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第1章

お年頃

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 冬後半になり、ピストル弾の講習も知れ渡った今日この頃、よくロゼは女性から贈り物を貰うようになっていた。プレゼントは石鹸や洗髪料、香料だったりする。

 講習などでやさしく教えてくれるロゼは、お年頃の独身女性から見れば格好のターゲットだった。しかし、髪はベトベトでゴワゴワ、汚い身なり、服装のサイズもなんだか合っておらず、ダサい。元は良さげなのにもったいない。

 ロゼは水の精霊と契約を結んでから、徐々に元の銀髪から少し青が混じった銀髪になっていた。が、そのキレイな青い銀髪も煤で黒くし、油や埃でゴワゴワにして固めている。クルクルパーマにゴワゴワが混ざりアフロのような仕上がりになっている。たまに葉っぱも付いている。顔も腕も煤で黒く汚れ、ひどく汚《きたな》らしい。
 もちろんそれはすべて、ロゼの演出だ。

しかし、女性たちから見れば無頓着からそのようになっているのだろと思っている。
 では、自分が理想の男性に仕立てればよい。まずは髪を洗い、身なりを清潔にしてもらい自分自身にふさわしい男性にしようと思っているようだ。


 ロゼはありがたく贈り物を貰う。とくにお返しなどはしない。そして、その贈り物のどれ一つとして使用してもいない。

そのことに女性たちから反発がありそうだ。

「ロゼ、マリから聞いたわ。お付き合いを断ったそうね。他に付き合っている人や婚約者がいるの?」

 お昼に森に向かおうとしたところ、2人の女性から声を掛けられた。一人は赤い髪をした女性で、その後ろに隠れるようにいる水色の髪の人はマリと言うのだろう。

 どちらにも覚えがない。何十人もの講習をしているのだ。一人一人の顔と名前など覚えられるわけがない。

「いや、いないよ」
「じゃあなぜ、断ったの?」
どうやら告白されて断っているらしい、全然覚えがない。
「好きじゃないから」
ロゼは正直に言う。
「ひ、ひどい!」
水色の髪をした女性は走ってどこかへ行ってしまった。
「もういいかな?」
ロゼは歩き出そうとしていた所に赤い髪をした女性が手を上げた。顔を殴られそうになるのを、ひょいと避けた。
「なぜ、殴る」
「本人の目の前であんなこと言うなんて信じられない!」
「あんたが聞いたから正直に言っただけだ。」
「それでももうちょっと言い方があるでしょ!」
赤い髪の女性は真っ赤な顔で怒っている。なぜ、他人事でそんなに感情的になれるのだろう。謎だ。

「どんな言い方だ?一度きちんとお付き合いは断っている。その理由をあんたが聞いてきたから言っただけだ。そもそも、好きな人や婚約者がいなかったら付き合わないといけないのはなぜだ。俺にも断る権利があるだろう。それから殴るつもりがあるのならば、俺に殴られる覚悟はあるのか?」

あーすごくメンドクサイ。

「女を殴るっていうの?!最低な奴ね!」
「あんたは俺を殴ってよくてなぜ、俺は殴り返してはダメなんだ?」
「女を殴るなんて最低じゃない!」
「手を出してきたのは、あんたが先だぞ?」
「…話にならないわ。最低ね」
「それは俺のセリフだ。用がないなら二度と話掛けないでくれ」

   女だからって容赦する気なんてない。私だって女だもの。見かけが男だからとか関係ないもんね。

 ロゼはなぜ、告白してくれた人を覚えていないかと言うと受ける気がないため、ほぼ顔を見ていないのだ。最初に告白してくれた人は何事かと真剣に接していたが人数が増えるにしたがって雑になってしまったのだ。そこは申し訳ない。だって受ける気が100%ないんだもん。

 そんなことがあったかと思えば、婿にどうだと言われたり、人妻が言い寄ってきてその夫が殴り込んできたり、俺の妹はどうだ、何が気に入らないと言われたり、恋人を寝取っただの、数人の女性に囲まれて誰を選ぶのか詰め寄られたりした。
「誰も選ばない」と言うと、4又、5又されたと騒がれた。

このような面倒なことがたびたび起こった。

 ロゼは、めちゃモテるなと我感せずであった。

「ロゼ、いい加減にしろよ!」
と言ってきたのはレオンだ。
「何がだ?」
ロゼが分かってはいたが惚《とぼ》けた。
「何がじゃないだろう!この騒ぎはなんだ!女たちからのクレームが凄いんだぞ!」
「いや、知らないけど、っぷ」
おかしくて笑う。なんのクレームだよ。
「いやいや。笑いごとじゃないだろう!おまえにとっても今後大変なことになるぞ」
「大変なことってなんだよ。ふふ」
まだ笑っている。
「いや、今後の仕事のこととか、結婚とか…」
「へぇ大変なんだ」
ロゼは女である。男なんて一言も誰にも言ってない。なにも困らない。

「誰か一人、付き合う女でも作ればとうだ?婚約するとか…」
「はぁ?アホらし。将来の伴侶をそんな適当に決めるなんて、冗談じゃない。適当に付き合うのも結婚したい女性に失礼だろう。だから断っている」
「それは、しかし…」

 レオンは本当にロゼのことを心配しているのだが、この街を出ると決めているロゼにとってはなにも困ることはないのだ。
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