突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第二章 王国の闇と真の悪

第四十六話 毒を吐くミレイア

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「エイシャはもうおりません。
 捨てられた身、あなたの策謀によって‥‥‥あの魔女の名を与えられたミレイアです!!!」

 ミレイアが我慢も限界だと、シルドの頬を手で張った。

 シルドはそれを受け入れて反撃はしなかった。

「そうだな、なら、ミレイア。
 僕の見たところ、君は権力が大好きだ。上流階級に憧れて、それになろうと野望をひた隠しにしていた。
 僕がそれを利用したことは謝ろう。
 君は思うだろう、あのまま放っておいてくれたら。
 王子殿下と婚約できた、と」

 ミレイアはそうでなければなんなの、というようにシルドを見る。

 そこに黙って聞いていたエルムンド侯が彼女に情報を与えた。

「奥方殿。
 我が王国の王子殿下はまた、多くの爵位を持たれ、その爵位ごとに妻がいる。
 あなたのルケーア子爵の領土は狭く、税金も多くは取れない。
 王子は子爵程度の娘には興味を持たない。利用する駒にならないからな。
 生活は農民程度のものになるだろう。
 それになーー」

 エルムンド侯はそれ以上を語れなかった。

 自分の主の恥を、言いたくなかったのだ。

「それに、なんですか。
 元義父上様!?」

 ミレイアは精一杯の嫌味を込めて彼に毒を吐きかける。

 さも、魔女のように。恨みをこめて。

 変わって答えたのはシルドだった。

「殿下は、君の舌を斬り落としたようにーー
 飽きた女性たちを拷問にかけ、死ねば病死と実家には届けている。
 もうこの何年もの間に、数人が死んでいるんだ、ミレイア‥‥‥」

 そんなーー

 一国の王子とはいえ、そんな蛮行が許されるはずが‥‥‥

 そうミレイアは叫ぼうとした。

 だが、シルドとエルムンド侯の主をいさめれない部下としての悲しみに満ちた顔はーー

 ‥‥‥真実を告げていた

「では、わたしを助けるために、あの婚約破棄と求婚をしたと!?
 そんな都合の良い話が!!!
 それを大公様に告げるなり、密告するなり。
 なにか手があったはずでしょう!??」

 あんな拷問に合わせておいてーー

 ミレイアの怒りはおさまらない。

 どこまでも毒を吐きつけようとしていた。

「仕方がなかったんだ!!!」

 シルドが思わず叫んでいた。

 顔を上げ、ミレイアを見つめて彼は語る。

「あの時、君の姉上に婚約破棄を申し出る前に!!!
 僕はあの二回での王族と皇族の取り決めを知っていた!!
 王子殿下が、君を望んで婚約したいと言い出し、それを皇太子殿下は何も知らずに承諾された。
 時間がなかったんだ、なによりーー」

 ああ、いや。

 失言だった、忘れてくれ。

 シルドはそう言うと、窓の外へと顔を背けてしまう。

 姉譲りの頑固な性格のミレイアにはこれが気に入らなかった。

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