魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について ~灰色の対極~

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)

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第四章 異質殺し

4-EX3 疲れない催しごとの正体

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「疲れないパーティーを開催するんでしたよね?」

「うん」

「……朱音が疲れない誕生日パーティーを開催するんですよね?」

「……そうだよ?」

 何も疑問を持っていないような天音の表情。まるで当然の手法とでもいうかのように、俺の自室に持ってきた荷物を床へと慎重に置く。

「てっきりさ、疲れないパーティーって、こう……」

 俺はそう言いながら、手でワキワキとするようなモーションを浮かべながら、マッサージのようなものを想像していたことを彼女に伝えてみる。

 というか、ぶっちゃけ俺の思考ではそれくらいのものにしかたどり着くことはできなかった。マッサージ、とか、そういった疲れを労わりながら、朱音の誕生日を祝うことができるようなパーティーを開催できれば、それで誰もが満足する何かにはなるのだろう、と。

 ……まあ、傍から見れば怪しいことこの上ないし、朱音が王様でそれ以外が奴隷のようにこき使われているシチュエーションを想像して、どうにも絵面が最悪であることはわかっていた。それでもそれ以外には思いつかないから、とりあえずと言わんばかりに『マッサージが上達する! 人を癒すツボ』という本も買ってきたのだが。

 そんな俺に対して、天音が持ってきたものは、──酒である。

 母親が酒を飲んでいたこともなかったので、品ぞろえについてもよくわからないが、ワインであったり、日本酒であったり。もしくは缶ビールや缶のジュースみたいなお酒、あとはウィスキーみたいなやつらしいものとか、本当にたくさんのお酒。

「疲れは、お酒で癒せる」

「そうかなぁ?!」

 お酒というものを飲んだことはないし、これから飲む機会があったとしても、それは法律に準拠した二十歳以降になるわけだが、お酒にそんな万能な効果があるとは思えない。

 どちらかといえば、ろくでもないものしか想像できない。昔ドラマで見たような、アルコールに酔って暴力を振るったり、暴言を吐いたり。……これに関してはお酒の知識がない故だと思うが、テレビで見たようなものだと、嫌なもの、としての認識が強くなるから仕方ないとも思う。

「そうだよ」と天音は平然と返しながら言葉を続ける。

「というか、お姉ちゃんが言ってた。疲れたときはお酒が一番、って」

「……だいぶろくでもない大人の発言だな」

 ただ、天音の言葉が本当だとして、朱音のここ最近、というか出会ってからの日常の中では、彼女がお酒を飲んでいる、という印象についてはあまりない。目の前で酒を飲むようなこともなかったし、また酒臭いみたいな雰囲気が漂うこともなかった。単純に酒臭さ、というものを知らないだけかもしれないが、そうだとしても、特に違和感のある雰囲気を朱音が醸し出していたことは記憶にはない。

「……でも、逆に言えば──」

 ──ここ最近の朱音には、お酒を飲むような暇もないということかもしれない。

 天音の発言を解釈すれば、きっと俺がかかわるより以前は酒と向き合うような生活をしていたのかもしれない。そのような振る舞いがあってこその『疲れたときはお酒が一番』というものがあったのかもしれないし、だとすれば今は飲む状況にないほど疲れている、ということになるのだろうか。

「天音、よくやった」

 そうであるのなら、天音が酒を持ってきたことは、ひとつの運命というものなのかもしれない。というか、彼女が一番朱音と関わっている人間なのだから、天音が言っていることに何か間違いがあるわけでもない。

「やった」と彼女は声を漏らしながら、俺の方に頭を差し出してくる。こうしてくるときは、何かしら甘えたいという気持ちの表れであることをこの半年で知っているので、俺はそれに応えるように彼女の頭を撫でてみる。えへへ、と満足そうな彼女の表情に、純粋に可愛いな、という気持ちは抱くけれど、どちらかと言えば妹がいればこんな気持ちになるのかも、という自分が納得できる感情でオチをつけてみる。

「ともかく『疲れない』っていう部分は大丈夫だと思うし、あとはパーティーの飾りつけとかしなきゃな」

 だいぶと準備が進んできたような気がして、心をなでおろしてそう言葉をつぶやいてみる。

 俺の言葉に天音は、うん、と頷いた後、彼女が床に置いてきた荷物(酒類)を見つめて佇んだ。

「……」

「……天音?」

 俺は思いつく限りの飾りつけをしようと思って、近場の百均で買ってきた折り紙なんかで装飾をしようと、買ってきたものに手を伸ばそうとしたのだけれど、いまいちリアクションを感じられない彼女の様子に、首を傾げながら天音の動向を見守ってみる。

 ……そして。

「──お酒、飲んでみたい」

「──はい?」

「飲んでみたい、お酒」

「倒置法で言われても──」

「──お酒、飲も?」

 ダメだよ! と言葉を発して止めようとしたところで、ぷしゅ、と何かしらの缶を開けたらしい音が自室に響く。

「マジですか天音さん……?」

「マジです」

 そう言いながら、天音は彼女が持っている缶と同じようなものを僕に渡してくる。缶の温度に冷たさは感じなくて、……いや、そんなことを考えている場合じゃない。

 やめよう、と声をかけようとするも、僕の感情を察したらしい天音が、大丈夫、と声をかけてくる。

「イギリスでは、十六歳からでもお酒が飲める」

「……天音さん」

 ここは日本です、とツッコミを入れたころには、彼女は既にもうそれを口に含んでしまっていた。





 ※イギリスでは確かに十六歳からお酒が飲めますが、親の同伴がある場合にのみ許可されます。また、イギリスがどうだからといって日本では二十歳未満でお酒を飲むことは禁止されています。こちらの作品は未成年飲酒を許容、また推奨をするものではありません。ご了承ください。

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