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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
三十四話 暗がりの探索(現実世界)
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資料室から抜け出て、僕たちは足音を殺しながらもう一度階段まで向かう。
幸い、この付近には怪物の気配はなかった。
ただ、階段にも血が滴っており、あの怪物が階を移動できるらしいことが分かって恐ろしくなる。
この院内のどこででも、アレに襲われる可能性はあるのだ。
血を踏まないよう注意しつつ、僕たちは階段を上っていく。
普段四階まで上るときでも結構疲れるので、この状況下では肉体的、精神的負担がとても大きかった。
それでもなんとか、五分ほどをかけて四階まで上りきる。
この階には血溜まりがないため、あの怪物が来ていなさそうなのには安心した。
アキノちゃんが眠る病室は、東側一番奥の個室だ。
暗い廊下をゆっくりと進み、僕たちはその扉の前まで辿り着いた。
光井明乃様。名前の書かれた紙が部屋の横に差し込まれている。
何とか……ここまでやって来れた。
「……中に黒木がいるんだろうか」
「分からないわ。急いだ方がいいけれど、水は忘れないで」
「はい、僕が必ずあいつを……鎮めます」
「頼んだ。……行くよ」
スライド式のドアに指をかけ、開こうとする。
しかし――扉は僕たちを通らせてはくれなかった。
「駄目だ、開かない。鍵が掛かってる……!」
「ええ……!?」
ミオくんも試してみるが、やはり施錠の手応え。
「鍵か……ヨウノさんかツキノちゃん、中に入って解錠ってできない?」
「やろうと思ったんだけど……駄目。この中には入れそうにないわ」
これは黒木の妨害なのか、鍵を見つけなければ部屋の中に入ることができなさそうだ。
「どこかに鍵があるのかな……」
「病室の鍵ねえ……ナース室とかにあったりしないかしら」
「ナース室……階段近くにあったね。とりあえず行って探してみようか」
今のここは異空間だ。鍵を拝借させてもらってもバレることはないだろう。
緊急事態だし、とりあえず持ってくるしかない。
怪物が上ってくることには引き続き注意しつつ、僕たちはナース室へ移動した。
患者の呼出に対応する機械が奥にあり、デスクには事務的な書類が大量に積まれていたり、付箋だらけのパソコンがあったり。棚には書籍がずらりと並び、それらは全て難しい医療の書籍だった。
しばらくの間ナース室を手分けして探してみるが、病室の鍵は見当たらない。
鍵箱のようなものは置かれてあったので、普段はここに四階の各病室の鍵はしまわれていそうなのだが……肝心の鍵が入っていない。
そのことに、僕はどうしても作為的なものを感じてしまう。
「全然見つからないね……」
「この空間を作ったのがもしも黒木なら、私たちの邪魔をしてるってことかしら」
「まさか、もう手遅れなんてことは……」
不安げにツキノちゃんが呟くのに、ミオくんは首を振って、
「足止めするってことは、まだアキノちゃんに危害を加えることができないってことじゃないかな」
「ああ、僕もミオくんの意見に賛成だ」
妨害をするということは、そうせざるを得ない理由があるということ。
だからまだ黒木は、アキノちゃんの命を奪うことができていないのだと、信じたい。
まだ、時間はある筈だ。
「鍵を病室の中に持っていかれていたらどうしようもないけれど……一度簡単に院内を回ってみようか。怪しい場所があったら、鍵が無いか探そう」
「そうね。時間はかけてられないけど、怪しい場所がないかどうかくらいは探せる筈だわ。行きましょう」
最悪の場合、扉をぶち破るという手段をとるしかないかもしれない。
それが可能かは分からないが、とにかくまずは院内を調べて回ることにする。
「手分けして探す……?」
「いや、流石に固まっておいた方がいいと思う。あの怪物に一人で遭遇してしまったら危険過ぎるから」
僕たちを発見したときの怪物の動きはそれなりに速かった。全力で逃げれば何とかなるかもしれないが、万が一転んだりしたらおしまいだ。それに、あの怪物以外の脅威がないと決まったわけじゃない。難しい判断ではあるが、全員で行動しておきたい。
まずは四階の西側にある売店に行ってみる。ここも電気は点いていないが、特段いつもと違ったところはない。細かく調べると時間がかかるので、目につくものがなければ別の場所を探しに向かう。
次は三階。こちらも東側は病棟、西側は談話室と別れている。他の病室は全て扉が開いているようだが、怪しげなものは何もなく、談話室もおかしなところはない。あるとすれば、ここにも血が滴っていることか。
曲がり角を出る際に怪物の姿がないかどうか確かめつつ、僕たちは迅速に行動していく。
二階に出たところで、僕たちは明確な異常を見つけた。
恐らくあれは――手術室。二階東側の手術室の扉からだけ、僅かに光が漏れ出ていたのだ。
「……行ってみよう!」
誘われているようにも思えるが、今はその誘いに乗るしかない。
僕たちは四人固まって、手術室へ入っていった。
幸い、この付近には怪物の気配はなかった。
ただ、階段にも血が滴っており、あの怪物が階を移動できるらしいことが分かって恐ろしくなる。
この院内のどこででも、アレに襲われる可能性はあるのだ。
血を踏まないよう注意しつつ、僕たちは階段を上っていく。
普段四階まで上るときでも結構疲れるので、この状況下では肉体的、精神的負担がとても大きかった。
それでもなんとか、五分ほどをかけて四階まで上りきる。
この階には血溜まりがないため、あの怪物が来ていなさそうなのには安心した。
アキノちゃんが眠る病室は、東側一番奥の個室だ。
暗い廊下をゆっくりと進み、僕たちはその扉の前まで辿り着いた。
光井明乃様。名前の書かれた紙が部屋の横に差し込まれている。
何とか……ここまでやって来れた。
「……中に黒木がいるんだろうか」
「分からないわ。急いだ方がいいけれど、水は忘れないで」
「はい、僕が必ずあいつを……鎮めます」
「頼んだ。……行くよ」
スライド式のドアに指をかけ、開こうとする。
しかし――扉は僕たちを通らせてはくれなかった。
「駄目だ、開かない。鍵が掛かってる……!」
「ええ……!?」
ミオくんも試してみるが、やはり施錠の手応え。
「鍵か……ヨウノさんかツキノちゃん、中に入って解錠ってできない?」
「やろうと思ったんだけど……駄目。この中には入れそうにないわ」
これは黒木の妨害なのか、鍵を見つけなければ部屋の中に入ることができなさそうだ。
「どこかに鍵があるのかな……」
「病室の鍵ねえ……ナース室とかにあったりしないかしら」
「ナース室……階段近くにあったね。とりあえず行って探してみようか」
今のここは異空間だ。鍵を拝借させてもらってもバレることはないだろう。
緊急事態だし、とりあえず持ってくるしかない。
怪物が上ってくることには引き続き注意しつつ、僕たちはナース室へ移動した。
患者の呼出に対応する機械が奥にあり、デスクには事務的な書類が大量に積まれていたり、付箋だらけのパソコンがあったり。棚には書籍がずらりと並び、それらは全て難しい医療の書籍だった。
しばらくの間ナース室を手分けして探してみるが、病室の鍵は見当たらない。
鍵箱のようなものは置かれてあったので、普段はここに四階の各病室の鍵はしまわれていそうなのだが……肝心の鍵が入っていない。
そのことに、僕はどうしても作為的なものを感じてしまう。
「全然見つからないね……」
「この空間を作ったのがもしも黒木なら、私たちの邪魔をしてるってことかしら」
「まさか、もう手遅れなんてことは……」
不安げにツキノちゃんが呟くのに、ミオくんは首を振って、
「足止めするってことは、まだアキノちゃんに危害を加えることができないってことじゃないかな」
「ああ、僕もミオくんの意見に賛成だ」
妨害をするということは、そうせざるを得ない理由があるということ。
だからまだ黒木は、アキノちゃんの命を奪うことができていないのだと、信じたい。
まだ、時間はある筈だ。
「鍵を病室の中に持っていかれていたらどうしようもないけれど……一度簡単に院内を回ってみようか。怪しい場所があったら、鍵が無いか探そう」
「そうね。時間はかけてられないけど、怪しい場所がないかどうかくらいは探せる筈だわ。行きましょう」
最悪の場合、扉をぶち破るという手段をとるしかないかもしれない。
それが可能かは分からないが、とにかくまずは院内を調べて回ることにする。
「手分けして探す……?」
「いや、流石に固まっておいた方がいいと思う。あの怪物に一人で遭遇してしまったら危険過ぎるから」
僕たちを発見したときの怪物の動きはそれなりに速かった。全力で逃げれば何とかなるかもしれないが、万が一転んだりしたらおしまいだ。それに、あの怪物以外の脅威がないと決まったわけじゃない。難しい判断ではあるが、全員で行動しておきたい。
まずは四階の西側にある売店に行ってみる。ここも電気は点いていないが、特段いつもと違ったところはない。細かく調べると時間がかかるので、目につくものがなければ別の場所を探しに向かう。
次は三階。こちらも東側は病棟、西側は談話室と別れている。他の病室は全て扉が開いているようだが、怪しげなものは何もなく、談話室もおかしなところはない。あるとすれば、ここにも血が滴っていることか。
曲がり角を出る際に怪物の姿がないかどうか確かめつつ、僕たちは迅速に行動していく。
二階に出たところで、僕たちは明確な異常を見つけた。
恐らくあれは――手術室。二階東側の手術室の扉からだけ、僅かに光が漏れ出ていたのだ。
「……行ってみよう!」
誘われているようにも思えるが、今はその誘いに乗るしかない。
僕たちは四人固まって、手術室へ入っていった。
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