彼に30歳の誕生日に捨てられた平凡OLですが人気俳優の絶倫ダーリンに溺愛されています

人妻あず。

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「まどかちゃん、起きて。着いたよ」

 愛梨さんに肩を揺すられて、はっと目を開けた。

 窓の外に見えたのは、見覚えのあるエントランス。 
 タクシーは、蓮のマンションの前に停まっていた。

 自動ドアをくぐり、エントランスホールへ足を踏み入れる。 

 その応接スペースのソファに——
 蓮がいた。
 (私があげたパーカー、着てくれてる……!)

「まどか!」
「……蓮……」

 名前を呼び合った次の瞬間、距離は一気に詰まった。  

 蓮が駆け寄り、迷いなく私を抱きしめる。
 強くて、あたたかくて、  ふわりと、知っている匂いがした。

(この腕も、この香りも) 
(もう二度と、触れられないと思ってた)

 張りつめていたものが一気に崩れて、 私は声をあげて泣いた。
「蓮っ蓮っ……会いたかった……怖かったあっ……」

「まどか……顔、怪我してる……なんで……」  

指が宙で止まり、触れるのをためらう。 

「他にも痛いところ、ある?」


 答えようとしたけれど、言葉より先に涙が溢れた。

「……とりあえず、家に入ろう」  
誠さんが静かに促す。 
「人目がある」
「ああ……」
 蓮は短く頷き、再び私の肩を抱いた。

「ひとまず、うちでいいな」

 そうして、私たちはエレベーターで誠さんの部屋へ戻った。
 上昇する間も、蓮の腕はずっと離れなかった。 

 泣き止めない私の肩を、逃がさないみたいに支えてくれる。
 部屋に入ると、愛梨さんが手早く動く。

「コーヒーでいいよね」
 テーブルに人数分のカップが並べられる。


「まどか……」  

蓮が改めて私の顔を見る。

 「……顔も、髪も……」
 言葉を失ったように、視線が揺れた。

「会社の……蓮のファンの子にやられたんだって」 

 愛梨さんが淡々と説明する。 

「今日は病院行って、診断書も取ったし、警察にも被害届出してる」


「……」  

蓮の表情が、一瞬で鋭くなった。
何かに耐えるような、そんな表情。


「誠先輩……本当に、ありがとうございます」  

蓮が深く頭を下げた。
「はいはい」 

 誠さんは軽く手を振る。 

「貸し一つな。あとでなんか奢れよ」

 その軽口に、場の空気がほんの少しだけ緩んだ。
 私は、まだ泣き腫れた目で蓮を見上げる。
  ——ちゃんと、ここにいる。 
 それだけで、胸がいっぱいだった。

「……私、帰ります」

 ソファから立ち上がると、部屋の空気が一瞬止まった。

「え?」 

「は?」 

「……なんで?」

 蓮と誠さんと愛梨さんが、ほとんど同時にこちらを見る。 

 全員、状況を飲み込めていない顔だった。

「襲われて、ネックレスも壊されて……」 

 言葉を選びながら、ゆっくり続ける。

「それで……蓮の顔が見たくて、勝手にここまで来ちゃったけど……」  

 喉が、きゅっと締めつけられる。
「これ以上、迷惑かけられないです」
 視線を上げて、蓮を見る。  

胸が痛くて、声が震えそうになるのを必死でこらえた。
「……蓮」  

名前を呼ぶだけで、泣きそうになる。

「さっき……抱きしめてくれて、嬉しかった」 
「それだけで、十分。ありがとう」
 頭を下げかけた、そのとき。

「いやいや」 

「ちょっと待ちなよ」

 誠さんと愛梨さんが、ほぼ同時に声を上げた。

「蓮」  

誠さんが腕を組んで、真顔で問いかける。

 「この子に、“距離を置こう”ってLINE送った?」 
「別れよう、みたいな内容」

「してないです!」
 蓮が即答した。 驚いたように目を見開き、勢いよく首を振る。

「するわけないじゃないですか!」

「だよなあ」  

 誠さんが、にやっと笑う。

「俺がインフルで高熱出してたときさ」 
「『どうやって告白しよう』って、電話で延々ノロケてたもんな」

「え……」

 思わず息を呑む。 

「温泉一緒に行けるのに、なんでまだ告白してないんだよって、俺が突っ込んだんだよ」
 「覚えてるだろ?」 

「……ちょ、ちょっと……!」
 蓮の顔が一気に赤くなる。 

 両手で顔を覆いながら、情けない声を上げた。
「それ、言わない約束じゃ……!」

 その様子があまりに必死で、 張りつめていた胸の奥が、わずかに緩んだ。
 ——じゃあ、あのLINEは。  
 ——あの「距離を置こう」は……?
 
「そう、なの……?」
「だからいったじゃん……寂しい思いもさせちゃうけどちゃんと好きだから安心してって……」

「へぇ~、そうやって告白したんだ」

 愛梨さんがニヤニヤと笑う。

「だって……距離置こう、今までのこと忘れてって」
「そんなの、送ってない。俺が送るわけない」

 蓮はきっぱりと言い切った。

「仲のいい友人の一人って週刊誌にも……」
「そんなの事務所が勝手に出したやつだろ」

誠さんが呆れた声でいう。


「私、蓮と別れなくていいの……?」
へなへなと力が抜け、床に座り込んだ。

「別れたかった?怖い思いさせちゃったもんな」
心配そうに蓮に聞かれて首をブンブン横に振る。

「蓮、お前は今日はまどかちゃん連れて部屋戻りな」

「誠先輩、色々ありがとうございます」

「いいよ。可愛い後輩だ。まどかちゃんも困ったらおい
で。愛梨はわりと家にいるから」 

「はい……ありがとうございます」

蓮は私を立ち上がらせ2人で何度もお辞儀をして、部屋を出た。
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