殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

文字の大きさ
15 / 79

秘密の聖女様、魔王に債権を売り渡す件 5

しおりを挟む
 北壁の大地。
 そう呼ばれる切り立った断崖絶壁を背にして、魔都グレインスケーフは存在する。
 季節は冬。
 というわけでもないのになんでこんなに寒いのよ!!
 そう文句を言いながら、ハーミアは六頭立ての馬車の車内でうめいていた。
 毛皮のコートを着込んでいるにも限らず攻めこんでくる寒さに嘆いていた。
 竜族であるサーラは寒さなど特に気にした様子はなく、同席しているグランにレベッカも平気な顔をしていた。

「あんたたち、よくそんなに平然としていられるわね!?
 見なさいよ、外を!!」

 ハーミアは馬車の車窓から外を指差して従者たちに怒りをぶちまけていた‥‥‥
 車外は確かに雪がうず高く積もり、この街道は魔族の特別な魔法で温められているのだという。
 その魔法技術の高さにグランは驚いていた。
 彼もそれなりに魔法を会得した、上級魔法使いだからだ。

「そう言われましても、奥様?
 あの後ろの席で捕虜にしたシュネイル侯爵令嬢エリーゼ様と高位神官、計四名座ってますけど。
 彼女たちも寒そうになんてしてませんよ?
 なんでそんなに寒いんですか?」

 サーラが同じ人間族のグランやエリーゼが平然としているのに。
 なぜこの主人はこんなに寒がりなのか。
 不思議でならないようだった。

「あなたも馬鹿ね、サーラ。
 みんな、自分の周りの空気を温める魔法で、身を守っているからじゃないの!!!」

 ああ、なるほど。
 そう言われてみればそのようだ。
 サーラは納得する。
 そして生まれてくる一つの疑問。

「あのー‥‥‥なら、奥様もそうなされたらいかがですか?
 奥様ほどの魔力があれば、あんな小手先の魔法なんてすぐにできると思うんですけど???」

 小手先の技術!?
 その言葉に、捕虜たちの間に動揺が走る。
 この温度に空気を安定させるための魔法の操作がどれほど複雑か知っているからだ。
 それを、小手先の技術と言われては‥‥‥
 自分たちが高位神官であることを恥じるような顔つきになってしまった。

「出来ないの‥‥‥」

 ボソりとハーミアは言う。
 サーラはなんですかー?
 と聞き返した。

「だから、出来ないのよ!!!」

 何度も言わさないでよ、こんな恥ずかしいことを!
 ハーミアはサーラにそう叱りつけるがのんきな侍女はまるで気にしていない。
 それどころか、
 
「出来ないって、出来ますって。
 あんな神官でも出来てるんですから。
 ねえ、グラン様?」

 なんて言い、グランに同意を求めるのだから始末に負えない。

 ハーミアはサーラを睨みつける。
 そして、グランはため息を一つついた。

しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

処理中です...