聖女と魔王の白い結婚

星ふくろう

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第二章 王女と海神の英雄

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 レイナです。
 先に種明かししておきましょう。
 はるかな過去にこの世界に降臨した聖女は、大宇宙を舞う星竜族の助けを借りて地球にあるモノを送り届けるように依頼しました。
 それが数万年前。
 その依頼を受けて星竜族は旅立ち、私の生きていた時代のどこかで聖者の知人にそれは届いたはず。

 しかし、彼らが旅立った時代、この惑星はそれまで行われていた先史文明間の戦争により砂漠と化しました。
 聖者は巨大な世界樹を創造し、世界の緑化をはかります。
 まあ、この辺りが、いまからだいたい二万年前後、過去ですね。
 そこで聖者は眠りにつくために、世界樹の運用する誰かを探します。
 時間すらも管理する装置、遊戯盤を新たに生まれた六神に託します。

 そこで聖者は太陽神と我が暗黒神に守られて、永い眠りにつくわけですね。
 地球まで戻るための力を蓄えるために。
  と、まあ‥‥‥これが正しい世界史です。
 この世界の。
 しかし、その実、歴史改ざんはいかにでも行える。
 その良い実例がここにはありました。
 

「ウテメ様、真紅の魔女ミレイアはご存知ですかな?」
「はあ?
 ええ、一応は。
 千年ほど過去に魔族の大移動を扇動した、反逆者?
 だと主からは教えられております」
「左様。
 その反逆者を討つために、聖者様はこの世に降臨なさいました」
「は?
 再臨、の間違いではないのですか???」
「再臨?
 それこそ、お間違いでは?
 我が大神ダーシェ様は過去より永遠に近いこの世界の統治を成す神々の王。
 聖者様はダーシェ様が使わせた、御使い。
 そう伺っておりますがな‥‥‥??」

 あまり妙なことを言うなよ、この闇の聖女様?
 そんな目で私を見るグロア大神官。
 プロパガンダが無駄になるじゃないか、さもそう言いたげに彼はあごを持ちあげてこちらを見て来ます。 

「あー‥‥‥ええ、そうですね。
 はい、そうです。その通りです、大神官様。
 我が主もどこかの世界史と混同しておりますねー」
「どこかの世界史??」
「闇の精霊王ですから。
 世界は一つではありませんし、闇の中は夢の中と同じ。
 時間・場所・空間の概念がとても希薄でございますから、そのせいかと思われます」
「ああ、なるほど。
 所属する光と闇によってもさまざまな問題があるのですな‥‥‥。
 では、正しき歴史をご覧あれといいたいところですが」

 それは? と、指差すさきにいるのは間違いないですよ。
 ええ、間違いないです。なぜか、あれから私にべったりとくっついて離れないシャイアさんが左手にぶらさがり、もとい離れたくないとばかりに小刻みに首を振る始末。
 なんなんですかね、これ。
 百合の趣味はないのですが、私。
 大変なお荷物です。

「はは、なんでしょうか。
 どうも御本人は学びを、見識を深めたいご様子でして。
 いけませんか?」
「うーむ‥‥‥。
 帝国の精霊騎士として、その励みたいと考える意気や良し。
 よろしいでしょう。
 お二人でおいきなさい」
「おいき‥‥‥?
 どちらにでしょうか?」

 グロア大神官、静かに指先は私の足元へと――。
 地下? あまり地下には行きたくないんですよねえ。
 だって、あの駄おおかみさんこの六大陸のプレート移動を制御してるんですよ?
 深くいけばいくほど、出て来そうだと思いません?
 暇を持て余していそうだったし、寂しがり屋にしか見えませんから、気兼ねなく影から顔でも突き出しそうな感覚ですよ、はい。

「案内をつけましょう。
 あの黒板に掲示していたものは写しですからな。
 良き見識を得られるように励んでください。
 お二人にダーシェ様の御加護があらんことを」
「ありがとうございます、グロア大神官様」

 そう挨拶を受けると呼び鈴を鳴らす大神官様。
 見知らぬ男性神官が扉を開き、私達は地下へと案内されるわけですがこの神殿、エレベーターとかないのかなーと思いつつ、そんな文明の利器には頼らなくとも剣と魔法の世界だということを嫌というほどに思い知らされました。

「どうぞ。
 こちらの陣内にお入り下ださい」
「はいはい、ほら行こうよ、レイナ?」
「ええと、シャイア?
 そんなに押さなくても‥‥‥っ?」
 
 さっさと奥に行けとばかりに、円形の狭い部屋に押し込まれた私と嬉しさのせいか円満の笑みですり寄ってくる――いいえ、抱き着いてくる彼女。
 なんだか、貞操の危機を感じるのは気のせい?
 恐るべし、炎豹族‥‥‥。
 そして、神官が壁に描かれている魔法陣に手をかざし、何かを操作すると――。
 あ、これ瞬間移動できるやつだ。
 そんな理解と共に、私とシャイアは地下の保管書庫とあの神官が呼んでいた部屋に転送されたのでした。


「さてー。
 暗い、湿っぽい、それに微妙にほこりっぽい。
 獣人には辛い仕様ですね、ここ。
 シャイア、その尾っぽ貸してくださいな?」
「は‥‥‥?
 あたしの、しっぽ?
 どうすんのさ?」
「いえ、ね。
 少しばかり炎を召喚して燃やしても、平気かなーって?
 だめですか?」
「噛みつくよ、あんた‥‥‥。
 非人道的行為にもほどがあるでしょ、それ。
 泣かせる気?!」
「泣くんですか、炎豹族の癖に。
 炎をまとうことも出来ると、主様には伺っていますけど?」
「あんたねーそれは!!
 空気の層を作って、そのさきに精霊をまとうだけ!! 
 直接、火なんてつけたら火傷――って火ィ――!!!」

 ちっ。
 気づきやがりました。
 さんざん抱き着かれてめんどくさかったから、追い払うのにいい口実だと思ったのに。
 さすがに炎を召喚したら、脱兎のごとく離れやがりましたよ、奴は‥‥‥。

「チッって、ちって言った!?
 なんて酷いのさー泣くよ、本当に!!?」
「なにを今更、ヤンキーぶってるのにいい子の猫被りですか?」
「豹だよ!!
 なんだよ、ヤンキーって!!
 あたしはーっ‥‥‥」
「わたしは?」
「その‥‥‥みんなが冷たいから。
 あんたなら仲良くなれるかなって。
 家族もいないこの場所、寂しいし‥‥‥」

 おやおや、いきなりツンデレ属性ですか?
 年齢は私と変わらないはず――おや?
 もしかすると、もしかして。

「あなた、おいくつですか、シァイア?
 そんな甘えたがりな年齢でもないでしょう?」
「‥‥‥十歳」

 あれま。
 とても、お子様でした。
 その年齢で、その豊満な胸といい、生意気な外見といい、合法ロリですかあなたは!?
 なるほど、家族や仲間から離れた寂しさの裏返しです、か。

「なら、もうすぐで一人前でしょう?
 しっかりなさい、炎豹族の炎の精霊剣士としての誇りはどこに?」
「あんた‥‥‥冷たい」
「あんたではありません。
 レイナさん、でしょう? 躾もまともに出来てないのですか、シァイア様?」
「レイナ、だってその呼び方でいいって言ったじゃん!!」
「まあ、確かにそれは言いましたね‥‥‥しかし、それは同年代だと誤解させるあなたが悪いのです」
「酷いっ!!
 本当に闇の魔女みたいな冷たさ!!
 信じられない!!」

 いえ、なんというか。
 それはこちらのセリフなんですけどね、シャイア?
 こんな場所でそのカミングアウト。どんなフラグを立てるつもりですか縁起でもない‥‥‥。

「そりゃ、闇の聖女ですから。
 はい、行きますよ。
 その身に光の精霊でもまとって灯り代わりになりなさい」
「え、あっ、はい。
 なんだか命令形‥‥‥」

 甘えているお子様の相手をする暇はないのです。
 めんどくさい。
 子供なんて――あの男の性愛の対象年齢じゃないですか。
 あとから、さんざんいじめてやるとしましょう。
 私怨を交えながら、私はあの棒と取り出すと早く行け、とばかりに自ら歩く光源となったシャイアをつつくのでした。

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