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第二区画
150. ドワーフの生活
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しばらく歩くとドワーフの集落が見えてきた。しっかりトレント達が守っていたからなのか、特に外から見た感じでは襲撃された様子はない。
俺はトレントを軽く撫でると、嬉しそうに枝を揺らしていた。
「みなさん元気でしたか?」
集落の中では普段の生活を取り戻したのか、ドワーフ達が忙しなく動いていた。
「英雄さん達こんにちは!」
「英雄!?」
俺は近くにいたドワーフに声をかけられて驚いた。いつのまにか英雄と呼ばれていたのだ。
「先輩どうしましたか?」
「いや、ドワーフ達の中で俺らのことが英雄さんって呼ばれているらしいわ」
「ふふふ、英雄か」
なぜか笹寺が鼻の下を掻いて喜んでいる。
「お前は関係ないだろ!」
笹寺よ……ドワーフを助けたのはお前ではないからな。
英雄なのはこの俺様だ!
「今日は何かあったんですか?」
俺達に気づいたのか、ぞろぞろと建物の中からドワーフ達が出てきた。
オークについて情報を集める目的と生活状況を確認するために、集落に寄ることにした。
実際、埋めた実がさらに実をつけて、どうにか食べ物には困らずに生活はできているようだ。
異世界から戻って1週間しか経っていないが、こちらの世界では現実世界よりもまた数日は多く進んでいるようだ。
「そういうことか!」
「うぉ!? ももちゃんどうしたんだ?」
急に桃乃が声を出したため笹寺が隣で驚いていた。
「ひょっとしたらドワーフ達に名前を伝えてないですよね?」
確かに桃乃の言う通り自己紹介をした覚えはない。だから英雄と呼ばれているのかもしれない。
「お前らは自己紹介したのか?」
「あー、俺はドーリさんに誠って伝えてあるぞ?」
「私も女性達になんとなく聞かれたので、伝えてあります」
どうやら自己紹介をしていなかったのは俺だけのようだ。それにしてもみんなのコミュニケーション能力の高さに驚きだ。
一番言葉が理解できる俺が、一番まともに話せていない可能性がある。
そんなことを話しているとドーリが集落から出てきた。鍛治屋をしていたのか、ドーリは汗をタオルで拭いながら歩いてきた。
「英雄さんお久しぶりです」
どうやらドーリにも英雄と呼ばれているらしい。
「お久しぶりです。あのー、その英雄って呼ばれるのは恥ずかしいので、服部か慧って呼んでもらってもいいですか?」
「ははは、私達の英雄には変わりないんですがね」
ひょっとしたら英雄と呼び始めたのは、ドーリがきっかけなのかもしれない。ドワーフの中で一番関わりがあるのも、目の前にいるドーリだ。
「そんな人間でもないですからね。そういえば、あれからオークの侵攻はなかったですか?」
「どうやらトレントのおかげで無事に生活出来ています。ただ、ずっと外に出ずにこのままここにいられるわけでもないですし……」
確かに集落にいれば安全だが、このまま怯えていては前の奴隷生活から抜け出せても、籠の中の鳥と同じようなものだ。
そこで俺は今回のクエスト内容を伝えることにした。
協力してもらえるのなら心強いし、そうでなくても情報が必要になる。
クエスト自体は第一区画でコボルト達に助けてもらっても問題なかったため、ドワーフに手伝ってもらっても変わらないだろう。
俺は話があるとドーリに伝えると、住んでいる家に案内された。
「英雄……慧さんが見えたぞ」
俺がドーリを睨みつけるとすぐに言い直していた。後ろでは言葉がわからないはずなのに、桃乃と笹寺は大人気ないと言っていた。
「慧さん?」
家に入るとそこには女性が二人座っていた。二人とも俺の名前を聞いて誰か分からなさそうであったが、俺の顔を見るとリズウィンはすぐに気づいた。
「英雄さんのお名前って慧さんなんですね」
リズウィンは笑いながら近づいてくる。ああ、どことなく妹と似た姿に、名前を呼ばれると少し懐かしさを感じる。
「えっと……こっちは姉のエルデスです」
「エルデスデス?」
リズウィンの隣にいたのは容姿端麗で、オークの集落で一番オーク達の体液にまみれていた女性だ。
「助けて頂いてありがとうございます。エルデスと申します」
変わった名前だと思っていたが、どうやらエルデスですと言っていたらしい。なんとも紛らわしい。
「おい、この人誰だ?」
それに興味を示したのは笹寺だった。チャラ男はやっぱり美人には目がないのだろう。
「ドーリさんの娘さんらしいよ?」
「そうか」
笹寺は顎に手を置くと黙って何かを考えている。ひょっとして異世界の人に一目惚れしたのだろうか。
恋愛でも何も考えない脳筋スタイルなのか?
「皆さんに椅子を出しなさい」
ドーリに言われリズウィンはすぐに椅子を持ってきた。
俺達はそこに座ることにした。ドワーフ仕様なのか、どことなく小さめだが職人が作った椅子だからなのか座り心地は問題ない。
「それで話とはなんですか?」
「今回俺達はオークジェネラルを倒すこと――」
「なんだって!? それはやめておいた方がいい」
突然の音にみんなびっくりした。ドーリの反応からして、脅威的な存在なのは一瞬で理解できた。
直接オークに襲われていたエルデスさんは後ろで震えており、その体をリズウィンが優しく抱きついている。
「ああ、すまない。リズはエルを部屋に連れてけ」
「ももちゃん少し見てきてもらってもいいかな?」
「わかりました」
リズウィンがエルデスを奥の部屋に連れて行くのに合わせて、桃乃を同行させた。彼女なら回復魔法も使えるし、同じ女性として大丈夫だろう。
「お前はどこに行く気だ?」
そこに笹寺がついて行こうとしていたため、俺は服を引っ張り椅子に座らせた。やはりエルデスに興味があるのだろう。
「取り乱してしまってすみません」
ドーリは頭を下げた。俺は急いで頭をあげるように声をかける。
「やはりオークジェネラルは強いですか?」
「ああ、私達は元々普通の魔物であれば対抗できる手段はあったんです。だが、オークジェネラル……いや彼女の力によって捕まることになったんです」
ドーリはどこか喉の奥から声を出すように、今まで起きた出来事を話し出した。
俺はトレントを軽く撫でると、嬉しそうに枝を揺らしていた。
「みなさん元気でしたか?」
集落の中では普段の生活を取り戻したのか、ドワーフ達が忙しなく動いていた。
「英雄さん達こんにちは!」
「英雄!?」
俺は近くにいたドワーフに声をかけられて驚いた。いつのまにか英雄と呼ばれていたのだ。
「先輩どうしましたか?」
「いや、ドワーフ達の中で俺らのことが英雄さんって呼ばれているらしいわ」
「ふふふ、英雄か」
なぜか笹寺が鼻の下を掻いて喜んでいる。
「お前は関係ないだろ!」
笹寺よ……ドワーフを助けたのはお前ではないからな。
英雄なのはこの俺様だ!
「今日は何かあったんですか?」
俺達に気づいたのか、ぞろぞろと建物の中からドワーフ達が出てきた。
オークについて情報を集める目的と生活状況を確認するために、集落に寄ることにした。
実際、埋めた実がさらに実をつけて、どうにか食べ物には困らずに生活はできているようだ。
異世界から戻って1週間しか経っていないが、こちらの世界では現実世界よりもまた数日は多く進んでいるようだ。
「そういうことか!」
「うぉ!? ももちゃんどうしたんだ?」
急に桃乃が声を出したため笹寺が隣で驚いていた。
「ひょっとしたらドワーフ達に名前を伝えてないですよね?」
確かに桃乃の言う通り自己紹介をした覚えはない。だから英雄と呼ばれているのかもしれない。
「お前らは自己紹介したのか?」
「あー、俺はドーリさんに誠って伝えてあるぞ?」
「私も女性達になんとなく聞かれたので、伝えてあります」
どうやら自己紹介をしていなかったのは俺だけのようだ。それにしてもみんなのコミュニケーション能力の高さに驚きだ。
一番言葉が理解できる俺が、一番まともに話せていない可能性がある。
そんなことを話しているとドーリが集落から出てきた。鍛治屋をしていたのか、ドーリは汗をタオルで拭いながら歩いてきた。
「英雄さんお久しぶりです」
どうやらドーリにも英雄と呼ばれているらしい。
「お久しぶりです。あのー、その英雄って呼ばれるのは恥ずかしいので、服部か慧って呼んでもらってもいいですか?」
「ははは、私達の英雄には変わりないんですがね」
ひょっとしたら英雄と呼び始めたのは、ドーリがきっかけなのかもしれない。ドワーフの中で一番関わりがあるのも、目の前にいるドーリだ。
「そんな人間でもないですからね。そういえば、あれからオークの侵攻はなかったですか?」
「どうやらトレントのおかげで無事に生活出来ています。ただ、ずっと外に出ずにこのままここにいられるわけでもないですし……」
確かに集落にいれば安全だが、このまま怯えていては前の奴隷生活から抜け出せても、籠の中の鳥と同じようなものだ。
そこで俺は今回のクエスト内容を伝えることにした。
協力してもらえるのなら心強いし、そうでなくても情報が必要になる。
クエスト自体は第一区画でコボルト達に助けてもらっても問題なかったため、ドワーフに手伝ってもらっても変わらないだろう。
俺は話があるとドーリに伝えると、住んでいる家に案内された。
「英雄……慧さんが見えたぞ」
俺がドーリを睨みつけるとすぐに言い直していた。後ろでは言葉がわからないはずなのに、桃乃と笹寺は大人気ないと言っていた。
「慧さん?」
家に入るとそこには女性が二人座っていた。二人とも俺の名前を聞いて誰か分からなさそうであったが、俺の顔を見るとリズウィンはすぐに気づいた。
「英雄さんのお名前って慧さんなんですね」
リズウィンは笑いながら近づいてくる。ああ、どことなく妹と似た姿に、名前を呼ばれると少し懐かしさを感じる。
「えっと……こっちは姉のエルデスです」
「エルデスデス?」
リズウィンの隣にいたのは容姿端麗で、オークの集落で一番オーク達の体液にまみれていた女性だ。
「助けて頂いてありがとうございます。エルデスと申します」
変わった名前だと思っていたが、どうやらエルデスですと言っていたらしい。なんとも紛らわしい。
「おい、この人誰だ?」
それに興味を示したのは笹寺だった。チャラ男はやっぱり美人には目がないのだろう。
「ドーリさんの娘さんらしいよ?」
「そうか」
笹寺は顎に手を置くと黙って何かを考えている。ひょっとして異世界の人に一目惚れしたのだろうか。
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「皆さんに椅子を出しなさい」
ドーリに言われリズウィンはすぐに椅子を持ってきた。
俺達はそこに座ることにした。ドワーフ仕様なのか、どことなく小さめだが職人が作った椅子だからなのか座り心地は問題ない。
「それで話とはなんですか?」
「今回俺達はオークジェネラルを倒すこと――」
「なんだって!? それはやめておいた方がいい」
突然の音にみんなびっくりした。ドーリの反応からして、脅威的な存在なのは一瞬で理解できた。
直接オークに襲われていたエルデスさんは後ろで震えており、その体をリズウィンが優しく抱きついている。
「ああ、すまない。リズはエルを部屋に連れてけ」
「ももちゃん少し見てきてもらってもいいかな?」
「わかりました」
リズウィンがエルデスを奥の部屋に連れて行くのに合わせて、桃乃を同行させた。彼女なら回復魔法も使えるし、同じ女性として大丈夫だろう。
「お前はどこに行く気だ?」
そこに笹寺がついて行こうとしていたため、俺は服を引っ張り椅子に座らせた。やはりエルデスに興味があるのだろう。
「取り乱してしまってすみません」
ドーリは頭を下げた。俺は急いで頭をあげるように声をかける。
「やはりオークジェネラルは強いですか?」
「ああ、私達は元々普通の魔物であれば対抗できる手段はあったんです。だが、オークジェネラル……いや彼女の力によって捕まることになったんです」
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