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首輪とリードと二人の奴隷姫
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「えー‥‥‥っと」
と、あれから数日経過したある日。
ゆきはとある難題に直面していた。
目の前には二人の少女がいる。
人間の少女、リオとエルフの少女、イライア。
問題なのは、その格好だ。
二人とも、大型犬用の首輪を指が入る隙間がないほどに締めあげて首に装着し、その下には革製のーー
ビキニなどで普段覆う部分が逆になった革製の拘束具とでもいうのだろうか?
お揃いの赤い革製のものを身に着けている。
乳房には、いや乳首には二人とも前の御主人様によるものだろう。
ビアスだの、鈴だのといった装飾品が嵌められていてーー
もちろん、それは性器にも、秘部と呼ぶべき部分にも開けられており。
それぞれは薄い銀色の鎖で首輪を通してーー
舌と鼻輪とでもいうべき、部分で止められている。
「それは、なんの恰好?
リオにイライア???」
訳がわからないゆきは質問してみる。
「はい、御主人様。
お散歩の、正装具ですわ」
と、イライアが自身の身体の隅々につけられたピアスだの、入れ墨を誇らしげにゆきにみせる。
「散歩って‥‥‥」
鼻輪ってまるで、牛みたいじゃない。
いや、それよりも。
二人がしている格好だ。
犬が、エサをもらうときに躾けられる、チ〇チ〇のようなー。
そんな恰好で、待機している。
その手にそれぞれ、赤と青のリードを掲げて。
嬉しそうに、舌を垂らして‥‥‥まあ、これは鼻輪と首輪の間に舌に開けられた円形のピアスの穴を鎖が通っているからそうなるのだが。
まさか、その恰好で外に出たい?
まるで、普通のペットの犬が、外出を御主人様にねだるように???
見ると、診療所内の他の5人の女奴隷たちが羨ましそうに、そこにかしずく二匹もとい、二人の性奴隷を羨ましそうに見ている。
--狂ってる。
その一言を出せればどれだけ楽になれたか。
しかし、この二匹を購入したのは私なんだしーー
と、そこでゆきは気づく。
二匹?
いま私、そう考えた?
人間ではないと、認識しはじめている‥‥‥
「ははーー
後戻りできないか‥‥‥」
誰にも聞こえないように心中で呟くが、目の前の光景は変わらない。
「よしよし。
どうしたの、リオ、イライア。
二人でお揃いにしたの?」
と、二匹を撫でてやる。
頭ではなくーー
待てと言われているその姿勢だけで、濡らしているそのしたの口を。
「あーらら、そんな我慢できないの?
誰がそんなにしていいっていったかな?」
と、優しく。
それを二人に舐めとらせる。
「申し訳ございません、御主人様」
「お許しください、御主人様‥‥‥」
言葉的には、リオはまだ抑制が効いている。
それは躾けができているということではない気がゆきにはした。
まだ、ゆきに対する不安・焦燥・怒り。
そういうったものが心の壁になっているのだろう。
それに対してイライアはもう、壊れている。
心のタガを簡単に外してしまっている。
半々なら、あなたたちもつり合いが取れるのにねーー
そう、ゆきは思ってしまう。
前回、診療所を後にしてから週に二回。
ゆきはここを訪れている。
それは本業である診療所の休みであったり、オークションが開かれる前後の夜半であったり。
まあ、ここ数回は大した患者もおらず。
イライアの脳内から出る快楽物質的なものをどうすれば抑制できるか。
それに伴う、現行医療の範囲内での治療行為。
それがどれほどの効果を及ぼすか。
まあ、そんなところを緩やかに診ていたわけだが。
どうやら、奴隷たちには我慢できない限界というものがあるらしい。
それまで躾けられ、調教されてきた果ての性奴隷という名前の玩具。
ある意味の芸術作品。
その限界の一つが、定期的な主人との会話。
そういうことなのだろう。
しかし、イライアはともかくとしてーー
「リオ」
「はい、御主人様!」
と、黒髪の性奴隷は元気よく返事をかえす。
どうもこの子だけは、まだ私を主と認めてないみたいだし。
とゆきは思い、
「あんたは今日からしばらく、奴隷以下のメス豚になりなさい」
「え……」
と、リオの顔が青ざめる。
それは則ちーー
この診療所での最下層へ堕とされたに等しいからだ。
「えーと、あんた。
名前」
とゆきは、左隅で控えているリオより少しばかり年長の少女を呼ぶ。
「は、はい!
さやか、でございます、御主人様」
「ふーん‥‥‥」
こっちにおいで、と手招きすると、何一つ羽織るものを与えられていない奴隷たちが少しばかり気の毒になった。
「あんたは?」
さやかの隣にいた、二十歳前後の奴隷を指差す。
「みきです、御主人様」
「ならーみき。
白石のとこでもどこでもいいわ。
せめて、看護師が着る‥‥‥ああ、それじゃだめね。
どうせ、あんたたち濡らすんだし。
ナース服でもなんでもいいわ。
なんか貰って来なさい。ここにいる6人分、ね」
え?
とみきが不思議そうな顔をする。
「7人ではなくて、ですか?」
と、まさか、とリオにみきは視線がいってしまう。
「メス豚に服なんていらないでしょ?
返事は?」
「はっ、はい。
ただいまーー」
「ふん。
まあ、診療所ぽくはなったわね。
さて、イライアとリオか。
まだ先程の態勢のまま、1時間近く耐えて姿勢を崩さないその調教の成果は大したものだけどーー
「さやか、散歩ってどうやるの?」
「そ、それはーー」
とリオが口を出す。
「あんたには聞いてないわよ、メス豚」
と、乳首をつねりあげると、リオはうううっと苦悶の声を上げた。
「と、取れます、お、お許しをーー」
そう。
ゆきは、乳首に繋がるピアスの先端を捻り上げていた。
「ふーん。
それくらいで千切れるのか試すのも、いいかもね?
メス豚なら家畜だし。
いつ、処分してもーー」
ねえ?
と、リオに微笑みかけてやる。
その途端、リオの脳裏にあの光景がよみがえる。
愛していると囁いてくれた、生涯傍においてくれると約束してくれたーー
あの優しかった御主人様の。
廃棄してくれ。
その一言を聞いた瞬間の、この世の絶望を味わったあの瞬間。
「あ‥‥‥ああーーっ」
涙が溢れて止まらない。
なぜだろう、新しい御主人様はそこにいるのに。
受け入れてくれたはずなのに。
「どうしたの、リオ?
メス豚に泣くことを許した覚えはないよ?」
ここまで追い込む必要があるのか。
どこで止めるべきなのか。
踏み込むならば、どこまでこの子を受けとめてやるべきなのか。
ある種の賭けを、ゆきはしていた。
ここでリオがゆきを拒んで死を選ぼうとするなら、まだこの子は死への渇望を抱いている。
そうなれば、適当にしか歩めないだろう。
でももし、そうでないならばーー
「御主人様ーー」
奴隷が主人に命じられた態勢を許可なく変えることは許されない。
それは、ここにいる奴隷たちの共通認識だった。
しかしーー
「はむ‥‥‥はうーー‥‥‥っ」
リオは自ら姿勢を崩し、這いつくばり、そしてーー
「そんなに美味しいの?
私の靴は、ねえ、リオ?」
一心不乱に、ゆきのヒールを、少しだけ上に浮かせてやればその底を。
口先だけでヒールを脱がせてその指先まで。
許可かどうとか、命令がどうとか。
そういうレベルではない行動。
生きたいという渇望。
それをすることしか知らない、奴隷として所有されることしか知らない一人の少女の。
懸命な命がけの命乞い。
それが、この行為なのだろう。
ゆきは黙って、リオが足底全てを舐め終わるまで待つ。
この少女はまだ生きたいのだ、そういう確信を抱きながら。
「リオ、もういいわ。
でも、しばらくはメス豚でいなさい」
「そんな‥‥‥」
「命令よ。
あなたは今まで誰かに命じる。
そういった奴隷だけど、少し上の立場にいた。
言ったわよね?
白石にも、自分から申し出たって」
「は、はい‥‥‥」
「そういう使える、考える奴隷だったのに。
何なの? その醜態は?
主人の許可なく命じられたこと以上をする奴隷って、奴隷なの?
ねえ、リオ。
そういうのって、考える奴隷って何ていうのかな?」
と、ゆきは態勢を変えないイライアの頭を、よしよしと撫でてやる。
「ねえ、リオ。
これが、奴隷、なんじゃないの?
主人に廃棄と言われたから、自分で死を選ぶ?
主人から命令された訳でもなく、他人からの伝聞だけで死を選ぶ?
死への恐怖から、勝手に態勢を変えて這いつくばる?
それって、なんていうのかな?
ねえ、思うままに言ってみなさい。
なんて言うの?
自分で考えて、決めて、動く。
主人の意思を尊重してるだけで、自分の生き方を決める。
そんな自由手放さないあなたをなんて言うのかな?」
「そ、それはー……」
わからない?
なら、教えてあげる。
そうゆきは言い、リオの首輪に繋がるリードを引き上げる。
「あぐっ‥‥‥」
気道を締め上げられてリオは苦悶の声を漏らす。
「それをね、人間、っていうのよ、リオ」
診療所に沈黙が走ったーー
「じゃあ、もう一度聞くけど」
リオのリードを手から離し、イライアと同じ姿勢を取らせてゆきはリオに尋ねる。
「お前は、誰の、何で、どういう存在、なの?」
よく考えて返事しなさい。
人間でいたいなら、無理強いはしないわ。
そうゆきは続けて言う。
リオは伏せていた顔を上げーー
ゆきを見据えて。
「リオはゆき様の、御主人様の所有物です。
御主人様のために全てを捧げる、いやらしいメスですーー。
‥‥‥家畜です。メス豚リオです‥‥‥御主人様」
「そう。
まあ、誓いの言葉よりも、あなたとは長いつきあいで証明してもらわなきゃね。
ここにいる全員、私の所有物なんだから‥‥‥」
ああ、因業だ。
どうしようもないほどに、私は悪魔になっていくんだろう。
救える命、か。
この7人を買い取り、命を出来るだけ長らえさせるだけで。
その償いはできるのだろうか。
ため息よりも、まずは行動かな。
「で、散歩ってどうやるの?」
行きたいんでしょ?
それも全員。
そんな顔を見渡す限りの奴隷たちがしている。
「はあ……。
大型犬7頭なんて、私、散歩させたことないんだけどなあ……」
手足を特別製の肘を折り曲げた状態・膝を折り曲げた状態で均等に四肢を縛る拘束具を全員につけてやる。
というか、それは付けさせたのだが。
そうして、四肢のバランスが一定になるように、その拘束具の根元にはクッション付きの人工の脚、いや蹄(ひづめ)がつけられている。
そのまま、手足を動かせばまるで犬や猫のように動ける仕組みだ。
「ほーら、さやか!
勝手に先にいかない!」
7本のリードの先にはそうした拘束具で飾られ、口に馬ようのハミのような物を噛まされた奴隷たちが歩いている。
「血流も考えたら、せいぜい1時間がいいとこ、かな。
でもねえ……」
手綱には首輪からだけでなく、秘部のクリトリスにつけられたピアスから繋がれた鎖だの、アヌスに入れられ、釣り針の先が丸くなったもので、逆の持ち手の突起部分には大きく輪がつけられ、そこに髪を結わえることで内臓から操作できるものからも。何種類かの鎖が繋がれている。
それを引くたびに、メス犬たちが嬉しそうな、苦しそうな悶える声を上げて散歩が続く。
「はあ……。
これ、ビルの屋上じゃなきゃ無理よね。
この子達、そのうち、夜間の公園とか言い出したりーー」
その単語が耳に入ったのだろう。
リオが目を輝かせてこちらを見る。
「ほら、メス豚は前を見る」
「フグっ!!」
と、片手に持った乗馬用の鞭を秘部に一撃。
しばらく、このリオに関しては立場というものを徹底させる必要がある。
それだけは方針として掲げるつもりだ。
ただーー
「ねえ、もう30分経つんだけどーー」
もうリードを引く片手も疲れてきた。
しかし、振り返るメス犬たちの顔にはまだ不足だと。
不満が見てとれる。
「はあー‥‥‥。
あと30分だけだからね、ほら、みき。
先にでない!」
と臀部にムチを当てる。
まだまだ続くのね‥‥‥。
ゆきの受難はまだ続きそうだった。
と、あれから数日経過したある日。
ゆきはとある難題に直面していた。
目の前には二人の少女がいる。
人間の少女、リオとエルフの少女、イライア。
問題なのは、その格好だ。
二人とも、大型犬用の首輪を指が入る隙間がないほどに締めあげて首に装着し、その下には革製のーー
ビキニなどで普段覆う部分が逆になった革製の拘束具とでもいうのだろうか?
お揃いの赤い革製のものを身に着けている。
乳房には、いや乳首には二人とも前の御主人様によるものだろう。
ビアスだの、鈴だのといった装飾品が嵌められていてーー
もちろん、それは性器にも、秘部と呼ぶべき部分にも開けられており。
それぞれは薄い銀色の鎖で首輪を通してーー
舌と鼻輪とでもいうべき、部分で止められている。
「それは、なんの恰好?
リオにイライア???」
訳がわからないゆきは質問してみる。
「はい、御主人様。
お散歩の、正装具ですわ」
と、イライアが自身の身体の隅々につけられたピアスだの、入れ墨を誇らしげにゆきにみせる。
「散歩って‥‥‥」
鼻輪ってまるで、牛みたいじゃない。
いや、それよりも。
二人がしている格好だ。
犬が、エサをもらうときに躾けられる、チ〇チ〇のようなー。
そんな恰好で、待機している。
その手にそれぞれ、赤と青のリードを掲げて。
嬉しそうに、舌を垂らして‥‥‥まあ、これは鼻輪と首輪の間に舌に開けられた円形のピアスの穴を鎖が通っているからそうなるのだが。
まさか、その恰好で外に出たい?
まるで、普通のペットの犬が、外出を御主人様にねだるように???
見ると、診療所内の他の5人の女奴隷たちが羨ましそうに、そこにかしずく二匹もとい、二人の性奴隷を羨ましそうに見ている。
--狂ってる。
その一言を出せればどれだけ楽になれたか。
しかし、この二匹を購入したのは私なんだしーー
と、そこでゆきは気づく。
二匹?
いま私、そう考えた?
人間ではないと、認識しはじめている‥‥‥
「ははーー
後戻りできないか‥‥‥」
誰にも聞こえないように心中で呟くが、目の前の光景は変わらない。
「よしよし。
どうしたの、リオ、イライア。
二人でお揃いにしたの?」
と、二匹を撫でてやる。
頭ではなくーー
待てと言われているその姿勢だけで、濡らしているそのしたの口を。
「あーらら、そんな我慢できないの?
誰がそんなにしていいっていったかな?」
と、優しく。
それを二人に舐めとらせる。
「申し訳ございません、御主人様」
「お許しください、御主人様‥‥‥」
言葉的には、リオはまだ抑制が効いている。
それは躾けができているということではない気がゆきにはした。
まだ、ゆきに対する不安・焦燥・怒り。
そういうったものが心の壁になっているのだろう。
それに対してイライアはもう、壊れている。
心のタガを簡単に外してしまっている。
半々なら、あなたたちもつり合いが取れるのにねーー
そう、ゆきは思ってしまう。
前回、診療所を後にしてから週に二回。
ゆきはここを訪れている。
それは本業である診療所の休みであったり、オークションが開かれる前後の夜半であったり。
まあ、ここ数回は大した患者もおらず。
イライアの脳内から出る快楽物質的なものをどうすれば抑制できるか。
それに伴う、現行医療の範囲内での治療行為。
それがどれほどの効果を及ぼすか。
まあ、そんなところを緩やかに診ていたわけだが。
どうやら、奴隷たちには我慢できない限界というものがあるらしい。
それまで躾けられ、調教されてきた果ての性奴隷という名前の玩具。
ある意味の芸術作品。
その限界の一つが、定期的な主人との会話。
そういうことなのだろう。
しかし、イライアはともかくとしてーー
「リオ」
「はい、御主人様!」
と、黒髪の性奴隷は元気よく返事をかえす。
どうもこの子だけは、まだ私を主と認めてないみたいだし。
とゆきは思い、
「あんたは今日からしばらく、奴隷以下のメス豚になりなさい」
「え……」
と、リオの顔が青ざめる。
それは則ちーー
この診療所での最下層へ堕とされたに等しいからだ。
「えーと、あんた。
名前」
とゆきは、左隅で控えているリオより少しばかり年長の少女を呼ぶ。
「は、はい!
さやか、でございます、御主人様」
「ふーん‥‥‥」
こっちにおいで、と手招きすると、何一つ羽織るものを与えられていない奴隷たちが少しばかり気の毒になった。
「あんたは?」
さやかの隣にいた、二十歳前後の奴隷を指差す。
「みきです、御主人様」
「ならーみき。
白石のとこでもどこでもいいわ。
せめて、看護師が着る‥‥‥ああ、それじゃだめね。
どうせ、あんたたち濡らすんだし。
ナース服でもなんでもいいわ。
なんか貰って来なさい。ここにいる6人分、ね」
え?
とみきが不思議そうな顔をする。
「7人ではなくて、ですか?」
と、まさか、とリオにみきは視線がいってしまう。
「メス豚に服なんていらないでしょ?
返事は?」
「はっ、はい。
ただいまーー」
「ふん。
まあ、診療所ぽくはなったわね。
さて、イライアとリオか。
まだ先程の態勢のまま、1時間近く耐えて姿勢を崩さないその調教の成果は大したものだけどーー
「さやか、散歩ってどうやるの?」
「そ、それはーー」
とリオが口を出す。
「あんたには聞いてないわよ、メス豚」
と、乳首をつねりあげると、リオはうううっと苦悶の声を上げた。
「と、取れます、お、お許しをーー」
そう。
ゆきは、乳首に繋がるピアスの先端を捻り上げていた。
「ふーん。
それくらいで千切れるのか試すのも、いいかもね?
メス豚なら家畜だし。
いつ、処分してもーー」
ねえ?
と、リオに微笑みかけてやる。
その途端、リオの脳裏にあの光景がよみがえる。
愛していると囁いてくれた、生涯傍においてくれると約束してくれたーー
あの優しかった御主人様の。
廃棄してくれ。
その一言を聞いた瞬間の、この世の絶望を味わったあの瞬間。
「あ‥‥‥ああーーっ」
涙が溢れて止まらない。
なぜだろう、新しい御主人様はそこにいるのに。
受け入れてくれたはずなのに。
「どうしたの、リオ?
メス豚に泣くことを許した覚えはないよ?」
ここまで追い込む必要があるのか。
どこで止めるべきなのか。
踏み込むならば、どこまでこの子を受けとめてやるべきなのか。
ある種の賭けを、ゆきはしていた。
ここでリオがゆきを拒んで死を選ぼうとするなら、まだこの子は死への渇望を抱いている。
そうなれば、適当にしか歩めないだろう。
でももし、そうでないならばーー
「御主人様ーー」
奴隷が主人に命じられた態勢を許可なく変えることは許されない。
それは、ここにいる奴隷たちの共通認識だった。
しかしーー
「はむ‥‥‥はうーー‥‥‥っ」
リオは自ら姿勢を崩し、這いつくばり、そしてーー
「そんなに美味しいの?
私の靴は、ねえ、リオ?」
一心不乱に、ゆきのヒールを、少しだけ上に浮かせてやればその底を。
口先だけでヒールを脱がせてその指先まで。
許可かどうとか、命令がどうとか。
そういうレベルではない行動。
生きたいという渇望。
それをすることしか知らない、奴隷として所有されることしか知らない一人の少女の。
懸命な命がけの命乞い。
それが、この行為なのだろう。
ゆきは黙って、リオが足底全てを舐め終わるまで待つ。
この少女はまだ生きたいのだ、そういう確信を抱きながら。
「リオ、もういいわ。
でも、しばらくはメス豚でいなさい」
「そんな‥‥‥」
「命令よ。
あなたは今まで誰かに命じる。
そういった奴隷だけど、少し上の立場にいた。
言ったわよね?
白石にも、自分から申し出たって」
「は、はい‥‥‥」
「そういう使える、考える奴隷だったのに。
何なの? その醜態は?
主人の許可なく命じられたこと以上をする奴隷って、奴隷なの?
ねえ、リオ。
そういうのって、考える奴隷って何ていうのかな?」
と、ゆきは態勢を変えないイライアの頭を、よしよしと撫でてやる。
「ねえ、リオ。
これが、奴隷、なんじゃないの?
主人に廃棄と言われたから、自分で死を選ぶ?
主人から命令された訳でもなく、他人からの伝聞だけで死を選ぶ?
死への恐怖から、勝手に態勢を変えて這いつくばる?
それって、なんていうのかな?
ねえ、思うままに言ってみなさい。
なんて言うの?
自分で考えて、決めて、動く。
主人の意思を尊重してるだけで、自分の生き方を決める。
そんな自由手放さないあなたをなんて言うのかな?」
「そ、それはー……」
わからない?
なら、教えてあげる。
そうゆきは言い、リオの首輪に繋がるリードを引き上げる。
「あぐっ‥‥‥」
気道を締め上げられてリオは苦悶の声を漏らす。
「それをね、人間、っていうのよ、リオ」
診療所に沈黙が走ったーー
「じゃあ、もう一度聞くけど」
リオのリードを手から離し、イライアと同じ姿勢を取らせてゆきはリオに尋ねる。
「お前は、誰の、何で、どういう存在、なの?」
よく考えて返事しなさい。
人間でいたいなら、無理強いはしないわ。
そうゆきは続けて言う。
リオは伏せていた顔を上げーー
ゆきを見据えて。
「リオはゆき様の、御主人様の所有物です。
御主人様のために全てを捧げる、いやらしいメスですーー。
‥‥‥家畜です。メス豚リオです‥‥‥御主人様」
「そう。
まあ、誓いの言葉よりも、あなたとは長いつきあいで証明してもらわなきゃね。
ここにいる全員、私の所有物なんだから‥‥‥」
ああ、因業だ。
どうしようもないほどに、私は悪魔になっていくんだろう。
救える命、か。
この7人を買い取り、命を出来るだけ長らえさせるだけで。
その償いはできるのだろうか。
ため息よりも、まずは行動かな。
「で、散歩ってどうやるの?」
行きたいんでしょ?
それも全員。
そんな顔を見渡す限りの奴隷たちがしている。
「はあ……。
大型犬7頭なんて、私、散歩させたことないんだけどなあ……」
手足を特別製の肘を折り曲げた状態・膝を折り曲げた状態で均等に四肢を縛る拘束具を全員につけてやる。
というか、それは付けさせたのだが。
そうして、四肢のバランスが一定になるように、その拘束具の根元にはクッション付きの人工の脚、いや蹄(ひづめ)がつけられている。
そのまま、手足を動かせばまるで犬や猫のように動ける仕組みだ。
「ほーら、さやか!
勝手に先にいかない!」
7本のリードの先にはそうした拘束具で飾られ、口に馬ようのハミのような物を噛まされた奴隷たちが歩いている。
「血流も考えたら、せいぜい1時間がいいとこ、かな。
でもねえ……」
手綱には首輪からだけでなく、秘部のクリトリスにつけられたピアスから繋がれた鎖だの、アヌスに入れられ、釣り針の先が丸くなったもので、逆の持ち手の突起部分には大きく輪がつけられ、そこに髪を結わえることで内臓から操作できるものからも。何種類かの鎖が繋がれている。
それを引くたびに、メス犬たちが嬉しそうな、苦しそうな悶える声を上げて散歩が続く。
「はあ……。
これ、ビルの屋上じゃなきゃ無理よね。
この子達、そのうち、夜間の公園とか言い出したりーー」
その単語が耳に入ったのだろう。
リオが目を輝かせてこちらを見る。
「ほら、メス豚は前を見る」
「フグっ!!」
と、片手に持った乗馬用の鞭を秘部に一撃。
しばらく、このリオに関しては立場というものを徹底させる必要がある。
それだけは方針として掲げるつもりだ。
ただーー
「ねえ、もう30分経つんだけどーー」
もうリードを引く片手も疲れてきた。
しかし、振り返るメス犬たちの顔にはまだ不足だと。
不満が見てとれる。
「はあー‥‥‥。
あと30分だけだからね、ほら、みき。
先にでない!」
と臀部にムチを当てる。
まだまだ続くのね‥‥‥。
ゆきの受難はまだ続きそうだった。
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