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エピローグ
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魔王ルクスターの時間軸の世界は片付いた。
あとはエレーナの時間軸の世界だ。
ここまでは、ナフィーサとリザ、エレノアは理解出来ていた(レビンにはエレノアが暴露していた)。
「みんな!?
来てくれたのね‥‥‥」
一年近くぶりにあうエレーナは疲れ果てたようにテダーとハーミアには見えた。
あまり絡みのないハーミアはよそ者で、無能聖女です、としか挨拶ができなかった。
しかし、ハーミアには少しばかり先の未来が見えるようになっていたが、そんな能力は戦いには役に立たないだろうと、彼女はそれをエレーナにこっそりと告げるしか出来なかった。
エレーナはそれでもハーミアを、魔王軍の二人を、ヨアヒムを歓迎した。
だが、その集合した風景は、彼女にも不思議な光景だった。
勇者テダー、退魔師ナフィーサ、魔女リザ、聖女ハーミア、竜騎士ヨアヒム、魔装人形イオリ、魔王軍特別捜査官のレビンとエレノア。そして、不思議なことにヨアヒムの部下が二人。いや、魔獣が二匹というべきか。
これって‥‥‥誰が味方で、誰が敵なの?
エレーナは不安に心を蝕まれながらも、魔女にならないようにならないようにと心がけていた。
魔王レガイアは強く、自分がかつて覚え得た魔法を以てしても、なかなかに強敵だった。
ここから先の記憶は‥‥‥いや、十六歳の誕生日は数か月前に過ぎている。
もうそこからの記憶はないのだ。
信じられるのは、勇者テダーたちのみ。
法王猊下御本人すらも参加されたこの聖戦。
竜神アルバス様の御加護を信じるのみ。
こうして、真紅の聖女と呼ばれるエレーナの最初の戦いは始まった。
*
魔王ルクスターを討ち取ってから数十年後。
シュバイエ卿が使っていた剣は、意志を持ち聖剣シュバイエとなっていた。
そして、彼はぼやいてしまう。
主はもう、死んだと考えようと。
その理由は、元の世界に戻るとシュバイエ卿が言い出したからだ。
かつての異世界にいた時の仲間が、シュバイエ卿に助けを求めてやってきた。
それに応じて生まれ故郷に戻るなんて言い出すのだから。
こっち側にくる時に、左足を失ったくせにあいつはまた世界を渡る、なんて言いだした。
まあ、こんどはあれだ。
かつての仲間で偉大なる退魔師様がついているだろうから、彼は完全な肉体を逆に取り戻すかもしれない。
しかし、酷いもんだとも思った。
「済まないな、お前はこの世界で産まれた存在。
連れて行けば、その自我すら失う可能性がある。
許せよ?」
シュバイエ卿は自分を置いていくというのだから。
おいおい、そりゃないだろ?
せっかく、あの戦いの折り数万の魔族の血を吸い上げて自我に目覚めたってのに。
子供を放りだしていく親のようなもんだ。
そして、剣は孤独になり、あれから六百年が経過した。
まあ、彼の持つ力の全ては授かったし‥‥‥その意味じゃ、この世界の魔も神も。
ある程度までは、互角に戦える。
厄介なのは古竜だのはるかな太古の神々だが‥‥‥やつらは何かしなきゃやり返して来ない。
理由は簡単だ。
力のストックがない。
信徒がいない。
おさめるべき土地と守護すべき人民を失った。
だから細々と、まるで没落貴族のように生きていかないといけない。
なんとも因果なもんだ。
かつては世界を二分するような大勢力だった片方の陣営の主神が、いまじゃ単なる南方大陸に点在する人口数万の小国家群の中でしか、信仰されていない。
そんな時代だから。
そんな神は、いわば土着の信仰だ。
神としての力なんて、せいぜい雨を降らせたり少しばかり先の予言を下せる程度。
神罰??
そんなものはあり得ないよと笑ってやるべきだ。
だって、連中の力はもうすっからかんなんだからと聖剣は思っていた。
しかし、そんな神でも気まぐれに人に味方をする時があるらしい。
いや‥‥‥もしかしたら美味しい何かをかぎつけたのかもしれない。
この世界を去った主の伝記を日記代わりにつけて、聖剣がのんびりと世界を旅している、そんな時だった。
あの古き神に呼び止められたのは――
「じゃあなにかい、ディルムッド?
偉大なる預言の聖者様が、そのまま神様におなりあそばしたくせに、あの六柱の神との大戦に破れてしまい。
いまはこんな熱い大陸の密林の奥地で何やってんだか‥‥‥」
黒髪の剣士は、簡素な上下に革の鎧だけ。
その腰には大振りな剣があるが、誰もこれを本体だとは思わないだろう。
その彼は、いまは誰もいない神殿のような場所にいた。
供え物すらなく、神殿は荒れ放題。
しかし、時たまだれかが来てはそこそこの掃除はしているらしい。
そんな惨状を哀れだねえ、と揶揄する剣聖に神は頼みごとをしていた。
「だがなあ、そのなんだ?
真紅の魔女って名前がなあ。まるであの悪逆非道の魔女ミレイアを思いだす。
あれは真紅でもなく、黒髪だったが。
どうして助けたいんだ?
かつての六柱の神の一人の‥‥‥竜神アルバスの聖女だからか?
やつに意趣返しでもするつもりか?」
その問いかけに対する答えは明白で、単純にこの古い神が人であった時の血に連なるから。
ようは、その竜神アルバスの聖女とやらは、この預言の神の末裔でもあるらしい。
そういう理由だった。
しかし、聖剣シュバイエにはなんとも納得がいかない。
この聖者様の気まぐれだとも思えなかったからだ。
あとはエレーナの時間軸の世界だ。
ここまでは、ナフィーサとリザ、エレノアは理解出来ていた(レビンにはエレノアが暴露していた)。
「みんな!?
来てくれたのね‥‥‥」
一年近くぶりにあうエレーナは疲れ果てたようにテダーとハーミアには見えた。
あまり絡みのないハーミアはよそ者で、無能聖女です、としか挨拶ができなかった。
しかし、ハーミアには少しばかり先の未来が見えるようになっていたが、そんな能力は戦いには役に立たないだろうと、彼女はそれをエレーナにこっそりと告げるしか出来なかった。
エレーナはそれでもハーミアを、魔王軍の二人を、ヨアヒムを歓迎した。
だが、その集合した風景は、彼女にも不思議な光景だった。
勇者テダー、退魔師ナフィーサ、魔女リザ、聖女ハーミア、竜騎士ヨアヒム、魔装人形イオリ、魔王軍特別捜査官のレビンとエレノア。そして、不思議なことにヨアヒムの部下が二人。いや、魔獣が二匹というべきか。
これって‥‥‥誰が味方で、誰が敵なの?
エレーナは不安に心を蝕まれながらも、魔女にならないようにならないようにと心がけていた。
魔王レガイアは強く、自分がかつて覚え得た魔法を以てしても、なかなかに強敵だった。
ここから先の記憶は‥‥‥いや、十六歳の誕生日は数か月前に過ぎている。
もうそこからの記憶はないのだ。
信じられるのは、勇者テダーたちのみ。
法王猊下御本人すらも参加されたこの聖戦。
竜神アルバス様の御加護を信じるのみ。
こうして、真紅の聖女と呼ばれるエレーナの最初の戦いは始まった。
*
魔王ルクスターを討ち取ってから数十年後。
シュバイエ卿が使っていた剣は、意志を持ち聖剣シュバイエとなっていた。
そして、彼はぼやいてしまう。
主はもう、死んだと考えようと。
その理由は、元の世界に戻るとシュバイエ卿が言い出したからだ。
かつての異世界にいた時の仲間が、シュバイエ卿に助けを求めてやってきた。
それに応じて生まれ故郷に戻るなんて言い出すのだから。
こっち側にくる時に、左足を失ったくせにあいつはまた世界を渡る、なんて言いだした。
まあ、こんどはあれだ。
かつての仲間で偉大なる退魔師様がついているだろうから、彼は完全な肉体を逆に取り戻すかもしれない。
しかし、酷いもんだとも思った。
「済まないな、お前はこの世界で産まれた存在。
連れて行けば、その自我すら失う可能性がある。
許せよ?」
シュバイエ卿は自分を置いていくというのだから。
おいおい、そりゃないだろ?
せっかく、あの戦いの折り数万の魔族の血を吸い上げて自我に目覚めたってのに。
子供を放りだしていく親のようなもんだ。
そして、剣は孤独になり、あれから六百年が経過した。
まあ、彼の持つ力の全ては授かったし‥‥‥その意味じゃ、この世界の魔も神も。
ある程度までは、互角に戦える。
厄介なのは古竜だのはるかな太古の神々だが‥‥‥やつらは何かしなきゃやり返して来ない。
理由は簡単だ。
力のストックがない。
信徒がいない。
おさめるべき土地と守護すべき人民を失った。
だから細々と、まるで没落貴族のように生きていかないといけない。
なんとも因果なもんだ。
かつては世界を二分するような大勢力だった片方の陣営の主神が、いまじゃ単なる南方大陸に点在する人口数万の小国家群の中でしか、信仰されていない。
そんな時代だから。
そんな神は、いわば土着の信仰だ。
神としての力なんて、せいぜい雨を降らせたり少しばかり先の予言を下せる程度。
神罰??
そんなものはあり得ないよと笑ってやるべきだ。
だって、連中の力はもうすっからかんなんだからと聖剣は思っていた。
しかし、そんな神でも気まぐれに人に味方をする時があるらしい。
いや‥‥‥もしかしたら美味しい何かをかぎつけたのかもしれない。
この世界を去った主の伝記を日記代わりにつけて、聖剣がのんびりと世界を旅している、そんな時だった。
あの古き神に呼び止められたのは――
「じゃあなにかい、ディルムッド?
偉大なる預言の聖者様が、そのまま神様におなりあそばしたくせに、あの六柱の神との大戦に破れてしまい。
いまはこんな熱い大陸の密林の奥地で何やってんだか‥‥‥」
黒髪の剣士は、簡素な上下に革の鎧だけ。
その腰には大振りな剣があるが、誰もこれを本体だとは思わないだろう。
その彼は、いまは誰もいない神殿のような場所にいた。
供え物すらなく、神殿は荒れ放題。
しかし、時たまだれかが来てはそこそこの掃除はしているらしい。
そんな惨状を哀れだねえ、と揶揄する剣聖に神は頼みごとをしていた。
「だがなあ、そのなんだ?
真紅の魔女って名前がなあ。まるであの悪逆非道の魔女ミレイアを思いだす。
あれは真紅でもなく、黒髪だったが。
どうして助けたいんだ?
かつての六柱の神の一人の‥‥‥竜神アルバスの聖女だからか?
やつに意趣返しでもするつもりか?」
その問いかけに対する答えは明白で、単純にこの古い神が人であった時の血に連なるから。
ようは、その竜神アルバスの聖女とやらは、この預言の神の末裔でもあるらしい。
そういう理由だった。
しかし、聖剣シュバイエにはなんとも納得がいかない。
この聖者様の気まぐれだとも思えなかったからだ。
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