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星ふくろう

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共生と狂気と愛情

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「悪かったよ、今では真面目な男だ」
「あれを見てそう言えと?」
 ゆきは二頭の竜姫を指差す。
 快楽が激しいのだろう、白目をむいてけいれんを起こしていた。
「あーああ‥‥‥やり過ぎたかな?」
 アシュリーが片手をあげると、二匹の顔には再び、苦悶の表情が浮かび上がる。
「で、何の用?
 ロードにはこの子がなるのよ?」
「ヘッジにしたらしいな?
 まあ、それを許可する。そんな話をしに寄っただけだ。
 顔も見たかったしな。
 まあ、にらむなよ。
 もう、帰るからさー‥‥‥」
 ゆきの怒りの視線が突き刺さり、アシュリーは居場所がないと感じているようだった。
 二人の顔をリオが心配そうに見あげている。
「リオ、だったか?
 俺をお父様と呼んでもいいぞ。
 俺のヘッジも少しだが、与えてやる。
 ゆきへの‥‥‥詫びだ」
 これにはゆきが驚いた。
「あんた、本気?」
 アシュリーは再度、困った笑顔で肯定した。
「俺もそろそろ、後継者を、な。
 幾つかの異世界の門が空き始めた。あちら側からの魔族の侵攻もあるしな。
 たまには、勇者でいさせてくれ」
 どこか疲れたような顔の彼は寂しそうにそう言った。
「そう‥‥‥なら、あの御方から伝言があるわ。
 あなたが本当に勇者を名乗れるなら、伝えてもいい。
 そう言われたから。時期的にもあってるしね」
「伝言?
 あの異界の上位神からか?」
 アシュリーは不思議そうな顔をする。
 一体なんだろう? 世界を守れ、そんな使命でも帯びているのか? 
 そんな顔だ。
「盾の勇者」
 ゆきが発したその一言に、アシュリーは固まる。
「なぜ、それを?」
「まあ、聞きなさいよ。
 紅河を目指せ、そこにルシールはいる。
 そう言えば分かる、そう言われてたわ。
 この時期にって時間指定されてたの忘れてた。
 まあ、あんまり前後してないから門は空いてるんじゃないの?」
「紅河‥‥‥か。
 わかった。ありがとう、ゆき。
 リオ、俺の半分を残す。頑張れ」
 じゃあな、とアシュリーは掻き消えてしまった。
「え、お父様!?」
 リオは突然のことに理解が及ばないらしい。
 なにかマジックでもあったのかと、その辺りを見回している。
 そしてゆきは、
「あのバカ亭主、いま半分って言った‥‥‥?」
 その言葉の意味を理解して困り果てていた。

「お母様?
 お父様はどちらに‥‥‥???」
 可愛い養女にはいきなり魔法だのなんだの語っても理解に苦しむだろう。
「そうねえ‥‥‥。
 あんな男でも父親になれるのかしらーー」
 あれだけ暴力と非道をやりつくしたあのアシュリーが顔色を変えたあの単語。
 --盾の勇者。
 正確には、アシュリーが殺した盾の女奴隷の勇者。
 もう数千年も過去に滅びた異世界からの異邦人は、自分の手で殺した女をまだ愛しているなんて。
 ゆきの胸の中には複雑な感情が混ざり合う。
 あれでも、一度は夫と呼んだ男性なのだから。
「でも、お父様は恐いです」
「へ?
 なんで恐いの?」
「あれもそうですしーー」
 そう言い、膝上に上がってきたリオが指差すさきには吊るされている二頭の竜姫レネとラナが。
「あー‥‥‥かわいそうー。
 苦痛以上の快楽与えられて、更に苦痛に戻されて。
 まあ、気絶するわねー」
「それに、あの笑顔の奥には正義と悪があると言うか。
 暴力で物事を正当化するみたいなそんな底知れないものが‥‥‥」
「リオ?」
「はい、お母様???」
「あなたは時々、子供なのか大人なのかわからない時があるわね。 
 普段は小学生みたいなのに」
 これは養女のプライドをいたく傷つけたらしい。
「リオはもう十四歳ですけど‥‥‥!!」
 ぷい、と顔を背けるその仕草もまたゆきには可愛らしい。
「ああ、よしよし‥‥‥。
 そうね、であのアシュリーだけど」
 少しだけ興味が沸いたようだ。
 娘はゆきに視線を戻した。
「はい、お父様はこの世界の人ではない。
 それはリオにもわかりました。 
 イライアやあの二頭みたいな異世界の方ですね?」
 そういうところが、中学生に見えないのよねえ。
 もう少し、あいつに襲われた夜のあたしみたいに泣き叫んだり。
 現実を受け入れれない。
 そんな感じになってくれたら、まだ表社会へと送り出しやすいのだけど。
 それはもう少し先になるかな?
 ゆきはそう思った。
「そうね、よくあるゲームのほら、あなたが家でりさやさおりに教えてもらったゲームあったでしょ?
 あれの主人公みたいに、RPGで言うところの勇者だったらしいけど。
 ま、笑顔で人殺す人間だから。
 お父様と呼んでも信用はしちゃだめよ?
 けどー」
「けど、なんでしょう?」
「異世界からの門が開くなんて言ってたわね。
 魔族がどうだこうだ。
 ふーん、ならそろそろかなあ?」
「そろそろ?」
 まあ、分からないわよね。
 でもあたしの契約してる精霊たちは理解してるみたいだけど。
 そろそろ、この世界の神様だの悪魔だのと、異世界の似たような連中の侵略戦争とそれを迎え撃つ戦争が始まるって。まあ、人間には関係ない世界の話だけど。
 そうなると、また入荷してくるかもね。
 新しい奴隷が。
 そのゆきの予感は正しいものとなる。
 が、その前にーー
「それは良いからあれなんとかしなさい。
 捨てるなら捨てる。
 生かすなら生かす。
 どうするの?
 このまま、あれ続けてもまああと数十年は遊べると思うけど。
 りさやさおりに管理させるなら、あの二頭もまだ生きれるわね‥‥‥」
 その言葉にリオの肩が震える。
「どうしたのよ、あんた」
「だって、りさやさおりはまだいじめたりない……」
「ねえ、どれだけ恨みに思ってるの?
 あんなチェーンソーで頭蓋骨半分切断して電極刺して遊んだり、吊ったままお腹さいて内臓に死なない程度針指してみたり。あれ、わたしじゃないと元に戻せなかったのよ?
 リオの心に潜む狂気がたまに怖くなるわ」
 そう言われてリオはしょぼんとしてしまう。
 狂気、その言葉に心が痛むようだ。
「そうですね‥‥‥すいません、お母様。
 リオの心は狂っているんです。
 それはせいらも多分、同じですーー
 御主人様の為に何でもする。どんなことでも受け入れてそれが喜びに変わる。
 最後は全部、食べて欲しい。食べられたい。
 そんなことまで思うようになるんです、SMのM女って。
 戻れない道を自分で選んでその途中で後戻りなんて‥‥‥許されないんです」
「でもそれは自分から選んだわけじゃないでしょ?
 あたしなんて目玉くり抜いて復讐したわよ?
 あのアシュリーに奴隷にされて数年世界を周ってる間、ずっと復讐だけ夢見てた」
 リオは寂しそうに首を振る。
「いいえ、お母様。
 それはお母様が平常な生活へ戻りたい。
 そう願ったからです。リオはまだまだですけど。
 せいらなんて、スターリムでもトップの数名の一人でした。
 いつでも、抜けれるだけの存在が自分の生涯の権利を売るのってなぜだと思いますか?」
 こんな問答が始まるは思ってもみなかった。
 ここのM女たちは、自分で自分に値付けをして一年間何千万単位で主を変えていく。
 そこにあるものはーー
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