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第81話 屈辱のG
「ねえアッシュ、俺、アッシュがオナニーしてるとこ、みてみたい」
広間(リビング)のソファに腰掛け、片肘をつきながら本を読んでいたアッシュのところに、突然セイルがラグに座ってアッシュを覗き込んできた。
「おな……、突然何を…セイル」
さすがのアッシュも、愛する恋人の突拍子もない発言に、手にしていた本を持つ手が微かに震えるのを自覚する。黒髪ショートの生真面目な顔には、一瞬の動揺がはっきりと浮かんだ。
プロポーズを経て、正式なパートナーとなった二人が暮らし始めたセイルの家。騎士寮を出て同棲を開始して以来、二人の親密さは増すばかりだが、セイルの時折見せるこの「性の破天荒」とも言える言動には、アッシュは未だに慣れない。
アッシュは本をテーブルに置き、体ごとセイルに向き直る。黒い瞳には、戸惑いと同時に、セイルから発せられる挑発的な空気に抗えない熱が宿り始めていた。
「どうしたんだ、急に。君はいつも、俺を誘ってくれるだろう」
「そうなんだけどさぁ。俺、アッシュの真面目な顔が欲望に歪む瞬間の顔が、たまらなく好きなんだよね」
セイルは口元に悪戯っぽい笑みを浮かべ、すらりと長い指先で、アッシュの太腿を優しく、しかし確かな意図を持って撫でた。
「アッシュ、一人でしてる時は、どんな顔してるの? どこか、隠れてするの? 」
アッシュは思わず声を荒らげそうになり、喉の奥で押し殺した。
アッシュの耳が赤く染まっているのを見て、セイルは満面の笑みを浮かべる。
「ふふ、そんなに照れなくても。ね、ね、一回だけでいいから、お試しでさ。俺、絶対黙って見てるから。…ね? お願い、アッシュ」
セイルは体勢を起こし、アッシュの膝の間に滑り込むように移動した。そして、その長い首に手を回し、無邪気な瞳をアッシュの黒い瞳にまっすぐにぶつける。
アッシュは観念したように息を吐き出すと、セイルの顔を優しく、しかし有無を言わせない力で引き寄せた。
「わかった。だが、ひとつ条件がある」
「え? なに?」
セイルは首を傾げる。
「…君が、俺から目を離さないことだ。俺がどんな顔をしても、どんな声を上げても、最後まで目を逸らすな。そして、触れないこと。分かったな?」
セイルは満面の笑みを浮かべ、蠱惑的に目を細めた。
「もちろん。約束するよ、アッシュ」
アッシュはゆっくりと立ち上がり、セイルと共に寝室へと向かった。
扉を閉めると、室内に満ちるのは、二人の吐息と高揚感だけだ。
「ここに来てから、君がこんなに興奮しているのは初めてかもしれないな」
アッシュはベッドサイドにセイルを座らせ、苦笑を浮かべる。
「だって、アッシュの初めての秘密を見れるんだよ? 興奮しないわけないでしょ」
セイルは、艶めいた笑みを崩さないまま、アッシュが服を脱ぐのを待った。
アッシュは、ゆっくりとジャケットに手をかける。次に、きっちり閉められたシャツのボタンが、一つ、また一つと外されていく。
セイルの茶色の瞳は、一瞬たりともアッシュから逸らされない。まるで美術品を鑑賞するかのように、細部まで逃すまいと見つめ続けている。
「セイル…」とアッシュは思わず声を荒げそうになるが、喉の奥で押し殺した。彼は羞恥心に襲われながら、ベルトを緩める。
そして、とうとう下着一枚になった瞬間、セイルはたまらず声を上げた。
「……っ最高だよ、アッシュ」
アッシュはベッドの縁に腰を下ろし、深い呼吸を繰り返した。
「君は、約束を破るつもりは無いだろうな」
アッシュは震える声で尋ねた。
「もちろん。見てるだけ、って約束したから」
セイルは応えながら、少しアッシュに近づいた。
「でも、アッシュ。俺の視線が、触手の代わりになってるの、知ってる?」
セイルはそう囁くと、静かに笑った。
「俺は、アッシュの真面目な顔が欲望に歪むところが見たい。さあ、どうぞ」
アッシュは、セイルの期待に満ちた、妖艶な瞳を枷としながら、おずおずと、自らの身体に手を伸ばした。彼の指先が熱を帯びた屹立に触れた瞬間に、
「…ねぇアッシュ、騎士団寮に住んでた時はどうしてたの?」
アッシュの動きが一瞬、硬直した。
「同室だったペリエが居ない時にひとりでヤッてたの?」
「セイル!君は…っ、そんなこと、聞くな!」
「ふふ。誰にも言わないから教えてよ。今、その一人でする行為を、俺が独り占めして見てる。すごいことじゃない?」
アッシュは、もはや羞恥心と興奮の境目がわからなくなっていた。彼は観念したように目を閉じ、セイルの言葉と視線を全身で受け止めながら、さらに動きを激しくした。
「ああ、いいよ、アッシュ。その顔だよ。真面目な顔が、快感で歪んでる。もっと、もっと見せて」
しかし、極度の羞恥と緊張が枷となり、アッシュはなかなか快感の頂点に到達できない。
セイルは悪戯っぽく微笑んだ。
「アッシュ、なかなかイケない?じゃあ、俺を見て」
アッシュの動きが止まった。セイルはそのまま立ち上がると、すらりとした体躯を包む衣服を脱ぎ捨てた。
「……っ!」
アッシュの瞳がセイルに釘付けになる。セイルは全裸になると、アッシュから離れた端に座った。彼は何の躊躇もなく脚を開き、自身の右手中指を唾液で濡らすと、淫靡に縦に割れた後孔に指を這わせた。
その官能的すぎる仕草に、アッシュの理性が完全に焼き切れる音がした。
「…、アッシュ、俺に近づいちゃダメだよ」
セイルは、薄く舌舐めずりをしながら、指を後孔に差し込んだ。
「約束、覚えてるよね? アッシュも同じだよ?」
アッシュは、もはや騎士団長としての矜持も羞恥心もかなぐり捨て、荒い喘ぎ声と荒々しい動きで、快楽の頂点を目指し始めた。
「ねぇ、アッシュ」
セイルは、指を動かしながら、アッシュの全身に熱を込めた視線を浴びせる。
「…アッシュ、俺を見ながら、オナニーして」
その瞬間、アッシュの意識から羞恥という概念が完全に消え去った。
アッシュは、潤んだ黒い瞳をセイルの妖艶な姿に釘付けにした。自らの指先で、自分の熱を帯びた部位を、激しく扱く。
セイルは、自身への愛撫を止め、指を抜き取った。その代わり、自身が開脚したままの姿を、アッシュに見せつける。
「イっていいよ、アッシュ。俺のこの熱い視線を浴びながら、全部出しちゃえ」
アッシュの肉体は激しく痙攣し、剛直から熱い液体が白いシーツの上に迸った。
「……うっ、…くっ!」
全身から力が抜け、ベットに背中から崩れ落ちそうになった瞬間、セイルがすばやく立ち上がり、アッシュを抱きしめた。
「よしよし。いっぱい頑張ったね、アッシュ。…ふふ。やっぱり、アッシュの真面目な顔が欲望に歪む瞬間が、俺は最高に大好きだよ」
アッシュはセイルの肩に顔を埋め、しばらく動けなかった。
「……君は、本当に、恐ろしいな、セイル」
セイルは満足げに笑い、アッシュの耳元に掠れた声で囁いた。
「アッシュ…、俺が『アナニー』してるところ、見たい?」
セイルはアッシュの耳元で、『オナニー』ではなく『アナニー』という単語を呟いた。それはつまり、セイルが後孔を使って自慰をする、という、アッシュにとって淫靡で、ある意味拷問的な光景である。しかも、セイルはただの自慰では終わらないだろう。アッシュが目の前で悶えるのを、楽しむに違いない。
「…君が、望むなら」
アッシュは観念したように息を吐き出した
「アッシュ、さっきと同じだよ。俺から目を離しちゃダメ。おさわりも厳禁だよ」
セイルは目を細めて蠱惑的に微笑む。
「俺がアナニーするところを見てるだけなんて、アッシュにとって拷問だよね」
セイルはそう言って、ベッドの真ん中に移動した。ピンクベージュのセミロングの髪が、彼の艶めかしい動きに合わせて揺れる。彼は腰を降ろして両脚を立てて座り、アッシュの黒い瞳にまっすぐに見つめられながら、無限収納から普段使わない、オイルの小瓶を取り出した。高品質の潤滑油だ。
「触れない、って約束、もう破りたいんじゃない?」
セイルは挑発するように、滑らかなオイルを右手の指先に垂らす。そして、それを惜しみなく後孔の入口へと塗布し始めた。その指の動き一つ一つが、アッシュの理性と自制心を削り取っていく。
アッシュは歯を食いしばった。セイルの妖艶な姿は、彼の目には最も美しい芸術品であり、同時に、自制心を試す、最も過酷な試練だった。
「…君の望み通り、最後まで目を逸らさない」
アッシュの言葉に、セイルは満足げに微笑む。その表情は、愛する恋人というより、淫靡な魔女のようだった。
セイルは、潤滑油で濡れた中指を、ゆっくりと後孔に差し込む。
「ん…っ」
セイルの口から漏れる艶めかしい声。それは決して苦痛の声ではない。アッシュを誘うための、純粋な快感の吐息だった。
「ねぇアッシュ、ここが今、俺の指で快感に歪んでるよ」
セイルは身を捩りながら、アッシュに見せつけるように後孔を震わせる。
指が二本、そして三本と増えていく。セイルは完全に自分の世界に入り込み、陶酔したような表情を浮かべ始めた。彼の茶色の瞳は潤み、頬は上気する
「ふ、はぁ…っ、もっと、奥…っ」
セイルの腰が、指の動きに合わせて無意識に前後する。その動きは水面を撫でるように滑らかでありながら、炎の様に熱を帯びていた。
アッシュの体は、セイルの目の前で、再び熱を帯び始める。彼は、触れられない拷問に、荒い呼吸を繰り返すしかなかった。
「セイル…っ、やめろ…、俺は、君に…」
アッシュの言葉を、セイルは笑い飛ばす。
「やめないよ。だって、アッシュが見てるんだもん。興奮するよ…。ねぇアッシュ、見てて…」
セイルは指の動きを早める。潤滑油がふんだんに塗り込まれた後孔から「ぐちゃぐちゃ」と淫靡な音が鳴り響き、アッシュの脳を揺さぶる。
「はあ、ぁ…っ、」
セイルがひとり、顔を歪めて悶えるその光景は、アッシュにとって想像を絶するものだった。セイルの妖艶な美しさが増幅される。
やがてセイルの体が、痙攣を始めた。
「アッシュ…っ、見てて…っ、俺、イくよ…っ」
セイルは、アッシュの視線という名の鎖に縛られながら、快感の頂点へと達し、屹立から白濁を撒き散らせた。彼の体から力が抜け、ベッドの上にふわりと倒れ込む。
アッシュは、もう限界だった。彼はセイルの言いつけを破り、ベッドを泳いだ。
「セイル!もう、いいだろ…っ」
アッシュは、セイルの濡れた後孔に指を入れ、自身の熱い勃起を押し付ける。
「アッシュ、触っちゃダメ…」
セイルは抵抗するが、アッシュの力は強かった。
「黙れ。君のその淫乱な体が、俺に触れろと叫んでいる」
アッシュは、セイルの抗議をキスで塞ぎ、その体を力強く抱きしめた。
今度は、二人での快楽の始まりだった。
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