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選ばれた聖女候補。その名は‥‥‥青ブタ!?
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「くだらん女がいいな‥‥‥」
春も近付いた十二歳の誕生日を迎えたその朝、ウィンダミア帝国の若き次期皇帝たるレオン皇太子はそう呟いた。
「はっ‥‥‥??」
お付きの帝国騎士ゲイルはその意味がわからず思わず聞き返してしまう。
今日は殿下のめでたい喜ばしい日だと言うのに。
ため息をついて言うほどのことなのか?
彼は首を傾げた。
「くだらん女とは、具体的にはなにを言われたいのですか殿下?」
その問いかけに、皇族以外は人間だと思っていないレオンはアホだなお前は。
ゲイルを頭から小馬鹿にして、せせら笑っていた。
このクソガキ!!
許されるならその歯がすべて叩き折れるほどに殴りつけてやるものを‥‥‥
そんな怒りを毎度のごとく抑えながら、ゲイルは作り笑いを浮かべた。
「はあ、まあそうもしれません。
殿下ほど聡明な御方はおられませんから」
あくまでお世辞なのにーー
この皇太子は当たり前だろう、それが僕だ。
そう言い放つのがまた、腹が立つ。
「いいか、この帝国は東に竜族、北にハイエルフ。
中身は亜人どもが大半と人間だ。
それでも平和があるのは、最高神エリアルの聖女がーー
そう、皇妃になるからだ。
その程度の知識も無いのか、帝国騎士のクセに?」
「左様でございますな、殿下。
皇妃様は歴代、聖女を兼任されて参りました」
「違う!!
この愚か者!!」
「はあ‥‥‥???」
「聖女が皇妃を兼任して来たのだ。
それもすべて、皇帝の庇護があればこそ、だ。
皇妃など皇帝の奴隷にすぎん。
我が母上も似たり寄ったりだ。
聖女にしか価値はないのだからな」
いやーレオン様。
俺はあんたが泣き叫んで平伏すまで、その腹に蹴りをくれてやりたいわ。
いつぶち切れてこの剣でぶったぎってやろうかな‥‥‥
ゲイルは常にそう思うようになっていた。
それは彼だけでなくーー周囲の家臣や貴族たちもまた、そう思うようになっていた。
「それで、殿下。
くだらん女がいいと言われるのは、まさかのーー」
「なんだ、お前も少しは頭が回るじゃないか。
今は四人だったな?」
今夜の誕生祝いの席で聖女候補は四人。
挨拶に来ることになっていた。
「ああ、そうですね。
クルード公爵令嬢アリス様。
レイルド侯爵令嬢モニカ様。
サイダル侯爵令嬢エリーゼ様。
ビロウ子爵令嬢アンリエッタ様。
以上、四名でございます」
こんなバカ皇太子が四人も皇妃候補を選ぶなど、神はなにか間違えておられるのではないか?
ゲイルは常にそう思いながら心の中で深いため息をつく。
レオンはそんな護衛の心中を知ってか知らずか、面白そうにほくそ笑んでいた。
この皇太子殿下は他人を小馬鹿にして、その人間が恨みを募らせていく様を楽しんでいるのだ。
悲惨ないじめ、超ブラック企業も真っ青のパワハラだった。
「おい、ゲイル」
いいことを思いついた。
そうレオンは顔を輝かせて言う。
「なんでございましょうか、殿下」
「お前が選べ」
「はあーーーーー???!!
いえ、そのーーそんなことはっーーー!!??」
「選べ、いいな。
もし、その女が聖女になれば褒美をやる。
駄目な時はーー」
ゴクリ、とゲイルはつばを飲んだ。
この言い回しはまさかのーー
「一族郎党、縛り首だ。
いいな」
ゲイルの顔は真っ青になった。
一気に髪が白くなったかと思うほどに寒気が、悪寒が全身を走り抜ける。
生き延びなくてはーー
側近は、この時から暗躍を始めた。
誕生パーティーのその夜。
多くの貴族が集まり、中には各国の大使、王族や貴族も招かれている。
そんな中に注目を浴びる少女が四人。
「あれが噂の‥‥‥。
次期皇妃様候補たちですかーー
クルード公爵令嬢アリス様。
レイルド侯爵令嬢モニカ様。
サイダル侯爵令嬢エリーゼ様。
ビロウ子爵令嬢アンリエッタ様。
どの御方も可愛らしい‥‥‥いや、お一人は‥‥‥」
そう、どの貴賓も目を背けるようにして見てしまう少女が一人。
レイルド侯爵令嬢モニカである。
まるで子豚のようにその手に、各種料理が盛られた大皿を持ち、各料理を集めるとーー
彼女は床にそれを置いて、座り込み、手づかみで食べていた。
「あのような下賤なやからのするような。
まるで乞食ではないか。
その上、あの体型。
本当にーー」
丸々と太った子豚の様。
そう誰もがせせら笑い、嘲笑うなか少女はそれを見ては不敵に笑っていた。
(みなさま、本当におバカですこと。
これが一番、安全なんですわよ)
と。
歴代皇妃が、候補から皇妃になるまでの間に行われてきた、血塗られた歴史。
幼い少女はそれを知り、自ら愚か者を演じていた。
『聖女』になるために。
(あのレオン殿下は醜悪なオニのような冷酷無比な御方。
愚か者が一番いいのよ。
もうーー逃げれないのだから)
一度、聖女候補に選ばれたらそこからの辞退は許されない。
それが聖女存続に関わるからだ。
だれもを蹴落として這い上がってやるわ。
そして、生き残るのよ。
子豚はそう考えて必死に食事にがっついていた。
それに引き換え、エリーゼとアンリエッタはそれぞれ、白と黒の薔薇。
そう呼ばれるほどに美しい銀髪と艶やかな黒髪を更にドレスと髪飾りで着飾り、レオンの気を引こうと懸命にアタックを開始していた。
(ああ、めんどくさい。
お前たちのような、外見だけにこだわる女など、どこにでもいるのだ!!)
とりあえず、候補はあの子豚。
青い髪だから青ブタとでも呼ぶか。
そしてー‥‥‥なんだ、あの女は?
痴呆症か?
挨拶にもこず、ただ会場をウロウロとしている。
まるで僕など、眼中にないように見える。
「まあ、金の髪だ。
死人のようにさまよっているし、レイス。
生霊とでも呼んでやるか」
この時、アリスは護衛のブラッドの言いつけでそこかしこのテーブルに、父親の代理としてあいさつに回っていたのだった。
皇太子殿下のお側には、他の候補の方々がいらっしゃる。
自分はお邪魔をしてはいけない。
そう思い、近寄るのを控えていたのだ。
青ブタとレイス。
白と黒の薔薇。
皮肉にも、この夜に皇妃候補決定戦のレースの幕が上がったのだった。
そして、この時。
皇妃候補を選べと言われたゲイルが選んだのはもちろん、青ブタ。
それ一択だった。
春も近付いた十二歳の誕生日を迎えたその朝、ウィンダミア帝国の若き次期皇帝たるレオン皇太子はそう呟いた。
「はっ‥‥‥??」
お付きの帝国騎士ゲイルはその意味がわからず思わず聞き返してしまう。
今日は殿下のめでたい喜ばしい日だと言うのに。
ため息をついて言うほどのことなのか?
彼は首を傾げた。
「くだらん女とは、具体的にはなにを言われたいのですか殿下?」
その問いかけに、皇族以外は人間だと思っていないレオンはアホだなお前は。
ゲイルを頭から小馬鹿にして、せせら笑っていた。
このクソガキ!!
許されるならその歯がすべて叩き折れるほどに殴りつけてやるものを‥‥‥
そんな怒りを毎度のごとく抑えながら、ゲイルは作り笑いを浮かべた。
「はあ、まあそうもしれません。
殿下ほど聡明な御方はおられませんから」
あくまでお世辞なのにーー
この皇太子は当たり前だろう、それが僕だ。
そう言い放つのがまた、腹が立つ。
「いいか、この帝国は東に竜族、北にハイエルフ。
中身は亜人どもが大半と人間だ。
それでも平和があるのは、最高神エリアルの聖女がーー
そう、皇妃になるからだ。
その程度の知識も無いのか、帝国騎士のクセに?」
「左様でございますな、殿下。
皇妃様は歴代、聖女を兼任されて参りました」
「違う!!
この愚か者!!」
「はあ‥‥‥???」
「聖女が皇妃を兼任して来たのだ。
それもすべて、皇帝の庇護があればこそ、だ。
皇妃など皇帝の奴隷にすぎん。
我が母上も似たり寄ったりだ。
聖女にしか価値はないのだからな」
いやーレオン様。
俺はあんたが泣き叫んで平伏すまで、その腹に蹴りをくれてやりたいわ。
いつぶち切れてこの剣でぶったぎってやろうかな‥‥‥
ゲイルは常にそう思うようになっていた。
それは彼だけでなくーー周囲の家臣や貴族たちもまた、そう思うようになっていた。
「それで、殿下。
くだらん女がいいと言われるのは、まさかのーー」
「なんだ、お前も少しは頭が回るじゃないか。
今は四人だったな?」
今夜の誕生祝いの席で聖女候補は四人。
挨拶に来ることになっていた。
「ああ、そうですね。
クルード公爵令嬢アリス様。
レイルド侯爵令嬢モニカ様。
サイダル侯爵令嬢エリーゼ様。
ビロウ子爵令嬢アンリエッタ様。
以上、四名でございます」
こんなバカ皇太子が四人も皇妃候補を選ぶなど、神はなにか間違えておられるのではないか?
ゲイルは常にそう思いながら心の中で深いため息をつく。
レオンはそんな護衛の心中を知ってか知らずか、面白そうにほくそ笑んでいた。
この皇太子殿下は他人を小馬鹿にして、その人間が恨みを募らせていく様を楽しんでいるのだ。
悲惨ないじめ、超ブラック企業も真っ青のパワハラだった。
「おい、ゲイル」
いいことを思いついた。
そうレオンは顔を輝かせて言う。
「なんでございましょうか、殿下」
「お前が選べ」
「はあーーーーー???!!
いえ、そのーーそんなことはっーーー!!??」
「選べ、いいな。
もし、その女が聖女になれば褒美をやる。
駄目な時はーー」
ゴクリ、とゲイルはつばを飲んだ。
この言い回しはまさかのーー
「一族郎党、縛り首だ。
いいな」
ゲイルの顔は真っ青になった。
一気に髪が白くなったかと思うほどに寒気が、悪寒が全身を走り抜ける。
生き延びなくてはーー
側近は、この時から暗躍を始めた。
誕生パーティーのその夜。
多くの貴族が集まり、中には各国の大使、王族や貴族も招かれている。
そんな中に注目を浴びる少女が四人。
「あれが噂の‥‥‥。
次期皇妃様候補たちですかーー
クルード公爵令嬢アリス様。
レイルド侯爵令嬢モニカ様。
サイダル侯爵令嬢エリーゼ様。
ビロウ子爵令嬢アンリエッタ様。
どの御方も可愛らしい‥‥‥いや、お一人は‥‥‥」
そう、どの貴賓も目を背けるようにして見てしまう少女が一人。
レイルド侯爵令嬢モニカである。
まるで子豚のようにその手に、各種料理が盛られた大皿を持ち、各料理を集めるとーー
彼女は床にそれを置いて、座り込み、手づかみで食べていた。
「あのような下賤なやからのするような。
まるで乞食ではないか。
その上、あの体型。
本当にーー」
丸々と太った子豚の様。
そう誰もがせせら笑い、嘲笑うなか少女はそれを見ては不敵に笑っていた。
(みなさま、本当におバカですこと。
これが一番、安全なんですわよ)
と。
歴代皇妃が、候補から皇妃になるまでの間に行われてきた、血塗られた歴史。
幼い少女はそれを知り、自ら愚か者を演じていた。
『聖女』になるために。
(あのレオン殿下は醜悪なオニのような冷酷無比な御方。
愚か者が一番いいのよ。
もうーー逃げれないのだから)
一度、聖女候補に選ばれたらそこからの辞退は許されない。
それが聖女存続に関わるからだ。
だれもを蹴落として這い上がってやるわ。
そして、生き残るのよ。
子豚はそう考えて必死に食事にがっついていた。
それに引き換え、エリーゼとアンリエッタはそれぞれ、白と黒の薔薇。
そう呼ばれるほどに美しい銀髪と艶やかな黒髪を更にドレスと髪飾りで着飾り、レオンの気を引こうと懸命にアタックを開始していた。
(ああ、めんどくさい。
お前たちのような、外見だけにこだわる女など、どこにでもいるのだ!!)
とりあえず、候補はあの子豚。
青い髪だから青ブタとでも呼ぶか。
そしてー‥‥‥なんだ、あの女は?
痴呆症か?
挨拶にもこず、ただ会場をウロウロとしている。
まるで僕など、眼中にないように見える。
「まあ、金の髪だ。
死人のようにさまよっているし、レイス。
生霊とでも呼んでやるか」
この時、アリスは護衛のブラッドの言いつけでそこかしこのテーブルに、父親の代理としてあいさつに回っていたのだった。
皇太子殿下のお側には、他の候補の方々がいらっしゃる。
自分はお邪魔をしてはいけない。
そう思い、近寄るのを控えていたのだ。
青ブタとレイス。
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