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第二章 王国の闇と真の悪
第四十五話 薄凍の上を歩く子爵
しおりを挟むなぜか腹立たしくなり、エルムンド侯はシルドを詰問した。
「もしーー」
「もし?
なんだ???」
「しくじっていたら、どうするつもりだったのだっ!!???」
ああ、それか。
そう問われ、シルドの答えはあっさりとしたものだった。
「僕がこの首を、自分で跳ねて終わらす気だった。
ただ一つ‥‥‥」
そこでシルドは言いよどみ、隣のミレイアを見た。
先程から、怒りを抑えきれないのだろう。
ミレイアのシルドを握る手はあまりにも強くなりすぎて、伸びた爪が手に食い込もうとしていた。
「ただ一つ、なんだ、シルド」
そこまで言っておいて、勝手に話を区切るな。
そうエルムンド侯は文句を言うが、シルドはミレイアの頬に手をやると、何かを唱えた。
「あっ‥‥‥」
ミレイアの喉から声がでる。
彼女は舌を失った痛みが消え、斬り落としたそれが再生されたことに気づいた。
「えー‥‥‥。
なぜーー」
驚きの声しか出てこない。
あの死にそうな痛みはなぜ、与えられたのか。
ミレイアは散々、恨みを言いたい気分だった。
「おい、シルド。
何をしている?
お前はなにがしたいのだ!?
そんな回復魔法をかけるのならば、なぜ、奥方をあんな目にあわせた!?」
そう、エルムンド侯は叫ぶ。
シルドの行いは理解の範疇を越えていた。
「まず、さっきの返事だが。
僕は死ぬときは、この奥に。
彼女に僕の持つ魔導の全てと、領地の全てを遺して死ぬ気だった」
あなたはなにを言ってるの???
ミレイアは理解しがたい存在を見るように、シルドを睨みつける。
「でもーー」
それはミレイアが発した言葉だった。
「もし、それをするならば、あなたにとってわたしはなんだったのですか、シルド様??
なぜ、お姉さまを選ばなかったのです。
先程の理由をどうお聞きしても、エルムンド侯が言われる通り、あなたのやり方はーー」
あまりにも危険すぎる。
まるで綱渡りをしているかのよう。
薄い凍りの、いつ割れるかもしれないそれの上を歩いているかのよう。
なぜそんな行動を選んだのか。
理解できなかった。
「すまなかった、ミレイア。
いや、エイシャ殿。
僕は知っていたのだ。
あなたの婚約相手として王国側が用意した相手。
それはーー」
「それは・・・・・・???」
そう問い返すと、シルドはミレイアの指先に光る、ルケーア子爵の紋章がついた指輪に手を添える。
「まさか、シルド様‥‥‥相手は王子殿下ーー???!」
そうだよ、とシルドは寂しそうに笑う。
「エイシャ」
そう語り掛けると、ミレイアは否定した。
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