【R18】『廻円のヴィルヘルム』~半人半魔のあまあま淫乱お姉さんを嫁にして、ブサメンコミュ障な童貞貴族は人生逆転です!~

八雲水経・陰

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EP7_⑪

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「では……お言葉に甘えて御足みあしを。」

「はい///」

 傍から見ると、なかなかに滑稽な景色だ。
 密室に立つ裸婦と、その足元に膝を着き、脚を撫でようと手を伸ばす老紳士。
 老いた狂執を孕んだセックスの前戯にも、医師による真剣な検診にも見える。

「……あぁ、すまない忘れてた。」

「?…………あっ///」

 差し伸ばした手を引き取り、領主は丁寧かつ念入りに、指の消毒を済ませた。
 手首から指の付け根、爪と指の間まで、細かく滑らかに消毒液を練り込んで、一切の菌を残さんとす。

「……ありがとうございます。」

 まだ粘膜には触れないが、まずは誠意の問題だ。
 ベタベタと触られるのも嫌いではないセレアだが、この一動作を挟まれると、相手に対する気持ちが変わる。

(ヴィルくんより……手慣れてる……。)

 ヴィルが未熟なのは仕方ないと、分かっている。その未熟さが気に入っているのも事実だ。
 しかし面影の重なる相手がこうも紳士であると、シャワーを浴びずに迎えた初夜が残念に思えるのも事実だ。

 それはヴィルの落ち度より、エスコートするセレアの落ち度。だが、そもそも領主は導く必要が無い。――これは、大きな心理的差異だった。

「当然の事だよ。 それでは、今度こそ失礼。」

「はい……///」

 領主の指先が、セレアのふくらはぎに触れる。
 ゆったりとした指圧が細やかな皮膚を包み込み、脂肪を透過して筋肉と骨格を見定めていく。

「……どうでしょう?」

「健康的な足だ。 よく歩き、よく食べ、よく寝ている生活が容易に思い浮かぶ。
 筋肉はあるが硬すぎず、むしろ抜群の柔らかさ。 バネと脂肪のバランスがよく整って、跳ねやすく衝撃を吸収しやすい。……走るのも早いかね?」

「その……揺れが凄いので……。」

 はにかんだ笑みを浮かべ、セレアは両手で胸を隠す。
 色鮮やかに魅力的な乳輪を手首で覆い抱え、零れ落ちそうな光景を暗示する。

「あぁ、失礼。 余計なお世話だった。」

「いえ、大丈夫です!」

 走るのは嫌いではないが、かなり念入りにスポーツブラを選ばされる。
 その手間を考えると、有酸素運動は他の種目を嗜んだ方が、日々のエクササイズとして手頃だった。

 ――そんな事を、考えていた時だった。

「…………? なんだこれは?」

「どうされました?」

 領主の目の色が、急に変わる。
 セレアのカラダに何かを見出し、頭を捻って考え始めた。

「……セレア殿、大きな病院で検査した事はあるかね?」

「いえ……その……恥ずかしながら、万年健康優良児ですので……///」

 ここ20年、何の検査にも引っ掛かっていない。
 体重は適正で、身長は伸び続け、バストもヒップも毎年更新する。育ち盛りの体育会系男児を彷彿とさせる、恥ずかしいほどの健康さ。

「いやいや、何も恥ずかしい事ではないよ。 たいへん結構な事だ。」

「ンフフ……ありがとうございます。 しかし、何かありましたか?……もしや病気ですか?」

「いや、そういうわけではないのだが。」

 領主の落ち着いた口調に安堵する反面、年甲斐もなく慌ててしまった自分を恥じる。
 大病した事が無い身だ。触診で些細な兆候でも見つかったなら、心穏やかにいられない。これは仕方ないのだ!と、セレアは自分を納得させる。

「君は体毛が極端に薄いね。……これは魔法で生えなくしているのかな?」

「あ……えぇと……/// 部位によります……///
 デリケートゾーンの周りなどは、ホルモンを調整して無毛を保っています……///」

 セレアは目を細めて苦笑しながら、体毛の処理事情を語る。
 真面目に語るべきなのかよく分からない話だが、領主は真剣に聞いている。

「部位ごとに分けているのかね?」

「大半の場所は魔法で良いのですが……その……なんというか。 お腹に不自然な魔力を当てるのは、女性としては憚られる面もあるので……。」

 セレアが労るように円を描いて下腹部を揉み摩ると、「おっしゃる通りだ」と言わんばかりに相槌を打って理解を示す。

 エセ健康法のようにも思えるが、女性淫魔の子宮は魔力の心臓部だ。膨大な量のエネルギーが、常に規則正しく循環している。
 その付近に外部から不必要な刺激を与えるのは、事故に繋がりかねない。良くて魔力不全、最悪の場合は不妊。家庭を持ちたいセレアにとっては、到底容認出来ないリスクだ。

「ホルモン調整は医学的処置で? それとも、自力で?」

「???……はい、自力です。 近寄って念じれば、他の女の子の体毛も生えなく出来ますわ。」

「…………なんと。」

 娼婦に髪以外の体毛は要らない。
 これは20年の経験が導き出した、確固たる結論だ。

 客の趣味によっては無毛が興を削ぐ事もある。だが、そんな特殊な相手に配慮していられない。
 陰毛が無い方が広く受け入れられる。仕事の後処理も楽で、日常生活にも便利だ。生やす理由が無い。

 可愛い後輩たちにも、考えを共有した。
 羞恥から抵抗する者もいたが、最後にはセレアの意見に賛同するようになる。これは娼婦生活に適応したのか、彼女に心を許したのか、曖昧な変化だ。

「もしや君は、フェロモンのような物を分泌して、自他のホルモンを操作できる……のか?」

「そう……なのでしょうか?」

「うぅむ……ますます興味深くなって来た……。」

「???」

 セレアとしては、何が興味深いのか分からない。
 泡姫専用の大浴場で、後輩全員を労い洗う。仲良くみんなで湯船に浸かり、肩を寄せ合って歌を歌い、悩みや幸せを共有する。

 そんなありふれた日常の中で、軽く念じる。
 本能と直感に任せて目を閉じると、事は済む。すぐには効果が分からないが、なんとなく効いていると分かる。――その程度の事だ。何も特異な点は無い。

「次の部位を触っても?」

「はい……臀部も……どうぞ……んっ💕」

 膝裏を撫でる領主の指が、太腿の裏筋に沿って浮上する。肌をくすぐる感触が仙骨まで昇り切った時、その爽快感だけでオーガズムに達しかけた。

(お尻……触られてる……///)

 足よりも格段に、内臓へと接近される感覚。
 領主の指が骨盤を触診し、「子を孕むカラダ」として自分を見定める興奮。

 二重のスリルが下腹を満たし、身震いする――。

「その……いかがですか……?」

「形が良いな。」

「まぁ……///」

「赤子がしがみ付き、膂力を鍛えるのにちょうど良い。 
 大きさも柔らかさも形も、全てが最適だ。 足と同様に筋肉と骨盤と脂肪が、見事に噛み合って背部に出ている。 出産育児共に理想的だね。」

「それはそれは……たいへんな好評ですわ……///」

 常日頃、密かに美点と自負している部分を悉く褒めちぎられる。これは嬉しい。ニヤけて止まらなくなる。
 魅力が伝わり、認められ、思われたい印象を持たれている。これを相性と言うのだろう、とセレアは思った。

「さっきの話の続きだが……君は自身を健康優良児と言った。 非礼を承知でお聞きするが、何か感染症に罹ったことは?」

「それが……思い出す限り一度もありません。」

「本当に、一度も?」

「疲労で体調を崩した事はありますが、それも15年ほど前が最後です。」

「…………ますます興味深い。
 たしか、性感染症には完全耐性が有るんだったね?」

「はい。 あぁ、ご安心ください。
 月一回、ちゃんと検査は受けていますので……♡」

「あぁうん、まぁそれは結構なのだが。」

 不衛生に偏った話題を掻き消すように、清楚な愛嬌を込めた笑みを振り撒くセレア。
 しかし、領主はあまり関心が無いようだ。

 娼館の検診はもちろん、自己負担や献血など折を見て頻繁に検査している。
 高級娼婦なので不潔な仕事が回って来ない、というのもあるが、過去20年の性生活で陽性が一度も無いのは密かに自慢に思っていた。

「多方面での君の凄さは……どうにも、淫魔の血脈だけでは説明が付かんね。」

「ンフフ♡ 淫魔の中でもスタイルは良い方ですので……///」

「あぁうむ、それもあるのだが。 ここでの問題は体質だ。」

「体質……ですか?」

 セレアはてっきり、足と尻を見た感想として、淫魔の中でも優れていると賛美されると思っていた。
 だが、領主の分析は全く違う方向性であり――。

「性感染症への強さと、ホルモンの調整。
 一見するととして、ありふれた体質にしか思えない。」

「はい。」

「だが、これが……調が備わっているなら……かなり、話は変わって来る。」

「…………と、言いますと?」

「君は……バイオレット家のご令嬢だね?」

「っ。……はい。」

 種違いの兄弟姉妹の最期が、頭痛として脳裏をかすめた。
 鮮血と炎、暴力の嵐が吹き荒れ、日常を破壊した日の幻が、一瞬よぎって消える。クーデターの記憶だ。

 血の海に自ら潜って死んだフリをし、やり過ごした、あの日。
 捕縛された姉が裸に剥かれ、目前で凄惨なレイプを受け、何処かに連れ去られて行く光景。
 どんな女性だったのか、仲が良かったのかすら思い出せないが、一等星のごとき美貌が恐怖と絶望で歪められたサマだけは、今も鮮明に覚えている。

 去り際に、泡立つピンクの液体を、ふんだんに注射されていた。
 苦しそうに悶えた後、瞳の光がトロンとして、これまでが嘘のように幸せそうに笑う。それが、最後に見た姿。

 姉妹は皆、今も消息が一切不明だ。
 きっと、皆が同じ末路を辿った。それは確信できる。

 ――大丈夫だ、と言い聞かせ、平静を保つ。

「…………いや、まさか。」

「???」

「やはり、何でもない。」

「どういう事です?」

Vにも耐性が有るなんて……流石にそれは有り得ないか……。」

「ぶい?」

「いや、何でもない。 忘れてくれたまえ。」

 忘れろ、と言われると気になる。
 バイオレット家の令嬢だから、一体なんだと言うのか。その真意を聞きたい、と前のめりになる。

 だが、そんな好奇心も、領主が見せたにより、白紙へと返されてしまう。

「それでは……その……次だ……。」

「っ。…………はぃ///」

 セレアは目を背け、首を振り、か細く了承した。

 頬は赤らみ動悸は加速する。
 残る触診は性器と哺乳器、あるいは繁殖器だけ。女性特有のデリケートな部分を、いよいよ差し出すのだ。

(領主様……意外と奥手……。)

 口ごもる様子に、ヴィルの面影を感じる。
 羞恥とは違う、これは遠慮だ。女性への思いやりから来る、紳士的な配慮。

(なら……私から誘わないと……。)

 ――セレアの心に、小悪魔の囁きが宿る。
 淫魔としての本分をカラダが理解するように、全身の緊張が一斉に解れて行く。

「それでは……心ゆくまで、ご堪能ください……♡」

 腕を開き、膝を開き、体全体を開き切る。
 警戒を完全に解き、食べられるのを座して待つ姿勢。
 獲物として殊勝な心と、食べ頃に熟れた豊満な裸を、無防備にアピールする。

 領主の手が、カラダに伸びる。
 セレアは微かに唾を飲み、その侵食を受け入れた――。
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