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6 夢と魔法とクジラの影
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アラームの音で目が覚めた。
あれから15時間が経過したんだ‥‥‥。
腕時計を見ると朝の4時。
太陽は‥‥‥沈んでいた。
やっぱり15時間周期かな?
休憩室の中では寝る前と同じように誰かがイスに座り、食事をして語り会ってる。
イスはいくつか、柵の重しに移動したけど関係ないように宙に腰かけてる。
やっぱり、この人たちは過去の人なんだろうな。
わたしはそう思った。
熟睡していたみたいで、あっと言う間の15時間だった。
誰か気づいてくれないかな?
誰か、一人でもいいから実はわたしの存在を見ていて、どこかで監視とかしてくれてないかな?
孤独ってこんなに寂しくて辛いものだと思わなかった。
誰からもいない存在。
空気として扱われる存在。
それは高校で実際に体験していたけど、あそこはみんなが生きていて、心は孤独でも感覚はあった。
生きてる感覚が。
いまは誰にも、相手にされていないんじゃない。
存在そのものが消えてる。
別々の世界がたまたま重なった。
そんな印象をわたしは受けた。
柵をのけて外にでると神殿の外壁は寝る前よりは数メートル高く完成していた。
彩色も更に綺麗になっていて、内側をどうしても覗きたくなったんだ。
襲われるかもしれない。
その恐怖よりも、目を引いたあるものに心を奪われた。
それは、あのわたしと同じ外見の女性たちが、うやうやしく、神様に捧げるようにして運んでるもの。
大きな肉の塊に、巨大な眼玉。
銀色の革が広くのばされ、なめされて丸くまるめられた布のようなもの。
それらを神殿の中に持ち込んでいたから。
それは、やっぱりあのクジラの一部に思えた。
「ひどいって思うけど。
日本でも捕鯨やってるし‥‥‥。
これも文化ならななせには何も言えないなーー」
そう呟いて、本当に、わたしはビビリだから。
どうか何も起きませんように、神様にお祈りしながら神殿の中に足を踏み入れた。
「すごい。
壁一面、クジラだらけ‥‥‥」
そう、そこにはあのクジラの仲間なんだろう。
天空を泳ぐ姿が描かれていた。
正面左手にはクジラのいろんな種類の絵が描かれている。
銀色だけじゃない。
もっと大きな黒いやつ、空の色と同じ色のやつ、地球の空に似たいろのやつ。
数えただけでも三十種類以上そこには存在している。
「もし、これ全部捕まえて食べられたら‥‥‥。
仲間は誰もいない。あのクジラ、可哀想だよ」
うん、そうだよね。
わたしはいま、彼? の孤独がよくわかる。
たった一人で異世界に逃げ延びたのだとしたら。
そこで、わたしを間違えたとはいっても襲い掛かった理由も、納得ができた。
あの女性たちは祭壇のある階段までは登らずに、その手前の大きなテーブルにそれを置いてまた出て行く。
この神殿に入っても、いまは怒られないみたい。
もう少しだけ、この光景を見て起きたかった。
背後の、正面からしたら右手側。
そこにはクジラたちを捕鯨している光景が描かれていた。
大きな森林が豊かな山がまず描かれていて、その中腹には雲がかかっている。
クジラたちはその雲や、もう少し標高が高い場所の雲に集まって何かをしている光景。
そして、あれはなんだろう?
「足元が輝いてる。黄色でーーうーん?
空を魔法とかで飛んでるのかな?
雲の中から大きななんだろ? あ、あれだ。
捕鯨するときの銛だ。あれを打ち込んでるんだ。
で‥‥‥地上で大勢の人がそれに繋がってるロープを‥‥‥あれ????」
そこには大きな滑車みたいなものが、車輪付きの台に設置されていて。
多分、銛の先から伸びてるロープを引いてるんだろうけど。
この地上の風景。
見覚えがある。
これ、あそこだ。
「ななせが、標高測った草原とか密林の手前のとこだ。
あの大きい岩にも見覚え有るし。
じゃあ、この山は‥‥‥」
いま、わたしがいる岩山というか高山の過去の姿だ。
一番高いところが富士山みたいになってて噴煙が出てる。
「あれー?
もしかして、ポンペイみたいになったってこと?
あの、ローマ帝国の山が噴火して一晩で埋もれたっていう伝説の。
まえ、テレビでやってたやつ?」
わたしが歩いてきた密林の部分には、綺麗な石造りの街並みがあった。
神殿も描かれてて、山自体も裾野は今よりはもっと奥にあるように描かれている。
ここには文明があったんだ。
でも、なんで雲が描かれているんだろう?
「あのクジラ、まるで雲を食べてるみたいに口開けてるし‥‥‥。
でも、空には雲がなかったよね?
ななせ、覚えてるもん。
もしかして、噴火でこの人たちが亡くなったから、クジラさんたち。
まだ生き残ってたりする?」
なんだろ。とても不安が胸の奥に溜まっていく感覚。
もし、まだ生き残っているとしたらあの銀色のクジラは孤独じゃないはず。
なら、なんでわたしはここに来たんだろ?
思わず天上を見てわたしは悲鳴を上げそうになった。
だって、そこにはあれが描かれていたんだ。
わたしが生きていた星、地球と月。そして太陽。
その奥に多分、この星系があって。もう一つ。
まだ見たことのない緑の月を従えた、銀色と青が入り混じった惑星が一つ。
その三つは、目の前にあるあの門で繋がっていて、光の筋で道が描かれている。
そこを移動するそれは・・・・・・
「真っ黒な身体に、こうもりみたいな翼。
山羊みたいな角。狼が立ち上がったような二足歩行‥‥‥。
それに従うあの女の子たち、で、食べられるクジラたち。
恨みは、これが原因だよ。ななせ、わかっちゃった。
じゃあ、この神殿は噴火で埋もれたとして。そうか、だからあの石像もーー」
慌てて戻ってよくよく、多くの石像を見たらどれもあの狼みたいな外観。
そして、ここには神殿の壁もなにもないけど。
「誰かが、管理してる?
だって、綺麗‥‥‥あ、でもないか。
あの石室は、休憩室はほこりだらけだったけど。
もし、この狼さんたちが別の部屋を使うならそこには意味はない、と。
うーん???」
もしかしてと思って、足元のほこりを指先で拭ってみる。
あ、大丈夫だ。
後ろを振り返ったら、わたしの足跡がついてる。
それも、かなりほこりがたまった状態で。
「たーだ‥‥‥。
あの姿、どっかで見たよね。
うん、そうだよ。言いたくないけど、悪魔にそっくりーー」
ここはヤバい。
最初はいなかったあの職人さんたちがいきなり現れたのも、何かのスイッチが入った可能性がある。
もしもーー
「警報装置とか設置されてたら、どっちだろ?
あの銀色の惑星から誰かが来る、かも?
はい、逃げます!!!」
証拠を残しとくとなんかまずい気がしたから、柵をの棒に戻して、イスも戻して、枯れ草全部集めて。
で、足跡消すために神殿に戻って。
でもこれ、バレないかなあ?
まあ、いいや。さっさと履いてしまえ。
「急げ―急げ―‥‥‥」
全部終えたらもう危険とか言ってられない。
助走かなりつけて、ジャンプ!!!
「せっーの!!!」
届かないのなんて最初から理解してる。
入ってきた穴目掛けて、束にした棒を槍投げみたいにして放り込んだ。
「いける!?
だめ!!???」
あ、いけた。
棒が横になってつっかえ棒みたいになってくれた。
もう、あとは死ぬ気でよじ登るだけ。
「はー‥‥‥でれた。
ななせ、もう死にそうだよ。
げっ‥‥‥!?」
忘れてた!!!
この窪地の下はーーー!!!
「トゲトゲ地獄だ。
まさに針のむしろ?」
違うわたし!!!
それは針の山!!
ああもう、こんな時に変な余裕要らないから!!
「降りるより上の方がトゲトゲ大きいよね?
あれ、この棒を引っ掛けたら登れない?
やってみよーーー!!!」
もうセリフとかどうでもいいや。
さっきと同じ要領で棒を投げて、安定したのを確認してからよじ登る。
こっちは急斜面じゃないから、トゲに上手く身体を預けながら足場だけちゃんとすればどうにか登れそう。
もう何時間繰り返したかわからないくらい、それを投げては登り、投げては登り。
どうやら、岩山の中腹。
大きな窪地みたいなとこまで来て、ようやくトゲトゲロードが終わった。
「あー‥‥‥もう一生分動いたかも。
明日はおばあちゃんかな?
あ、待って待って。
もうこれ、標高五百メートル超えてるよね?
なら、雲がかかるんじゃない???」
可能性はあるね、わたし!!
朝になればモヤとか霧がでるかもしれない。
樹木があればもしくは、水場とか‥‥‥。ないのかな?
だって、ここかなり広い。
体育館より広いよ?
ところどころに水ゴケみたいなのがあるってことはーー
「もしかしたら、水場があるかもしれない。
お風呂、入りたい。ななせ、臭い‥‥‥」
もし、流れてる水場とかあったら嬉しいなあ。
そう思いながら、ほぼ三時間近く。
多分、岩山の反対側に回った感じかなあ?
「なるほど、ね。
だから、あっち側は岩だらけだったんだ。
太陽の明かりが強すぎたんだね? あれ? 違う?
噴火して溶岩が流れたのがあっちだった、そゆことかな???」
そこにはーー
尾根づたいに広がる広大なジャングルと遺跡群。
その左手には大きな湖。月を反映してとても綺麗だった。
そして、隆線沿いに流れる川も。あった。
「やったーーー!!!
でも問題は、この水が安全か。それと、あれ、帽子‥‥‥???
まさか、落した!!??」
慌てて探したら、あーよかった。
ズボンのベルト通すところに通してたんだった。
でも、これ後ろがボタン式だったら落ちてたな、絶対。
革製のベルトで締める高いやつ買っといてよかった。
まあ、気になるのはあの休憩室の中で寝たから。
どこかに髪の毛は落ちてるかもしれない。
とりあえず、夜は動くのはやめよ。もう、何があるかわからない。
適当な窪地探して、あの柵で入り口作って。
もう寝るよ。そう呟いたとこまではーー覚えてた。
夢をね、見たの。
わたしはあの壁画にあったみたいな感じで両足に輝く魔法かなにかで浮いてて。
それで、多くのクジラたちが岩山にやってくる。
標高千メートルより下くらいの雲を食べながらのんびりしてる彼らの中に見つけたんだ。
あの銀色のクジラを。
そしたら、赤い大きなクジラが泳いできて、
「なんでここにいるんだね、お嬢さん。
君たちはもう滅んだはずだよ?」
って語り掛けてきた。
だから言い返したの。
「ななせは関係ないのに!!!
このクジラさんが勝手に間違えてここに連れて来たの!!!
地球に帰してよ、ばかあ!!!」
って泣きながら叫んでた。
「お父さんに会いたいのに!!
わたしも家族殺されたのと同じなんだよ!?
もう二度と会えないなんてひどいじゃない!!!」
ってそう叫んで泣き崩れてた。
そしたら、赤いクジラが教えてくれた。
「いいかい、お嬢さん。
あと20回夜が来れば、扉が開く。
その時はあの岩山のほら、さっきまでいた裏側にある大きな遺跡があるだろ?
その中に、わたしたちが抜けれるサイズの大きな穴と。
お嬢さんが抜けれるサイズの扉がある。
そこを開ければ、元の場所に戻れるよ」
でもわたしはそれでは納得しなくて、最後の質問をしたの。
「ねえ、赤いクジラさん。
その扉はどうすれば開けれて、安全に帰れるの?
ななせは元のななせに戻って帰りたいの。いまは変なんだよ。
レーダーとかあるの。力も5倍なの。こんなのななせじゃないよね!!???」
「そうだね、世界を越えたときに変わったみたいだね。
いいかい、お嬢さん。扉を開けて通れば安全に帰れるし、身体も元に戻るよ。
開けるためには鍵がいる。それはね、みてごらん。
あの密林の奥にもう一つ、遺跡があるだろう?
その地下に祭壇があるから。そこにある、丸くて金色の。
赤い縁取りがされた棒のようなものがいるんだ。
それを扉の左上にある、穴に差し込むんだよ」
「うーん‥‥‥。
質問!!!
扉は一つだけなの!?」
鋭い質問するなあわたしって感心した。
赤いクジラが教えてくれる。
「いいや、あの月と同じ四色の四枚の扉がある。
その紫色の扉を開けなさいーー」
そこまで聞いて、わたしは目を覚ましたの。
え? 正夢?
忘れる前に書いておかないと。そう思いノートに書き出した。
20回目の紫の月が手前に来る夜。
遺跡の紫の扉の左上の穴。
密林の奥の遺跡の地下にある、祭壇の丸くて金色の赤い縁取りの棒が鍵。
嘘でもいい。
可能性にかけてみよう。
こうして、わたしは異世界の朝を迎えた。
あれから15時間が経過したんだ‥‥‥。
腕時計を見ると朝の4時。
太陽は‥‥‥沈んでいた。
やっぱり15時間周期かな?
休憩室の中では寝る前と同じように誰かがイスに座り、食事をして語り会ってる。
イスはいくつか、柵の重しに移動したけど関係ないように宙に腰かけてる。
やっぱり、この人たちは過去の人なんだろうな。
わたしはそう思った。
熟睡していたみたいで、あっと言う間の15時間だった。
誰か気づいてくれないかな?
誰か、一人でもいいから実はわたしの存在を見ていて、どこかで監視とかしてくれてないかな?
孤独ってこんなに寂しくて辛いものだと思わなかった。
誰からもいない存在。
空気として扱われる存在。
それは高校で実際に体験していたけど、あそこはみんなが生きていて、心は孤独でも感覚はあった。
生きてる感覚が。
いまは誰にも、相手にされていないんじゃない。
存在そのものが消えてる。
別々の世界がたまたま重なった。
そんな印象をわたしは受けた。
柵をのけて外にでると神殿の外壁は寝る前よりは数メートル高く完成していた。
彩色も更に綺麗になっていて、内側をどうしても覗きたくなったんだ。
襲われるかもしれない。
その恐怖よりも、目を引いたあるものに心を奪われた。
それは、あのわたしと同じ外見の女性たちが、うやうやしく、神様に捧げるようにして運んでるもの。
大きな肉の塊に、巨大な眼玉。
銀色の革が広くのばされ、なめされて丸くまるめられた布のようなもの。
それらを神殿の中に持ち込んでいたから。
それは、やっぱりあのクジラの一部に思えた。
「ひどいって思うけど。
日本でも捕鯨やってるし‥‥‥。
これも文化ならななせには何も言えないなーー」
そう呟いて、本当に、わたしはビビリだから。
どうか何も起きませんように、神様にお祈りしながら神殿の中に足を踏み入れた。
「すごい。
壁一面、クジラだらけ‥‥‥」
そう、そこにはあのクジラの仲間なんだろう。
天空を泳ぐ姿が描かれていた。
正面左手にはクジラのいろんな種類の絵が描かれている。
銀色だけじゃない。
もっと大きな黒いやつ、空の色と同じ色のやつ、地球の空に似たいろのやつ。
数えただけでも三十種類以上そこには存在している。
「もし、これ全部捕まえて食べられたら‥‥‥。
仲間は誰もいない。あのクジラ、可哀想だよ」
うん、そうだよね。
わたしはいま、彼? の孤独がよくわかる。
たった一人で異世界に逃げ延びたのだとしたら。
そこで、わたしを間違えたとはいっても襲い掛かった理由も、納得ができた。
あの女性たちは祭壇のある階段までは登らずに、その手前の大きなテーブルにそれを置いてまた出て行く。
この神殿に入っても、いまは怒られないみたい。
もう少しだけ、この光景を見て起きたかった。
背後の、正面からしたら右手側。
そこにはクジラたちを捕鯨している光景が描かれていた。
大きな森林が豊かな山がまず描かれていて、その中腹には雲がかかっている。
クジラたちはその雲や、もう少し標高が高い場所の雲に集まって何かをしている光景。
そして、あれはなんだろう?
「足元が輝いてる。黄色でーーうーん?
空を魔法とかで飛んでるのかな?
雲の中から大きななんだろ? あ、あれだ。
捕鯨するときの銛だ。あれを打ち込んでるんだ。
で‥‥‥地上で大勢の人がそれに繋がってるロープを‥‥‥あれ????」
そこには大きな滑車みたいなものが、車輪付きの台に設置されていて。
多分、銛の先から伸びてるロープを引いてるんだろうけど。
この地上の風景。
見覚えがある。
これ、あそこだ。
「ななせが、標高測った草原とか密林の手前のとこだ。
あの大きい岩にも見覚え有るし。
じゃあ、この山は‥‥‥」
いま、わたしがいる岩山というか高山の過去の姿だ。
一番高いところが富士山みたいになってて噴煙が出てる。
「あれー?
もしかして、ポンペイみたいになったってこと?
あの、ローマ帝国の山が噴火して一晩で埋もれたっていう伝説の。
まえ、テレビでやってたやつ?」
わたしが歩いてきた密林の部分には、綺麗な石造りの街並みがあった。
神殿も描かれてて、山自体も裾野は今よりはもっと奥にあるように描かれている。
ここには文明があったんだ。
でも、なんで雲が描かれているんだろう?
「あのクジラ、まるで雲を食べてるみたいに口開けてるし‥‥‥。
でも、空には雲がなかったよね?
ななせ、覚えてるもん。
もしかして、噴火でこの人たちが亡くなったから、クジラさんたち。
まだ生き残ってたりする?」
なんだろ。とても不安が胸の奥に溜まっていく感覚。
もし、まだ生き残っているとしたらあの銀色のクジラは孤独じゃないはず。
なら、なんでわたしはここに来たんだろ?
思わず天上を見てわたしは悲鳴を上げそうになった。
だって、そこにはあれが描かれていたんだ。
わたしが生きていた星、地球と月。そして太陽。
その奥に多分、この星系があって。もう一つ。
まだ見たことのない緑の月を従えた、銀色と青が入り混じった惑星が一つ。
その三つは、目の前にあるあの門で繋がっていて、光の筋で道が描かれている。
そこを移動するそれは・・・・・・
「真っ黒な身体に、こうもりみたいな翼。
山羊みたいな角。狼が立ち上がったような二足歩行‥‥‥。
それに従うあの女の子たち、で、食べられるクジラたち。
恨みは、これが原因だよ。ななせ、わかっちゃった。
じゃあ、この神殿は噴火で埋もれたとして。そうか、だからあの石像もーー」
慌てて戻ってよくよく、多くの石像を見たらどれもあの狼みたいな外観。
そして、ここには神殿の壁もなにもないけど。
「誰かが、管理してる?
だって、綺麗‥‥‥あ、でもないか。
あの石室は、休憩室はほこりだらけだったけど。
もし、この狼さんたちが別の部屋を使うならそこには意味はない、と。
うーん???」
もしかしてと思って、足元のほこりを指先で拭ってみる。
あ、大丈夫だ。
後ろを振り返ったら、わたしの足跡がついてる。
それも、かなりほこりがたまった状態で。
「たーだ‥‥‥。
あの姿、どっかで見たよね。
うん、そうだよ。言いたくないけど、悪魔にそっくりーー」
ここはヤバい。
最初はいなかったあの職人さんたちがいきなり現れたのも、何かのスイッチが入った可能性がある。
もしもーー
「警報装置とか設置されてたら、どっちだろ?
あの銀色の惑星から誰かが来る、かも?
はい、逃げます!!!」
証拠を残しとくとなんかまずい気がしたから、柵をの棒に戻して、イスも戻して、枯れ草全部集めて。
で、足跡消すために神殿に戻って。
でもこれ、バレないかなあ?
まあ、いいや。さっさと履いてしまえ。
「急げ―急げ―‥‥‥」
全部終えたらもう危険とか言ってられない。
助走かなりつけて、ジャンプ!!!
「せっーの!!!」
届かないのなんて最初から理解してる。
入ってきた穴目掛けて、束にした棒を槍投げみたいにして放り込んだ。
「いける!?
だめ!!???」
あ、いけた。
棒が横になってつっかえ棒みたいになってくれた。
もう、あとは死ぬ気でよじ登るだけ。
「はー‥‥‥でれた。
ななせ、もう死にそうだよ。
げっ‥‥‥!?」
忘れてた!!!
この窪地の下はーーー!!!
「トゲトゲ地獄だ。
まさに針のむしろ?」
違うわたし!!!
それは針の山!!
ああもう、こんな時に変な余裕要らないから!!
「降りるより上の方がトゲトゲ大きいよね?
あれ、この棒を引っ掛けたら登れない?
やってみよーーー!!!」
もうセリフとかどうでもいいや。
さっきと同じ要領で棒を投げて、安定したのを確認してからよじ登る。
こっちは急斜面じゃないから、トゲに上手く身体を預けながら足場だけちゃんとすればどうにか登れそう。
もう何時間繰り返したかわからないくらい、それを投げては登り、投げては登り。
どうやら、岩山の中腹。
大きな窪地みたいなとこまで来て、ようやくトゲトゲロードが終わった。
「あー‥‥‥もう一生分動いたかも。
明日はおばあちゃんかな?
あ、待って待って。
もうこれ、標高五百メートル超えてるよね?
なら、雲がかかるんじゃない???」
可能性はあるね、わたし!!
朝になればモヤとか霧がでるかもしれない。
樹木があればもしくは、水場とか‥‥‥。ないのかな?
だって、ここかなり広い。
体育館より広いよ?
ところどころに水ゴケみたいなのがあるってことはーー
「もしかしたら、水場があるかもしれない。
お風呂、入りたい。ななせ、臭い‥‥‥」
もし、流れてる水場とかあったら嬉しいなあ。
そう思いながら、ほぼ三時間近く。
多分、岩山の反対側に回った感じかなあ?
「なるほど、ね。
だから、あっち側は岩だらけだったんだ。
太陽の明かりが強すぎたんだね? あれ? 違う?
噴火して溶岩が流れたのがあっちだった、そゆことかな???」
そこにはーー
尾根づたいに広がる広大なジャングルと遺跡群。
その左手には大きな湖。月を反映してとても綺麗だった。
そして、隆線沿いに流れる川も。あった。
「やったーーー!!!
でも問題は、この水が安全か。それと、あれ、帽子‥‥‥???
まさか、落した!!??」
慌てて探したら、あーよかった。
ズボンのベルト通すところに通してたんだった。
でも、これ後ろがボタン式だったら落ちてたな、絶対。
革製のベルトで締める高いやつ買っといてよかった。
まあ、気になるのはあの休憩室の中で寝たから。
どこかに髪の毛は落ちてるかもしれない。
とりあえず、夜は動くのはやめよ。もう、何があるかわからない。
適当な窪地探して、あの柵で入り口作って。
もう寝るよ。そう呟いたとこまではーー覚えてた。
夢をね、見たの。
わたしはあの壁画にあったみたいな感じで両足に輝く魔法かなにかで浮いてて。
それで、多くのクジラたちが岩山にやってくる。
標高千メートルより下くらいの雲を食べながらのんびりしてる彼らの中に見つけたんだ。
あの銀色のクジラを。
そしたら、赤い大きなクジラが泳いできて、
「なんでここにいるんだね、お嬢さん。
君たちはもう滅んだはずだよ?」
って語り掛けてきた。
だから言い返したの。
「ななせは関係ないのに!!!
このクジラさんが勝手に間違えてここに連れて来たの!!!
地球に帰してよ、ばかあ!!!」
って泣きながら叫んでた。
「お父さんに会いたいのに!!
わたしも家族殺されたのと同じなんだよ!?
もう二度と会えないなんてひどいじゃない!!!」
ってそう叫んで泣き崩れてた。
そしたら、赤いクジラが教えてくれた。
「いいかい、お嬢さん。
あと20回夜が来れば、扉が開く。
その時はあの岩山のほら、さっきまでいた裏側にある大きな遺跡があるだろ?
その中に、わたしたちが抜けれるサイズの大きな穴と。
お嬢さんが抜けれるサイズの扉がある。
そこを開ければ、元の場所に戻れるよ」
でもわたしはそれでは納得しなくて、最後の質問をしたの。
「ねえ、赤いクジラさん。
その扉はどうすれば開けれて、安全に帰れるの?
ななせは元のななせに戻って帰りたいの。いまは変なんだよ。
レーダーとかあるの。力も5倍なの。こんなのななせじゃないよね!!???」
「そうだね、世界を越えたときに変わったみたいだね。
いいかい、お嬢さん。扉を開けて通れば安全に帰れるし、身体も元に戻るよ。
開けるためには鍵がいる。それはね、みてごらん。
あの密林の奥にもう一つ、遺跡があるだろう?
その地下に祭壇があるから。そこにある、丸くて金色の。
赤い縁取りがされた棒のようなものがいるんだ。
それを扉の左上にある、穴に差し込むんだよ」
「うーん‥‥‥。
質問!!!
扉は一つだけなの!?」
鋭い質問するなあわたしって感心した。
赤いクジラが教えてくれる。
「いいや、あの月と同じ四色の四枚の扉がある。
その紫色の扉を開けなさいーー」
そこまで聞いて、わたしは目を覚ましたの。
え? 正夢?
忘れる前に書いておかないと。そう思いノートに書き出した。
20回目の紫の月が手前に来る夜。
遺跡の紫の扉の左上の穴。
密林の奥の遺跡の地下にある、祭壇の丸くて金色の赤い縁取りの棒が鍵。
嘘でもいい。
可能性にかけてみよう。
こうして、わたしは異世界の朝を迎えた。
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