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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
二十七話 世界の修復と崩壊(記憶世界)
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「……ちょっとだけ、現実の世界を見せられる力はあったみたい。魂はもうほとんど回復してるね」
モノクロの世界で、私とアキノは二人、色のついた現実の世界を見下ろしていた。
滅茶苦茶に欠け落ちた部屋はこちら側とあちら側の境目のようになっていて、大穴の中に現実世界の映像が映し出されていたのだった。
「ありがと、アキノ。最期にミオくんたちの姿を見れて嬉しかったよ」
「……うん」
本心から答えたのだが、やはり強がっているように思われたのだろう。アキノは悲しそうに眉をひそめる。
「ツキノお姉ちゃんが現世に行けなかった理由は、もう分かってるよね?」
「私は死んだばかりで、おまけに魂も壊れかけてた」
「そして、この世界に連れて来られていたから、だよ」
「……ここって、私の記憶で作られた世界なんだもんね」
「……お姉ちゃんの魂を回復させる世界、だよ」
あまり違いがあるようには聞こえなかったが、アキノはそう訂正する。
それが大事なことなのかは分からないけど、私にとっては小さな差異だ。
「……私の役目も、あともう少しだ」
「うん……ずっと嘘をついて、苦しい思いをさせて、ごめんね」
「いいんだって。もう気持ちの整理はついたんだから。あとは……この魂をお姉ちゃんに与えて、アキノと二人で……一緒に」
アキノと二人、旅立てるのなら怖くはないと思う。
最後に残ったヨウノお姉ちゃんの役にも立てるのだから。
アキノも同じ気持ちでいてくれると思い、彼女の方を見つめたのだが、どうも彼女の表情は晴れなくて。
どうにかその表情を和らげようと、彼女の頭に手を伸ばそうとしたときだった。
「……あのね、ツキノお姉ちゃん――」
アキノが何かを告げようとするのと同時に。
世界は激しい揺れに襲われ、ガラガラと大量の瓦礫が降り注いできたのだった。
「きゃあッ!?」
咄嗟にアキノを押し倒し、瓦礫を躱す。
衝突の危機は回避できたが――今度は総毛立つような悪寒を感じた。
この感覚は……。
「こんなときに……!」
違う、こんなときだからだ。
全ての記憶が戻ろうとする今だからこそ、恐怖もまたその力を増幅させたのだ。
世界の修復と世界の崩壊は紙一重。
私の魂の力が戻るか戻らないかも、紙一重。
ならば、この最後の試練を乗り越えて。
私は完全な魂をヨウノお姉ちゃんに捧げて逝きたい――。
「お姉ちゃん、病室に向かって! 魂の力を奪われる前に……その力で目を覚まさせて!」
「うん!」
アキノの言葉を受けて。
私は全速力で、これまでの旅路を遡り始めた。
モノクロの世界で、私とアキノは二人、色のついた現実の世界を見下ろしていた。
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「……うん」
本心から答えたのだが、やはり強がっているように思われたのだろう。アキノは悲しそうに眉をひそめる。
「ツキノお姉ちゃんが現世に行けなかった理由は、もう分かってるよね?」
「私は死んだばかりで、おまけに魂も壊れかけてた」
「そして、この世界に連れて来られていたから、だよ」
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それが大事なことなのかは分からないけど、私にとっては小さな差異だ。
「……私の役目も、あともう少しだ」
「うん……ずっと嘘をついて、苦しい思いをさせて、ごめんね」
「いいんだって。もう気持ちの整理はついたんだから。あとは……この魂をお姉ちゃんに与えて、アキノと二人で……一緒に」
アキノと二人、旅立てるのなら怖くはないと思う。
最後に残ったヨウノお姉ちゃんの役にも立てるのだから。
アキノも同じ気持ちでいてくれると思い、彼女の方を見つめたのだが、どうも彼女の表情は晴れなくて。
どうにかその表情を和らげようと、彼女の頭に手を伸ばそうとしたときだった。
「……あのね、ツキノお姉ちゃん――」
アキノが何かを告げようとするのと同時に。
世界は激しい揺れに襲われ、ガラガラと大量の瓦礫が降り注いできたのだった。
「きゃあッ!?」
咄嗟にアキノを押し倒し、瓦礫を躱す。
衝突の危機は回避できたが――今度は総毛立つような悪寒を感じた。
この感覚は……。
「こんなときに……!」
違う、こんなときだからだ。
全ての記憶が戻ろうとする今だからこそ、恐怖もまたその力を増幅させたのだ。
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私の魂の力が戻るか戻らないかも、紙一重。
ならば、この最後の試練を乗り越えて。
私は完全な魂をヨウノお姉ちゃんに捧げて逝きたい――。
「お姉ちゃん、病室に向かって! 魂の力を奪われる前に……その力で目を覚まさせて!」
「うん!」
アキノの言葉を受けて。
私は全速力で、これまでの旅路を遡り始めた。
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