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冷たい笑みにヴォルフの背にゾクリとした物が走る。そんなヴォルフなど気にしていないレナシリアが話を続けた。
「…レオンは私の情報を簡単に鵜呑みにしました。まだ貴方達が捕まっていないという情報です」
「はぁ?なんで嘘つくんだ?」
「情報の真偽を自分で確かめるか、試したのですよ。情報とは簡単に偽りのものにすり替わってしまうものです。例え王や母からの情報であっても、真偽を確かめる慎重さは大切です」
国のトップに立つ者には常に色んな情報が入ってくる。その中にはもちろん真実もあるが、中には王家を陥れようとする嘘も多く混じっているのだ。信頼できる者だと思っていても、裏切られることは多くある。
例えば信頼している家臣、例えば血の繋がった家族。残念ながら裏切りは常に付きまとってくるものなのだ。
レナシリアも国王であるガレンもそういった事を経験している。だからこそ、情報の真偽を自ら確かめることの大切さをわかっているのだ。
「しかし、レオンは私の情報を鵜呑みにしました。だから、レオンへのお仕置きもすることにしたのですよ」
「…おっかねぇな…」
「王妃となれば誘拐や暗殺などのターゲットになる可能性もあります。…ドロシーにもいい経験になるでしょう。…もちろん、一番の目的はミリーの拘束ですよ。その為には貴方達を使うのが一番いいのです。レオンやドロシーに顔も割れていませんし、ミリーも油断するでしょう」
レナシリアはそこまで話して裏家業の男から、黙って話を聞いていたヴォルフに視線を移す。
「ヴォルフ。この話を聞かせたのは、貴方に新婚旅行の護衛を任せるからです。護衛の騎士は貴方が選びなさい。ただし、その騎士達には予め事情の説明をして、滞りなく事が運ぶようにしたいので口が固い者でお願いしますね」
「はっ!」
「それと、この者に誘拐を実行してもらうので監視として…一人、最も信頼出来るものをつけなさい。諜報員も影で監視しますが、騎士もいた方が安心でしょう」
「分かりました。…あの、この計画は誰までが知っているのでしょうか。また、旅行に同行する者に説明は…」
「この事を知っているのは陛下とザックだけです。そして、同行者に説明する必要はありません。この計画を知るのは騎士達だけとします」
つまりレオンやドロシーはもちろんのこと、世話役として同行する従者や侍女には計画を伝えないということだ。
ドロシー付きの侍女となったレフィーナは確実に旅行に同行するし、誘拐されるドロシーの近くにいる。と言うことはレフィーナにも怖い思いをさせることになるだろう。
怖がらせたくなど無い、という思いがヴォルフの胸をぐるぐると回るが、それをぐっと退ける。王妃であるレナシリアの命令ならば、個人的な感情は押さえなければならない。
「では、ヴォルフ。護衛の騎士の選出は貴方に任せるのでお願いしますね」
「…はい、お任せください」
「計画の詳細は追って教えます。今日はもう仕事に戻って構いません」
「じゃあ、よろしくな!副騎士団長サマ。因みに俺の名前はベルグっていうんだ、覚えておいてくれよ」
「……」
ニヤリと笑った裏稼業の頭…ベルグの言葉にヴォルフは何も言わず、ただ金色の瞳を一瞬向けただけだった。
そんなヴォルフにベルグは肩をすくめる。
ヴォルフは改めてもう一度レナシリアに頭を下げてから、ひっそりと部屋を後にしたのだった。
♢
レナシリアのいた部屋から騎士の詰め所へ戻ったヴォルフは、一つ深い溜息をついた。詰め所は騎士達の声で騒がしく、そんなヴォルフのため息に気づく者はいない。
自分の執務用の机につくと、紙を机の上に広げる。先程言われた護衛の騎士達を選出するためだ。
口が固く、実力がある者の名前をすらすらと書き記していく。副騎士団長として騎士達の情報は頭にしっかりと入っているので、特に迷うこと無く決めていった。
レナシリアに言われた監視役の騎士にはアードをつけることにした。前騎士団長の息子で実力はあるし、飄々としているが中身は意外としっかりしている。なにより、騎士達の中でヴォルフは一番信頼しているのだ。
計画の詳細はまだ分からないが、誘拐するというのなら恐らくレオンはドロシーから離されるように誘導されるだろう。そうなればヴォルフは当然レオンの護衛としてついていないといけない。
自分が離れるのなら、誰よりも信頼できて実力がある者が適任だ。
「おーヴォルフ、朝ぶりだな。ほい、これ王都の見回りの報告書」
ちょうど考えていたアードがヘラヘラ笑いながらやってきた。ヴォルフは突き出された報告書を受け取るとそれを他の報告書の上に重ねる。
「…ちょうどいいから伝えておく」
「ん?なになに?」
「レオン殿下の新婚旅行の護衛にお前を選んだ」
「おっ、それはありがとさん!隣国行ってみたかったんだよな」
「…お前には重要な役回りを頼むからしっかり頼む。詳細はまた他の騎士達も集めて話す」
「了解!」
まさかドロシーの誘拐計画があるなど気づくはずもなく、アードはにかっと笑って了承する。それを見てヴォルフが再び書類に視線を落とせば、アードは静かに立ち去っていったのだった。
「…レオンは私の情報を簡単に鵜呑みにしました。まだ貴方達が捕まっていないという情報です」
「はぁ?なんで嘘つくんだ?」
「情報の真偽を自分で確かめるか、試したのですよ。情報とは簡単に偽りのものにすり替わってしまうものです。例え王や母からの情報であっても、真偽を確かめる慎重さは大切です」
国のトップに立つ者には常に色んな情報が入ってくる。その中にはもちろん真実もあるが、中には王家を陥れようとする嘘も多く混じっているのだ。信頼できる者だと思っていても、裏切られることは多くある。
例えば信頼している家臣、例えば血の繋がった家族。残念ながら裏切りは常に付きまとってくるものなのだ。
レナシリアも国王であるガレンもそういった事を経験している。だからこそ、情報の真偽を自ら確かめることの大切さをわかっているのだ。
「しかし、レオンは私の情報を鵜呑みにしました。だから、レオンへのお仕置きもすることにしたのですよ」
「…おっかねぇな…」
「王妃となれば誘拐や暗殺などのターゲットになる可能性もあります。…ドロシーにもいい経験になるでしょう。…もちろん、一番の目的はミリーの拘束ですよ。その為には貴方達を使うのが一番いいのです。レオンやドロシーに顔も割れていませんし、ミリーも油断するでしょう」
レナシリアはそこまで話して裏家業の男から、黙って話を聞いていたヴォルフに視線を移す。
「ヴォルフ。この話を聞かせたのは、貴方に新婚旅行の護衛を任せるからです。護衛の騎士は貴方が選びなさい。ただし、その騎士達には予め事情の説明をして、滞りなく事が運ぶようにしたいので口が固い者でお願いしますね」
「はっ!」
「それと、この者に誘拐を実行してもらうので監視として…一人、最も信頼出来るものをつけなさい。諜報員も影で監視しますが、騎士もいた方が安心でしょう」
「分かりました。…あの、この計画は誰までが知っているのでしょうか。また、旅行に同行する者に説明は…」
「この事を知っているのは陛下とザックだけです。そして、同行者に説明する必要はありません。この計画を知るのは騎士達だけとします」
つまりレオンやドロシーはもちろんのこと、世話役として同行する従者や侍女には計画を伝えないということだ。
ドロシー付きの侍女となったレフィーナは確実に旅行に同行するし、誘拐されるドロシーの近くにいる。と言うことはレフィーナにも怖い思いをさせることになるだろう。
怖がらせたくなど無い、という思いがヴォルフの胸をぐるぐると回るが、それをぐっと退ける。王妃であるレナシリアの命令ならば、個人的な感情は押さえなければならない。
「では、ヴォルフ。護衛の騎士の選出は貴方に任せるのでお願いしますね」
「…はい、お任せください」
「計画の詳細は追って教えます。今日はもう仕事に戻って構いません」
「じゃあ、よろしくな!副騎士団長サマ。因みに俺の名前はベルグっていうんだ、覚えておいてくれよ」
「……」
ニヤリと笑った裏稼業の頭…ベルグの言葉にヴォルフは何も言わず、ただ金色の瞳を一瞬向けただけだった。
そんなヴォルフにベルグは肩をすくめる。
ヴォルフは改めてもう一度レナシリアに頭を下げてから、ひっそりと部屋を後にしたのだった。
♢
レナシリアのいた部屋から騎士の詰め所へ戻ったヴォルフは、一つ深い溜息をついた。詰め所は騎士達の声で騒がしく、そんなヴォルフのため息に気づく者はいない。
自分の執務用の机につくと、紙を机の上に広げる。先程言われた護衛の騎士達を選出するためだ。
口が固く、実力がある者の名前をすらすらと書き記していく。副騎士団長として騎士達の情報は頭にしっかりと入っているので、特に迷うこと無く決めていった。
レナシリアに言われた監視役の騎士にはアードをつけることにした。前騎士団長の息子で実力はあるし、飄々としているが中身は意外としっかりしている。なにより、騎士達の中でヴォルフは一番信頼しているのだ。
計画の詳細はまだ分からないが、誘拐するというのなら恐らくレオンはドロシーから離されるように誘導されるだろう。そうなればヴォルフは当然レオンの護衛としてついていないといけない。
自分が離れるのなら、誰よりも信頼できて実力がある者が適任だ。
「おーヴォルフ、朝ぶりだな。ほい、これ王都の見回りの報告書」
ちょうど考えていたアードがヘラヘラ笑いながらやってきた。ヴォルフは突き出された報告書を受け取るとそれを他の報告書の上に重ねる。
「…ちょうどいいから伝えておく」
「ん?なになに?」
「レオン殿下の新婚旅行の護衛にお前を選んだ」
「おっ、それはありがとさん!隣国行ってみたかったんだよな」
「…お前には重要な役回りを頼むからしっかり頼む。詳細はまた他の騎士達も集めて話す」
「了解!」
まさかドロシーの誘拐計画があるなど気づくはずもなく、アードはにかっと笑って了承する。それを見てヴォルフが再び書類に視線を落とせば、アードは静かに立ち去っていったのだった。
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