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「ふうん、それがどうかしたのか、妻よ?」
「はい、王子様。
家族がいないわたしのいまの身では、料理人こそが命を左右すると言っても過言ではございません。
毒を盛るも、豪勢な料理を出すのも、料理人次第。
そうなれば、その者は王子様の恩寵の賜物。
ある意味、王子様の身代りと言ってもよいほどの。重要な家臣でございます。
身代りであれば、夫たるその身にわたしのささやかな児戯である音楽を捧げるのも。
また、同じ事でございます」
これはうまい言い訳を考えたな。
そう第二王子は誰が与えた知恵だ、そう考えてみるがどうにも思い当たる者がいない。
そんな人物はこの女の周りには置いていないからだ。
だとしたら、それは本心なのかもしれない。
自分に対する愛情を、料理人を自分に見立てて行ったというならば。
これは罪には問えない。だがーー
「仲睦まじく料理をする姿を連日、見ているものがいるがな?
それはどう言うつもりだ?」
連日?
アリスは不思議そうな顔をした。
「先程お出しした料理も、その焼き菓子も。
ほとんどではありませんが、わたしの手製でございますが?
お口に召しませんでしたでしょうか?」
第二王子は驚いた。
手製?
この王宮の菓子職人が作ってもおかしくない、この菓子が?
「そんな戯言を‥‥‥」
一笑に伏すが、アリスは真剣な顔で答える。
「明日より、王宮にて毎日、御作りさせて頂けるならば‥‥‥この上ない喜びでございます」
と。
これには第二王子はなにも言えなくなってしまった。
アリスを不貞だとして処罰する理由が無くなってしまったからだ。
ところで、と今度はアリスが幾枚かの書面を侍女に渡し、それを第二王子は見ることになる。
「これはーー???」
「教会よりの正式な出生証明書。
ならびに、貴族名鑑になぜ、生まれた日付を変えて載せたのかの答弁書とその正式な国からの返答書類。
ならびに‥‥‥今回の婚前契約書でございます。
大司教猊下からのお返事もございます。
妻の不貞を疑い、それが無罪である場合。
神はこれを夫による懐疑心、および嫉妬という醜い感情。
ならびに正確な証拠もないうえでの審議は、婚前契約書そのものを無効にできる、と」
ところで、王子様?
アリスは再度、笑顔で彼に告げる。
「わたくし、数え年でいきましても三月の末にはすでに十六歳でございますの。
王国の法律には、成人した貴族子女は後見人を必要とせず。
その配偶者を選べる。そうありますのをご存知でしょうか?
とはいえー‥‥‥そこにある、生年月日のレーゼン侯爵令嬢アリスという女性は架空の存在となりますので」
第二王子は怒りと現実が受け入れられず、まさしく白豚のごとく膨れ上がっていた。
「はい、王子様。
家族がいないわたしのいまの身では、料理人こそが命を左右すると言っても過言ではございません。
毒を盛るも、豪勢な料理を出すのも、料理人次第。
そうなれば、その者は王子様の恩寵の賜物。
ある意味、王子様の身代りと言ってもよいほどの。重要な家臣でございます。
身代りであれば、夫たるその身にわたしのささやかな児戯である音楽を捧げるのも。
また、同じ事でございます」
これはうまい言い訳を考えたな。
そう第二王子は誰が与えた知恵だ、そう考えてみるがどうにも思い当たる者がいない。
そんな人物はこの女の周りには置いていないからだ。
だとしたら、それは本心なのかもしれない。
自分に対する愛情を、料理人を自分に見立てて行ったというならば。
これは罪には問えない。だがーー
「仲睦まじく料理をする姿を連日、見ているものがいるがな?
それはどう言うつもりだ?」
連日?
アリスは不思議そうな顔をした。
「先程お出しした料理も、その焼き菓子も。
ほとんどではありませんが、わたしの手製でございますが?
お口に召しませんでしたでしょうか?」
第二王子は驚いた。
手製?
この王宮の菓子職人が作ってもおかしくない、この菓子が?
「そんな戯言を‥‥‥」
一笑に伏すが、アリスは真剣な顔で答える。
「明日より、王宮にて毎日、御作りさせて頂けるならば‥‥‥この上ない喜びでございます」
と。
これには第二王子はなにも言えなくなってしまった。
アリスを不貞だとして処罰する理由が無くなってしまったからだ。
ところで、と今度はアリスが幾枚かの書面を侍女に渡し、それを第二王子は見ることになる。
「これはーー???」
「教会よりの正式な出生証明書。
ならびに、貴族名鑑になぜ、生まれた日付を変えて載せたのかの答弁書とその正式な国からの返答書類。
ならびに‥‥‥今回の婚前契約書でございます。
大司教猊下からのお返事もございます。
妻の不貞を疑い、それが無罪である場合。
神はこれを夫による懐疑心、および嫉妬という醜い感情。
ならびに正確な証拠もないうえでの審議は、婚前契約書そのものを無効にできる、と」
ところで、王子様?
アリスは再度、笑顔で彼に告げる。
「わたくし、数え年でいきましても三月の末にはすでに十六歳でございますの。
王国の法律には、成人した貴族子女は後見人を必要とせず。
その配偶者を選べる。そうありますのをご存知でしょうか?
とはいえー‥‥‥そこにある、生年月日のレーゼン侯爵令嬢アリスという女性は架空の存在となりますので」
第二王子は怒りと現実が受け入れられず、まさしく白豚のごとく膨れ上がっていた。
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