殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、魔王に債権を売り渡す件 4

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「成功‥‥‥したのか??」
 
 グランはレベッカの背中に鞍をつけて乗り込んでその成果を確認していた。
 彼女は下で、当たり前でしょ?
 私たちを誰だと思ってるの?
 これでも王族たるハーミア様を守護するために選ばれた精鋭なんだからね?
 そう勝ち誇ったように言ってのけた。

「ああ、そうだな。
 この飛行酔い止めや、高所恐怖症を治める魔法ももっと早くにかけてくれればよかったんだがな!?
 今夜は話があるぞ、まったく。
 まあ、いい。
 これで鉱山の占拠は終わった。
 あとはうちの軍の連中に、全員の捕縛と奴隷の解放をさせて‥‥‥」

「武装神官どもを大地母神の神殿に転送、ね。
 でも、それは魔王様との会談後、でしょ?」

「いや、ハーミア様はあの武装神官たちを魔王様への人質として差し出すようだぞ?
 帝国に妙なちょっかいを入れささないためにな。
 なにせ、あれの主導者。
 司祭様は、エミリオ皇太子殿下の従姉妹だ。
 捧げものとしては充分だよ」

 魔王、ねえ。
 今夜が怖い。
 グランが本気で怒ると、人間のクセに竜の自分でも恐怖を抱く時がある。
 だからこその、この竜王の親族が経営する辺境国の宰相を人間ながらに務めていけるのだろうけど。

「それで、どうするの?
 この直轄地全体を結界で覆っていいの?
 そんなことして、竜王様、怒らないかしら。
 何より今回の魔王との会談だって‥‥‥下手したら竜王様と帝国を両方、敵に回すことになるのに」

 グランの返事がない。
 どうしたのだろうと長い首を曲げて背にいる未来の夫を見ると‥‥‥
 彼は返事がしようがないほどに悩んでいるようだった。

「神がたった四神だけ、それがおかしいんだ。
 もう十数年前だ。
 前々当主様の命で、父上についてこの東の大陸から海を渡り、隣の西の大陸へ使者としていったことがある。 
 帝国とも同盟国のある王国にな。
 そこは亜人も竜族も妖精や人間、どれもが共存している国だった。
 宗教も、多数あった‥‥‥大地母神だけが人間の守護神ではなかった。
 太陽神や月の女神の神殿もあったんだ。
 さすがに魔族の神は魔神だけだったがな。西の大陸の魔族もこの大陸の魔王の配下だ。
 だが、大地母神様が我が帝国を守護されているのは‥‥‥」

 さすがに言葉にしづらいようだった。
 吐き捨てるように言わなければならないほどに、彼は見たくない物を。
 いや、信じたくないことに思い至ったらしい。

「この鉱山の下にあるものを強奪し、封じ込め、魔族を弱らせる。
 それを思いついたのは、多分、我が帝国の何代目かの皇帝だ。
 だが魔力が大きすぎて、封印がもたない。
 竜神様や大地母神様。
 竜族と人間の協力関係を考えて‥‥‥仕方なく守護されている。
 そう思えてならない。
 魔族は本当に邪悪なのか‥‥‥?
 僕はずっとそう考えてきた。
 あの旅で出会った魔族の国の代表は‥‥‥亜人や妖精族と同じように礼儀正しかった」

「グラン、もうそれ以外の話はよしましょう?
 その答えは、必ず‥‥‥奥様が出して下さるわ」

 ああ、そうだなーー
 先に命じられたことを成そう。

「地下にあるミスリル鉱石、あとなんだ、ブラウディア鉱石か。
 あれを利用して、この直轄地と辺境国の双方を包む結界を張ってくれ。
 誰も出れず、誰も入れない。
 そんなものでいい。
 損な役回りをさせて済まない‥‥‥」

 謝るグランにレベッカは、バカねえ、あなたは。
 そう笑い飛ばす。

「気にしなくていいのよ、旦那様。
 正しいことを成すのに、遠慮は要らないわ」


 そして二日後。
 魔族側からも、帝国側からも往来のできない物理的な遮蔽の結界が張られることになる。
 この時、ハーミア一行は結界を出て魔都グレインスケーフへと向かっていた。
 武装神官の長である、エミリオ皇太子の従姉妹、シュネイル侯爵令嬢エリーゼを引き連れてーー

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