おせっせのお作法

皐月 ゆり

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第一話

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 好きな人とするセックスが好きだ。
 二日に一回はしたい。できれば毎日したい。
 くっついて、絡み合って、とけあって……。気持ちのいいことをして、されて。頂上を目指して腰を振り合い、一緒にエクスタシーを味わうあの瞬間は他にはない満足感がある。
 だけど、私のパートナーは毎日ギンギンになる方ではないし、そこまで性欲もなければ、持久力も探求心もないようで、仕方がないから満たされない部分は一人で埋め合わせている。
 それでも、できる限り週一回はしてくれている彼のことが大好きなので、そこまで不満には思っていない。というか、思わないようにしている。

 待ちに待った彼とのデート当日。
 今日はのんびり家デート。最寄り駅まで来た私を彼が迎えに来てくれる。それから、買い物をして家に向かう。
 昼食の用意をして、食べて一息ついたら、部屋でゴロゴロするのがいつものパターン。
 ここからが、私の苦悩の時間。
 セックスがしたい。だけど、彼に強いてしまっているんじゃないかと考えすぎてしまって自分からは誘えない。できれば求められたい。
 今日辺りするタイミングだとは思うけれど、それが決まっているわけじゃないからやきもきしてしまう。
 できれば早い時間から、ゆっくり丁寧にセックスがしたい。
 ゆっくりするタイミングがあったのに、時間に追われてさっさと済ませてしまうなんて、そんなのただの性処理だと思う。そういうセックスは好きじゃないし、一人でするのとあまり変わらない。
 別に彼とする為だけに会っているわけじゃないんだけど、そのことが気になってモヤモヤしてしまっている自分が嫌になる。
 いっそ、あらかじめ決まっていたらいいのに。
 仕事のシフトみたいに、この日はする日でこの日はしない。そうやって決まっていたらこんなにモヤモヤしないのに。
 テレビゲームに夢中になっている彼の背中を見つめ、少し遠くに感じた。その背中に近づいてくっついてみる。
「どうしたの?」
 振り返って彼が聞く。優しくのん気な彼の声はいつも私をほっとさせる。
「ううん、なんでもないよ」
 そういえば彼がにこっと笑って、テレビ画面に視線を戻した。
 性欲がなくなればいいと度々思う。
 くっつくだけで、抱きしめ合うだけで満足できればとよく思う。もしくは、誘うことになんの抵抗もなくて、自分の気持ちを素直にいえればと思う。
 だけどそれができないから、私は今、彼に誘われるのを待っていて、自分から少しでもそういう雰囲気にもっていけやしないかと頭を悩ませている。
 くっついたりキスをしたりしたら、そういう雰囲気に持ち込めるかな?
 しようっていうのが手っ取り早いのは分かっているけど……。
 昨日の段階で、明日イチャイチャしたいなとかいっておけばよかったのかな。
 でも、そうやってあらかじめ決めてするもんでもないやろっていってた男友達がいたっけ。
 そんなことを考えれば考える程正解が分からなくなる。誘い方も人それぞれ。
 彼に対する誘い方で一番いい方法ってなんなの?
 モヤモヤと巡る疑問に出た答えは、結局私は彼に動いて欲しい、誘って欲しいということだった。
 それもできれば前もって。
 人に期待するから裏切られたときに、イライラしたり、ガッカリするのは分かっているけれど、求められることで私は安心したいんだ。
 彼にはあらかじめセックスする日を決めておいてもらおう。
 セックスをするって決まっている日を指折り待つ時間は私に安心と、幸せをもたらしてくれるに違いない。
 そんな結論に至っていると、いつの間にか彼はテレビゲームをやめてしまっていた。
「ゆりもおいで」
 立ち上がると私の手を取ってベッドに移動する。

 ベッドに寝転がると、ぎゅーっと抱きしめられた。
 彼の唇がおでこに優しく触れる。それだけで満足そうに彼は目をつむってしまう。
「したいなぁ……」
 思わずそういってしまっていた。これだけでも充分幸せなはずなのに。
 目を開けた彼の唇が頬に触れ、口に触れる。
 優しい口づけは私を安心させてくれる。
 何度かそっと触れる唇が開くのを待ちきれず、いつも私から口を開き舌を出す。
 彼の下唇をそっと舐めると彼の口が薄く開いて、温かくぬめりのある舌が出てきて私の舌と絡み合う。
 激しいキスが苦手な彼は、それでも一生懸命私の中へ舌を伸ばし、口腔を舐めるように動く。
 キスをするうちに二人の息が荒くなっていく。息を吐く音がねっとりと艶のあるものに変わり、互いに発情してきたのがわかる。
 彼が服を脱ぎだしたので、私も自分の服をさっさと脱いでしまう。
 ズボンから出てきたモノに一瞬視線を走らせ、硬くなり屹立している様に少し安堵する。
 寝転がった彼の胸に頭を乗せると、優しい手つきで頭を撫でてくれた。それだけで満足出来たら苦労しないのに。
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