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最終部【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
三十四話 「お互い頑張ろうぜ!」
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光井家を出たところで、一同は儀式を行った時と同じように円陣を作る。
そこで、これからの作戦について簡単におさらいした。
「波出家は町の中心部にある。霧夏邸へ向かう道と、途中までは一緒だ。建物は大きいし、すぐ分かるはず」
「迷うことはないでしょうけど、道中悪霊に襲われないよう、注意しましょうね」
未だ悪霊たちは町内を彷徨っている。この空間の暴走が止まらない限り、悪霊たちも消えないだろう。
暴走の元となる霊が、儀式で呼び戻したマモルとテラスだというのは間違いない。なので、町を元に戻すには彼ら二人を浄化する必要があるわけだ。
「これだけ大規模な霊空間が、あっさり消えるという保証もないよなあ……」
夜空を見上げ、マスミは独り言ちる。
悪霊には常に注意しておく必要がありそうだ、と思いながら。
「あ、そうそう。流刻園で、念のためにあれを汲んできたんだけど――」
ミオがそう言って、懐から何かを取り出そうとしたとき。
ふいに世界が赤と黒に点滅を繰り返した。
この現象を、一同は過去の体験からよく理解していた。
これは――危険な予兆である、と。
「まずいぞ!」
ミツヤが叫ぶのとほぼ同時に、黒い霧のようなものが彼らの前に集まってくる。
それは二つの人型を形作っていった。
「こ、この二人は……」
「風見照と……波出守……?」
マスミの言う通り、二人の悪霊はマモルとテラスのように思われた。当然ながら全員、二人の生前の姿などは知らないが、他とは雰囲気の違う悪霊であること、二人同時に術者であるマスミたちの元へ来たことなどから類推したのだ。
「まさかこんなときに出てくるなんて……」
「気配を嗅ぎ付けられたのかも……!」
彷徨う悪霊は、生者に対し攻撃的となる。マスミたちが狙われるのはどうしようもないことだ。
急ぐしかない。マスミは波出家まで全力で逃げ延びるしかないかと覚悟し、全員に指示しようとした。
――しかし。
「ミツヤくん!」
隊列から突然飛び出したのは、ミツヤとハルナだった。二人はマモルとテラスの霊の注意を引き付けるように動き、
「こいつらは引き受けた! そっちは頼む!」
「で、でも――」
「私たちなら大丈夫!」
根拠は何もない。だが、決断を迷っていれば事態はただ悪化するばかりだ。
ここは二人を信じるのが、最善の選択だろうとマスミは決断した。
「それよりミオ、清めの水を!」
「あ、うん!」
ミツヤに求められ、ミオは先ほど取り出しかけた瓶を取り出す。
流刻園の地下室で汲んできた清めの水だ。
瓶を放ると、ミツヤは見事にそれをキャッチし礼を告げる。
「サンキュ! じゃあ、お互い頑張ろうぜ!」
「……任せたよ!」
そうして彼らは二手に分かれ、ミツヤたちは墓地を、マスミたちは波出家を目指し駆け出すのだった。
そこで、これからの作戦について簡単におさらいした。
「波出家は町の中心部にある。霧夏邸へ向かう道と、途中までは一緒だ。建物は大きいし、すぐ分かるはず」
「迷うことはないでしょうけど、道中悪霊に襲われないよう、注意しましょうね」
未だ悪霊たちは町内を彷徨っている。この空間の暴走が止まらない限り、悪霊たちも消えないだろう。
暴走の元となる霊が、儀式で呼び戻したマモルとテラスだというのは間違いない。なので、町を元に戻すには彼ら二人を浄化する必要があるわけだ。
「これだけ大規模な霊空間が、あっさり消えるという保証もないよなあ……」
夜空を見上げ、マスミは独り言ちる。
悪霊には常に注意しておく必要がありそうだ、と思いながら。
「あ、そうそう。流刻園で、念のためにあれを汲んできたんだけど――」
ミオがそう言って、懐から何かを取り出そうとしたとき。
ふいに世界が赤と黒に点滅を繰り返した。
この現象を、一同は過去の体験からよく理解していた。
これは――危険な予兆である、と。
「まずいぞ!」
ミツヤが叫ぶのとほぼ同時に、黒い霧のようなものが彼らの前に集まってくる。
それは二つの人型を形作っていった。
「こ、この二人は……」
「風見照と……波出守……?」
マスミの言う通り、二人の悪霊はマモルとテラスのように思われた。当然ながら全員、二人の生前の姿などは知らないが、他とは雰囲気の違う悪霊であること、二人同時に術者であるマスミたちの元へ来たことなどから類推したのだ。
「まさかこんなときに出てくるなんて……」
「気配を嗅ぎ付けられたのかも……!」
彷徨う悪霊は、生者に対し攻撃的となる。マスミたちが狙われるのはどうしようもないことだ。
急ぐしかない。マスミは波出家まで全力で逃げ延びるしかないかと覚悟し、全員に指示しようとした。
――しかし。
「ミツヤくん!」
隊列から突然飛び出したのは、ミツヤとハルナだった。二人はマモルとテラスの霊の注意を引き付けるように動き、
「こいつらは引き受けた! そっちは頼む!」
「で、でも――」
「私たちなら大丈夫!」
根拠は何もない。だが、決断を迷っていれば事態はただ悪化するばかりだ。
ここは二人を信じるのが、最善の選択だろうとマスミは決断した。
「それよりミオ、清めの水を!」
「あ、うん!」
ミツヤに求められ、ミオは先ほど取り出しかけた瓶を取り出す。
流刻園の地下室で汲んできた清めの水だ。
瓶を放ると、ミツヤは見事にそれをキャッチし礼を告げる。
「サンキュ! じゃあ、お互い頑張ろうぜ!」
「……任せたよ!」
そうして彼らは二手に分かれ、ミツヤたちは墓地を、マスミたちは波出家を目指し駆け出すのだった。
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