彼に30歳の誕生日に捨てられた平凡OLですが人気俳優の絶倫ダーリンに溺愛されています

人妻あず。

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「まどか。しばらく、俺の部屋から仕事に通って」

 部屋に戻り、並んでソファに腰を下ろした蓮が、珍しく硬い表情で言った。

「まどかのアパート、週刊誌にも載った。セキュリティもないし……正直、今は危ない」
「でも……」

 胸の奥がきゅっと縮む。
「また、撮られたら……」
「もう撮られてる」

 蓮は迷いなく言い切った。
 
「これ以上は変わらない」
 
その声に、かすかな苛立ちと後悔が混じっているのが分かる。
 
蓮は視線を落とし、指先をぎゅっと組んだ。

「……こんなに早く特定されると思わなかった」
「俺が甘かった」
 唇を噛みしめるように続ける。

「怖い思いさせて、ごめん」

「ううん……」
 私は慌てて首を振った。
「私こそ……蓮に迷惑かけちゃって……」

「あれは、まどかが悪いんじゃない」
 蓮ははっきりと否定した。

「俺も、油断してた。それだけだ」

 少し間を置いて、蓮の視線が私の首元に止まる。
「……まどか、首も怪我してる」

「え……?」

 言われて鏡を見ると、鎖骨の近くに小さな擦り傷が残っていた。

「多分……ネックレス、引きちぎられたとき……」

 そう言いながら、私はポケットからそれを取り出す。

「……守れなくて、ごめんなさい」

 両手の上に乗せた無残なネックレスを見て、蓮は一瞬、言葉を失う。
 そして、そっとそれを包み込むように手を伸ばした

「ネックレスは、また買えばいい」
 蓮はきっぱりと言った。

「引きちぎられるのが怖いなら、ピアスでも指輪でもいい。——でもな」 
 一瞬、声が低くなる。

 「まどかを怪我させたやつのことが、俺は一番許せない」

 胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。

「……ううん。何もいらない」  
小さく首を振る。

 「蓮が……別れないって言ってくれただけで、十分だから」

 ポケットから、壊れたネックレスをそっと取り出す。  
 切れたチェーンにぶら下がる、四つ葉のトップ。

「これ、蓮が初めてくれたものだし……思い出だから。このまま、大事にしたい」

「それ、ちょっと貸して」

 蓮は手のひらに受け取ると、照明の下でじっと見つめた。  
 親指でトップをなぞり、チェーンの切れ目を確かめる。

「……切れてるの、チェーンだけだな」
 「え……?」

「多分、店で修理できる」

  顔を上げて、穏やかに言う。 

「一回、持っていってみるよ」
「……本当!?」

 一気に視界がにじむ。
「預からせて」
 「……よかった……」

 張りつめていたものがほどけて、また涙がこぼれた。
「まどか、今日はほんと泣き虫だな」

 苦笑しながら、蓮がティッシュを取って戻ってくる。  
そっと差し出されて、鼻をかむ。

「……だって……」
「はいはい」

 蓮は私の頭を軽く撫でてから、ふと思い出したように言った。

「腹、減ってない?」
 「まどかの好きなもの頼むけど、何がいい?」

「……なんか……あったかいものがいいな」
「じゃあさ」
  
少し考えて、にっと笑う。 

「俺、うどん作ろうか」
「え……蓮、作れるの?」
「任せといて」
 そう言って立ち上がる背中を見ているうちに、  胸の奥に、じわりと温かいものが広がっていった。

 その後は蓮の作ってくれたうどんを食べ、交代でシャワーを浴び蓮のスウェットを着てベッドに横になった。

 蓮が小さい子を寝かしつけるように、ぽんほん、と背中を叩いてくれる。
 蓮の体温。蓮の匂い。蓮のリズム
 その全てに安心した。

「眠れそう?」
「うん……」

 だんだんまぶたが重くなってくる。
「おやすみ、まどか」
 蓮の低い声が優しく響いた。
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