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秘密の聖女様、魔王に債権を売り渡す件 5
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北壁の大地。
そう呼ばれる切り立った断崖絶壁を背にして、魔都グレインスケーフは存在する。
季節は冬。
というわけでもないのになんでこんなに寒いのよ!!
そう文句を言いながら、ハーミアは六頭立ての馬車の車内でうめいていた。
毛皮のコートを着込んでいるにも限らず攻めこんでくる寒さに嘆いていた。
竜族であるサーラは寒さなど特に気にした様子はなく、同席しているグランにレベッカも平気な顔をしていた。
「あんたたち、よくそんなに平然としていられるわね!?
見なさいよ、外を!!」
ハーミアは馬車の車窓から外を指差して従者たちに怒りをぶちまけていた‥‥‥
車外は確かに雪がうず高く積もり、この街道は魔族の特別な魔法で温められているのだという。
その魔法技術の高さにグランは驚いていた。
彼もそれなりに魔法を会得した、上級魔法使いだからだ。
「そう言われましても、奥様?
あの後ろの席で捕虜にしたシュネイル侯爵令嬢エリーゼ様と高位神官、計四名座ってますけど。
彼女たちも寒そうになんてしてませんよ?
なんでそんなに寒いんですか?」
サーラが同じ人間族のグランやエリーゼが平然としているのに。
なぜこの主人はこんなに寒がりなのか。
不思議でならないようだった。
「あなたも馬鹿ね、サーラ。
みんな、自分の周りの空気を温める魔法で、身を守っているからじゃないの!!!」
ああ、なるほど。
そう言われてみればそのようだ。
サーラは納得する。
そして生まれてくる一つの疑問。
「あのー‥‥‥なら、奥様もそうなされたらいかがですか?
奥様ほどの魔力があれば、あんな小手先の魔法なんてすぐにできると思うんですけど???」
小手先の技術!?
その言葉に、捕虜たちの間に動揺が走る。
この温度に空気を安定させるための魔法の操作がどれほど複雑か知っているからだ。
それを、小手先の技術と言われては‥‥‥
自分たちが高位神官であることを恥じるような顔つきになってしまった。
「出来ないの‥‥‥」
ボソりとハーミアは言う。
サーラはなんですかー?
と聞き返した。
「だから、出来ないのよ!!!」
何度も言わさないでよ、こんな恥ずかしいことを!
ハーミアはサーラにそう叱りつけるがのんきな侍女はまるで気にしていない。
それどころか、
「出来ないって、出来ますって。
あんな神官でも出来てるんですから。
ねえ、グラン様?」
なんて言い、グランに同意を求めるのだから始末に負えない。
ハーミアはサーラを睨みつける。
そして、グランはため息を一つついた。
そう呼ばれる切り立った断崖絶壁を背にして、魔都グレインスケーフは存在する。
季節は冬。
というわけでもないのになんでこんなに寒いのよ!!
そう文句を言いながら、ハーミアは六頭立ての馬車の車内でうめいていた。
毛皮のコートを着込んでいるにも限らず攻めこんでくる寒さに嘆いていた。
竜族であるサーラは寒さなど特に気にした様子はなく、同席しているグランにレベッカも平気な顔をしていた。
「あんたたち、よくそんなに平然としていられるわね!?
見なさいよ、外を!!」
ハーミアは馬車の車窓から外を指差して従者たちに怒りをぶちまけていた‥‥‥
車外は確かに雪がうず高く積もり、この街道は魔族の特別な魔法で温められているのだという。
その魔法技術の高さにグランは驚いていた。
彼もそれなりに魔法を会得した、上級魔法使いだからだ。
「そう言われましても、奥様?
あの後ろの席で捕虜にしたシュネイル侯爵令嬢エリーゼ様と高位神官、計四名座ってますけど。
彼女たちも寒そうになんてしてませんよ?
なんでそんなに寒いんですか?」
サーラが同じ人間族のグランやエリーゼが平然としているのに。
なぜこの主人はこんなに寒がりなのか。
不思議でならないようだった。
「あなたも馬鹿ね、サーラ。
みんな、自分の周りの空気を温める魔法で、身を守っているからじゃないの!!!」
ああ、なるほど。
そう言われてみればそのようだ。
サーラは納得する。
そして生まれてくる一つの疑問。
「あのー‥‥‥なら、奥様もそうなされたらいかがですか?
奥様ほどの魔力があれば、あんな小手先の魔法なんてすぐにできると思うんですけど???」
小手先の技術!?
その言葉に、捕虜たちの間に動揺が走る。
この温度に空気を安定させるための魔法の操作がどれほど複雑か知っているからだ。
それを、小手先の技術と言われては‥‥‥
自分たちが高位神官であることを恥じるような顔つきになってしまった。
「出来ないの‥‥‥」
ボソりとハーミアは言う。
サーラはなんですかー?
と聞き返した。
「だから、出来ないのよ!!!」
何度も言わさないでよ、こんな恥ずかしいことを!
ハーミアはサーラにそう叱りつけるがのんきな侍女はまるで気にしていない。
それどころか、
「出来ないって、出来ますって。
あんな神官でも出来てるんですから。
ねえ、グラン様?」
なんて言い、グランに同意を求めるのだから始末に負えない。
ハーミアはサーラを睨みつける。
そして、グランはため息を一つついた。
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