彼に30歳の誕生日に捨てられた平凡OLですが人気俳優の絶倫ダーリンに溺愛されています

人妻あず。

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「まどかちゃん、ショート似合うね」
 誠さんがケーキを食べながら褒めてくれる。

 結局、あの後2人が来たので家に上がってもらいケーキを4人でつつくことになった。

「まどかちゃん目、赤いけどどうした?泣いたの?」

「あ……」

 愛梨さんの鋭い指摘に思わず言葉が詰まってしまう。

「会社の人から電話が来て、被害届取り下げるように言われたんだ」
 蓮がフォークを強く握りしめた。

「は?なんで会社の人が口出してくんの?」
 愛梨さんが怪訝そうな声で言う。

「その人……暴力ふるってきた人の婚約者で……、お腹の子にも良くないから被害届取り下げてくれって……私にも原因があるからって……」
「まどかに原因なんてない!」
 珍しく苛立った様子の蓮が荒い口調で叫んだ。
「顔も髪も一方的に切られてるんだ。まどかが悪いわけないだろ!」

「落ち着けって蓮、まどかちゃん怖がってるだろ」
 誠さんが窘める。

「酷いこというね、私達は味方だから。被害届絶対下げちゃダメだよ」
 愛梨さんのアドバイスに私は頷いた。


「その会社の人? なんでまどかちゃんの連絡先知ってるんだ? 同じ部署?」

 誠さんの問いに、私は一瞬だけ言葉を探してから、小さく答えた。
「……元カレ」

『はあああ!?』

 誠さんと愛梨さんの声が、見事に重なった。
 蓮はフォークを握ったまま、完全に動きを止めている。

「え、どういう状況それ?」

 愛梨さんが身を乗り出す。

「その人に浮気されて……子どもができたからって振られて……。そのあと、私は蓮と付き合い始めて……」 
 
一息ついて、続ける。 

「……で、その浮気相手の子が、蓮のファンで……」

 話すほどに、自分の声が小さくなっていく。

「なるほどね」  
愛梨さんが額を押さえた。 
「大方その男、“まだ自分のこと好きだろ”って思い込んでるんでしょ。言えば従うって舐めてる」

「そういう男、私いっちばん嫌い」  

 吐き捨てるように言い切る。

「まあ……でも、そんな男と別れられたのは不幸中の幸いだよ」 
 誠さんが苦笑しながらフォローする。

 その中で、蓮だけが私をまっすぐ見つめていた。

「まどか……」  
 低く、慎重な声。 
「今も、そいつのこと……好きなのか?」 

 私は思いきり首を横に振った。

「正直、気持ち悪かった……」 
 声が震える。 

「私が家にいないって分かったら、どこにいるんだって何度も聞いてきて……」

「……ちょっと待って」 
 愛梨さんの顔色が変わる。 

「そいつ、家に来たってこと?」
 その一言で、部屋の空気が一気に張りつめた。

「はい、多分」

「ここに居て、よかったな」
 誠さんがため息まじりに言う。

「家にいたら無理やりヤられてたかも」
 愛梨さんが真剣な表情でいう。

「ヤられてって……」
 蓮が焦った顔をする。

「そういう男はそういうことするよ、経験上」
 愛梨さんはきっぱりと言い切った。

 ケーキを食べ終え、二人が部屋を出ていくと、リビングには私と蓮だけが残った。
 
ドアが閉まった瞬間、蓮は私を後ろから抱きしめる。
 逃がさないみたいに、でも乱暴じゃなく。

「まどか。アパートに行くときは、俺も一緒に行くから」 

 低く、迷いのない声。

「絶対、一人で戻らないで」
 
背中越しに伝わる体温に、胸が痛んだ。

「……うん。ありがとう、蓮」

 ——本当は、分かっていた。

 アパートに戻らなくても、月曜日に出勤すれば、翔太とは顔を合わせることになる。
 それでも、それを口にしたら、蓮の表情が曇る気がして。

 私は、その不安ごと飲み込んだ。

***

 月曜日。

 出勤するとすぐ、私は課長に呼ばれた。

「鈴木さん、顔の怪我……どう?」

 気遣うような声に、私は簡潔に答える。
「縫うほどではないって言われました」

「そう……それはよかった」
 一瞬の沈黙。 

 私は、覚悟を決めて続けた。
「念のため、被害届は出しています。ネックレスも壊されましたし」

「……被害届」

 課長は言葉を失い、しばらく黙り込んだあと、慎重に口を開く。

「正直に言うとね……会社としては、大ごとにはしてほしくなかった」
  一拍置いて、視線を逸らす。
 「でも、鈴木さんの意思なら……仕方ない」

「事後報告になって、すみません」

「いや、それはいい」

 課長は小さく息をつき、声を落とした。

「ここだけの話だけど。三上さんには、退職してもらうつもりだ」
 「本来なら暴力事件で懲戒処分だけど……今なら、表向きは切迫早産を理由にできる」
 「本人にとっても、そのほうがいいだろう」

 私は、何も言えなかった。

「……まあ、そういうことだから」

 話は、それで終わった。
 でも、胸の奥に残った重たい感触は、少しも消えてくれなかった。

 午前中、仕事に集中しようとするたび、どこかから視線を感じた。
ひそひそと交わされる声。目が合うと、さっと逸らされる。
(……気のせい、じゃないよね)
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