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第一章
矯正される世界線 3
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「ねえ、旦那様?」
秋穂の声は甘酸っぱい。
優しく問いかけてくるようで、その中にブルーベリージャムみたいなものが心に溶け込んでくる。
ただし、それが本心なら。
「旦那様は、僕には要らないでしょ?
あそこにいたらあの二人が帰宅したら、喧嘩になるよ秋穂」
友紀は見た目にはその細い身体の割には強い力で、秋穂を軽々と抱き上げる。
「ほら、ベッドに行こう?
僕の、さ」
二階には双子の別室みたいな部屋がある。
これには秋穂が目を丸めた。
「あんな、狭いとこで?
下の方が広いしのんびり‥‥‥」
「遠矢が帰宅しても同じこと言えるの?
全裸でいつも見たいに、幼な妻じゃないけどさ。
あんな平伏して迎えれるなら、別にいいよ?
いたっ。なにするのさ」
「何もないでしょ、友紀のばか。
あんたがそれ望むならするわよ。
遠矢には嫌」
抱き上げられて回した腕の先。
背中の肉を摘まみ上げられて、友紀はまったくとぼやく。
「遠矢にも見せてるならすればいいじゃないか。
したことがない、そうは言わせないよ?」
嘘もいい加減にしろ。
この幼馴染の夫の片方は、もう片方よりよほど、勘が鋭い。
なんでそうもあっけなくバレるのよ。
秋穂は心で毒づいていた。
「ほら」
「ちょっと!?」
物のようにベッドに放り込まれて秋穂は悲鳴に近い文句言った。
「見えないし、動かないのは本当なのに!!!
なんでーーなによ、それ?」
「なにって、子供欲しくないし。
遠矢と同じとこも嫌だし。
ね?
秋穂は僕が好きならなんでもするんだろ?
動けないし、無理矢理も好きなんだろ?
自分が独占したいからって、父親まで巻き込んでさ。
その上で、二人の夫にそれぞれ嘘ついて」
「やっ、やだ、やめてよーー」
友紀は逃げようとする秋穂の服をさっさと脱がしていく。
「抵抗できないんだから、諦めたら?
僕らが双子だってこと、舐め過ぎなんだよ、お前」
僕、普段の笑顔に柔らかい物腰、丁寧な口調。
そして、周りから一歩引いて歩く臆病な外見?
とんでもない。
バイクを扱えば遠矢よりも荒々しく、他のチームと揉めれば真っ先に殴りこんでいく。
ミニバイクを始めた頃に体力作りにと。
双子を通わせた近所の道場じゃあ、友紀は誰よりも強い。
外見は大人しく、中身は苛烈。そして‥‥‥誰よりも冷酷で残酷だ。
秋穂の顔がこわばっていく。
この人に逆らえばーーあの不良どものように。
あの日、絡んできたあいつらを笑顔で殴り続けたのは友紀の方だった。
最初は秋穂は遠矢と勘違いをしていた。近付いてみて、友紀の内面を知りその暴力性に惹かれた。
そしてーー
「待って、待ってよ。
それは嫌だ、本当に、嫌。
僕の女になるなら、遠矢君にも同じようにしろって。
あの結婚した日に言ったの友紀じゃない。なのに、こんなに無理矢理‥‥‥」
そう言うと、友紀の手が止まる。
彼は遠矢の名前が出ると、数分だが暴力性に歯止めがかかる。
双子は二人で一つ。
遠矢は恐ろしいほどに優しすぎた。
「無理矢理なんて言っても、あのバカ妹たちみたいなSMまがいなことしてるわけじゃなし。
別にしたいなら首輪でも買ってくる?
この辺りなら、深夜は誰もいないから散歩でもなんでもできるけど?」
「そんな話してない!
左足本当に動かないんだから、抑えつけるのやめてよ‥‥‥
せめて見える方の目で見ながら話をさせて、お願い」
そこまで言わせて、友紀は秋穂をベッドに座らせる。
そうは言っても、彼にも理性はある。
七星が樹乃を殴るような、手を挙げたことはなかった。
「なんで怒ってるの?
それくらいは、秋穂にだってわかるわよ」
ドンっと友紀は苛立ち紛れにその辺りの段ボール。
引っ越してきて荷物が詰まったまま、一年近く放置してきたものを蹴り飛ばしていた。
「遠矢はな、秋穂の為にどれだけ犠牲になってるかお前理解してるのか?
お前が僕を独占したいならそうすれば良かっただろ。
なんで兄貴を巻き込んだ?
あの日のあの狂った会話はなんだ?」
「それはーー」
「それはなんだよ、しかも遠矢が夫で、僕が養子?
ふざけるなよ、秋穂。この一年間、我慢してきたがもう無理だ。
兄貴がどれだけ苦しんでるか、全部、お前のーー」
「やーめろ、友紀」
友紀は勢い余って秋穂の首に手をかけた時だ。
「兄貴、なんで。
いるならわかるはず‥‥‥」
「わかるって、どういうことよーー」
双子の特殊能力?
秋穂の頭が混乱する。
「分かるんだよ、なんとなく。
お前を殴りたくて仕方がない。遠矢だってわかるだろ!?」
入り口でじっと立つ遠矢の視線は秋穂から離れない。
「秋穂、相変わらずいい身体だな。
もうここ二週間見てないけどな。
おい、友紀。とりあえず、手を降ろせ。
で、話をしよう」
扉を閉めて遠矢は床に座った。
こっちに来い、そう秋穂を手招きする。
「でもー秋穂は、友紀が‥‥‥」
「うるさいな、お前は。
俺の妻だろうが、早く来いよ。
お帰りなさいませ、旦那様はどうした?
そのまま、床に伏せて言えないのか?」
これには友紀が黙っていない。
「おい、遠矢!!?」
「お前は黙ってろ。
一番働いてるのも、この女の看病してるのも俺だ。
違うか?」
「それはー」
「友紀、バイト先で噂になってんぞ?
なんで俺の名前使った?
秋穂で満足できないのか?
この女がお前好みのなんだー?
七星みたいな、いやわからんがどМか?
あんな、尽くします的な女じゃないからか?
おい、秋穂。出迎えの挨拶は?」
こんなかっこうで、好きな友紀の目の前で‥‥‥
プライドを揺さぶられながら少女は妻として夫に挨拶をする。
怒りに震えながら、土下座までさせられて。
「おかえ、りないませ‥‥‥旦那様」
はあー‥‥‥遠矢がため息交じりに立ち上がり、その頭を踏みつけた。
「遠矢!?」
「旦那様、いた‥‥‥い、足が足がー」
「うるさいよ、黙れ物」
物?
わたしが!?
秋穂は抵抗しようとするが、左と頭に全体重をかけられた身動きできない。
「なんで、もの呼ばわり‥‥‥遠矢君ーー!!?
いた、いー友紀、助けて‥‥‥」
「来るな友紀。
座ってろ」
友紀はにらまれて動けなくなる。
この弟は知っている。
普段の優しさが裏返しになった時の遠矢の恐さを。
「おい、もの。
ものが嫌なら、奴隷か?
七星みたいに樹乃をメス犬樹乃なんて呼ぶみたいに、そう呼んでやろうか?
え、メス犬よりも始末の悪い、メス豚。
男と見れば節操がない、俺たちがいない日にどれだけ高校やあの周りで遊んでるか。
知らないと思ってんのか?
片足が不自由なのはまだわかる。
その苛立ちも理解出来ないが、少しはわかる。
だが、目が見えない?
そんなのはな、七星も俺も同じなんだよ。
アイツは事故で、俺は喧嘩で。それぞれ見えないんだ、知ってたか?
それで誰かに甘えたか?
足の介護だけは何も言わねえよ。それはどうしようもない。
そう思って、お前が友紀を好きだからってのも理解してあの提案の受けた。
あれから、毎晩のように友紀がいない時、俺を求めたよな?
それも何かの償いかと思って耐えてきた。散々、深夜まで働いて支えてきた」
そこまで言って、遠矢は秋穂を蹴とばす。
「で、なんだ?
友紀に一途ならまだ許せたが、今度は他の男か?」
なんだよそれ、秋穂。
他の男って。
「友紀、いい加減に目を覚ませよ。
チームのやつらがどれだけお前を心配してるのか分からないのか?
この一年、散々、いろんなやつといるとこを見られてんだよ。
中にはおっさんもいたな? ホテルにまで入るとこもつけられてる。
どうなってんだ、秋穂。
なんでそんなにヤケになってんだよ」
「秋穂、どういう、いや、そうなんだろな。
遠矢は嘘は言わない。遠矢、もうやめないか」
「友紀‥‥‥」
「いいんだよ、秋穂がそうなるのも無理はないんだ。
こんな狂った家庭で自分のわがままでみんなが変になるのを、さ。
こいつが一人で抱えきれる訳ないんだよ。だろ?」
ゆきのやつ、一人だけ先に冷めやがった。
卑怯だな、まったく。
俺がすぐに冷めたら、何にもならないだろ‥‥‥
「ダメだな。俺はまだ許せない。
それにお前もだ、友紀。
勝手に名前使いやがって。堂々と俺の目のまえで浮気する気か?」
「いや、僕はほら。
養子だから」
なんつー卑怯だよ、お前は。
全部、後始末は俺だ。
「なら、養子は二階は出入り禁止だ。お前はこれから、外の女と楽しめよ。
俺の名前でな。出てけーー」
「遠矢‥‥‥ごめんね、秋穂。
そういうことだから、じゃ」
「ちょっと!?
なによそれ、あれだけ大好きだってー‥‥‥」
それを無視して友紀は階下に降りていく。
しばらくして、バイクの排気音とともにガレージが閉まる音がした。
その間、遠矢は秋穂を再度、座らせて挨拶しろよ、そう命じていた。
なによこれ、どうなるの。
なんで、友紀は見捨てたの。
こんな遠矢なんてーー見たことがない!!
秋穂はこれから始まる何かに恐怖していた。
「さて、友紀は見捨てて行ったし。
お前の考えだと、女は夫のというか家の所有物だっけ?
古い考えだよな?
まあ、ものなら犬でも言い訳だ。どう扱おうと、なあ、秋穂?」
動くなよ!
そう言って、軽く蹴り飛ばされると秋穂は身体が硬直して動けない。
恐怖が全身を支配し始めていた。
「さて、どうするかな?
友紀は後ろの穴だのが趣味みたいだし。
他の男とどんなことして楽しんできたんだ?
前に見たスマホの中身に、御主人様なんえ返事してたのもあったよな?」
「な、なんで知って‥‥‥?」
「お前に何かあった時用にGPSつけてるの知らないだろ?
もう一台、スマホに同期させてるのも。一年前から」
全部、知られている?
それでー‥‥‥それでもここまで働いて介護までしてくれてたの?
「まあ、そういう性癖があるなら別に否定はしないよ。
俺は興味ないけどな。友紀も後ろにはないぞ。
お前は裸の自撮りだの、そっちの後ろの方の自慰画像だの。
動画よく送れたよな、あんだけ。見るたびに吐き気がしたわ。
旦那様二人いるから、前はダメなんです、後ろなら御主人様?
よくあんなセリフ、はけるよなお前」
髪をつかまれて、自分がその相手に送信した動画がズラリとそこには並んでいる。
それを見たくなくて秋穂は目を反らした。
「えーと、なんだっか?
ああ、そうだ。みき、だったよな、メス犬みきはー‥‥‥。
なんでこんなことしたんだ?
この半年で六回も会ってるみたいだな。まあ、もう二度と会う事はないけどな?」
「なんて、彼になにを。
御主人様にーー」
御主人様、か。
その心はもうあっちにあるんだな、お前。
友紀にはないのかよ。最初はあれだけ友紀が好きだったのに。
遠矢は悪人を演じながら悲しくなる。
その怪我が、全部を狂わせたことを。
「何もしてない。
ただ、夫として会いに行っただけだ。
結構な金持ちだったな、あのオッサン。
瀬名家の名前だしたら震えてたぞ?
ああ、親父さんにもーー」
「まさか、お父さんにまでばらしたの!?
なんで、そこまでーー」
責めるようにというよりも、噛みつく勢いで妻は叫び出す。
「あんたなんかが、友紀の隣にいるから!!
友紀はいつもあんたを見て、秋穂を見てくれないのよ!!!
こんな身体になってまで愛してくれるって言われてどれだけ嬉しかったか。
三人になって旦那様!? は、そんなこと言いたくない!
遠矢なんか消えればいい!!!
友紀といたかっただけだのに、いれないから御主人様に。
俺の奴隷になれば全部愛してやる、そう言ってくれたから‥‥‥。
ずっと半年間、心も身体も捧げて癒して貰ったのに。
あんたなんかがいるからーー」
おいおい、全部俺のせいかよ、秋穂ちゃん。
何も知らない、純白な奴隷かよまったく‥‥‥
「これ、見てみ?」
遠矢は秋穂を二階の自室に連れて行った。
そこにあったのはーー
「なによこれ。
まさかあんた、秋穂を飼う気!??」
いやいやいや、そんな訳ないでしょ?
演出用のツレから借りてきた死んだ犬のゲージとまあ、掃除はしたけど。
数千円した首輪とリード。あとはエサ用の皿。通販で仕入れた手足用の枷。
こんなん、本気で使うほどなあ?
まあ、いいや。真実を先に見せとくか。
「見ろよ、ほらこの雑誌」
差し出したのはどこで入手したのかSM投稿誌。
「その御主人様とやらが、よく出してるんだそうだ。
これ、お前な?
この下腹のなんだこれ、SLAVE? 奴隷?
こんなタトゥーあったか? 目線入ってるけどさ、杖とかで丸わかりな?
で、この他に二人。えらい年配、何歳だ? 24と26か?
七星みたいにさんざんピアス開けまくってるな?」
あ、しまった。
秋穂に睨まれる。
「見たんだ?
自分の妹の恋人の裸を!?
最低‥‥‥」
「首から下は知らん。耳の話しだ、あと、舌と。
どこで見れる機会があると?
こんだけ家に俺はいないし、樹乃と二人きり。
お前みたいにそこかしこに行ってないぞ? そんな足で動けるならもう介護はしないからな?
それより、この写真、知ってたのか?」
秋穂の視線が反らされる。中には女三人で映っているのもあった。
この辺りが移動の手伝いをさせてたのか、それともーー
「お姉さまたちには全部話してあるわ。
御主人様がどれだけ素晴らしい方かも聞かせて貰ったもん」
もんじゃないよ、もん、じゃ。
「その二人も含めて三人。
未成年をこの数年で同じようにしてだな‥‥‥この雑誌とかこれ。
これも知ってたか? この投稿サイト。有料の。
一億単位で儲かったらしいな? 警察に捕まったよ、一昨日な」
「そんな、嘘。
秋穂は騙されないーー」
「だーから。見ろよ、このサイトの中。
これ、お前な?
その前年は? その前は?
似たような、どこか怪我してたりしてる高校生ばっかだよな?
このうち、一人は自殺したのも知ってたか?」
これはショックだったらしい。
妻は唖然として口を開けていた。
「おい、なんだよその舌ピアスの穴の跡は。
まさか‥‥‥見せろ、ほら動くなーー」
「やあ、やだ!!
なんで、あんたなんかに!!
誰かーー」
タイミングが悪いというのは重なるものだ。
遠矢はつくづく運がないと感じた。
全裸の秋穂を踏みつけて股を開かせようとしている。
その向こうにはあのゲージだの首輪だの‥‥‥
「この、変態がーー!!!」
ぶほっ、いいブローが入った。強くなったなあ、樹乃。
この前喧嘩したあの族どもより、いいパンチだ。
そして蹴りが飛んでくる。見えない右側に。
「なにやってんのよ、ななせにはあんだけ心配するな言っておいて!
この浮気男!!!」
おお、七星。
お前の蹴りも道場の時より進化したな。
まじ、いてーよー‥‥‥だが。
「あーもう!!
うぜーわ!!!」
樹乃の正拳突きも七星の下段蹴りも。
あっという間に反らされ、いなされ‥‥‥。
「邪魔すんなら、メス犬三匹にすっぞ!?
おい、樹乃、七星!!?」
確かこいつら、この前影で見てたらこうやってスイッチがどうのこうのーー
樹乃は右側から、七星は左側から‥‥‥。
入る、わけないよな。こんなんで。
ただ、遠矢は理解していなかった。
男の平手と女のそれは、あまりにも力の差があることを。
「あ、あれ?
おい、ちょっと!?」
スイッチ以前に二人とも気を失っていた。
「げ、やり過ぎた‥‥‥」
「あんた、遠矢‥‥‥?!
樹乃ちゃん、七星ちゃん‥‥‥まさか、本気で三人とも!?
友紀と計画してたのね!!!???
この、ろくでなし!! 実の妹にまで手を出すなんて、人間のクズ!!!!」
あーもういいわ。
人生三人目だ。
これくらいなら、大丈夫だろ?
その平手でーー
「おい、なんだ、その顔‥‥‥」
まるで雑誌や動画で見せたような順々な獣の顔。
人間ではない、心を手放したそんな存在の顔。
「御主人様‥‥‥」
「はああーーー???
おい、ちょっと!?
あれか、先生が言ってたスイッチが入るように洗脳ってのはこれか。
あーあ‥‥‥おい、名前は?」
「はい、秋穂です。
見たいんですよ、ね?
秋穂のいやらしいとこ、いじめてくださいますか?」
勘弁しろよ、まじで!!
「待て。そこで待て、いいか?」
「はい」
なんなんだよ、これ。
狂いすぎだろ。
頼むから起きてくれ、妹。
「おい、樹乃、七星!!
頼むから、起きてくれ!!」
頭を振るとなにかまずいかもしれない、ついつい軽く平手で叩いてしまう。
「んー‥‥‥ひどい、ななせはいたっ」
「あ、起きた。すまん‥‥‥」
樹乃、起きろ――!
「兄貴なにするの、あんなに強く、っていたっ」
「あ、いや。すまん何度も叩いて、はああーーー???
なんだその顔は!?
お前らまでかよ!?
もう勘弁しろよ、おい、友紀!!
あ、いねーんだった‥‥‥」
これ、SM雑誌真っ青の光景だな、おい。
そんな趣味なくて良かった俺!!!
「御主人様、そんな二人より秋穂を!」
「うるさいよ、そこで待て!」
「はい‥‥‥」
「あれ、なんで、兄貴なのに‥‥‥なんでこんな気分。
樹乃どしたの?」
「ヤバい、これはヤバいよじゅのさん。
このまま躾けられたら、ななせたち、ペットなる‥‥‥」
あ、まだ理性ある。
躾けなんて‥‥‥。
「つくづく、損だよなあ、俺。
これだけ見た目綺麗なの三人もいるのに‥‥‥。
はあ、おい、七星!! 樹乃!!」
「は、はいーー兄さん」
「え、あ、うー‥‥‥とおやさ、ま?」
どんなプレイだよ、これは!!
落ち着けというか、もうめんどくせー。
「後ろ向け、このメス犬ども」
「げ、まじで躾ける気だ、ヤバい‥‥‥じゅのさん逃げ」
「七星、じゅの、無理。七星のいつものがまだ残ってる」
「ななせも、今朝のが‥‥‥」
「この二バカが!
どんなプレイしてんだよ、お前らは!!」
ついつい、二度目の頬打ちがーー頭になってしまった。
あ、ヤバ。
強かったか?
いやいやいや、更になんか加速してんぞ、これ?!
「おいっ、なんで後ろを向く‥‥‥」
「だって、とおやさまがななせに」
「じゅのをしつけたいって、にいさんが」
はあ。闇だよ闇。ラブコメのラノベでもこんな展開無いわ!!!
もうめんどくさい。
こいつら、とりあえず黙らせよう。
「おい、メス犬二匹。正座。あと伏せ。そのまんま、動くな。
でー七星は何だよその腕の怪我‥‥‥」
正座した七星をよしよしと撫でてやると感じる残り二人からの凄まじい視線。
あの御主人様やってたやつも相当、苦労したんだろなあ。
「とおやさま、ななせに優しい」
「バカ兄貴‥‥‥ななせだけ」
「御主人様!? 秋穂は!?」
もう、ストレスで禿げそうだ!!!
「秋穂、ゲージの中に入れ。
しばらく出てくんな!!」
もう中で漏らしても良い。
後から話つける。さっさと押し込んで鍵をかけた。
「こいつらどうするよ‥‥‥。
お前らさ、これどう思う?」
正座して待つ二匹? にあの雑誌を見せる。
「げ、あきほじゃん。マジモン‥‥‥」
「義姉さん、誰この男ーー兄貴もじゅのをこうしたいの?
ねえ、御主人様?」
「おい!」
「とおやは秋穂より、ななせとじゅのをしたらいいよ。
ねえ、じゅのさん」
「うん、そうだよ」
「きまりーー、ね、御主人様?」
「しねーよ!!! あほか!
どうやったらこれスイッチが戻るんだ?」
二人は顔を見合わせる。
二人の時は殴り合い、最後は気を失って目覚めると元通り。
「わかいんない」
「じゅのもーーねえ、いじめてもいいよ?」
「樹乃、黙れ」
「はい」
「あのな、そんな気はねーの!!
秋穂がこんなのに騙されて調教?
あれで洗脳みたいにされてたから、警察が動いたんだよ。
いいか、あれは全裸はその‥‥‥偶然ってか。
おれらは夫婦だからいいんだよ。
お前らのは‥‥‥」
「なに、とおやさん?
ななせとじゅののスイッチが入るようにしたじゃん?」
「お前、まだため口ってことは半分だな?」
「バレてる。腕痛いから。
でも、樹乃はだめ。本気モード。
いまなんかしたら、あとから刺すよ?」
「恐いわ!!
なんにもしない。悪かった、いろいろ頭に血が昇ってたり友紀はでて行くし。
いや、出ていかせたか正しくは。
いや、本当に何もしないから。
樹乃」
「はい、にいさん」
お前、どこまで本気だ、妹よ?
さっきの御主人様はどこいった??
「七星、と部屋に行け。
出てくるな。俺は秋穂と夫婦の話がある。
その、悪かった。叩いたりして。
秋穂は病院に入れる。その為の話をするからーー頼む」
「はい、御主人様」
いや、さっきにいさん、って!?
まあ、いいや。二人は消えた。
あれ、秋穂?
「おおい!!
なにやってんだ、お前は!!」
慌ててゲージの天井に括られたリードを外す。
鍵をあけて飛び込むとむせかえる妻がいた。
「なん、で。
死なせてくれないの、ごしゅじん、さま‥‥‥」
「お前なあ、捨てられたからって、死ぬ奴があるかよ?
どれだけ俺がお前を、お前だけを好きだと思ってんだよ。
なんで一年間も黙ってあれだけ介護やいろいろしたと思ってんだ?
友紀と寝ても怒らなかったのはなんでだと思ってんだよ。
なんで、わかんねーんだ。あんな他の男よりも一番お前の側にいたのは。
夫の俺だろうが‥‥‥?」
あー情けねーなんで泣いてんだろ俺。
こんな泣いてもこいつはあああ?
「おい、なんだ、その目?
え? なんだ、その雰囲気は。俺は友紀と違ってそういうの敏感だからな。
あいつは滅茶苦茶鈍感なんだ。空気読めないし、自分の出し方知らないからああなってんだよ。
で、おい、秋穂。
さっきの御主人様だの、スイッチが入るだの。
ああいうのは、半年くらいじゃ無理なんだな?
ええ? この写真や動画も当てつけでしかも、自分の趣味も入ってんだろ?
誰かに独占されたいってよお? なあ?
返事しろや」
「あ、はい‥‥‥御主人様」
「いや、もうそれはいい。
全裸でこんな雑誌や動画投稿出ても平気なら、いいよ。
そういう業者に売りとばすわ。知り合いいるからな。
おい待ってろよ、今電話ーー」
「うそうそうそ、待って、待ってよ!?
あんたマジで秋穂を売る気!!!
最低にもほどがあるわよ、このクソバカ遠矢!!!」
ほーら、これが本性だ。
なにが旦那様だの、御主人様だの。
首吊りも自作自演だろうが。
よく見たら死ねるほど高さないもんな、あれ。
「あれ、とおや?
なんで、そんな目が冷たい?
ねえ‥‥‥???」
「見せろ」
「は!?」
「は、じゃねえ!!
考えてみたら、これまでの介護も、ヤる時もずっと最低限か暗闇じゃねーか!
お前、わかってんだろな?」
「え、いや、何‥‥‥を??」
「もし、これ見たいにピアス?
なんだ、この乳首のと、下に三つもあるのは?
なんだ、このタトゥーは!!???」
ヤバイ、逃げなきゃ。
秋穂はそう考えるが、がっちりとその首輪に絡まったリードが遠矢の手に握りしめられている。
「もし、空いてたら‥‥‥」
「あ、空いてたら?」
「もし、タトゥーあったら」
「あった、ら‥‥‥???
とおや、くん??」
「全部、その場でちぎり取る」
その光景を想像して、思わず秋穂は全部を手で隠してしまう。
ふうん、タトゥーはシールか。
まあ、あの隣の部屋で踏みつけた時、背中には何もなかった。
ここに運びこんだ時に、上半身には穴はなかった。
あとは‥‥‥
遠矢は秋穂からすれば悪魔のように見えただろう。
ゲージから首輪を引っ張られて引きずり出されると、左足を踏みつけられて逃げれなくなる。
「覚悟しろよ、メス豚」
「そんな、メス豚なんて!?
御主人様にだって!!」
まだ懲りてないな、こいつ。
呆れて遠矢は何度か尻を叩いてやる。
「いたいいたいって、もう、いたいーー!!」
「返事は?
誰が、誰の、メス豚なんだよ?」
追加で叩いてから質問。
秋穂がおずおずと口を開いた。
「あ、あきほが、とおやさま、の‥‥‥メス豚です」
嘘つけ。
どこまで本気だよ、お前。
あーめんどくさ。
もっと叩いてやろ。
「ん? むぐっ?」
声が漏れないように手で塞いで、それから十数分。
遠矢の手も腫れ、秋穂のお尻は青くなっていた。
「開けよ、メス豚って思うなら。
自分から」
これで開くはずないよなあ。
開いても、病院送りはしなきゃなあ。
俺がそういう性癖ありゃ良かったのに。
もっと救えたのか、秋穂?
もっと早くに夫として、お前を救えたのか?
「はい‥‥‥見て、下さい。
秋穂のをーー」
「やめろ!!」
ああ、見たよ!!
何も‥‥‥穴の後があるわけ、なかったわ。
「だって、御主人様が見せろって!!??」
「開けたのか、開けてないのか。
どっちなんだ、ふさがったのか?」
「開けてない。
あれは、撮影用のやつ。
動画では後ろはしたけど、誰ともセックスはしてない。
もちろん、後ろも‥‥‥遠矢と友紀だけ。
きゃっ!」
壁をぶち抜く遠矢の拳がそこにはあった。
「もう、二度とするな。
友紀とも寝るな。俺だけの秋穂だ。いいな?」
遠矢君、血が‥‥‥。
それを言う前に言われてしまった。
そんなこと言われたら、返事なんて一つしかないじゃない。
ばか遠矢。
「はい、御主人様」
いや、それ違うだろ。
まじか? 真性なのか?
「おい、秋穂。
正直、わかんねーよ。
本気でSMしたいのか?
後ろとか、本気で好きなのか?
本物なのか? フリなのか、どっちなんだ?」
「本当に知りたい?」
「へー‥‥‥?」
なんでお前はそう俺を振り回すんだよ。
俺の奥様はよ?
「あー、知りてーな」
「バカ遠矢。
そんな口調なんてこれまで一度も見せなかった癖に。
あれだけお願いしてもバイクの後ろ載せないクセに、七星ちゃんは毎週、載せたりさ」
「え?
お前、寝てたんじゃあ。
なんで知ってんだよ。この住宅街抜けてから合流してんだぞ?」
「だからバカ遠矢なのよ!!
少しくらい歩ける。いつも悔しかった。
秋穂が妻なのに。一番は七星ちゃんだった。あの時だけじゃない。
いつもいつもいつも。
友紀に任せて安心したかもしれないけど、なんであの子ばっかり。
七星なんて大嫌い!!」
「ななせも嫌いなんですけどーついでに樹乃も。
あんたなんて、全部演技で下手な嘘ついてさ。
片足が不自由です?
ふざけんな。それは仕方ないって思うけどさ。
片目が目が見えないのは、遠矢さんもななせも一緒だっての!?
この露出狂&メス豚秋穂!!」
「ちょっと!?
七星、見るだけって!!」
「うるさい、樹乃は黙ってろ!」
「やーだー樹乃だけの七星なのにーー」
「いまスイッチ入れんな、お前はもう自由自在か、この!」
あーあ。
全部見られたよ。
なにがスイッチだ、何が御主人様だ。
こんな狂った世界線、もう腐って消えちまえ!
「おーい、七星。
誰だ? さっき半分だの、全部だの本気モードだの。
いまされたらペットお?
全部演技かよ、コラ?」
「あんた、その言葉遣いなんとかしなさいよ!」
「あんたって秋穂。
お前、どれが本性?」
「これよ!!
全部秋穂!
嫌なら捨てれば?」
ぶんむくれてそっぽを向く妻を遠矢は抱き上げる。
「ん、わかった。
このまま、外に捨てるわ。
犬小屋用意してやるから、そこで全裸で過ごせ。
な? それが好きなんだろ?
たまに後ろも可愛がってやるよ、好きなんだろ?」
「ちょっ!?
ふさけろ、バカ遠矢--!!!
降ろせってば! 好きな訳ないでしょ?
後ろだって痛いんだから、道具だって細いのしかしてないし!
寂しかったの、振り向いて欲しかったの!!!
こんなの好きじゃない!」
あーあ、ようやく本音だ。
首輪も捨ててくれたし。
もう、勘弁しろよ。まじで。
「わかった。
なら、ちゃんと式挙げような?」
「へ?」
服着ろよ、とその辺りにあったシャツを秋穂に投げてやる。
「指輪も買いに行きたいし、みんな呼んでちゃんとした式挙げようや。
んで、これが俺。わかったか?」
「あ、うん‥‥‥はい」
なんだよ、そのしおらしいの。
調子狂うわあ。遠矢はぼやきにぼやいた。心の中で。
「で、この家は帰さねーぞ。さんざん巻き込んだ罰だ。
おじさんには、家だけじゃねー。
お前の治療費に学費に、結婚式代、旅行費用に、車。
バイクのレース復帰スポンサー。
全部、なってもらうからな?」
「え、兄貴?
戻るつもり?」
「げーいいなあ。ななせも‥‥‥」
うるさいペット志願者が二名。
まだいるのを忘れていた。
「お前ら、ペットなりてーの?
あんなんで躾けたらなるなら、いまからやるか?
首輪あるぞ?」
意地悪そうににらんでやると、
「んなわけないじゃん、あんなの!」
「そうだよ、遠矢のクズ!
ななせしつぼー。演技に決まってんじゃん」
だよなあ。
これではいなんて言われたらーー
「ちょっと!
やるなら、秋穂でしょ?」
「おい、冗談きつい」
「ごめん」
なにがごめんだよ。
抱き着いて来たら全部許すと思ったら‥‥‥許すけど。
あ、あいつら逃げやがった。
あの二人も恋愛するのはいいからなあ。
幸せにはなって欲しい。そう思う遠矢だった。
「ねえ、旦那様」
「はあ?
お前、友紀とやったのか?」
視線そらすなよ。頼むから。
おーい、俺の秋穂‥‥‥
「したけど。でも、もう嫌。
ただ、したのはここ住む前だよ?」
「はあ?」
「だって友紀と最初付き合ってたもん。
その後は、最後まではない」
偉そうに言うなよ。
その事実だけでもショックだわ。
「友紀とは養子縁組解消しとけよ?」
「あれ、知らなかったの?
籍があるのは遠矢君だけだよ?」
マジかよ、あの親父。
そういや、戸籍謄本とかの確認すらしてないわ。結婚の入籍届けだしたきりだ。
それを聞いて安心すると、同時になんかカチンときた遠矢だった。
あの雑誌といい、友紀といい、投稿動画といい。
お前、浮気しすぎだろ!?
「反省しろ」
「え、ちょっと! なんで脱がす、なによその首輪!?
本気? ちょっと! やだ!」
首輪に手枷足枷。
あれだ、棒に手足しばられてるイノシシ状態だ。
口枷で文句言えないだろうし。
「そのまま、一晩放置してやる。
反省するまでな」
こんなん、アメにしかならない気もする。
実際、秋穂がそれで悦んでる画像と動画があるのだから。
「明日朝一で外してやる。
じゃな」
「むっむぐーー!!!」
扉を閉めて、遠矢はその場にへたれこんだ。
嫁さんは元M奴隷かよ。
追い込んだのは俺だ。
いや、友紀か。
それともーーやっぱ、放置はできねーな。
部屋に戻って、そのまま抱きかかえてベッドへ放り込む。
手枷足枷、首輪に口輪。
本当に趣味悪いわ、この系統って。
「ひどいじゃない!
好きって言った癖に、全部受け入れるって。結婚しようって言ったくせにいー‥‥‥」
泣くなよ、俺が泣きたいんだから。
壊れた世界線、二人で戻そうぜ、秋穂。
「ねえ?」
「は?」
「本当に‥‥‥躾けたいなら。
いいよ、それが遠矢がしたいなら」
「お前はどうなんだよ?
幸せだったのか? もし、俺がそれをして、お前は幸せなのか?
あんな雑誌に載せられて、ピアス開けられて、あんな趣味あるのか?」
なんで黙る。
泣くなよ、頼むから。
「恐かった! 痛かった! 幸せじゃなかった!!
なにもよくなかった!! いつもいつもいつも誰か助けてって叫んでたのにーー
遠矢も友紀も誰も‥‥‥来なかった」
ああ、そうだよなあ。わかるよ、その気持ち。
俺たちも毎回だ、いっつも夜を走って喧嘩する時に誰かに言ってるもんなあ。
誰かとめてくれ、助けてくれってさあ。
友紀の声がよく聞こえてくるもんな。で、行ったら俺だけが一人だ。
誰にも言えないでいたやつが、あるもんな。
よくわかるよ、秋穂。
「今回は、間に合ったか?」
「うんー‥‥‥多分」
「たぶん、な。
二人で病院行こうな?
俺もこんな暴力的なの嫌だからよ。お前もどっか狂ったとこ、別のどっかから治そうぜ?
な、奥様?」
「うん、旦那様」
少しだけ狂った世界線は、こうやって補正されていくのかもしれない。
秋穂の声は甘酸っぱい。
優しく問いかけてくるようで、その中にブルーベリージャムみたいなものが心に溶け込んでくる。
ただし、それが本心なら。
「旦那様は、僕には要らないでしょ?
あそこにいたらあの二人が帰宅したら、喧嘩になるよ秋穂」
友紀は見た目にはその細い身体の割には強い力で、秋穂を軽々と抱き上げる。
「ほら、ベッドに行こう?
僕の、さ」
二階には双子の別室みたいな部屋がある。
これには秋穂が目を丸めた。
「あんな、狭いとこで?
下の方が広いしのんびり‥‥‥」
「遠矢が帰宅しても同じこと言えるの?
全裸でいつも見たいに、幼な妻じゃないけどさ。
あんな平伏して迎えれるなら、別にいいよ?
いたっ。なにするのさ」
「何もないでしょ、友紀のばか。
あんたがそれ望むならするわよ。
遠矢には嫌」
抱き上げられて回した腕の先。
背中の肉を摘まみ上げられて、友紀はまったくとぼやく。
「遠矢にも見せてるならすればいいじゃないか。
したことがない、そうは言わせないよ?」
嘘もいい加減にしろ。
この幼馴染の夫の片方は、もう片方よりよほど、勘が鋭い。
なんでそうもあっけなくバレるのよ。
秋穂は心で毒づいていた。
「ほら」
「ちょっと!?」
物のようにベッドに放り込まれて秋穂は悲鳴に近い文句言った。
「見えないし、動かないのは本当なのに!!!
なんでーーなによ、それ?」
「なにって、子供欲しくないし。
遠矢と同じとこも嫌だし。
ね?
秋穂は僕が好きならなんでもするんだろ?
動けないし、無理矢理も好きなんだろ?
自分が独占したいからって、父親まで巻き込んでさ。
その上で、二人の夫にそれぞれ嘘ついて」
「やっ、やだ、やめてよーー」
友紀は逃げようとする秋穂の服をさっさと脱がしていく。
「抵抗できないんだから、諦めたら?
僕らが双子だってこと、舐め過ぎなんだよ、お前」
僕、普段の笑顔に柔らかい物腰、丁寧な口調。
そして、周りから一歩引いて歩く臆病な外見?
とんでもない。
バイクを扱えば遠矢よりも荒々しく、他のチームと揉めれば真っ先に殴りこんでいく。
ミニバイクを始めた頃に体力作りにと。
双子を通わせた近所の道場じゃあ、友紀は誰よりも強い。
外見は大人しく、中身は苛烈。そして‥‥‥誰よりも冷酷で残酷だ。
秋穂の顔がこわばっていく。
この人に逆らえばーーあの不良どものように。
あの日、絡んできたあいつらを笑顔で殴り続けたのは友紀の方だった。
最初は秋穂は遠矢と勘違いをしていた。近付いてみて、友紀の内面を知りその暴力性に惹かれた。
そしてーー
「待って、待ってよ。
それは嫌だ、本当に、嫌。
僕の女になるなら、遠矢君にも同じようにしろって。
あの結婚した日に言ったの友紀じゃない。なのに、こんなに無理矢理‥‥‥」
そう言うと、友紀の手が止まる。
彼は遠矢の名前が出ると、数分だが暴力性に歯止めがかかる。
双子は二人で一つ。
遠矢は恐ろしいほどに優しすぎた。
「無理矢理なんて言っても、あのバカ妹たちみたいなSMまがいなことしてるわけじゃなし。
別にしたいなら首輪でも買ってくる?
この辺りなら、深夜は誰もいないから散歩でもなんでもできるけど?」
「そんな話してない!
左足本当に動かないんだから、抑えつけるのやめてよ‥‥‥
せめて見える方の目で見ながら話をさせて、お願い」
そこまで言わせて、友紀は秋穂をベッドに座らせる。
そうは言っても、彼にも理性はある。
七星が樹乃を殴るような、手を挙げたことはなかった。
「なんで怒ってるの?
それくらいは、秋穂にだってわかるわよ」
ドンっと友紀は苛立ち紛れにその辺りの段ボール。
引っ越してきて荷物が詰まったまま、一年近く放置してきたものを蹴り飛ばしていた。
「遠矢はな、秋穂の為にどれだけ犠牲になってるかお前理解してるのか?
お前が僕を独占したいならそうすれば良かっただろ。
なんで兄貴を巻き込んだ?
あの日のあの狂った会話はなんだ?」
「それはーー」
「それはなんだよ、しかも遠矢が夫で、僕が養子?
ふざけるなよ、秋穂。この一年間、我慢してきたがもう無理だ。
兄貴がどれだけ苦しんでるか、全部、お前のーー」
「やーめろ、友紀」
友紀は勢い余って秋穂の首に手をかけた時だ。
「兄貴、なんで。
いるならわかるはず‥‥‥」
「わかるって、どういうことよーー」
双子の特殊能力?
秋穂の頭が混乱する。
「分かるんだよ、なんとなく。
お前を殴りたくて仕方がない。遠矢だってわかるだろ!?」
入り口でじっと立つ遠矢の視線は秋穂から離れない。
「秋穂、相変わらずいい身体だな。
もうここ二週間見てないけどな。
おい、友紀。とりあえず、手を降ろせ。
で、話をしよう」
扉を閉めて遠矢は床に座った。
こっちに来い、そう秋穂を手招きする。
「でもー秋穂は、友紀が‥‥‥」
「うるさいな、お前は。
俺の妻だろうが、早く来いよ。
お帰りなさいませ、旦那様はどうした?
そのまま、床に伏せて言えないのか?」
これには友紀が黙っていない。
「おい、遠矢!!?」
「お前は黙ってろ。
一番働いてるのも、この女の看病してるのも俺だ。
違うか?」
「それはー」
「友紀、バイト先で噂になってんぞ?
なんで俺の名前使った?
秋穂で満足できないのか?
この女がお前好みのなんだー?
七星みたいな、いやわからんがどМか?
あんな、尽くします的な女じゃないからか?
おい、秋穂。出迎えの挨拶は?」
こんなかっこうで、好きな友紀の目の前で‥‥‥
プライドを揺さぶられながら少女は妻として夫に挨拶をする。
怒りに震えながら、土下座までさせられて。
「おかえ、りないませ‥‥‥旦那様」
はあー‥‥‥遠矢がため息交じりに立ち上がり、その頭を踏みつけた。
「遠矢!?」
「旦那様、いた‥‥‥い、足が足がー」
「うるさいよ、黙れ物」
物?
わたしが!?
秋穂は抵抗しようとするが、左と頭に全体重をかけられた身動きできない。
「なんで、もの呼ばわり‥‥‥遠矢君ーー!!?
いた、いー友紀、助けて‥‥‥」
「来るな友紀。
座ってろ」
友紀はにらまれて動けなくなる。
この弟は知っている。
普段の優しさが裏返しになった時の遠矢の恐さを。
「おい、もの。
ものが嫌なら、奴隷か?
七星みたいに樹乃をメス犬樹乃なんて呼ぶみたいに、そう呼んでやろうか?
え、メス犬よりも始末の悪い、メス豚。
男と見れば節操がない、俺たちがいない日にどれだけ高校やあの周りで遊んでるか。
知らないと思ってんのか?
片足が不自由なのはまだわかる。
その苛立ちも理解出来ないが、少しはわかる。
だが、目が見えない?
そんなのはな、七星も俺も同じなんだよ。
アイツは事故で、俺は喧嘩で。それぞれ見えないんだ、知ってたか?
それで誰かに甘えたか?
足の介護だけは何も言わねえよ。それはどうしようもない。
そう思って、お前が友紀を好きだからってのも理解してあの提案の受けた。
あれから、毎晩のように友紀がいない時、俺を求めたよな?
それも何かの償いかと思って耐えてきた。散々、深夜まで働いて支えてきた」
そこまで言って、遠矢は秋穂を蹴とばす。
「で、なんだ?
友紀に一途ならまだ許せたが、今度は他の男か?」
なんだよそれ、秋穂。
他の男って。
「友紀、いい加減に目を覚ませよ。
チームのやつらがどれだけお前を心配してるのか分からないのか?
この一年、散々、いろんなやつといるとこを見られてんだよ。
中にはおっさんもいたな? ホテルにまで入るとこもつけられてる。
どうなってんだ、秋穂。
なんでそんなにヤケになってんだよ」
「秋穂、どういう、いや、そうなんだろな。
遠矢は嘘は言わない。遠矢、もうやめないか」
「友紀‥‥‥」
「いいんだよ、秋穂がそうなるのも無理はないんだ。
こんな狂った家庭で自分のわがままでみんなが変になるのを、さ。
こいつが一人で抱えきれる訳ないんだよ。だろ?」
ゆきのやつ、一人だけ先に冷めやがった。
卑怯だな、まったく。
俺がすぐに冷めたら、何にもならないだろ‥‥‥
「ダメだな。俺はまだ許せない。
それにお前もだ、友紀。
勝手に名前使いやがって。堂々と俺の目のまえで浮気する気か?」
「いや、僕はほら。
養子だから」
なんつー卑怯だよ、お前は。
全部、後始末は俺だ。
「なら、養子は二階は出入り禁止だ。お前はこれから、外の女と楽しめよ。
俺の名前でな。出てけーー」
「遠矢‥‥‥ごめんね、秋穂。
そういうことだから、じゃ」
「ちょっと!?
なによそれ、あれだけ大好きだってー‥‥‥」
それを無視して友紀は階下に降りていく。
しばらくして、バイクの排気音とともにガレージが閉まる音がした。
その間、遠矢は秋穂を再度、座らせて挨拶しろよ、そう命じていた。
なによこれ、どうなるの。
なんで、友紀は見捨てたの。
こんな遠矢なんてーー見たことがない!!
秋穂はこれから始まる何かに恐怖していた。
「さて、友紀は見捨てて行ったし。
お前の考えだと、女は夫のというか家の所有物だっけ?
古い考えだよな?
まあ、ものなら犬でも言い訳だ。どう扱おうと、なあ、秋穂?」
動くなよ!
そう言って、軽く蹴り飛ばされると秋穂は身体が硬直して動けない。
恐怖が全身を支配し始めていた。
「さて、どうするかな?
友紀は後ろの穴だのが趣味みたいだし。
他の男とどんなことして楽しんできたんだ?
前に見たスマホの中身に、御主人様なんえ返事してたのもあったよな?」
「な、なんで知って‥‥‥?」
「お前に何かあった時用にGPSつけてるの知らないだろ?
もう一台、スマホに同期させてるのも。一年前から」
全部、知られている?
それでー‥‥‥それでもここまで働いて介護までしてくれてたの?
「まあ、そういう性癖があるなら別に否定はしないよ。
俺は興味ないけどな。友紀も後ろにはないぞ。
お前は裸の自撮りだの、そっちの後ろの方の自慰画像だの。
動画よく送れたよな、あんだけ。見るたびに吐き気がしたわ。
旦那様二人いるから、前はダメなんです、後ろなら御主人様?
よくあんなセリフ、はけるよなお前」
髪をつかまれて、自分がその相手に送信した動画がズラリとそこには並んでいる。
それを見たくなくて秋穂は目を反らした。
「えーと、なんだっか?
ああ、そうだ。みき、だったよな、メス犬みきはー‥‥‥。
なんでこんなことしたんだ?
この半年で六回も会ってるみたいだな。まあ、もう二度と会う事はないけどな?」
「なんて、彼になにを。
御主人様にーー」
御主人様、か。
その心はもうあっちにあるんだな、お前。
友紀にはないのかよ。最初はあれだけ友紀が好きだったのに。
遠矢は悪人を演じながら悲しくなる。
その怪我が、全部を狂わせたことを。
「何もしてない。
ただ、夫として会いに行っただけだ。
結構な金持ちだったな、あのオッサン。
瀬名家の名前だしたら震えてたぞ?
ああ、親父さんにもーー」
「まさか、お父さんにまでばらしたの!?
なんで、そこまでーー」
責めるようにというよりも、噛みつく勢いで妻は叫び出す。
「あんたなんかが、友紀の隣にいるから!!
友紀はいつもあんたを見て、秋穂を見てくれないのよ!!!
こんな身体になってまで愛してくれるって言われてどれだけ嬉しかったか。
三人になって旦那様!? は、そんなこと言いたくない!
遠矢なんか消えればいい!!!
友紀といたかっただけだのに、いれないから御主人様に。
俺の奴隷になれば全部愛してやる、そう言ってくれたから‥‥‥。
ずっと半年間、心も身体も捧げて癒して貰ったのに。
あんたなんかがいるからーー」
おいおい、全部俺のせいかよ、秋穂ちゃん。
何も知らない、純白な奴隷かよまったく‥‥‥
「これ、見てみ?」
遠矢は秋穂を二階の自室に連れて行った。
そこにあったのはーー
「なによこれ。
まさかあんた、秋穂を飼う気!??」
いやいやいや、そんな訳ないでしょ?
演出用のツレから借りてきた死んだ犬のゲージとまあ、掃除はしたけど。
数千円した首輪とリード。あとはエサ用の皿。通販で仕入れた手足用の枷。
こんなん、本気で使うほどなあ?
まあ、いいや。真実を先に見せとくか。
「見ろよ、ほらこの雑誌」
差し出したのはどこで入手したのかSM投稿誌。
「その御主人様とやらが、よく出してるんだそうだ。
これ、お前な?
この下腹のなんだこれ、SLAVE? 奴隷?
こんなタトゥーあったか? 目線入ってるけどさ、杖とかで丸わかりな?
で、この他に二人。えらい年配、何歳だ? 24と26か?
七星みたいにさんざんピアス開けまくってるな?」
あ、しまった。
秋穂に睨まれる。
「見たんだ?
自分の妹の恋人の裸を!?
最低‥‥‥」
「首から下は知らん。耳の話しだ、あと、舌と。
どこで見れる機会があると?
こんだけ家に俺はいないし、樹乃と二人きり。
お前みたいにそこかしこに行ってないぞ? そんな足で動けるならもう介護はしないからな?
それより、この写真、知ってたのか?」
秋穂の視線が反らされる。中には女三人で映っているのもあった。
この辺りが移動の手伝いをさせてたのか、それともーー
「お姉さまたちには全部話してあるわ。
御主人様がどれだけ素晴らしい方かも聞かせて貰ったもん」
もんじゃないよ、もん、じゃ。
「その二人も含めて三人。
未成年をこの数年で同じようにしてだな‥‥‥この雑誌とかこれ。
これも知ってたか? この投稿サイト。有料の。
一億単位で儲かったらしいな? 警察に捕まったよ、一昨日な」
「そんな、嘘。
秋穂は騙されないーー」
「だーから。見ろよ、このサイトの中。
これ、お前な?
その前年は? その前は?
似たような、どこか怪我してたりしてる高校生ばっかだよな?
このうち、一人は自殺したのも知ってたか?」
これはショックだったらしい。
妻は唖然として口を開けていた。
「おい、なんだよその舌ピアスの穴の跡は。
まさか‥‥‥見せろ、ほら動くなーー」
「やあ、やだ!!
なんで、あんたなんかに!!
誰かーー」
タイミングが悪いというのは重なるものだ。
遠矢はつくづく運がないと感じた。
全裸の秋穂を踏みつけて股を開かせようとしている。
その向こうにはあのゲージだの首輪だの‥‥‥
「この、変態がーー!!!」
ぶほっ、いいブローが入った。強くなったなあ、樹乃。
この前喧嘩したあの族どもより、いいパンチだ。
そして蹴りが飛んでくる。見えない右側に。
「なにやってんのよ、ななせにはあんだけ心配するな言っておいて!
この浮気男!!!」
おお、七星。
お前の蹴りも道場の時より進化したな。
まじ、いてーよー‥‥‥だが。
「あーもう!!
うぜーわ!!!」
樹乃の正拳突きも七星の下段蹴りも。
あっという間に反らされ、いなされ‥‥‥。
「邪魔すんなら、メス犬三匹にすっぞ!?
おい、樹乃、七星!!?」
確かこいつら、この前影で見てたらこうやってスイッチがどうのこうのーー
樹乃は右側から、七星は左側から‥‥‥。
入る、わけないよな。こんなんで。
ただ、遠矢は理解していなかった。
男の平手と女のそれは、あまりにも力の差があることを。
「あ、あれ?
おい、ちょっと!?」
スイッチ以前に二人とも気を失っていた。
「げ、やり過ぎた‥‥‥」
「あんた、遠矢‥‥‥?!
樹乃ちゃん、七星ちゃん‥‥‥まさか、本気で三人とも!?
友紀と計画してたのね!!!???
この、ろくでなし!! 実の妹にまで手を出すなんて、人間のクズ!!!!」
あーもういいわ。
人生三人目だ。
これくらいなら、大丈夫だろ?
その平手でーー
「おい、なんだ、その顔‥‥‥」
まるで雑誌や動画で見せたような順々な獣の顔。
人間ではない、心を手放したそんな存在の顔。
「御主人様‥‥‥」
「はああーーー???
おい、ちょっと!?
あれか、先生が言ってたスイッチが入るように洗脳ってのはこれか。
あーあ‥‥‥おい、名前は?」
「はい、秋穂です。
見たいんですよ、ね?
秋穂のいやらしいとこ、いじめてくださいますか?」
勘弁しろよ、まじで!!
「待て。そこで待て、いいか?」
「はい」
なんなんだよ、これ。
狂いすぎだろ。
頼むから起きてくれ、妹。
「おい、樹乃、七星!!
頼むから、起きてくれ!!」
頭を振るとなにかまずいかもしれない、ついつい軽く平手で叩いてしまう。
「んー‥‥‥ひどい、ななせはいたっ」
「あ、起きた。すまん‥‥‥」
樹乃、起きろ――!
「兄貴なにするの、あんなに強く、っていたっ」
「あ、いや。すまん何度も叩いて、はああーーー???
なんだその顔は!?
お前らまでかよ!?
もう勘弁しろよ、おい、友紀!!
あ、いねーんだった‥‥‥」
これ、SM雑誌真っ青の光景だな、おい。
そんな趣味なくて良かった俺!!!
「御主人様、そんな二人より秋穂を!」
「うるさいよ、そこで待て!」
「はい‥‥‥」
「あれ、なんで、兄貴なのに‥‥‥なんでこんな気分。
樹乃どしたの?」
「ヤバい、これはヤバいよじゅのさん。
このまま躾けられたら、ななせたち、ペットなる‥‥‥」
あ、まだ理性ある。
躾けなんて‥‥‥。
「つくづく、損だよなあ、俺。
これだけ見た目綺麗なの三人もいるのに‥‥‥。
はあ、おい、七星!! 樹乃!!」
「は、はいーー兄さん」
「え、あ、うー‥‥‥とおやさ、ま?」
どんなプレイだよ、これは!!
落ち着けというか、もうめんどくせー。
「後ろ向け、このメス犬ども」
「げ、まじで躾ける気だ、ヤバい‥‥‥じゅのさん逃げ」
「七星、じゅの、無理。七星のいつものがまだ残ってる」
「ななせも、今朝のが‥‥‥」
「この二バカが!
どんなプレイしてんだよ、お前らは!!」
ついつい、二度目の頬打ちがーー頭になってしまった。
あ、ヤバ。
強かったか?
いやいやいや、更になんか加速してんぞ、これ?!
「おいっ、なんで後ろを向く‥‥‥」
「だって、とおやさまがななせに」
「じゅのをしつけたいって、にいさんが」
はあ。闇だよ闇。ラブコメのラノベでもこんな展開無いわ!!!
もうめんどくさい。
こいつら、とりあえず黙らせよう。
「おい、メス犬二匹。正座。あと伏せ。そのまんま、動くな。
でー七星は何だよその腕の怪我‥‥‥」
正座した七星をよしよしと撫でてやると感じる残り二人からの凄まじい視線。
あの御主人様やってたやつも相当、苦労したんだろなあ。
「とおやさま、ななせに優しい」
「バカ兄貴‥‥‥ななせだけ」
「御主人様!? 秋穂は!?」
もう、ストレスで禿げそうだ!!!
「秋穂、ゲージの中に入れ。
しばらく出てくんな!!」
もう中で漏らしても良い。
後から話つける。さっさと押し込んで鍵をかけた。
「こいつらどうするよ‥‥‥。
お前らさ、これどう思う?」
正座して待つ二匹? にあの雑誌を見せる。
「げ、あきほじゃん。マジモン‥‥‥」
「義姉さん、誰この男ーー兄貴もじゅのをこうしたいの?
ねえ、御主人様?」
「おい!」
「とおやは秋穂より、ななせとじゅのをしたらいいよ。
ねえ、じゅのさん」
「うん、そうだよ」
「きまりーー、ね、御主人様?」
「しねーよ!!! あほか!
どうやったらこれスイッチが戻るんだ?」
二人は顔を見合わせる。
二人の時は殴り合い、最後は気を失って目覚めると元通り。
「わかいんない」
「じゅのもーーねえ、いじめてもいいよ?」
「樹乃、黙れ」
「はい」
「あのな、そんな気はねーの!!
秋穂がこんなのに騙されて調教?
あれで洗脳みたいにされてたから、警察が動いたんだよ。
いいか、あれは全裸はその‥‥‥偶然ってか。
おれらは夫婦だからいいんだよ。
お前らのは‥‥‥」
「なに、とおやさん?
ななせとじゅののスイッチが入るようにしたじゃん?」
「お前、まだため口ってことは半分だな?」
「バレてる。腕痛いから。
でも、樹乃はだめ。本気モード。
いまなんかしたら、あとから刺すよ?」
「恐いわ!!
なんにもしない。悪かった、いろいろ頭に血が昇ってたり友紀はでて行くし。
いや、出ていかせたか正しくは。
いや、本当に何もしないから。
樹乃」
「はい、にいさん」
お前、どこまで本気だ、妹よ?
さっきの御主人様はどこいった??
「七星、と部屋に行け。
出てくるな。俺は秋穂と夫婦の話がある。
その、悪かった。叩いたりして。
秋穂は病院に入れる。その為の話をするからーー頼む」
「はい、御主人様」
いや、さっきにいさん、って!?
まあ、いいや。二人は消えた。
あれ、秋穂?
「おおい!!
なにやってんだ、お前は!!」
慌ててゲージの天井に括られたリードを外す。
鍵をあけて飛び込むとむせかえる妻がいた。
「なん、で。
死なせてくれないの、ごしゅじん、さま‥‥‥」
「お前なあ、捨てられたからって、死ぬ奴があるかよ?
どれだけ俺がお前を、お前だけを好きだと思ってんだよ。
なんで一年間も黙ってあれだけ介護やいろいろしたと思ってんだ?
友紀と寝ても怒らなかったのはなんでだと思ってんだよ。
なんで、わかんねーんだ。あんな他の男よりも一番お前の側にいたのは。
夫の俺だろうが‥‥‥?」
あー情けねーなんで泣いてんだろ俺。
こんな泣いてもこいつはあああ?
「おい、なんだ、その目?
え? なんだ、その雰囲気は。俺は友紀と違ってそういうの敏感だからな。
あいつは滅茶苦茶鈍感なんだ。空気読めないし、自分の出し方知らないからああなってんだよ。
で、おい、秋穂。
さっきの御主人様だの、スイッチが入るだの。
ああいうのは、半年くらいじゃ無理なんだな?
ええ? この写真や動画も当てつけでしかも、自分の趣味も入ってんだろ?
誰かに独占されたいってよお? なあ?
返事しろや」
「あ、はい‥‥‥御主人様」
「いや、もうそれはいい。
全裸でこんな雑誌や動画投稿出ても平気なら、いいよ。
そういう業者に売りとばすわ。知り合いいるからな。
おい待ってろよ、今電話ーー」
「うそうそうそ、待って、待ってよ!?
あんたマジで秋穂を売る気!!!
最低にもほどがあるわよ、このクソバカ遠矢!!!」
ほーら、これが本性だ。
なにが旦那様だの、御主人様だの。
首吊りも自作自演だろうが。
よく見たら死ねるほど高さないもんな、あれ。
「あれ、とおや?
なんで、そんな目が冷たい?
ねえ‥‥‥???」
「見せろ」
「は!?」
「は、じゃねえ!!
考えてみたら、これまでの介護も、ヤる時もずっと最低限か暗闇じゃねーか!
お前、わかってんだろな?」
「え、いや、何‥‥‥を??」
「もし、これ見たいにピアス?
なんだ、この乳首のと、下に三つもあるのは?
なんだ、このタトゥーは!!???」
ヤバイ、逃げなきゃ。
秋穂はそう考えるが、がっちりとその首輪に絡まったリードが遠矢の手に握りしめられている。
「もし、空いてたら‥‥‥」
「あ、空いてたら?」
「もし、タトゥーあったら」
「あった、ら‥‥‥???
とおや、くん??」
「全部、その場でちぎり取る」
その光景を想像して、思わず秋穂は全部を手で隠してしまう。
ふうん、タトゥーはシールか。
まあ、あの隣の部屋で踏みつけた時、背中には何もなかった。
ここに運びこんだ時に、上半身には穴はなかった。
あとは‥‥‥
遠矢は秋穂からすれば悪魔のように見えただろう。
ゲージから首輪を引っ張られて引きずり出されると、左足を踏みつけられて逃げれなくなる。
「覚悟しろよ、メス豚」
「そんな、メス豚なんて!?
御主人様にだって!!」
まだ懲りてないな、こいつ。
呆れて遠矢は何度か尻を叩いてやる。
「いたいいたいって、もう、いたいーー!!」
「返事は?
誰が、誰の、メス豚なんだよ?」
追加で叩いてから質問。
秋穂がおずおずと口を開いた。
「あ、あきほが、とおやさま、の‥‥‥メス豚です」
嘘つけ。
どこまで本気だよ、お前。
あーめんどくさ。
もっと叩いてやろ。
「ん? むぐっ?」
声が漏れないように手で塞いで、それから十数分。
遠矢の手も腫れ、秋穂のお尻は青くなっていた。
「開けよ、メス豚って思うなら。
自分から」
これで開くはずないよなあ。
開いても、病院送りはしなきゃなあ。
俺がそういう性癖ありゃ良かったのに。
もっと救えたのか、秋穂?
もっと早くに夫として、お前を救えたのか?
「はい‥‥‥見て、下さい。
秋穂のをーー」
「やめろ!!」
ああ、見たよ!!
何も‥‥‥穴の後があるわけ、なかったわ。
「だって、御主人様が見せろって!!??」
「開けたのか、開けてないのか。
どっちなんだ、ふさがったのか?」
「開けてない。
あれは、撮影用のやつ。
動画では後ろはしたけど、誰ともセックスはしてない。
もちろん、後ろも‥‥‥遠矢と友紀だけ。
きゃっ!」
壁をぶち抜く遠矢の拳がそこにはあった。
「もう、二度とするな。
友紀とも寝るな。俺だけの秋穂だ。いいな?」
遠矢君、血が‥‥‥。
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ばか遠矢。
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いつもいつもいつも。
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「ななせも嫌いなんですけどーついでに樹乃も。
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ふざけんな。それは仕方ないって思うけどさ。
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「ちょっと!?
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「やーだー樹乃だけの七星なのにーー」
「いまスイッチ入れんな、お前はもう自由自在か、この!」
あーあ。
全部見られたよ。
なにがスイッチだ、何が御主人様だ。
こんな狂った世界線、もう腐って消えちまえ!
「おーい、七星。
誰だ? さっき半分だの、全部だの本気モードだの。
いまされたらペットお?
全部演技かよ、コラ?」
「あんた、その言葉遣いなんとかしなさいよ!」
「あんたって秋穂。
お前、どれが本性?」
「これよ!!
全部秋穂!
嫌なら捨てれば?」
ぶんむくれてそっぽを向く妻を遠矢は抱き上げる。
「ん、わかった。
このまま、外に捨てるわ。
犬小屋用意してやるから、そこで全裸で過ごせ。
な? それが好きなんだろ?
たまに後ろも可愛がってやるよ、好きなんだろ?」
「ちょっ!?
ふさけろ、バカ遠矢--!!!
降ろせってば! 好きな訳ないでしょ?
後ろだって痛いんだから、道具だって細いのしかしてないし!
寂しかったの、振り向いて欲しかったの!!!
こんなの好きじゃない!」
あーあ、ようやく本音だ。
首輪も捨ててくれたし。
もう、勘弁しろよ。まじで。
「わかった。
なら、ちゃんと式挙げような?」
「へ?」
服着ろよ、とその辺りにあったシャツを秋穂に投げてやる。
「指輪も買いに行きたいし、みんな呼んでちゃんとした式挙げようや。
んで、これが俺。わかったか?」
「あ、うん‥‥‥はい」
なんだよ、そのしおらしいの。
調子狂うわあ。遠矢はぼやきにぼやいた。心の中で。
「で、この家は帰さねーぞ。さんざん巻き込んだ罰だ。
おじさんには、家だけじゃねー。
お前の治療費に学費に、結婚式代、旅行費用に、車。
バイクのレース復帰スポンサー。
全部、なってもらうからな?」
「え、兄貴?
戻るつもり?」
「げーいいなあ。ななせも‥‥‥」
うるさいペット志願者が二名。
まだいるのを忘れていた。
「お前ら、ペットなりてーの?
あんなんで躾けたらなるなら、いまからやるか?
首輪あるぞ?」
意地悪そうににらんでやると、
「んなわけないじゃん、あんなの!」
「そうだよ、遠矢のクズ!
ななせしつぼー。演技に決まってんじゃん」
だよなあ。
これではいなんて言われたらーー
「ちょっと!
やるなら、秋穂でしょ?」
「おい、冗談きつい」
「ごめん」
なにがごめんだよ。
抱き着いて来たら全部許すと思ったら‥‥‥許すけど。
あ、あいつら逃げやがった。
あの二人も恋愛するのはいいからなあ。
幸せにはなって欲しい。そう思う遠矢だった。
「ねえ、旦那様」
「はあ?
お前、友紀とやったのか?」
視線そらすなよ。頼むから。
おーい、俺の秋穂‥‥‥
「したけど。でも、もう嫌。
ただ、したのはここ住む前だよ?」
「はあ?」
「だって友紀と最初付き合ってたもん。
その後は、最後まではない」
偉そうに言うなよ。
その事実だけでもショックだわ。
「友紀とは養子縁組解消しとけよ?」
「あれ、知らなかったの?
籍があるのは遠矢君だけだよ?」
マジかよ、あの親父。
そういや、戸籍謄本とかの確認すらしてないわ。結婚の入籍届けだしたきりだ。
それを聞いて安心すると、同時になんかカチンときた遠矢だった。
あの雑誌といい、友紀といい、投稿動画といい。
お前、浮気しすぎだろ!?
「反省しろ」
「え、ちょっと! なんで脱がす、なによその首輪!?
本気? ちょっと! やだ!」
首輪に手枷足枷。
あれだ、棒に手足しばられてるイノシシ状態だ。
口枷で文句言えないだろうし。
「そのまま、一晩放置してやる。
反省するまでな」
こんなん、アメにしかならない気もする。
実際、秋穂がそれで悦んでる画像と動画があるのだから。
「明日朝一で外してやる。
じゃな」
「むっむぐーー!!!」
扉を閉めて、遠矢はその場にへたれこんだ。
嫁さんは元M奴隷かよ。
追い込んだのは俺だ。
いや、友紀か。
それともーーやっぱ、放置はできねーな。
部屋に戻って、そのまま抱きかかえてベッドへ放り込む。
手枷足枷、首輪に口輪。
本当に趣味悪いわ、この系統って。
「ひどいじゃない!
好きって言った癖に、全部受け入れるって。結婚しようって言ったくせにいー‥‥‥」
泣くなよ、俺が泣きたいんだから。
壊れた世界線、二人で戻そうぜ、秋穂。
「ねえ?」
「は?」
「本当に‥‥‥躾けたいなら。
いいよ、それが遠矢がしたいなら」
「お前はどうなんだよ?
幸せだったのか? もし、俺がそれをして、お前は幸せなのか?
あんな雑誌に載せられて、ピアス開けられて、あんな趣味あるのか?」
なんで黙る。
泣くなよ、頼むから。
「恐かった! 痛かった! 幸せじゃなかった!!
なにもよくなかった!! いつもいつもいつも誰か助けてって叫んでたのにーー
遠矢も友紀も誰も‥‥‥来なかった」
ああ、そうだよなあ。わかるよ、その気持ち。
俺たちも毎回だ、いっつも夜を走って喧嘩する時に誰かに言ってるもんなあ。
誰かとめてくれ、助けてくれってさあ。
友紀の声がよく聞こえてくるもんな。で、行ったら俺だけが一人だ。
誰にも言えないでいたやつが、あるもんな。
よくわかるよ、秋穂。
「今回は、間に合ったか?」
「うんー‥‥‥多分」
「たぶん、な。
二人で病院行こうな?
俺もこんな暴力的なの嫌だからよ。お前もどっか狂ったとこ、別のどっかから治そうぜ?
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「うん、旦那様」
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