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第一章 春を買いませんか?
異世界、その名はエル・オルビス。
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寒いー。
あちらはまだ夏なのにこちらは冬。
まあ、冬になってもアーハンルドは日本に比べたら暖かいから避寒地、(こんな日本語ないけれど)には良いんだけどなあ。薄着で戻って来たのを後悔しながら、見渡す部屋は見覚えのある光景。
うん、私の部屋だ。
賃貸アパート八階建の三階にある2LDKが私のとりあえずの棲み処だった。
「そろそろ、学校に行く準備しないとダメかなあ‥‥‥?」
日本は住みづらい。
特に私のような普通じゃない人間にとっては、この国は狭すぎる。
祖母も両親もよくあんなに能力を使わずに静かに生きて来れたもんだと感心してしまう。
こんな便利な能力を使わないなんて。
能力の無駄遣いよ、なんて得意気になっていたらあの頃が懐かしかった。
「まだ時間あるなんて思ってたらもう六時なんて。
寝る時間また無くなったなあ‥‥‥」
そう思い、部屋の中には異常がないかと見渡すけど、こんな狭いボロアパートに侵入する物好きな泥棒もいないだろうって思ってしまう。築三十年。
鉄筋作りだけど、合間合間に薄いパテーションがあるだけで隣の音なんて丸聞こえのこのマンションは家賃も格安だ。そこを気に入って借りているけど、あちらにこちらにと移動するだけの私にはこの程度の安さがいいのかもしれない。
「月二万円。
文句言ったら怒られそうね」
和室の室内、もう一つある隣の洋室には主がいるけど変わらず寝ているみたい。
部屋に飾られた写真立てには私とその周りには友人たち、同年代の少女たちが並んで写っている。
この日本での悪友たち、もとい魔女仲間だ。
「まーた奏多と佳南に怒られそう。
どこにいってたのよって。
もう探し疲れちゃった‥‥‥、とか。
奏多は心配性だし。まあ、いいわ」
再び、あの写真が目に入る。
緑にも似た腰まである長髪と紫色の瞳に褐色の肌。
人間ではない、この惑星の裏側にある魔界の存在。
アルバス候家の第二候女、トレウェラ・アルバス。
デーモンの貴族、魔と神の間の存在。
あの子に出会ってから私の人生は変わってしまった。
「あれから、四年、か。
魔女の時間が短いんだか、長いだか。
イルベルではあんなにゆったりと時間流れているのにここじゃ、早すぎる。
中間がいいのに。
寝ようかな‥‥‥寝れる?
また遅刻しそうだし、止めるか」
トレウェラと綾香の間にいる、年下の黒髪にどこか鈍い苔色のような瞳をした少女。
それが私、幸田綾香。コウダアヤカ。
一井に御岳、武宮に柳井‥‥‥そして、幸田。
日本では四大魔家と呼ばれる立派な家柄の跡取り娘たちと出会ったのはあの夜。
ワルプルギスの夜だった。
とまあ、回想はまた後だ。
時空を少しばかりいじろう、世界の狭間で寝たらどうにか睡眠時間は確保できそうだし。
「そうなるとおばあ様ね‥‥‥もう起きてるかな?」
祖父母は関東のとある県で喫茶店を営んでいる。
あの豆を炒った香ばしいにおいの記憶が、ツンと鼻の奥をついたような気がした。
スマホを片手にコールを数回。
目当ての彼女は、期待通りに出てくれた。
そして第一声。
「綾香?
小遣いはないよ?」
「おばあ様‥‥‥そんなせびるためにだけで電話なんかしませんから‥‥‥」
「あら、そう。
何かあったの?
あの話は、これではよくないわね」
「あ、DPね。
うーん、ならそっちに行った方がいい?」
「最近はあれの目も厳しいから、変に使わない方がいいよ。
昔ながらに、あれにしなさい。
それが間違いないから」
「えー‥‥‥苦手なんだけど、コウモリ」
「いいじゃないか、お前のは特別な存在だよ?
大事にしなさい」
「はーい。
なら、起こすわ。エレノアを‥‥‥」
「待ってるよ」
本当に融通が利かない祖母なんだから。
DPはディンジャーポイントポリスの略称。
簡単に言うと、魔界と人間界、天界のそれぞれが代表者を出し合って、勝手にそれぞれの世界を行き来したり犯罪まがいの行為に能力を使わないようにと。
三世界が裏側で協力してできた、世界規模の統治機構。そして、魔力をもつ人間の監視者でもある。
残念ながら彼らの認識はこの地球だけ。
異世界もとい、別宇宙の異なる惑星文明には精通していない。
イルベルはこの銀河系のどこかにはあると思われる惑星文明。
惑星文明だから、星の名前は別にある。ただし、そこに住むラーズたちがまだ自分たちの住む星を天体だと認識しているかは怪しいけど。
あの惑星はエル・オルビスという名前らしい。
現時点で、地球にはその間を行き来できる神や魔は、まだいなかった。
そう、あちらからやって来た祖母とその仲間たち以外は。
「おーい‥‥‥起きてー??」
私は洋室の真ん中に設置してある大きな鉄棒に足でひっかかり、その下にぶらーんと垂れ下がって寝ているそれに声をかける。
ツンツンと反応がないから突いて見ても駄目。
陽光を当ててやろうかとも思ったけど、軽い皮膚炎を起こすらしく後からの文句が凄まじいからそれはしないことにして‥‥‥。
「起きてよーエレノア?
ねーねー、銀翼のエレノア様ー???」
その名の通り、銀色のコウモリ。
それも、世界最大のフルーツしか食べないあれよりは一回り小さいくらいの巨大コウモリ。
彼女は祖母と共にイルベルからやってきた、吸血姫。
姫とついているのは、本人の希望なので鬼なのか、本当のお姫様なのかは定かではありません。
とりあえず、この吸血姫さんはとてもねぼすけで惰眠を貪り始めるととことん寝てしまう。
キリがいいところで起こさないと、たまに自分で開けたカーテンを閉め忘れて日光にジリジリと焼かれて苦しみながらそれでも寝ているという、筋金入りだ。
「本当、太陽光を直接浴びても死なない吸血鬼なんて‥‥‥前代未聞だわ。
DPに知られたら、即実験動物にされちゃうぞー?
起きなさいよ、起きないとシナモンぶっかけるわよ、エレノア様?」
普段から年上なんだから敬いなさいと言い張る彼女は、起こすときだけは様をつけないとその日は機嫌が悪い。しかし、ニンニクは平気でシナモンには激弱な吸血鬼、もとい吸血姫。なんて、さまにならないわー。
「んー‥‥‥早いじゃない?
あんたいつ戻って来たの?」
「さっき。
ほら、起きて。おばあ様に回線開いて欲しいの。
あなた経由で話しなさいって、そう言われたのよ」
「え‥‥‥めんどくさい」
「さっさとやらないと、シナモンの蓋開けるわよ?」
「え、あ、待って!
綾香様!
すぐに開くから‥‥‥あとは好きに話して頂戴‥‥‥」
コウモリのくせに器用に片目だけ開けて、自分の隣の影にまるで双方向のカメラとマイクがあるようなテレビ電話みたいなものを創り出して、エレノアはまた眠りについてしまった。
「あら、また寝たのかい?
あの子は?」
「またですわ、おばあ様。
もう、この子、本当に老齢なんじゃないですか?」
向こうで祖母の元気そうな顔が浮かんでいて、私は久しぶりの親族の顔が見れていささか嬉しかった。
独り立ちしてからこっち、一人前だって意地もあってか自分からはこんな連絡を取ろうともしなかったからだ。
「さあねえ、まだ二千年と生きてないはずなんだけど。
それで、エル・オルビスでなにがあったの?
三連の月が消滅したなら、あの子達に声をかけないといけないね」
「そんな天文がどうこうなるような一大事、起きてませんおばあ様。
お伺いしたいのは、金色の鎧を着こんだ、帝国時代の猫耳族の女騎士の件なんです」
「帝国時代?
またろくでもない話になりそうね。
詳しく話してごらん、綾香」
こうして、祖母との約半年ぶりの会話が始まった。
あちらはまだ夏なのにこちらは冬。
まあ、冬になってもアーハンルドは日本に比べたら暖かいから避寒地、(こんな日本語ないけれど)には良いんだけどなあ。薄着で戻って来たのを後悔しながら、見渡す部屋は見覚えのある光景。
うん、私の部屋だ。
賃貸アパート八階建の三階にある2LDKが私のとりあえずの棲み処だった。
「そろそろ、学校に行く準備しないとダメかなあ‥‥‥?」
日本は住みづらい。
特に私のような普通じゃない人間にとっては、この国は狭すぎる。
祖母も両親もよくあんなに能力を使わずに静かに生きて来れたもんだと感心してしまう。
こんな便利な能力を使わないなんて。
能力の無駄遣いよ、なんて得意気になっていたらあの頃が懐かしかった。
「まだ時間あるなんて思ってたらもう六時なんて。
寝る時間また無くなったなあ‥‥‥」
そう思い、部屋の中には異常がないかと見渡すけど、こんな狭いボロアパートに侵入する物好きな泥棒もいないだろうって思ってしまう。築三十年。
鉄筋作りだけど、合間合間に薄いパテーションがあるだけで隣の音なんて丸聞こえのこのマンションは家賃も格安だ。そこを気に入って借りているけど、あちらにこちらにと移動するだけの私にはこの程度の安さがいいのかもしれない。
「月二万円。
文句言ったら怒られそうね」
和室の室内、もう一つある隣の洋室には主がいるけど変わらず寝ているみたい。
部屋に飾られた写真立てには私とその周りには友人たち、同年代の少女たちが並んで写っている。
この日本での悪友たち、もとい魔女仲間だ。
「まーた奏多と佳南に怒られそう。
どこにいってたのよって。
もう探し疲れちゃった‥‥‥、とか。
奏多は心配性だし。まあ、いいわ」
再び、あの写真が目に入る。
緑にも似た腰まである長髪と紫色の瞳に褐色の肌。
人間ではない、この惑星の裏側にある魔界の存在。
アルバス候家の第二候女、トレウェラ・アルバス。
デーモンの貴族、魔と神の間の存在。
あの子に出会ってから私の人生は変わってしまった。
「あれから、四年、か。
魔女の時間が短いんだか、長いだか。
イルベルではあんなにゆったりと時間流れているのにここじゃ、早すぎる。
中間がいいのに。
寝ようかな‥‥‥寝れる?
また遅刻しそうだし、止めるか」
トレウェラと綾香の間にいる、年下の黒髪にどこか鈍い苔色のような瞳をした少女。
それが私、幸田綾香。コウダアヤカ。
一井に御岳、武宮に柳井‥‥‥そして、幸田。
日本では四大魔家と呼ばれる立派な家柄の跡取り娘たちと出会ったのはあの夜。
ワルプルギスの夜だった。
とまあ、回想はまた後だ。
時空を少しばかりいじろう、世界の狭間で寝たらどうにか睡眠時間は確保できそうだし。
「そうなるとおばあ様ね‥‥‥もう起きてるかな?」
祖父母は関東のとある県で喫茶店を営んでいる。
あの豆を炒った香ばしいにおいの記憶が、ツンと鼻の奥をついたような気がした。
スマホを片手にコールを数回。
目当ての彼女は、期待通りに出てくれた。
そして第一声。
「綾香?
小遣いはないよ?」
「おばあ様‥‥‥そんなせびるためにだけで電話なんかしませんから‥‥‥」
「あら、そう。
何かあったの?
あの話は、これではよくないわね」
「あ、DPね。
うーん、ならそっちに行った方がいい?」
「最近はあれの目も厳しいから、変に使わない方がいいよ。
昔ながらに、あれにしなさい。
それが間違いないから」
「えー‥‥‥苦手なんだけど、コウモリ」
「いいじゃないか、お前のは特別な存在だよ?
大事にしなさい」
「はーい。
なら、起こすわ。エレノアを‥‥‥」
「待ってるよ」
本当に融通が利かない祖母なんだから。
DPはディンジャーポイントポリスの略称。
簡単に言うと、魔界と人間界、天界のそれぞれが代表者を出し合って、勝手にそれぞれの世界を行き来したり犯罪まがいの行為に能力を使わないようにと。
三世界が裏側で協力してできた、世界規模の統治機構。そして、魔力をもつ人間の監視者でもある。
残念ながら彼らの認識はこの地球だけ。
異世界もとい、別宇宙の異なる惑星文明には精通していない。
イルベルはこの銀河系のどこかにはあると思われる惑星文明。
惑星文明だから、星の名前は別にある。ただし、そこに住むラーズたちがまだ自分たちの住む星を天体だと認識しているかは怪しいけど。
あの惑星はエル・オルビスという名前らしい。
現時点で、地球にはその間を行き来できる神や魔は、まだいなかった。
そう、あちらからやって来た祖母とその仲間たち以外は。
「おーい‥‥‥起きてー??」
私は洋室の真ん中に設置してある大きな鉄棒に足でひっかかり、その下にぶらーんと垂れ下がって寝ているそれに声をかける。
ツンツンと反応がないから突いて見ても駄目。
陽光を当ててやろうかとも思ったけど、軽い皮膚炎を起こすらしく後からの文句が凄まじいからそれはしないことにして‥‥‥。
「起きてよーエレノア?
ねーねー、銀翼のエレノア様ー???」
その名の通り、銀色のコウモリ。
それも、世界最大のフルーツしか食べないあれよりは一回り小さいくらいの巨大コウモリ。
彼女は祖母と共にイルベルからやってきた、吸血姫。
姫とついているのは、本人の希望なので鬼なのか、本当のお姫様なのかは定かではありません。
とりあえず、この吸血姫さんはとてもねぼすけで惰眠を貪り始めるととことん寝てしまう。
キリがいいところで起こさないと、たまに自分で開けたカーテンを閉め忘れて日光にジリジリと焼かれて苦しみながらそれでも寝ているという、筋金入りだ。
「本当、太陽光を直接浴びても死なない吸血鬼なんて‥‥‥前代未聞だわ。
DPに知られたら、即実験動物にされちゃうぞー?
起きなさいよ、起きないとシナモンぶっかけるわよ、エレノア様?」
普段から年上なんだから敬いなさいと言い張る彼女は、起こすときだけは様をつけないとその日は機嫌が悪い。しかし、ニンニクは平気でシナモンには激弱な吸血鬼、もとい吸血姫。なんて、さまにならないわー。
「んー‥‥‥早いじゃない?
あんたいつ戻って来たの?」
「さっき。
ほら、起きて。おばあ様に回線開いて欲しいの。
あなた経由で話しなさいって、そう言われたのよ」
「え‥‥‥めんどくさい」
「さっさとやらないと、シナモンの蓋開けるわよ?」
「え、あ、待って!
綾香様!
すぐに開くから‥‥‥あとは好きに話して頂戴‥‥‥」
コウモリのくせに器用に片目だけ開けて、自分の隣の影にまるで双方向のカメラとマイクがあるようなテレビ電話みたいなものを創り出して、エレノアはまた眠りについてしまった。
「あら、また寝たのかい?
あの子は?」
「またですわ、おばあ様。
もう、この子、本当に老齢なんじゃないですか?」
向こうで祖母の元気そうな顔が浮かんでいて、私は久しぶりの親族の顔が見れていささか嬉しかった。
独り立ちしてからこっち、一人前だって意地もあってか自分からはこんな連絡を取ろうともしなかったからだ。
「さあねえ、まだ二千年と生きてないはずなんだけど。
それで、エル・オルビスでなにがあったの?
三連の月が消滅したなら、あの子達に声をかけないといけないね」
「そんな天文がどうこうなるような一大事、起きてませんおばあ様。
お伺いしたいのは、金色の鎧を着こんだ、帝国時代の猫耳族の女騎士の件なんです」
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