殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、魔王に債権を売り渡す件 6

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「確かに、この魔法は簡単だ。
 わたしでも維持できるからな。
 ただ、御主人様の魔力は膨大すぎるんだよ、サーラ。
 少しでも魔法を使えば、魔族を刺激する。
 そういう意味で、なさらないんだ」

「あー‥‥‥そういうことですね。
 でも、それって無駄な気遣いじゃないですか?」

「無駄?
 なぜ、そう言い切れる?」

 グランとハーミアは不思議そうな、いや、ハーミアだけは怒っていた。
 この侍女はなにも知らないんだから!!、と。

「だって、この馬車には二頭。
 後続の二台に乗っている護衛に侍女。
 総勢、十二頭の竜族がいるんですよ?
 もう、バレてますってーーー!!!」

 あははー嫌だなあ、奥様ったらあ!!
 それくらい気づいてくださいよー!!

「あなたねえ、本気で攻撃するわよ!?
 それくらい分かってるわよ!!!
 人間の!
 それも、代表の国王があなたたち、純粋な竜族。
 ‥‥‥この場にいる十数頭全員分と同じかそれ以上の魔力がある。
 そんなことがあちらに筒抜けになればどうなると思ってるの?」

 え‥‥‥、とサーラの顔は凍り付く。
 そう言われれば、ハーミアの秘めた魔力は元夫には及ばないがーー
 彼女は竜族の王族の一人でもあるのだ。
 その膨大すぎる魔力は‥‥‥威嚇とも受け取られかねなかった。

「いいか、サーラ。
 御主人様はあくまで、あの鉱山の債権の譲渡。
 そして、あの人質を魔族に預けることで帝国からの侵入・介入をなるべく避けようと。
 そういうお考えなのだ。
 だから、こうして魔力をほとんど漏れ出ないようにされている。
 お前の魔法で温めて差し上げればいいだろう?」

「あいすいません‥‥‥そこまで考えが至りませんでしたーー
 奥様、どの程度に温めればいいですか?
 暖炉の中、くらいですかねーー???」

 本気でそれを言ってるの!?
 ハーミアは改めてこの侍女を領地に戻ったら竜の蒸し焼きにしてやろうと思い始めていた。
 暖炉の中!?
 冗談じゃない。
 そんな温度なんて火傷どころかー‥‥‥。

「あんたねえ、サーラ!!!
 わたしを余程、殺したいのね?
 そんなに普段からのいじめが辛いの?
 そんなに、ここぞとばかりにわたしをいじめたいの!?」
 
 その発言は、少しばかりまずかった。

「あ、あの御主人様、それはーーサーラに復讐のチャンスを与えるようなものですよ‥‥‥」

 グランの忠告にハーミアは、しまった。
 そんな顔をする。
 普段からこのドジで間の抜けているサーラをからかっていることを認めてしまった。
 サーラはサーラでそんなことは気づいていましたよーそんな能天気な返事を返してくる。

「奥様の非道ぶりは侍女の間でも、臣下の間でも有名ですから。
 それをこのサーラが一身に背負っていれば‥‥‥みんな、幸せじゃないですか?
 ねえ、グラン様?」

 間抜けだの、能天気だの。
 どうせ、わたしをそう思っていたんですよねー???
 サーラが笑顔でグランを見返すと、彼はしまった。
 そんな顔になった。
 
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