殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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聖女、皇太子殿下に婚約破棄されブタ大公の側室にされそうになる件 1

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 翌週。
 クルード女公爵ハーミアは朝から慌ただしく出かける準備に追われていた。
 昼過ぎより始まる、聖女候補として神殿のある皇城に登城しなければならないからだ。
 数週間前。
 ラスディア帝国の信奉する大地母神ラーディアナの現聖女イライザが神より神託を授かった。
 それはイライザが高齢である為に、聖女として働くのは憐れである。
 そんな大地母神の慈悲の心から生まれた神託だった。
 数週間後の今日。
 正午までに、知らせた条件の貴族令嬢を神殿に集めるように。
 そこで、聖女認定の儀式を行い、交替せよ。
 大地母神はそう神託で告げたのだった。
 
 この世界には大きく分けて、四種族が住んでいる。
 魔族に亜人や精霊の妖精族、竜族に人間族だ。
 竜族の信奉する竜神と人間族の信奉する大地母神は夫婦神だから、この二種族は互いに共闘していた。
 魔族や妖精族の国家群との微妙な均衡が、ラスディア帝国の聖女の存在で保たれている。
 そんな中に舞い降りた、聖女交替の案件は帝国だけでなく、四種族全体からの注目を浴びることになった。

 帝国国民に多い、白い肌に金髪と平凡な風情の少女はそんな聖女候補に選ばれた一人だった。
 唯一の目立つものと言えば、金色に近い鳶色の瞳くらいで、外見には自信がなかった。
 男性、それも騎士などの長身の方々と肩を並べるほどの背丈。
 吟遊詩人は少年のように細い腰と、横から見れば薄い胸とお尻がいいと歌詞に書いているが、ハーミアはまさしくそのままの体型だった。

「ねえ、サーラ。 
 どうかしら、少しは胸があるように見えるかな?」

 若くして結婚し、戦争で夫を亡くした未亡人の女公爵は侍女にそう声をかけた。

「奥様、大丈夫です。
 このサーラがきちんと上げて寄せて!!
 自慢の胸をおつくりしましたから!!!」

 そばかすのあとの残る、竜族の娘の侍女は恥ずかしげもなく、自慢げにそう言うと姿見に主人を映して見せる。
 確かに、そこには豊かな胸の貴族令嬢が存在していた。

「ね、どうですか!!!??
 これならーー皇太子殿下も見た目だけは満足されますからーーー!!」

「見た目だけは余計なのよ、あなたは!!
 もう……結婚した後の初夜には全てバレるじゃない!!」

「奥様、そうは言っても無いものはないですし‥‥‥。
 それに旦那様だった竜族のクルード公爵様は奥様が誰よりも美しいと。
 そう日々、おっしゃっていましたよ?
 奥様には、大旦那様。
 おじい様も竜族の方ですし。人間族の見た目ですが魔法の腕も宮廷魔術師並みと旦那様が言われていました。
 いざとなればーー」

 サーラはにひひ、と意地悪く微笑んで言う。
 幻惑の魔法を生涯、皇太子殿下にかけておけばいいんですよ、と。

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