殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

文字の大きさ
3 / 79

聖女、皇太子殿下に婚約破棄されブタ大公の側室にされそうになる件 1

しおりを挟む
 翌週。
 クルード女公爵ハーミアは朝から慌ただしく出かける準備に追われていた。
 昼過ぎより始まる、聖女候補として神殿のある皇城に登城しなければならないからだ。
 数週間前。
 ラスディア帝国の信奉する大地母神ラーディアナの現聖女イライザが神より神託を授かった。
 それはイライザが高齢である為に、聖女として働くのは憐れである。
 そんな大地母神の慈悲の心から生まれた神託だった。
 数週間後の今日。
 正午までに、知らせた条件の貴族令嬢を神殿に集めるように。
 そこで、聖女認定の儀式を行い、交替せよ。
 大地母神はそう神託で告げたのだった。
 
 この世界には大きく分けて、四種族が住んでいる。
 魔族に亜人や精霊の妖精族、竜族に人間族だ。
 竜族の信奉する竜神と人間族の信奉する大地母神は夫婦神だから、この二種族は互いに共闘していた。
 魔族や妖精族の国家群との微妙な均衡が、ラスディア帝国の聖女の存在で保たれている。
 そんな中に舞い降りた、聖女交替の案件は帝国だけでなく、四種族全体からの注目を浴びることになった。

 帝国国民に多い、白い肌に金髪と平凡な風情の少女はそんな聖女候補に選ばれた一人だった。
 唯一の目立つものと言えば、金色に近い鳶色の瞳くらいで、外見には自信がなかった。
 男性、それも騎士などの長身の方々と肩を並べるほどの背丈。
 吟遊詩人は少年のように細い腰と、横から見れば薄い胸とお尻がいいと歌詞に書いているが、ハーミアはまさしくそのままの体型だった。

「ねえ、サーラ。 
 どうかしら、少しは胸があるように見えるかな?」

 若くして結婚し、戦争で夫を亡くした未亡人の女公爵は侍女にそう声をかけた。

「奥様、大丈夫です。
 このサーラがきちんと上げて寄せて!!
 自慢の胸をおつくりしましたから!!!」

 そばかすのあとの残る、竜族の娘の侍女は恥ずかしげもなく、自慢げにそう言うと姿見に主人を映して見せる。
 確かに、そこには豊かな胸の貴族令嬢が存在していた。

「ね、どうですか!!!??
 これならーー皇太子殿下も見た目だけは満足されますからーーー!!」

「見た目だけは余計なのよ、あなたは!!
 もう……結婚した後の初夜には全てバレるじゃない!!」

「奥様、そうは言っても無いものはないですし‥‥‥。
 それに旦那様だった竜族のクルード公爵様は奥様が誰よりも美しいと。
 そう日々、おっしゃっていましたよ?
 奥様には、大旦那様。
 おじい様も竜族の方ですし。人間族の見た目ですが魔法の腕も宮廷魔術師並みと旦那様が言われていました。
 いざとなればーー」

 サーラはにひひ、と意地悪く微笑んで言う。
 幻惑の魔法を生涯、皇太子殿下にかけておけばいいんですよ、と。

しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...