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プロローグ
枢軸議会
しおりを挟む陽一とイスミ、そして途中から列に参加した一行は大きな広場のようば場所にいた。
一堂が歩み寄ると、部屋の床が先ほどルグの部屋で行われたように迫り出してきて、しかしそれは円柱ではない優雅な丸みを持った椅子だった。それに陽一を中心にするように彼らは座り込む。
すると、対面する空間に実体ではない、立体映像の様なしかし確かな質量を感じる集団が同様に椅子に腰かけて出現した。
中央の空間には幾つかの画面の様なものが中空に現れて、画像が投影されていた。
その画面の先には全く形容の似つかない異質な生物であったり、鉱石の様な何かであったり、巨大な地球上では絶滅した恐竜を思わせるような、だが衣類をまといその目には知性が宿っている種族など様々な種族が存在していた。
「それでは、本星における枢軸議会の決定をお伺いしたい」
陽一が地球の衣類のままだが、それでいてそれまでとはまったく別人のような雰囲気でその場を取り仕切るように発言した。
「決定も何もない。
ソエ罹患病はその脅威を止めた。
我々はあの惑星での治療を必要としなくなった」
対面にいた存在はあるがしかし、影のように捉えどころのない彼らの誰かが発言する。
「ソエ罹患病が完治する治療法が確立された、と理解してよろしいか、議員」
「構わない」
「では、地球のあの自治領の借り受けは必要ないということになる」
「そうだ、アスタムのライナブ。そして君の管轄権もまた消滅する」
「それは構わない。
しかし、あの地にはまだ同胞が少なからず残っている」
「それは問題ない。
治療の為に在地していたアスタムはほぼその全てが帰還を果たしている」
これは参ったな。
予測よりも議会の行動が早い。
陽一は少しばかり焦りを感じた。
「それは報告を受けていない。
越権行為に対する、私の管轄権の延長を申請する」
少しばかり画面の中がざわついた。
しかし、決断は早かった。
「許可する。
任期は最後のアスタムが帰還したのち、フェイブルなどの処理を完了した時点で消滅するものとする」
「了解した。
フェイブルの処分についてはあの地のアスタムはほぼ、フェイブルのサポートを受けずに対等の存在として惑星公転歴で約二十年以上の待遇を受けてきた。
いま、彼らの存在はアスタムと同様の扱いを自治領では行っている。
これについてあの惑星における三世代を経験してきた私からの保証とはなるが‥‥‥。
アスタムとフェイブルは地位を等しくするように公国内で改善することを議会に提案してきた。
その答えを頂こう」
対面する影の一つが断定するように答えた。
「その提案について我々は等しいとは何かを考えた。
製造され命の歴史の浅いフェイブルを新たな生命として迎えることは不可避ではない。
だが、文化を持たぬ彼らは最下層の民として大きな存在ではいられないと多くが考えた。
自治領におけるフェイブルと公国版図内での人工生命体医療器具としてのフェイブル。
ソエ罹患病の罹患部分を転移させ、アスタムの健康及び治療における一手段として存在するフェイブル。
自立した意思を持つがあくまで手段と確認される。
その上でのフェイブルを新文明を持つ知的生命体として認知することは可能性としては正しいとは思われない。
あれらはあくまで手段であり、道具だ」
「それはソエ罹患病の根絶が出来なかったこれまでにおける認識だ。
我々はソエ罹患病の進行をこの公国の版図において最大的な遅行効果が認められる惑星に自治領を設けた。
正確に、現地の国家群から借り受けたのだ。
あの惑星の公転周期にして二千年。公国の歴史にして約千年もの間、我々はかの惑星に救われてきた。
そして、惑星でも時間にして三十余年前、我々はフェイブルという存在を創造した。
アスタムの遺伝子から作り出された人工の生命であった彼らは二世代に渡る。
主たるアスタムの代価としてソエ罹患病の犠牲を受け入れてくれた。
これは、我々が作り上げた構図であり治療法だが‥‥‥。
フェイブルはアスタムに比べて肉体的な性能には劣るだろう。
だが、彼らもまた我々の血を受け継ぐ知性対であり、アスタムは借りを返すべきではないか。
そうでないならば、我々はフェイブルに知性を与える必要は無かった。私はそう提案する」
議会がその場には存在していた。
多くの陽一の言うところの公国と呼ばれる宇宙空間に勢力圏を持つ文明の存在とその構成国家群の議論がその狭い空間で行われていた。
「私の提案はそう難しい物ではない。
何も、いま棲息する各フェイブルの移住を唱えているわけではないのだ。
あの惑星におけるフェイブルたちは、公国の存在も、自らの出自も知ることはなく現生住民と同様の生活を営んでいる。それを取り上げる手間暇が無駄であり、公国の倫理がどこにあるのかと問いたいだけだ。我々は知性ある種族だ。惑星地球外におけるフェイブルにはどこかのコロニーなり、新たな文明を営める地を与え、導く存在として我々は見守り、時に手を差し伸べるだけでいいではないか。ソエ罹患病のあの悪業深い痛みより解放された者たちの善意とはそれほどに薄い存在か?」
更に議会が揺れる。
数度の揺れた会話の波の後に、影の議員が言葉を発した。
「善意とは何かを以って為すかを問わねはならぬ。またフェイブルの創造はあくまでソエ罹患病治療法の一環だった。そこに善意の入る隙はない」
石頭どもめ。
陽一は声を上げようとした。
「だが」
影はためらうように数巡考えをめくらせて発言する。
「先ほど、自治領より帰還した者たちの中にはフェイブルとの共生を是と、治療への盲従を敷いたことへの反省の意思があると寄せられた。これは善意と介するに難しくない」
流れが変わった。
陽一はそう感じていた。
「よって、自治領におけるフェイブルの管理を引き続き続けることに関する労力は避けぬ。これについてはなんの補助も出来ぬ変わりに干渉もしないことで補完することとする。公国内における、労務、各種の才覚を供させてきた昔日までを悪習と改め、これよりフェイブルの自己における自己の独立管理監督権の獲得を宣言する。よってこれより公国内で簡易的な道具として扱いを行ってきた行為の全てを破棄し、彼らを新たな文明を萌芽する存在として認定する。またコロニー八区に自治領を与え文明を萌芽するまでの恒久的な支援を確約する」
ーーやっ!!!
亜紀が、彼の妻が初の人体実験道具として試験管の中から誕生し、陽一たちアスタムと呼ばれる公国の国民が災禍としてきた伝染病の治療の為にある一人のアスタムの症状を引き受けて亜紀は死んだ。それが美亜の母親である一夏だった。そして、一夏が出産したという建前で美亜は製造され地球に送り込まれた。中学を卒業する年代まではソエ罹患病の症状の引き受けは出来ない。その為、美亜はまだ生きている。この狂った人権など無視した公国の悪癖はいま、砕け散った。
「では、自治領におけるフェイブルの管理監督について提案したい。
私、アスタムのライナブはあの地に移住する。それはフォイゲンとアベジアも同意見であり、彼らの賛同も得ている」
フォイゲン(大森)とアベジア(谷塚)。
二人は公国の片隅から地球へソエ罹患病の治療支援の為にと送り込まれていた。地球産まれのアスタムである陽一と立場は違うが、彼らもまた日常的な宇宙への帰還よりも、非日常的な元自治領でも生活を求めていた。
「許可する」
その後、幾つかの動議を得て陽一は地球で生涯過ごすことを認められた。
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