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第一章 灰色の現実
1-7 自己紹介・他己紹介
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「というわけで、彼の自己紹介が済んだところで授業といきたいところではあるんだけど、君たちは彼のことを知っていても、彼は葵ちゃんを除いて君たちのことは知らないだろうしねぇ。だから、君たちから自己紹介と行こうか。あ、一応葵ちゃんも自己紹介をよろしく。魔法的な自己紹介をね」
先生がそういうと、葵は、はーいと間延びした返事をして、前に出てくる。
「というわけで赤原 葵です。魔法的な自己紹介ということで、それっぽいところから自己紹介しようと思います!
紋章は炎、得意魔法というかよく使うのも炎魔法!それ以外の魔法も普通に使えますけど、紋章があるから炎がメインかな。改めてよろしくね」
「お、おう」
おどけた返事しか僕はできなかった。
魔法的な自己紹介とは言いつつも、魔法についての知識がからっきしだから、正直話半分でしか聞くことができていない。
……紋章が炎だから、炎魔法?紋章にそって魔法を使うのか?でも、それ以外にも普通に使うと葵は言っているし……。
……とやかく考えても仕方がない。とりあえず、彼らの紹介を聞くしかない。
葵が自己紹介を終えると、先生が次、と言って他の人間にその番を促す。
……けれども、その番をとるものはいない。しばらく沈黙がこだまして、空間に気まずい雰囲気が漂う。
それを見かねて、「じゃあ次はアキラくん」と先生が言う。そうすると「げっ」と嫌そうな声を出すチャラ男。
「……しゃーねーか」
彼はそう言って、諦めたように息を吐いてから、言葉を続けた。
「多々良《たたら》 明楽《あきら》。良いことが多くあるで多々良、明るく楽しいで明楽。紋章は風。だけど風が得意ってわけじゃないし、得意な魔法についてはそんなにはない。……まあ、よろしく」
典型的な自己紹介だと、なんとなくそう思った。
見た目については完全にチャラ男、という感じだ。茶髪、耳にピアス。それ以外にも体のいたるところにアクセサリーがついている。チャラ男というだけで少し警戒しそうだけれど、顔は正直整っているので、悪い印象は与えない感じだ。黒髪でアクセサリーやらがなければ、なんとなく誠実に見えそうな男だとそう思った。
仲良くなれるかはわからないけれど、とりあえず僕は小声でよろしく、と返して会釈をした。
「うん。オーソドックスな自己紹介だね。明楽くんはこんな見た目ではあるけれど、別に怖いわけではないと思うから安心してくれていいよ。
街中で見かければ、だいたい女の子に声をかけるくらいには明朗だから、うん」
「俺、先生と街中で会ったことないけど何で知ってるんすか」
「認識阻害をつけて皆の後ろについていくの結構楽しくてねぇ。ついやっちゃうんだ」
はは、と立花先生は誤魔化すように笑った。それ、完全にストーカーじゃん、という思いは言葉に出さずに飲み込んでおいた。きっと、そんな言葉を言ったところで何も意味はなさそうだから。
「というわけで明楽くんでした。それじゃあ、ユキトくんといこうかな」
そうして先生はメガネの男子に話を振ったけれど、メガネくんは特に返事をすることはなく無視を決め込んでいる。
「……と、見せかけてアマネちゃんということでよろしく」
数秒ほど間を置いたところで、先生は白髪の女の子に話を振る。
話を振られた女の子は、一歩前に出て、僕の顔を覗く。
「……」
……じっと、見つめられている。赤い目が珍しくて、少し見とれそうになるけれど、好奇の目だと思われないように視線を逸らした。
白髪に赤い目。肌も少し白っぽいけれど……、どこかで聞いたアルビノというソレとは少し違うようだ。
「……アマネちゃーん?」
先生がそういうと、アマネと呼ばれた女の子は口を開いた。
「……天王寺《てんのうじ》、天音《あまね》です。人と話すの、苦手です。魔法、普通だと、思います。……よろしくお願いします」
……なんというか、静かな雰囲気そのままという感じだ。肩にかかるほどの長くて白い髪、人の心を覗くような赤い目に視線がそれるけれど、それでなくとも綺麗な容姿をしている。
……というかまじまじと僕のことを見ているのだけれど。更に言えば僕の顔ではなく、僕の左手をめちゃくちゃに彼女は注視している。
そんなに左手にある紋章は不思議なものなのだろうか。……まあ、特に意識はしないようにしよう
「というわけで天音ちゃんだ。まあ、雰囲気通りという感じかな。紋章については僕も知らないんだ。ただ、彼女は魔法について普通だと自己分析しているようだけれど、彼女の魔法については化け物だと思ってくれていい。どんな具合で化け物かっていうのを小一時間くらい説明したいけれど、それだけで日が明けそうだから、また次の機会にお話しできたらしようと思うよ」
冗長で饒舌な先生がそこまでいうということは、彼女の魔法の素養とやらはエグいんだろうなぁ、と想像がつく。どういう魔法を使うのか今のところはわからないけれど(紋章とやらも先生も知らないらしいし)、とにかく、彼女は凄いのだろう。
「というか、天音さんについては先生も後ろについていくことはしなかったんですね」
明楽くんについてはめちゃくちゃついてきたことを喋っていたから、天音さんについてはストーキングはしなかったのだろう。
「え?……あ、ああ、うん」
……あ、やってるわこの人。
◇
「じゃあ最後にユキトくん自己紹介といきたいところなんだけれど……」
僕はまだ紹介されていないユキトと呼ばれた男子を視界に入れた。
……なんというか、めちゃくちゃに睨まれている。普通の生活では感じられないほどに、僕に対しての敵意を感じずにはいられない。
「……まあ、彼は自己紹介をする気はなさそうなので、ここは先生からの他己紹介ということで勘弁してくれ」
小声で「君のことを事前に話していた時から彼こんな感じだから気にしないで」と先生が耳打ちをしてくる。……まあ、それならしようがない。
「彼の名前は天原《あまはら》 雪冬《ゆきと》。まあ、なんというか見た目通りの秀才くん、という感じかな。紋章については確か──」
「先生、個人情報だと思うんですが?」
眼鏡の雪冬とやらは、確実な敵意を孕ませて先生の紹介を断ち切った。
……彼から感じる敵意。保健室で最初に邂逅した立花先生と同じような雰囲気を感じる。
どこか、人間を見下すような、そんな敵意。
「……まあ、君にそれを言われたら、ここで止めるしかないね」
先生は呆れるようにため息を吐いて、それ以降は彼について言葉を紡ぐことはしなかった。
……他のメンツについてはともかくとして、なんとなく雪冬という男子には警戒をしておいた方がいいかもしれない。敵意を抱かれる経験があまりないからわからないけれど、彼の目は少し自分の心に痛く刺さるほどに強い意志を感じずにはいられない。
「というわけで生徒については以上かな。環くんから何か聞きたい事とかあるかい?」
「あ、ええと。ここにいる生徒さんで全員なんですか?」
一応、僕も合わせて生徒は五人というところだけれど、それは人数が少ないようにも感じる。もしくはもともと魔法使いというやつは人数が少ないものなのだろうか。なんとなくそんなことを疑問に思った。
「ああ、それならあと二人生徒がいるよ。この時間に来ていないということは、もうほぼほぼ欠席ということだと思うけれど。
ま、他の生徒らについては、実際に会ってから自己紹介でもして仲良くなっておくといいさ。悪い子達ではないからねぇ」
「……そうですか」
ほぼほぼ欠席、という風に捉えているということは、先生に対して無断で欠席しているということになると思うのだけれど、特に深くは突っ込むことはしない。
「というわけで、早速授業といきたいところではあるんだけれども……」
先生は白衣を腕まくりをして、そして腕時計を見つめる。
「……うん。葵ちゃんと環くんが遅刻をしたから、今日はちょっと無理そうだね。明日以降にしよっか」
「「……すいませんでした」」
葵と声が被って、空間に謝罪の声が響く。
「ま、次からは遅刻をしないようにね。言っても、大半の生徒が遅刻をしているから、もう気にしないけどさ」
先生は諦めたように苦笑する。
……なんというか、まとまりがないクラスなんだなぁ。
初日の魔法教室については、そんな感想しか抱けなかった。
先生がそういうと、葵は、はーいと間延びした返事をして、前に出てくる。
「というわけで赤原 葵です。魔法的な自己紹介ということで、それっぽいところから自己紹介しようと思います!
紋章は炎、得意魔法というかよく使うのも炎魔法!それ以外の魔法も普通に使えますけど、紋章があるから炎がメインかな。改めてよろしくね」
「お、おう」
おどけた返事しか僕はできなかった。
魔法的な自己紹介とは言いつつも、魔法についての知識がからっきしだから、正直話半分でしか聞くことができていない。
……紋章が炎だから、炎魔法?紋章にそって魔法を使うのか?でも、それ以外にも普通に使うと葵は言っているし……。
……とやかく考えても仕方がない。とりあえず、彼らの紹介を聞くしかない。
葵が自己紹介を終えると、先生が次、と言って他の人間にその番を促す。
……けれども、その番をとるものはいない。しばらく沈黙がこだまして、空間に気まずい雰囲気が漂う。
それを見かねて、「じゃあ次はアキラくん」と先生が言う。そうすると「げっ」と嫌そうな声を出すチャラ男。
「……しゃーねーか」
彼はそう言って、諦めたように息を吐いてから、言葉を続けた。
「多々良《たたら》 明楽《あきら》。良いことが多くあるで多々良、明るく楽しいで明楽。紋章は風。だけど風が得意ってわけじゃないし、得意な魔法についてはそんなにはない。……まあ、よろしく」
典型的な自己紹介だと、なんとなくそう思った。
見た目については完全にチャラ男、という感じだ。茶髪、耳にピアス。それ以外にも体のいたるところにアクセサリーがついている。チャラ男というだけで少し警戒しそうだけれど、顔は正直整っているので、悪い印象は与えない感じだ。黒髪でアクセサリーやらがなければ、なんとなく誠実に見えそうな男だとそう思った。
仲良くなれるかはわからないけれど、とりあえず僕は小声でよろしく、と返して会釈をした。
「うん。オーソドックスな自己紹介だね。明楽くんはこんな見た目ではあるけれど、別に怖いわけではないと思うから安心してくれていいよ。
街中で見かければ、だいたい女の子に声をかけるくらいには明朗だから、うん」
「俺、先生と街中で会ったことないけど何で知ってるんすか」
「認識阻害をつけて皆の後ろについていくの結構楽しくてねぇ。ついやっちゃうんだ」
はは、と立花先生は誤魔化すように笑った。それ、完全にストーカーじゃん、という思いは言葉に出さずに飲み込んでおいた。きっと、そんな言葉を言ったところで何も意味はなさそうだから。
「というわけで明楽くんでした。それじゃあ、ユキトくんといこうかな」
そうして先生はメガネの男子に話を振ったけれど、メガネくんは特に返事をすることはなく無視を決め込んでいる。
「……と、見せかけてアマネちゃんということでよろしく」
数秒ほど間を置いたところで、先生は白髪の女の子に話を振る。
話を振られた女の子は、一歩前に出て、僕の顔を覗く。
「……」
……じっと、見つめられている。赤い目が珍しくて、少し見とれそうになるけれど、好奇の目だと思われないように視線を逸らした。
白髪に赤い目。肌も少し白っぽいけれど……、どこかで聞いたアルビノというソレとは少し違うようだ。
「……アマネちゃーん?」
先生がそういうと、アマネと呼ばれた女の子は口を開いた。
「……天王寺《てんのうじ》、天音《あまね》です。人と話すの、苦手です。魔法、普通だと、思います。……よろしくお願いします」
……なんというか、静かな雰囲気そのままという感じだ。肩にかかるほどの長くて白い髪、人の心を覗くような赤い目に視線がそれるけれど、それでなくとも綺麗な容姿をしている。
……というかまじまじと僕のことを見ているのだけれど。更に言えば僕の顔ではなく、僕の左手をめちゃくちゃに彼女は注視している。
そんなに左手にある紋章は不思議なものなのだろうか。……まあ、特に意識はしないようにしよう
「というわけで天音ちゃんだ。まあ、雰囲気通りという感じかな。紋章については僕も知らないんだ。ただ、彼女は魔法について普通だと自己分析しているようだけれど、彼女の魔法については化け物だと思ってくれていい。どんな具合で化け物かっていうのを小一時間くらい説明したいけれど、それだけで日が明けそうだから、また次の機会にお話しできたらしようと思うよ」
冗長で饒舌な先生がそこまでいうということは、彼女の魔法の素養とやらはエグいんだろうなぁ、と想像がつく。どういう魔法を使うのか今のところはわからないけれど(紋章とやらも先生も知らないらしいし)、とにかく、彼女は凄いのだろう。
「というか、天音さんについては先生も後ろについていくことはしなかったんですね」
明楽くんについてはめちゃくちゃついてきたことを喋っていたから、天音さんについてはストーキングはしなかったのだろう。
「え?……あ、ああ、うん」
……あ、やってるわこの人。
◇
「じゃあ最後にユキトくん自己紹介といきたいところなんだけれど……」
僕はまだ紹介されていないユキトと呼ばれた男子を視界に入れた。
……なんというか、めちゃくちゃに睨まれている。普通の生活では感じられないほどに、僕に対しての敵意を感じずにはいられない。
「……まあ、彼は自己紹介をする気はなさそうなので、ここは先生からの他己紹介ということで勘弁してくれ」
小声で「君のことを事前に話していた時から彼こんな感じだから気にしないで」と先生が耳打ちをしてくる。……まあ、それならしようがない。
「彼の名前は天原《あまはら》 雪冬《ゆきと》。まあ、なんというか見た目通りの秀才くん、という感じかな。紋章については確か──」
「先生、個人情報だと思うんですが?」
眼鏡の雪冬とやらは、確実な敵意を孕ませて先生の紹介を断ち切った。
……彼から感じる敵意。保健室で最初に邂逅した立花先生と同じような雰囲気を感じる。
どこか、人間を見下すような、そんな敵意。
「……まあ、君にそれを言われたら、ここで止めるしかないね」
先生は呆れるようにため息を吐いて、それ以降は彼について言葉を紡ぐことはしなかった。
……他のメンツについてはともかくとして、なんとなく雪冬という男子には警戒をしておいた方がいいかもしれない。敵意を抱かれる経験があまりないからわからないけれど、彼の目は少し自分の心に痛く刺さるほどに強い意志を感じずにはいられない。
「というわけで生徒については以上かな。環くんから何か聞きたい事とかあるかい?」
「あ、ええと。ここにいる生徒さんで全員なんですか?」
一応、僕も合わせて生徒は五人というところだけれど、それは人数が少ないようにも感じる。もしくはもともと魔法使いというやつは人数が少ないものなのだろうか。なんとなくそんなことを疑問に思った。
「ああ、それならあと二人生徒がいるよ。この時間に来ていないということは、もうほぼほぼ欠席ということだと思うけれど。
ま、他の生徒らについては、実際に会ってから自己紹介でもして仲良くなっておくといいさ。悪い子達ではないからねぇ」
「……そうですか」
ほぼほぼ欠席、という風に捉えているということは、先生に対して無断で欠席しているということになると思うのだけれど、特に深くは突っ込むことはしない。
「というわけで、早速授業といきたいところではあるんだけれども……」
先生は白衣を腕まくりをして、そして腕時計を見つめる。
「……うん。葵ちゃんと環くんが遅刻をしたから、今日はちょっと無理そうだね。明日以降にしよっか」
「「……すいませんでした」」
葵と声が被って、空間に謝罪の声が響く。
「ま、次からは遅刻をしないようにね。言っても、大半の生徒が遅刻をしているから、もう気にしないけどさ」
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