魔王を愛した王子~恥辱の生涯~

彩月野生

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盗賊達のアジトへ

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 噴水広場で繰り広げられた、オークと騎士の交わり。
 それは勝負の筈だったが、聖騎士が瞬く間にオークに堕とされ決着はオークの勝利で収まった。

 ルナンは、呆然と異形と交わるヴェルターを見据えて、膝をついた。
 あんなおぞましいモノに尻を掘られて悦んでいる姿を、信じたくない。
 彼は、魔族との戦いの際、オークと何度も戦い、斬って来たはずなのだ……それが、たかがオークの性器ごときに負けるはずない。

 ふいに何かが落ちる音が聞こえて目を向ける。
 足元でエルレイルが倒れていた。
 ルナンは慌てて彼を抱き上げて声をかける。

「エルレイル、しっかりしろ!」
「……うう」
「やべえな、ひとまず寝かせよう」

 ラントにエルレイルを運んでもらい、寝室の寝台に横たわらせると、うなりながら身じろぐ。
 青ざめた表情を見るに、よほどヴェルターの痴態がこたえたのだろう。
 ルナンは顔を振って己を奮い立たせる。

 ヴェルターを助けなければ!

「王子」
「!」

 寝室をでようとするルナンを、ラントが呼び止めた。
 全てを見透かしたような、静かな目を向けている。
 こんな目をするラントは初めて見るので、息を飲んだ。
 案の定、ヴェルターを助けるのは諦めろと説得されて、激高する。
 ラントに詰め寄り、拒絶の意を伝えた。

「見捨てられるわけがないだろ! 大切な仲間なんだぞ!」
「そりゃあわかってますよ、しかし、今はやめたほうが賢明ですぜ?」
「なんでだ!? 今助けなければいつ助けるっていうんだ!」
「王子……」

 か細い声にルナンはラントから顔を背けて、声の主へ向き直る。
 エルレイルが上半身を起こして手を伸ばし、何事か囁いていた。
 傍に歩み寄り、耳を傾ける。
 せわしない呼吸を繰り返し、エルレイルも制止の言葉をかけてきた。
 今、ルナン達も捕まれば、聖剣を取り戻す機会を失いかねないと。
 せめて、聖剣の有りかだけでも見つけるのが先なのだと。
 エルレイルは涙を流しながら嗚咽までもらす。
 今度はルナンがその背中をさすってやって、落ち着くのを待った。

「すみません、もう大丈夫です」
「まだ顔色が悪い」
「さっさと移動しねえと、捕まるぞ。今頃はヴェルターに仲間がいると勘ぐっているかも知れねえ」

 エルレイルが心配だが、ラントの言う通りでもある。
 実際ヴェルターが、ルナン達について伝えてしまっている可能性が高いのだ。
 あの快楽にとけきった目を見れば分かる。
 オークに夢中になってしまっていたあの姿を見れば……。

 ――どうして、こんな事に。

 ラントの助言により、別の場所へ移動して落ち着くまでは、頭の中がぐちゃぐちゃだった。
 
 エルレイルを支えながら地下道を歩いてやって来たのは、ラントと同族、つまりは盗賊のアジトだ。
 ムートには幾度となく盗みに入っていると言っていたが、まさかアジトまで作っていたとは。
 数年前にルナンを魔獣から助けてくれた恩もあり、仲間として受け入れてはいたのだが……やはり油断できない相手だと実感する。

 アジトは地下道を抜けて、町の裏道の行き止まりに入り口を設けていた。
 そこには小さな家が鎮座していたが、ごまかす為の偽物のアジトであり、実際はその隣にある細道へと続く扉をあけた、そのさらに奥に壁のような建築物が建っている。
 その扉に向かってラントが合図を送り、内側から開けてもらい、中に入った。

 ほこりっぽさとカビくささが気になったが、日当たりの悪い場所にあるので、仕方ない、とラントがからかうので口を噤む。
 エルレイルをソファの上に寝かせて貰うと、顔色が若干よくなり安堵の息をつく。

 ラントの仲間達がルナンとエルレイルをなめるような視線で観察する。明らかな欲情の目で見られて胸の気持ち悪さに眉間に皺がよるのを感じた。
 顔を背けるとラントに歩み寄り、耳打ちする。

(彼らは本当にラントの仲間なのか?)
(ああ。なんでです)
(奴ら、男色の気でもあるのか?)

 率直に訊いてみると、突然大笑いされて背中まで叩かれてあやうく転びかけた。
 
「ハハハハハハ!」
「な、なんだよ!」
「いやいやいや! すんません! まさか、そんな事気にするなんて思いませんから」
「どうしたラント」

 ラントの爆笑に盗賊達が数人集まってきて、取り囲まれる。
 酒のニオイや甘いニオイ、煙のニオイなど、各々の趣味趣向が現れた体臭を放つ。
 ルナンは頭痛がしてきて頭をおさえた。

「どうしました?」
「あ~いいから、風呂」
「え?」
「お前ら全員からだ洗って来い!!」

   
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