかるので、すぐにマルカさんの体の上に覆いかぶさった。

「ルーンヴェイン様!!お願いいたします……いつでも命を差し出す覚悟でいます。なので、どうか民には手を出さないでください!!」

「お前を裏切った人間だぞ?そんな奴らの為にお前が命を差し出す価値などないだろう」

「アヴィンディドール様……」

マラカさんの手に炎が生まれるのが見えて慌ててその手を両手で包み、炎を揉み消した。

「駄目です。それはいけない」

例え僕を守ろうとしての行動だとしても、どんな理由があろうと人間は神を傷つけてはいけない。

「本当にお前は……」

軽々と持ち上げられて、ルーンヴェイン様と向かい合う様に抱き上げられると、赤く腫れ上がった掌に息を吹き掛けられたと思ったら、スッと痛みと腫れが消え去ってしまった。わざわざ僕の為に治癒魔法をかけてくれた?

「こんな国の為にお前の全てを差し出すというのか?」

「それで民の命が助かるなら」

「……なら……俺の物になれ」

顎にルーンヴェイン様の指が掛けられ、顔が近づいてきて……その唇を治癒してもらったばかりの手で押し止めた。

「なんだ?民よりやはり我が身が大切だとわかったか?」

「いえ、こんな身で民を守れるのであれば喜んで差し出しましょう。しかしこの身は汚れ多き不浄の身。とても神に差し出せる物ではありません。どうかこの命でお許し頂けないでしょうか?」

ルーンヴェイン様の手を取り自分の首を握らせた。

全てを投げ出して死ぬなんて無責任だと言われるかもしれないけれど、ルーンヴェイン様が授けてくれた苗と栽培方法の書かれたメモ、きっとルーンヴェイン様の国は大地も人の心も豊かな物だと思う。

そんな国を作れる神にならこの国の未来だって託して逝ける。

「リ…ン………ト……」
「?」

ルーンヴェイン様の言葉が聞き取れず顔をあげると支えられていた腕に力が込められ……柔らかく温かなものが唇に触れた。

「ん、んん!!」

押し返そうとしても力強いルーンヴェイン様の腕からは逃れられず、口を開けさせる様に舌が唇を割って歯列をなぞる。
「んんんっ!!んんん!!」

こんな事をしてはルーンヴェイン様まで汚してしまうからと身動いで逃げ出そうとしてもルーンヴェイン様は離してくれない、それどころか……。

「んっ!?んん!!」

いつの間にか腰を下ろしていたルーンヴェイン様の膝の上に座らされていて、ズボンを下ろされ、性器を握り込まれた。

温かく大きなルーンヴェイン様の手にすっぽりと収められたモノが次第に熱を帯び始めるのがわかって腰を引くけれど逃げ場などなく、されるがままに欲情を掻き立てようとせんとばかりに何度も擦り上げられ撫でられる。

ぬるりとした感覚に、自分がはしたなくも快感を得ている事を突きつけられる。

マラカさんいるのに……汚れた体を兄神に触れさせたりなどしてはいけないのに……与えられる快楽に体が反応してしまう。

「あっ……あ…ぅあ……んんっ!!」

心地良さに緩んだ口から漏れた嬌声を見逃さず、厚く熱い舌が口の中に侵入してくる。体格の違うルーンヴェイン様とは口の大きさも舌の大きさも違い、これは甘い口付けというよりは捕食に似ていると思う……頭が……痛い。
頭の奥から痛みが押し寄せてくる。

「んぁ……は…はぁ……はっ……あ……」

頭痛と快楽が入り混じり抵抗する気力を奪い、ルーンヴェイン様の体に凭れさせた体はもう全てをルーンヴェイン様に委ねていた。

いつもより静かな森の中……ルーンヴェイン様が手を動かすたびに水気を孕んだ音を立てる。

「そんなに気持ち良いのか……随分量が多いじゃないか……」

「ルーンヴェイン……様……駄目……ぃや……」

頭では目の前の神の手を汚す事を拒否しているのに体は貪欲に快楽を求め続けている。

守りたいと思う民の前で搾取されなければいけない弱さが惨めで、それでも抑えられない自分自身の心の弱さが情けなくて……コクさんなら望み通り僕の命を奪ってくれるのではないかと期待していた自分の甘さに気がついて……涙が溢れた。

泣いては駄目だと戒めの様に頭痛がひどくなっていく。

「怖いか?」
怖いかとルーンヴェイン様に尋ねられ、首を横に振った。
怖い……のとは違う。ただ自分が嫌で嫌で嫌で堪らない。
「嫌なだけか……」

涙で霞んでいたけれど、そう呟いたルーンヴェイン様の顔は一瞬悲しそうに見えた。けれどすぐにその胸に押し付けられてしまったので、今の表情まではわからない。

ルーンヴェイン様がどうしてそんなに悲しそうな表情を見せたのか?
機嫌を損ねてしまったのならこの国の未来が……。

「ルーン……」

泣かずに全て受け入れる決意を伝えようと顔を上げたところで軽く唇に口付けをされた。
先ほどまでの濃いモノではなく本当に軽く触れるだけの口付け。

服を整えられ御神木の前に座らされ、何をされるのかわからなくて、ただルーンヴェイン様の挙動をずっと目で追いかけた。

足を持ち上げられ靴を奪われる。
ルーンヴェイン様の手が足先をなぞった。

「プラタナシアの対価を払う約束だったな。俺がお前の民も、お前の事も守ってやる……お前がこのプラタナシアを守り続けるなら、俺はこの国を守り続けよう」

片膝をついて頭を下げるルーンヴェイン様……どうしてルーンヴェイン様が頭を下げるのか?どうしてルーンヴェイン様が僕の爪先に口付けを落とすのか……。

爪先への口付けは服従の証……逆ではないのか?

「俺の力はお前の物だ……だがお前の身体は俺の物……もう誰にも触れさせるな。分かったか?」

本当は、よく分かっていないけれど……逆らうつもりも無いので頷くと、ルーンヴェイン様が薄く笑ったかと思うと突風が吹き抜けた。

突然の風に瞑っていた目を開けると、そこにはもうルーンヴェイン様の姿は無かった。

「何だったんだろう……」

呆然と今までルーンヴェイン様が立っていた場所を眺めていると、怯えたような低姿勢でハクとキュイが何処からか姿を見せた。

コクさんが来ている時はハクとキュイは大人しい。2頭にはコクさんがルーンヴェイン様という神だという事が分かっていたのだろうか?

分かっていなかった僕は、いまだ状況が理解出来ずに空を眺め続けた。
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