ある神官の告白

彩月野生

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命が尽きる前に

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リーヌスとシーロの二人にくっついて、世界を回る旅路にようやく慣れたのは、半月程たった頃だった。
相変わらず二人と距離は縮まらなかったが、食事を共にする回数は増えており、ヘルマンとしては、リーヌスと顔を会わせる機会が増えて単純に嬉しかった。

「それじゃ、お休み二人とも」
「お休み~」

いつもの様に、二人に就寝の挨拶をして自分の部屋へ向かう。
なかなか寝付けないので書物に目を通していると、ふいに扉が叩く音がして顔を上げた。

「どなたかな?」
「俺だ」
「!」

この声は、リーヌスだ。
こんな時間に訪ねてくるのは珍しい。
鍵はあけてあると告げると、静かに身を滑らせて入って来た。
聞けば寝付けないから話し相手になれという事だ。

「別に構わないが、シーロの方が相手になれるだろう?」
「あいつは爆睡してる」
「お子様だな」

苦笑しつつ、温めたミルクに酒を足して手渡すと一口啜る。
実は、彼が寝付けていない夜があるのは知っていた。
その都度気にしてはいたのだが、リーヌスは自分と会話するのが退屈な様子だったので、声をかけられずにいたのだ。

向かいあって座り、主導権はリーヌスで話が進む。

「未だに分からないのは、何故おまえが俺に執着をするのかだ」
「そ、それは……分かるだろ、お前が私にした事を思えば」
「憎んでいるのかと思いきや、そうではないんだろ? それどころか、まだ想っているというのは……気持ち悪い奴だ」
「わざわざ夜中に、そんな話をすることはないだろう」

こうして二人きりになれるのは良いが、嫌味をぶつけられると気分は悪い。
あからさまに拒絶されているし、どんな反応をすればいいのか困る。

「あとな」
「ん?」

ミルクを飲み干してリーヌスが率直に聞いてきた。

「三年という期間だ」
「……それは」

まあ、隠す必要もない。
ヘルマンは己に課せられた宿命を話した。
事実だったので、淡々と告げると、目を見開いて息を飲む。
驚いたらしいので、意外だなと思った。

「それは本当なのか」
「ああ。私の寿命は、四十八で尽きる」

正確には、女神に命を捧げるという意味でだが。
もともと穢れた身で、女神の慈悲で神官になれたヘルマンは、当然代償を支払う必要が生じた。
その代償が、贄としての役目だ。

本来は禁じられた因習だったが、ヘルマンが受け入れたので、特別に見逃されたのだった。

だから、あと三年は心身共に浄化する意図もあり、神殿の奥でひっそりと過ごすつもりだったが……リーヌスについていく事を、特別に赦されたのだ。
女神は、贄をいつどこにいようが関係なく見つけ出す。

――思えば、この男に振り回された人生だったな。

否、勝手な恋心にか。

「同情しろとでもいうのか」
「? リーヌス、何を言って……」
「くだらん。もうお前はついてくるな!」
「!?」

気分を害してしまったようだ。
リーヌスが乱暴にカップを机上に置いて、足早に部屋を出て行った。

ヘルマンは唖然と開かれたままの扉を見つめる。

――寿命の話はするべきではなかったな。

まさか、気にするとは予想外の反応だ。
朝になったら謝ろう。
もう少しだけ、共にいたい。

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