魔女ネコのマタ旅

藤沢なお

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鳥の村と港町

第六話

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翌日は、白猫三姉妹の
次女レモンが二日酔い
(ウイスキーボンボン一個で)
になってしまい、ベッドから
起き上がれなくなってしまった。

小鳥の三姉妹は、いつもどおり
丸太運びに出掛けていき、
白猫の長女リンゴと三女のメロンは
レモンに付き添うことにして、
今日はメラミも丸太運びを
お休みさせてもらうことにした。

こうやって誰かが欠けてしまうと、
一度にまとめて五本の丸太を
運ぶことが出来なくなる。

メラミは考えた末に、丸太運びの
メンバーを増やすことにした。

「で、この子達を連れてきた、
  というわけですね」

長女のリンゴは、少々あきれ顔で言った。

白猫三姉妹が休ませてもらっている
村長さんちのログハウスの空き部屋では、
黒猫の男の子が二匹、
ドタバタと走り回っている。

「すげえ、本物の魔女のほうきがある!」

「待ってよ兄ちゃん、ぼくも見たい!」

村長親子は仕事で、
留守にしているからいいものの、
ベッドの上で寝ている次女のレモンは、
二日酔いの頭に騒音が響くようで、
明らかに不機嫌そうだ。

三女のメロンは、
ほうきに興味をもった二匹に、
自分のほうきを見せて遊ばせている。

同じ顔をした、
この二匹の黒猫は双子の兄弟。
黒猫国の剣士候補生でまだ一年生だ。
メラミがこの春、剣士候補生の
初等学校に見学へ行ったとき、
大きな声でぎゃんぎゃん泣いている
黒猫の一年生がいたがそれが彼らだった。

「オレたちは剣士じゃなくて、
  魔法使いになりたいんだよお!」

と、わめき散らしていたのだ。

その時はまだメラミも、

(黒猫の子どもがそんな事を言うなんて、
  変わっているにゃあ)

と思っていた。

ふとその二匹を思い出したメラミは、
黒猫国の領土に向かうと、
つまらなそうに剣の訓練をしている
二匹に声をかけ、ほうきに乗せて
連れてきたというわけだ。

「君たちはまだ、
  魔法使いになりたいかにゃ?」

メラミの問いかけに、
双子は元気よく返事をした。

「もちろん!」

メラミはリンゴとメロンと、
ベッドで横になっているレモン、
黒猫の双子に向けて話した。

「今日からこの二人に、
  魔法の使い方を
  教えてあげて欲しいのにゃ。
  少しずつでいいから、
  ほうきに乗れるようになって、
  出来ればいつか、丸太運びを
  手伝ってもらえたらうれしいのにゃ」

双子は魔法を教えてもらえる!
と喜ぶが、長女のリンゴは
渋い顔でぼそっとつぶやく。

「メラミ様。お言葉ですが、
  この子たちは黒猫ですよ」

レモンも、姉の意見に賛成とばかりに、
うん、うん、とうなずいてみせた。

「昔から、黒猫は剣士で、
  白猫は魔法使い、
  と決まっているのです」

リンゴは何を今さらといった風に言い放つ。
それでもメラミはこう言い切った。

「この子たちは剣士ではなく、
  魔法使いになりたいのにゃ。
  恐らく、白猫の中にも
  剣士になりたいって思う子が、
  いると思うのにゃ」

そこで三女のメロンが、
わかる、わかる、とうなずいて、

「私も小さいときは、
  剣士になってみたかったもの」

とメラミに賛同した。

リンゴとレモンは、まったくメロンは
マイペースなんだから…とあきれたが、

「自分が何になりたいのかも、
  本当は自分で決めていいはずなのにゃ」

メラミが話を続けると、静かに聴き入った。

「黒猫だからって、
  魔法が使えないとは限らないにゃ。
  猫には少なくとも、何かしらの魔力が
  備わっているはずなのにゃ。
  訓練次第で、魔法が使えるように
  なるかもしれないのにゃ。だから」

メラミは、三姉妹にペコリと
頭を下げてお願いした。

「だから、魔法の使い方を、
  この子達に教えてあげて欲しいのにゃ」

魔法の特訓は、長女のリンゴと双子の兄、
三女のメロンと双子の弟、
というペアを組み、
一体一で練習することになった。

黒猫の双子の兄は、名前をアオという。
瞳の色が青いからだ。

瞳の色が赤いので、
リンゴと名付けられた自分と
似ているかもしれない、
とリンゴが思ったのは、つかの間で、

「リンゴなんて、変な名前だな」

とアオに一蹴され、

(変な名前で悪かったわね)

リンゴは心の中で悪態をついた。

黒猫の双子の弟は、名前をミドリという。
瞳の色が緑だからだ。

「まあ、私と同じ緑の瞳なのですね」

メロンが言うと、

「へぇ~、姉ちゃんの名前は、
  なんていうんだ?」

「私はメロンと言います」

「いい名前だな。
  オレは、夏になったら
  メロンを食うのが楽しみなんだ」

「うふふ、そうなのですね」

メロンの、おっとりとした
マイペースな性格が幸いしてか、
こちらはなかなかいい感じだ。

『魔法』というものは、
見える、聞こえる、体を動かす、
といったことと同じ。
一度でも体感してしまえば、
使い方のコツがわかってくる。

想像力と集中力を
高めていく必要もあるけれど、
白猫にしか魔法が使えない、
ということはないはず。
黒猫にだって、ちゃんと
魔力が備わっているはずなのだ。

何故、メラミがそう
確信しているのかには、理由があった。
トラばあちゃんの『旅日記』の中で、
旅の途中で出会った黒猫の子どもが、
魔法の力で白猫の子どもを
助けるのを見たと、
記されているのを読んだからだ。

メラミの見込みどおり、
黒猫の双子はスジがいいのか、
夕方には自分の魔法の力だけで、
ほうきを宙に浮かすことが
出来るようになった。

「兄ちゃん、やったね!」

「ミドリもすげえな!」

双子は互いに大喜び。

これには白猫三姉妹も驚いて、
もしかしたら早いうちに
ほうきを乗りこなすことも
出来るようになるかもしれないと、
みんなで喜んでいた。

するとそこに。

「大変、大変なの!」

小鳥の三姉妹が、部屋に飛び込んでくると、
大声で叫んだ。丸太運びの途中で
村に引き返して来たようだ。

「港町が大変なことになっているの!」

三姉妹の慌てた様子に、
ただならぬものを感じ、
みんな一斉に注目する。

「空からたくさん、
  あめが降ってきてるの!」

「?」

小鳥の三女プティーが
大きな声で叫んだものの、
何を言っているのか理解出来ない。

「それって普通のことでは?」

リンゴが首をかしげると、
小鳥の長女パティーが説明した。

「違うのよ。あめはあめでも、
  キャンディーよ。あめ玉が、
  空から大量に降ってきてるの!」

詳しく話を聴くと、
三姉妹が港町の買い取り場に着いたとき、
海の方から虹色に輝く雲が
近づいて来るのが見えたそうだ。
最初はきれいだなと見とれていたのだが、
虹色の雲に気がついた港町の猫が、
みんな慌てて建物の中に入っていくので、
何か変だなと思い始めた。

そのとき、買い取り担当のキジトラさんが、

「君たちも早く村に戻ったほうがいいよ」

と、その理由を教えてくれたという。

虹色の雲は港町に年に数回現れては、
赤や青、黄色に緑と色とりどりの
あめ玉を大量に降らせる。

それは一週間ほど降り続き、そして、
落下してくるあめ玉はまるで石のよう。

体に当たると硬くて痛いし、
傘を差しても穴が空いて役にたたず、
降り終わるまで
外に出ることもままならない。

さらに厄介なことに、
降り注いだあめ玉は溶けることなく
地表に積もり、一週間ほどすると
一粒残らずきれいさっぱり
消えてしまうのだが……、
つまり港町ではこれから約二週間、
みんな家の中に閉じこもって
何も出来ない状況が
続くことになるというのだ。

「そのあめ玉って食べられないのか?」

黒猫の双子の弟ミドリがそう尋ねると、
見知らぬ顔に一瞬、
けげんな表情を見せつつも、

「空から降る怪しげなあめ玉なんて、
  食べられるものじゃないそうよ」

と、小鳥の次女ピティーが答えた。

虹色に輝く雲。
空から降るあめ玉。
メラミは、
トラばあちゃんの『旅日記』の中で
読んだ話を思い出していた。

「この二人を家に送るついでに、
  お城に戻ってくるにゃ」

双子の頭をなでながら、
メラミが突然そう言い出したので、
心配した白猫三姉妹が、

「私たちも一緒にお供します」

と申し出たが、メラミは首を横に振る。

「リンゴとメロンは、
  レモンの体調が戻るまで、
  ここで一緒に休ませてもらうといいにゃ。
  それにパティーたちも、
  港町のことを村長さんたちに伝えたら、
  しばらく、丸太運びは
  お休みしたほうがいいのにゃ」

メラミは自分のほうきに、
ひょいとまたがり、
双子をほうきに乗せると、

「メラミには、
  やらなきゃいけないことがあるのにゃ」

窓から飛び立ち、夕やけ空を高く飛ぶ。
そして双子を黒猫国の自宅へ送り届けると、
メラミはお城に戻ることにした。


~鳥の村と港町~ 完
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