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聖女、皇太子殿下に婚約破棄されブタ大公の側室にされそうになる件 3
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「どうも揉めてますねえ?
どうします?」
「どうと言われても、まだ儀式には時間もあるし。
陛下もまだ参内されていないから殿下に御挨拶をしなくては‥‥‥」
婚約者である前に、帝国の辺境国の国王としての顔もある。
ハーミアはせめて、胸の詰め物がバレないようにと願いながら静々と歩いて彼らに近寄って行った。
「あ、そうか‥‥‥。
あんな詰め物しなくても、奥様も魔法が使えるのだからそれで誤魔化せば良かったんだ‥‥‥」
今更ながらにサーラは気付くが、大地母神様の前でそれを見破られて印象を悪くすることもないだろう。
そう思い、忘れることにした。
大声ではないが、妙に険悪な言い争いをしている男性二人に、ハーミアはそっと近寄り、挨拶をする。
「あの、大変失礼ながら‥‥‥いっとき、よろしいでしょうか?
殿下、そして大公閣下。
初めてお目見えさせていただきます、クルード辺境国女公爵ハーミアと申します。
本日はご機嫌麗しくー」
と、公式な挨拶をしようとした時だ。
その言葉は途中で中断された。
そう、あのバカな皇太子の声によってだ。
「これだ!!」
「はっ‥‥‥?
これ、とは。
なんでございましょうか殿下?
婚約の御挨拶ならば、陛下に正式なご返答をした後でと思いましてーー」
「正式?
もう婚前契約書も交わした仲ではないか」
「あ、はいーそれが、一応の礼儀と伺いましたので。
ただ、あれにはー」
いいのだ!!
がしっ、とハーミアは細腕をエミリオ皇太子に掴まれて、いきなりザイール大公の前に押し出された。
あの婚前契約書は陛下の正式な許可がないと、認められない。
そう言いたかったのに、とハーミアは心で呟くが、これだ、の意味が理解できなかった。
「これでいいな、叔父上。
すべて、チャラ、だ」
「まあ、それでいいなら。
良いだろう。
では、クルード女公爵様。
どうぞ、こちらへ。
別の場所にて儀式が御座いますので‥‥‥」
チャラ?
別の場所の儀式!?
なにを言われているのだろう、この男性陣は?
儀式は正午からここであるはずーーーー???
頭の中に疑問符が浮かぶが、まあ、皇帝陛下の弟が言うならば間違いは無いのだろう。
侍女についてくるように合図をして、ハーミアはザイール大公の案内に続こうとした。
その時だ。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
いきなり見知らぬ貴族令嬢を引き連れて、エミリオ皇太子が再度、ハーミアの前に登場したのは。
そして、この余りにも無礼なセリフ。
侍女が隣でそれを聞きつけて危うく変身しそうになるのを抑えるのに必死で、ハーミアは返事が遅れてしまった。
「そういうわけでございますから、今からあなた様はわしの物になったと。
ご理解下さいませ。
これも賭けに負けた殿下の落ち度でございます」
賭け?
代金?
奴隷?
もの???
いきなりの‥‥‥婚約破棄!!!???
ハーミアは頭の中が真っ白になった。
どうします?」
「どうと言われても、まだ儀式には時間もあるし。
陛下もまだ参内されていないから殿下に御挨拶をしなくては‥‥‥」
婚約者である前に、帝国の辺境国の国王としての顔もある。
ハーミアはせめて、胸の詰め物がバレないようにと願いながら静々と歩いて彼らに近寄って行った。
「あ、そうか‥‥‥。
あんな詰め物しなくても、奥様も魔法が使えるのだからそれで誤魔化せば良かったんだ‥‥‥」
今更ながらにサーラは気付くが、大地母神様の前でそれを見破られて印象を悪くすることもないだろう。
そう思い、忘れることにした。
大声ではないが、妙に険悪な言い争いをしている男性二人に、ハーミアはそっと近寄り、挨拶をする。
「あの、大変失礼ながら‥‥‥いっとき、よろしいでしょうか?
殿下、そして大公閣下。
初めてお目見えさせていただきます、クルード辺境国女公爵ハーミアと申します。
本日はご機嫌麗しくー」
と、公式な挨拶をしようとした時だ。
その言葉は途中で中断された。
そう、あのバカな皇太子の声によってだ。
「これだ!!」
「はっ‥‥‥?
これ、とは。
なんでございましょうか殿下?
婚約の御挨拶ならば、陛下に正式なご返答をした後でと思いましてーー」
「正式?
もう婚前契約書も交わした仲ではないか」
「あ、はいーそれが、一応の礼儀と伺いましたので。
ただ、あれにはー」
いいのだ!!
がしっ、とハーミアは細腕をエミリオ皇太子に掴まれて、いきなりザイール大公の前に押し出された。
あの婚前契約書は陛下の正式な許可がないと、認められない。
そう言いたかったのに、とハーミアは心で呟くが、これだ、の意味が理解できなかった。
「これでいいな、叔父上。
すべて、チャラ、だ」
「まあ、それでいいなら。
良いだろう。
では、クルード女公爵様。
どうぞ、こちらへ。
別の場所にて儀式が御座いますので‥‥‥」
チャラ?
別の場所の儀式!?
なにを言われているのだろう、この男性陣は?
儀式は正午からここであるはずーーーー???
頭の中に疑問符が浮かぶが、まあ、皇帝陛下の弟が言うならば間違いは無いのだろう。
侍女についてくるように合図をして、ハーミアはザイール大公の案内に続こうとした。
その時だ。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
いきなり見知らぬ貴族令嬢を引き連れて、エミリオ皇太子が再度、ハーミアの前に登場したのは。
そして、この余りにも無礼なセリフ。
侍女が隣でそれを聞きつけて危うく変身しそうになるのを抑えるのに必死で、ハーミアは返事が遅れてしまった。
「そういうわけでございますから、今からあなた様はわしの物になったと。
ご理解下さいませ。
これも賭けに負けた殿下の落ち度でございます」
賭け?
代金?
奴隷?
もの???
いきなりの‥‥‥婚約破棄!!!???
ハーミアは頭の中が真っ白になった。
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