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「お嬢様‥‥‥そのお口の悪さはー」
この老執事は本当に口うるさい。
それだけなければ、とてもいい執事なのに。
そうアリスはため息をつく。
父親が死んでから、この老執事はある意味、父親代わりだったからだ。
いや、家臣団すべてが彼女の家族と言っても過言ではなかった。
「はいはい、だってお父様が亡くなられてもう六年。
この城に、荘園に、私兵の騎士団に。
誰がこの西側の国境付近を守ってきたと思ってるのかしら。
一人でもお兄様が生きていてくれれば。
こんな、女騎士まがいの武芸だの弓矢だの。
覚えることも無かったのよ?」
いえいえ、グラウスは呆れて首を振る。
「そこはお嬢様の御趣味で、ございますから。
今時、お一人で鉄砲を抱え、鴨撃ちになど行かれる御婦人は吟遊詩人の歌にもでませんので‥‥‥」
ふん、いいじゃない。
楽しいんですもの。
アリスはそれよりもーーと第二王子からの書類に再度、目をやる。
「ねえ、この二か月の時間はまちがいなく、後見人になって爵位はやるが後はわたしの物だ。
そういう、ことよね?」
老執事ははっきりと明言はしないが、
「もしくは代理の誰かにこの地をー」
「ふーん。
でも、わたしは側室に上がれる、か。
王族にはなれるのね」
「その書面の通りであれば、左様でございます」
まあ、行ってみるか。
男勝りな侯爵家令嬢アリスはそう思った。
ただ一つだけ気がかりな点があった。
「ねえ、グラウス?」
「なんでございましょうか?」
「我が家のように、家臣一同が集まって食事をする。
そういう貴族はもう珍しいというのは‥‥‥本当なの?」
かつての王侯貴族といえば、長方形の長テーブルに多くの家族を集め、そこで神に祈りを捧げて食事をした。
しかし今はーー
「あの伝染病が、少々、汚い話とはなりますが。
あれが流行したのは、人々が台所とトイレの排水口を同じくしていたからです。
その為、汚れも腐臭も目立ち、人々は病にかかりました。
多くの農村でもそうですが、暖炉を別に用意し、水を分けることに国や教会が尽力した結果。
伝染病は消えました。
ですが‥‥‥」
「それが、あれね?」
アリスは自室にある暖炉とその隣のポンプ式の水くみ場を指差す。
それはつまり、その部屋にいて自炊ができる。
そういうことに他ならなかった。
「はい、お嬢様のおっしゃる通りです」
そう。
あれがすべてを変えてしまったのよね。
あの吟遊詩人の謳う詩篇のように。
王様も御后様も来られない、と。
アリスは寂しげに呟いた。
「いらしてくださるのかしら、新しい旦那様は。
大広間に」
と。
この老執事は本当に口うるさい。
それだけなければ、とてもいい執事なのに。
そうアリスはため息をつく。
父親が死んでから、この老執事はある意味、父親代わりだったからだ。
いや、家臣団すべてが彼女の家族と言っても過言ではなかった。
「はいはい、だってお父様が亡くなられてもう六年。
この城に、荘園に、私兵の騎士団に。
誰がこの西側の国境付近を守ってきたと思ってるのかしら。
一人でもお兄様が生きていてくれれば。
こんな、女騎士まがいの武芸だの弓矢だの。
覚えることも無かったのよ?」
いえいえ、グラウスは呆れて首を振る。
「そこはお嬢様の御趣味で、ございますから。
今時、お一人で鉄砲を抱え、鴨撃ちになど行かれる御婦人は吟遊詩人の歌にもでませんので‥‥‥」
ふん、いいじゃない。
楽しいんですもの。
アリスはそれよりもーーと第二王子からの書類に再度、目をやる。
「ねえ、この二か月の時間はまちがいなく、後見人になって爵位はやるが後はわたしの物だ。
そういう、ことよね?」
老執事ははっきりと明言はしないが、
「もしくは代理の誰かにこの地をー」
「ふーん。
でも、わたしは側室に上がれる、か。
王族にはなれるのね」
「その書面の通りであれば、左様でございます」
まあ、行ってみるか。
男勝りな侯爵家令嬢アリスはそう思った。
ただ一つだけ気がかりな点があった。
「ねえ、グラウス?」
「なんでございましょうか?」
「我が家のように、家臣一同が集まって食事をする。
そういう貴族はもう珍しいというのは‥‥‥本当なの?」
かつての王侯貴族といえば、長方形の長テーブルに多くの家族を集め、そこで神に祈りを捧げて食事をした。
しかし今はーー
「あの伝染病が、少々、汚い話とはなりますが。
あれが流行したのは、人々が台所とトイレの排水口を同じくしていたからです。
その為、汚れも腐臭も目立ち、人々は病にかかりました。
多くの農村でもそうですが、暖炉を別に用意し、水を分けることに国や教会が尽力した結果。
伝染病は消えました。
ですが‥‥‥」
「それが、あれね?」
アリスは自室にある暖炉とその隣のポンプ式の水くみ場を指差す。
それはつまり、その部屋にいて自炊ができる。
そういうことに他ならなかった。
「はい、お嬢様のおっしゃる通りです」
そう。
あれがすべてを変えてしまったのよね。
あの吟遊詩人の謳う詩篇のように。
王様も御后様も来られない、と。
アリスは寂しげに呟いた。
「いらしてくださるのかしら、新しい旦那様は。
大広間に」
と。
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