最凶のダンジョンで宿屋経営

藤雪たすく

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捕縛された話

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リビングの電気をつけてソファーに寝転がった。

そのまま何処までも沈んで行ってしまいそうな程体が重い。

あぁ……何で俺がこんな目に……。

愛すべき両親はいない。親しい友人なんていない……それでも、あの世界へ帰りたいと涙の滲んだ瞳を見開く。
厄日、ついてない時はとことんついてないもんだなぁ……この後の展開の想像に諦めの気持ちを抱きながら、俺は目の前の光景を固まったまま呆然と眺めていた。


バチバチと部屋中に静電気が弾ける様な音が響き、天井に黒いシミの様なモノが広がって……その中から黒い靴、黒いズボン、黒い服……ゆっくりと降りてきて全身が現れる。空中に黒い羽を大きく広げた蒼い悪魔。

「やっと見つけたぞ、ヤマト」

「アス……」

アストラウスがリビングに降り立った。
紫色の目が徐々に赤みを帯びていく……その目は鋭く冷たく突き刺さる。

怒ってる……当たり前か。
俺は后にと言ったこいつの前から逃げ出してきたんだから……。

1歩、1歩、優雅な所作で近付いてくる。

土足禁止です。
なんて言える雰囲気ではない。
俺の前まできてソファーに横たわる俺を見下ろしている。

その手が伸びてきて俺の面を外した。

「ヤマト……この数日で随分と色気を増したようだな」

……そうですか?
いっそ殺して欲しいくらいです。

「あの人間どもからお前の匂いがした……追って来てみれば……」

やっぱりクラウス達のせいか。
あいつら……余計なことをしやがって……。

「何故、俺の前から逃げ出した?」

素直に……答えなきゃ駄目かな……?

目を伏せて黙ってれば話題が変わるかと思ったが気長に待ってくれる様だ。
なんとか誤魔化して帰って貰わなくては……。

「……角が刺さって眠れなかったから」

そう言った俺の目の前にゴトン、ゴトンと音を立てて何かが落ちた。

血の付いた黒い角が二本。

吃驚して顔をあげると顔色ひとつ変えず、頭から血を流すアスが真っ直ぐに俺を見下ろしている。

その頭には角が無い。

「な……何で……」

「お前を傷付ける様な物は俺の体に必要ないだろ?」

でも角……自分でもいだ?痛くないの?血が……血が……。

「……次は?翼か?」

そう言って、アスは翼に手をかけた。
嫌な音を立てながら翼が根本から裂け始めて血が飛び散る。

「違うっ!!違うから止めて!!」

慌てて止めようとして、ソファーから転げ落ちそうになった体をアスが受け止めて抱きあげた。

吸い込まれそうな瞳には情け無く顔を歪ませた俺の姿が映っている。

「お前は私のものだ……お前の望む事なら全てを叶えよう。だが俺の前から消えることだけは赦さない……お前はずっと俺の側にいて俺を愛し続けるんだ」

「愛……」

俺は……暖かな腕の中に捕まった。
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