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第1話〈秋葉原のカフェにて〉
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西暦20××日本は幾つかの大災害を乗り越えて、ようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。
人工が減り生産性が衰えても、日本の発展を支える研究者達は諦めない。
宇宙事業への日本の地位を回復させる為に、ロボット工学の研究に力を注ぎ、それが見事に当たり、世界からの信頼は回復する。
そんな努力に感化された人々は、自らロボットを作り始めたり、機械工学に興味を持つようになり、ある事が流行する。
秋葉原が発祥とされていて、身体の一部をメタルにするというもの。
安く手術を受けられるというのもあり、おしゃれ感覚で若い男女の間で一時流行っていた。
そんな流行りも廃れた頃。
一人の営業社員が今日も外回りに励んでいた。
店主が一人で営む老舗の雑貨店。
しかめっ面の老人が、スーツのポニーテール頭の女性に睨みをきかせている。
先ほどから持ち込んだ健康器具の説明を行っていた営業の女性は、どんなに丁寧に話をしても店主が無反応なので、やがて諦めて頭を下げると店を出て行った。
太陽の光に行き交う人の熱気。
春の陽気にめまいを覚えそうだ。
「はあ~しんどぉ」
まるで全身針でつつかれているような、非常に居たたまれないあの空気から解放されて、思わず気持ちを吐き出す。
額から流れる汗をハンカチで拭った。
軽く汗ばんでいるのは恐らく緊張のせいだろう。
どうしてあんな頑固なおじいさんにアタックをかけたのかというと、彼女が売り込んでいる健康器具が、老人向けの製品だからである。
そっとリュックサックから器具を取りだし、ボタンを押し込む。すると棒状の本体から幾重にも細い棒が延びて、その先が振動した。
いわゆるマッサージ器ではあるのだが、老人は身体が硬いと勝手に思い込んでいる社長が開発したもの。
ーーどう考えても売れないよ。
とにかく老人に当たれと言われて店舗個人宅関係なく突撃している状況である。
本社が近いので、秋葉原電気街口周辺を周っているが、話だけは聞いているくれる老人が多いのが救いだった。
ーーま、売れないけどね。
しかし先ほどの老人は全然聞いてくれず、声を枯らしたのは無駄に終わってしまった。
喉がはり付いて水分が欲しい。休みたい。
駅前のカフェでアイスティーでも飲もう。
大手量販店に併設されたカフェでホッとしたのも束の間ーー。
妙な視線を感じてなんとなく顔をそちらへと向ける。
ーーなにあれ。
何やらワンピースを着ている女性が自分をジッと見つめていた。
ーーなんであんなに見てくるの、もう落ち着かないな。
なるべく気にしないようにとどうにかアイスティーを飲み干したものの、あまりにも見られていて我慢が限界に達する。
半分は八つ当たりだったのかも知れない。
苛立ちを隠さないままワンピース女に声をかけた。
「すみません、何かご用でしょうか!」
我ながら怖い声だなと自覚しても引くつもりなどない。
せっかくの休憩時間を台無しにされたのだから。
「え?」
「え」
ワンピースの女が、目深に被っていた花柄の帽子から顔を覗かせる。
「その、顔って」
銀色に輝くその顔はーー完全にロボットそのもの。
それが、飯山みよりとロボットになった女性ーーユユとの出会い。
人工が減り生産性が衰えても、日本の発展を支える研究者達は諦めない。
宇宙事業への日本の地位を回復させる為に、ロボット工学の研究に力を注ぎ、それが見事に当たり、世界からの信頼は回復する。
そんな努力に感化された人々は、自らロボットを作り始めたり、機械工学に興味を持つようになり、ある事が流行する。
秋葉原が発祥とされていて、身体の一部をメタルにするというもの。
安く手術を受けられるというのもあり、おしゃれ感覚で若い男女の間で一時流行っていた。
そんな流行りも廃れた頃。
一人の営業社員が今日も外回りに励んでいた。
店主が一人で営む老舗の雑貨店。
しかめっ面の老人が、スーツのポニーテール頭の女性に睨みをきかせている。
先ほどから持ち込んだ健康器具の説明を行っていた営業の女性は、どんなに丁寧に話をしても店主が無反応なので、やがて諦めて頭を下げると店を出て行った。
太陽の光に行き交う人の熱気。
春の陽気にめまいを覚えそうだ。
「はあ~しんどぉ」
まるで全身針でつつかれているような、非常に居たたまれないあの空気から解放されて、思わず気持ちを吐き出す。
額から流れる汗をハンカチで拭った。
軽く汗ばんでいるのは恐らく緊張のせいだろう。
どうしてあんな頑固なおじいさんにアタックをかけたのかというと、彼女が売り込んでいる健康器具が、老人向けの製品だからである。
そっとリュックサックから器具を取りだし、ボタンを押し込む。すると棒状の本体から幾重にも細い棒が延びて、その先が振動した。
いわゆるマッサージ器ではあるのだが、老人は身体が硬いと勝手に思い込んでいる社長が開発したもの。
ーーどう考えても売れないよ。
とにかく老人に当たれと言われて店舗個人宅関係なく突撃している状況である。
本社が近いので、秋葉原電気街口周辺を周っているが、話だけは聞いているくれる老人が多いのが救いだった。
ーーま、売れないけどね。
しかし先ほどの老人は全然聞いてくれず、声を枯らしたのは無駄に終わってしまった。
喉がはり付いて水分が欲しい。休みたい。
駅前のカフェでアイスティーでも飲もう。
大手量販店に併設されたカフェでホッとしたのも束の間ーー。
妙な視線を感じてなんとなく顔をそちらへと向ける。
ーーなにあれ。
何やらワンピースを着ている女性が自分をジッと見つめていた。
ーーなんであんなに見てくるの、もう落ち着かないな。
なるべく気にしないようにとどうにかアイスティーを飲み干したものの、あまりにも見られていて我慢が限界に達する。
半分は八つ当たりだったのかも知れない。
苛立ちを隠さないままワンピース女に声をかけた。
「すみません、何かご用でしょうか!」
我ながら怖い声だなと自覚しても引くつもりなどない。
せっかくの休憩時間を台無しにされたのだから。
「え?」
「え」
ワンピースの女が、目深に被っていた花柄の帽子から顔を覗かせる。
「その、顔って」
銀色に輝くその顔はーー完全にロボットそのもの。
それが、飯山みよりとロボットになった女性ーーユユとの出会い。
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