11 / 23
第一章
7
しおりを挟むまあ、正直言ってサービスは最悪だった。
「あれ、タバコ吸うんだ?」
コートとヒロキのジャケットをハンガーにかけてしまいこみ、
「どうします?
湯、つかります?
中でのサービスだとマットレスとかありますけど???」
ああ、追加料金込みのやつな‥‥‥
全身を観るには悪くない。
「なら、マットレスでお願いします」
「あ、じゃ、五千円追加でーー」
なんて言うからまあ、こんなとこもあるだろうなと用意しておいた財布から五千円札を取り出す。
普段じゃまったく使わないブランド物の財布に、高級時計。
経費削減と思って買ったのが良かったのか。
金持ちなんだー見たいな視線にいきなり変わりさくさく働きだす。
湯が溜まる間に何か話をと思ったら、
「はあー‥‥‥」
と一作業終えた。
そんな感じでどっかりとソファーに座り込み、見た目も何もあったもんじゃない。
下着姿で、あぐらかいて、タバコまで吸いだした。
おいおい、未成年の設定じゃなかったか?
店の紹介には18歳なんだかんだ。そう書かれていたはず。
タバコ吸いませーん。
なんて目線なしの写メ付きの投稿ブログを店のサイトで後から発見した時には苦笑いした。
「あれ、タバコ吸うんだ?」
ヒロキが驚いたように言うと、
「あ、駄目でした?
すいません、ついつい‥‥‥家だと旦那うるさいんで」
「あ、そ、そう。
結婚してるんだーー」
付き合いでヒロキも一本貰うが、せめて客に確認してからだろ、これ?
店側の教育の悪さにもびっくりした。
ヒロキの担当顧客の会社の子たちは愛想も、サービスももう少しまともで安いからだ。
「そうなんすよー。
できちゃった婚?
まあ、子供うるさいだけだし。
旦那もさんざん文句言うんで」
「へえ、そりゃ大変ー」
適当に話を合わせるが、こいつバカか?
そう思われる節が多々ありすぎてどうにもまとまらない。
この子が果たして、かなた、かすらも怪しいからだ。
「あ、できたみたい。
じゃ、脱いでもらっていいすか?」
脱がせないのか!!
これで二万五千円はぼったくりだろ。
「あーいいよ、先行っててよ」
「うん‥‥‥あれ、凄いっすねーー」
「え、ああ。
これ、な」
若気の至りで、背中に彫り込んだ銀色の鷹のタトゥー。
もう色あせてグレーくらいになってるが、いまでも黒いシャツは欠かせない。
「渋いーーお客さん、そっちの人?」
「なわけ‥‥‥もう十年以上前のだよ。遊び遊び」
「ですよねー‥‥‥」
少し引かれた?
「湯舟で先どうぞ」
そう言われてもなあ、これマットレスは?
そんなもの無視で、相手も入ってくる。
まあ、下に少し光るものは見えた。
胸にも片方だけ、ピアスの後がある。
「ボディピ好きなんだ?」
「へ?
ああ、これ‥‥‥旦那がそういうの好きで。
拒否したら殴られたから」
そこだけは本音だったらしい。
視線の落とし方と背中に漂う重荷でなんとなくそうかな、と思えた。
「あーごめんね、下にも見えたから」
「え?
見ます?」
「いいならー」
そんな簡単に見せていいのか、おい?
警戒心ゼロかよ!?
叫びながら浴槽に立ち片足を上げて開いてみせてくれる。
「すげー‥‥‥初めて見た。
両方で六連? 三連??
痛くないの、これ?」
「取ると‥‥‥」
「ああ、殴られるんだ。
旦那さん、恐いんだねー」
「うん、ちょっとお客さんより若いけど。全部入ってるから」
「え?
全部ってこれだけでも百万ちょいかかってるよ?
和彫りならもっといるでしょ?」
どの程度の若さだよ、そう聞きたかった。
タトゥーじゃなく、和彫りで全身は‥‥‥本物さんでもかなり上の人だよ。
そう思ったからだ。
「ううん、タトゥーだけど。
全部、消えてくからーはは、ごめん。
あ、どうする?
本番、する?」
「いや、それやったら捕まるって」
「うーん、後ろは痛いから。あんま、ね。
店には内緒にしてくれたら、いいよ?」
いや、それ掟破りだから。下手したら俺までヤバイやつ。
誰にでも言ってるんだろうなあ。病気が怖いわ‥‥‥ヒロキはそれはお断りすることにした。
「あ、じゃあベッド、いこっか」
そうは言いつつすでに一時間半以上経過。
湯舟でこんなに時間使ったら、できるもんもできねーって。
そうヒロキは毒づいていた。
「旦那さん、若いのにそんなに入れてんだ?
俺でもまだ二十九なのに」
少しだけサバを読ませてもらった。
「あ、うんいま二十一かな。あたしより、三つ上」
旦那まではビンゴ。嫁はかなたではないかもしれない‥‥‥
「ああ、なんか大変そうだし。
休憩していいよ。俺、週末までいるからさ。
もうニ、三回呼ぶかも?」
まあ、小遣いにしなよ、タバコ代ーー。なんて言いながら一万札を一枚。
「え、まじ?
いいの‥‥‥??
なんにもしない?
痛いこととか?」
「したら怖いお兄さん出てくんじゃん、電話番号も知られてるのに。
それ勘弁‥‥‥」
「だよねーー」
そしてタイムアウト。
帰り際に、タバコ臭いキスと名刺をくれた。
裏には電話番号が手書きで。
「また、連絡して」
「え、店は?」
ウインクして先にでる彼女。
「おいおい‥‥‥全部、アウトだよ。
まあ、いいか。わけわからん収穫あったし」
電話番号登録して出てきたline画像と、あのハヤテ君が送ってきたID検索で出た画像。
「こんなにすんなり、行きすぎだろ?
てか、かなたさん。あんた何歳だよ???」
あの法律文書の生年月日がおかしいのか。
それよりも見たピアスの跡とあの送信されてきた画像を見比べる。
「全然、違うな‥‥‥」
捜査は振り出しに戻りつつあった‥‥‥
0
あなたにおすすめの小説
『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』
星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】
経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。
なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。
「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」
階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。
全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに!
「頬が赤い。必要だ」
「君を、大事にしたい」
真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。
さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!?
これは健康管理?それとも恋愛?
――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる