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出会い2

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「あー……元気? 楽しんでる?」
 慶の声に、ようやく男が反応を示す。声をかけられると思っていなかったのか、男はわずかに目を見開き、驚いた様子を窺わせた。
「お前は……」
「なんか一人だったからさ、良かったら一緒に飲もうかなと思って」
 慶は男の眼前にグラスを掲げる。
「別に無理にとは言わないんだけど……」
 あまり表情の変わらない男に、慶の声は小さくなっていく。感情が読めず、迷惑がられているのかも分からない。愛想よく笑顔を浮かべていたが、引き攣っていないか心配だ。
 あと数秒、なんの返答もなければ謝って席を立とう。慶がそう決めたとき、男がようやく口を開いた。
「むしろありがたい。こういう場所は不慣れで、作法がよく分からないんだ」
 助かったと言わんばかりに、男は張り詰めた空気をフッと緩める。幾分堅苦しさが和らいだが、それでも男の印象は変わらない。生来真面目な性分なのだろう。
「ただの居酒屋だし、作法とかそんなの気にしなくても平気だよ。むしろ、楽しむことが礼儀、かな?」
「ふむ……。楽しむことが礼儀か。なかなか難しいことを言う。そもそも俺は討論会に招かれたはずなのだが。これはどういうことなのかさっぱりだ」
「討論会? 一体どんな誘われ方したんだ」
 離れた所で異性と盛り上がる悪友を、横目で一瞥しながら慶は問い掛ける。
「我々の将来に関する重大なことを、異性や他校の学生と意見を交換する討論会だと聞いていた。これは間違っているのか?」
「ええと……間違っているような、いないような?」
 慶の友人や参加している大半の者にとって、合コンはある意味、将来に関する重大なことだ。ここで恋人を捕まえられるかどうかで、これからの大学生活がガラリと変わる。だがそれは恋人が欲しい人間に限ったことで、目の前の男に当てはまるかは定かではない。
「はっきりしないな」
 言葉を濁した慶に、男はそう言った。声音に負の感情はないようだが、圧のある男の雰囲気では少々きつく感じられる。
「なんつーか……ここにいる大半のヤツにはその通り。でも俺や、多分あんたにとっては間違い、かな」
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