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星ふくろう

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ハートの女王

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「ねえ、イライア。
 あんたは故郷に帰りたい?
 普通の人生、やり直したい?
 それともここでこんなこと続けたい?
 どっちがいい?」
 その問いに少女は悲しそうに首を振る。
「氏族は‥‥‥一族はほとんどがオークの食糧となりました。
 あそこよりは、ここで死ぬまでいたい。そう思います」
 家族が食べられた、か。
 なら、リオの助手かな。
「なら、一生、リオの為に尽くせる?」
「それは、もうしております」
 ああ、そうだった。
 なら、教えておくか。そうゆきは考える。
「イライア、魔法はどの程度できるの?」
「魔法、ですか?
 わたしはせいぜい、治癒をするくらいにしか、なぜでしょう?」
「ふーん。エルフなら大樹くらい動かせるくらいの魔力あるでしょう?
 風の精霊程度、従えるようになりなさい。
 オークくらい滅ぼせるようにね。まあ、見ておけばいいわ。
 この地球にも魔法はあるのよ‥‥‥あのボケ勇者が。
 散々、あたしを世界中連れまわして甦らせたものがね」
 勇者? よみがえらせた?
 イライアはその意味が理解できない。
「精霊従えるなら、これくらい出来なきゃだめよ、イライア。
 あのボケ勇者の元恋人の妖精姫だっけか?
 うっとおしいお姫様でも、風に空、水までは従えてたんだから」
「あの、御主人様?
 それは伝説級の能力ーー」
 言っている間にゆきの目のまえに小型の太陽のようなものが最初は小さく。
 そしてサッカーボール並みに大きく辺りの何かを集約しながら拡大し、安定していく。
「御主人様!?
 それは??」
 なぜ、人間がそんな力を?
「まあ、時間を操る程度の力がないと生きていけないのよねえ、ロードって。
 人間は本当に、ずる賢いから」
 光球が周囲を包みこみ、消えるととりあえずは、元の肉体の状態になったりさとさおりがいた。
「あなた様はどなた様ですか!?」
「神様とかじゃないわよ?
 まあ、一時期いたこともあるけど。
 異世界の勇者がある日、高校生だったあたしの部屋に落ちてきてね。
 無理矢理犯されるわ、奴隷にされるわ。
 散々、好き勝手した挙句に捨てようとしたから奪ってやったのよ」
「奪うとは、何を、ですか?」
「そいつの宣眼だったかな?
 数分先を視る能力。眼玉ごとくり抜いてやったわ。
 散々、甘えてねだって魔法だの剣術だの体術だの。
 あなたをお守りしたいから教えて下さいって服従したふりして覚えてねー。
 で、呼び出したの」
「その、神、をということです、か‥‥‥???」
「そうよー地球の一番最初の頃に産まれたのかと思ったら、異世界のまあ、上の方の神様でね。
 あたしを可哀想だって同情していろんな力と知識と、資金もくれたわ。
 それからは、そのバカ元御主人様を殴り倒して従えてね。ああ、眼は戻してやったけど。
 それで、金と力と‥‥‥いつの間にか十年後にはロードだのハートの女王だの。
 そんな称号がついて裏世界の上の一人にされてたわ。
 あーいまのリオに話したらだめよ?
 ほら、起きろ、バカメス犬ども!!」
 まだ意識がもうろうとしているのだろう。
 二匹はのろのろと起き上がりだした。
「そんな話、誰にもできませんよ‥‥‥」
「でも、知りたいでしょ?
 復讐する力の手に入れ方。
 覚える? 兵士ならそろえてあげるわよ?
 数年かかるだろうけど、あんたなら数百年生きるんだからすぐね」
 イライアの顔が輝く。
「氏族の仇を討たせて頂ける、と言われます、か?
 御主人様?」
「リオに生涯尽くしてくれるならね。
 あたしはこんだけ力使うから、あんまり先は長くないのよ。
 人間だからね」
「でも、リオ様の方が先にお亡くなりに‥‥‥?」
「いいのよ、それからは自由に元の世界で幸せになんなさい。
 どうする? やる?」
「はい、やらせて頂きます‥‥‥」
 とはいえ、それだけの魔法が使えるなら千年程度は生きるだろう。
 そうイライアには分かっていたが。
 そしてーー
「ねえ、どうするさやか。とんでもないこと聞いたわよ‥‥‥」
「話せるわけないでしょ。そんなことしたら即処分よ。
 馬鹿な生き方するより、服従してイライアみたいに可愛がってもらった方が余程賢いわよ」
「元の生活、戻れるかなあたしたち‥‥‥」
「こんな奴隷になってまだそれ言うのあんた?
 戻れるなら戻してくださるわよ、あの御方なら。
 それくらい時期が来たら言って下さるわ。理解しなさいよ」
 さやかは呆れたように言って扉から去っていく。
「待ってよ、そんな馬鹿みたいに言わないでー」
「だって、バカだもん。
 待ってればいいのよ。働いた分だけ、可愛がってくださるわ。
 それと、あたしが上。様、は?」
「はい、さやか様」
「後からムチくれてやるから」
「そんな、ひどい‥‥‥」
 あのバカ二人もこれで少しはリオの助けになるかな?
 きちんとその会話を聞きながら、ゆきは微笑んでいた。


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