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第一章 春を買いませんか?
エピローグ
しおりを挟む「宜しく、アヤカ?」
「綾香ですけど。
あ、あのアジーロがいない‥‥‥」
「ああ、あれか。
いやな、おもしろいものが近づいてきていたから。
少しばかり興味をもってな?」
「興味って。
使い魔の契約までしたのに?」
あ、それは違うぞ、魔女殿?
そう、猫耳族の女騎士は楽しそうに頬をゆがめて笑っていた。
「あれは、単なる幻。
それよりもその吸血姫、流れる水には弱いだろう?
無体な真似を‥‥‥」
「これ?
良いのよ。
だって、エレノアっていうんだけどこの子。
エレノアがいななきゃ出来ないはずの異世界転移だって、ほらこの‥‥‥」
まさか?
ふと嫌な予感がしてリーゼという女騎士を私がみやった。
もしかして、いやそんなはずは‥‥‥?
「ああ、その通りだ。
アヤカ殿、私がそう。
そのエレノアの代わりに補正をしておいた。
あのままでは、世界の狭間に飛ばされそうだったのでな」
「‥‥‥やっぱり。
でも、あなた。
足が無い、なんて噂では聞いたけど。
全身上から下まで、生身のようですけど?」
むっつりとしながら嫌味を言ってやる。
リーゼはまあ、そう怒るなと手をパタパタさせていた。
「これはあくまでも仮の肉体。
人形のようなものだ。
泥で作った、魂の入れ物にすぎない。
あくまでも生身に近い、存在だがな?」
「あっそう。
で、あなたを買わないかってうちの退魔師は言ってたんだけど。
なにを御望みですか、金竜の騎士様?」
そこまで知っているのか、と。
彼女はすこしだけ驚いているようだった。あくまで受けおりで、自分で調べたものじゃないからたいした知識は振りかざせない。
「聞きかじっただけです。
で、何を御望みですか?」
「性急だね、あなたは。
急ぐと損をする事がおおいよ、アヤカ殿?」
「性分ですから。
さっさと終わることならそうしたいんです。
恨みつらみでこの世に舞い戻ったという感じでも、なさそうですし」
「あはは。
恨みはたくさんあるけど、死んでまで晴らすにはもう時間がね。
あなたは、そうだな。
果たせなかった望みを、少しだけでもいいから叶えてはくれないか?」
うーん?
それはー。
「内容と金額によりますねー」
「お金で動いてくれる限り、ある程度の信頼はできるだろうから‥‥‥。
すぐとは言わない。
これを、届けて欲しい」
「は?
剣‥‥‥?」
「そう。
私が仕えていた、ハーベスト大公家当主、シルド様がある御方から預かっていた剣だ。
これを真の持ち主の元に、届けて欲しい」
「また聞いたことのない、歴史上の人物名を‥‥‥。
その相手とは、どなたなんですか?」
そして彼女は、こっちが唖然とする人物の名を告げた。
自分が着ている鎧一式(黄金がふんだんに使われているらしい)、と引き換えに。
「‥‥‥で?
預かって相手は消えてしまい?
ボクの胎内には、無残にも綾香の使い魔契約があると?」
「まあ、そういうことになるわねー。文句ある?」
「いいよ、後から昌枝に解いてもらうから。
だいたい、この程度でボクを縛れるって思うのが間違いなんだ。
半人前のくせに‥‥‥」
とまあ、ブツクサ言いながら、エレノアはその人物の部屋にそっと剣を置いて来てくれた。
こういう時、彼女が扱える虚空の能力は便利だ。
私の部屋には、水槽があり、小さな小さな、ワニが一匹泳いでいる。
いつか成長した日には、もしかしたら、リーゼが復活するかもしれない。そう思いながら、私は待つことにしたのだ。
「でさあ、なんであの相手なの?」
「まあ、そう頼まれたから。仕方ないわよ?」
「やだなあ、まさか、エルムド帝国皇帝その人の寝所に忍び込むなんて、ね」
「人間だった?」
「え‥‥‥うんー‥‥‥。
いや、違う」
「やっぱり、猫耳族?」
「が、少し入っていたかも?」
「歴史だと、シルド公がグレン大帝を謀殺して、ユニス皇妃やその一族を誅殺。
その後、南方大陸からやってきた猫耳族がハーベスト大公家を、皇帝の仇として報復。
で、そこでエルムド帝国の正当な血筋が倒れて‥‥‥」
「その、猫耳族が皇帝位についたんだよ。
でも、最初に帝国に猫耳族が参入してから半世紀近く経過したあとだけどね。
まあ、いいや。
ボクは寝るよ、おやすみなさい」
「はーい、お疲れ様」
愛する誰かに残す剣、か。
あ、そういえばラーズ!
彼、ずっとあの場で待ってたりして??
「まあ、いいか。
また明日、行ったら事情説明しよっと」
私もまた、軽く仮眠をとる事にしたのだった。
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