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本編開始前
朱殷の記憶(シリアス)
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**商店街で薙翔と寧々が再会したばかりの頃の小説(子供姿時代の薙翔目線)**
遠い遠い昔の…消せない記憶
”欲に塗れた見世物小屋”
オイラはそこで、世界の残酷さを知ったんだー
腐った血と肉の匂いが充満する牢獄 日々与えられる拷問
それを楽しむ男達の下卑た笑い声
あそこはまさに”現世の地獄”のような場所だった
「一緒にここを抜け出そう」
「困った時はお互い様だ」
「助け合って生きていこう」
何度も耳にした甘い言葉
「アイツだ!俺は何も悪くねえ!アイツが全部悪いんだ」
「お前が代わりに死ね!!」
「馬鹿が!騙される方が悪いんだろ!」
何度も耳にした毎度お決まりのような裏切りの言葉 …
でも誰も責めちゃいけねえ
皆生きるのにただ必死だっただけ
あの狭い牢獄の中 日々疲弊していく心で 自分の身を守るだけで皆精一杯だったんだ
誰も…誰も悪くない…
悪いのは見世物小屋の奴らだけ
そう何度も何度も自分を無理やり納得させ
牢屋の隅で静かに涙を流す日々
そんな裏切りに塗れた日々でもオイラの心が壊れずにいられたのは
生き別れたたった一人の…”最愛の妹”の存在がいつだって心にあったからだ
思い出す妹との日々は どれも温かさに満ちていて
どんなに悲しくてもお前の事を思い出せば
自然と口元には笑みがこぼれた
お前だけはこの地獄に囚われてほしくはない
お前だけは…どうかお前のままで
もし再びめぐり会う事が出来て
お前がもし…お前のままで居てくれたら
オイラはもう一度…
”心から生きたい”と願えるのだから
「お兄ちゃん」
目を開くとそこには、いつもの見慣れた天井と心配そうに自分を覗き込む姿
「………お兄ちゃん」
白いきれいな指先がオイラの頬へとそっと触れ優しく撫でる
その感覚がなんだかとても心地良くて夢現になりながら浸っていると
そのまま親指で目元も撫でられようやく気づく
「(……オイラ、泣いてたのか)」
「…お兄ちゃん」
か細くオイラの名前を呼ぶ声
その声に再び声の主へと視線を向けると
翡翠に薄い膜をはりながら綺麗な瞳が揺らめいでいる
「(………ああ、…頼む…泣かんでくれ)」
今にも泣きだしそうな姿を目にしたら夢現だった身体も自然と動き、
目の前の小さな身体を抱き寄せただ願う
再会した妹 寧々は…”寧々”のままだった
何も変わらない あの頃と何一つ変わらない
ひだまりのように温かくて 優しさに満ちた純粋そのもの
……あの見世物小屋にはけしてなかったもの
「(……温かい)」
「……………お兄ちゃん…、泣いてるの?また怖い夢を見たの…?」
不安げに震える声を安心させるように
絹糸のような髪をゆっくりと撫でる
「…ああ、少し昔の…な。でもこの涙はちげぇ…この涙は……」
口元に自然と笑みがこぼれ、 布越しに伝わる体温の温かさが心にも染み渡る
「(この温かさえあればいい…、この温かさがあればオイラは…)」
”もう一度生きて”いけるのだから
── end
薙翔と寧々が再会してすぐ、まだ二人が”兄妹”ではないと知る前。 薙翔が寧々を喰らうほど欲する前のほんのひと時の話。
遠い遠い昔の…消せない記憶
”欲に塗れた見世物小屋”
オイラはそこで、世界の残酷さを知ったんだー
腐った血と肉の匂いが充満する牢獄 日々与えられる拷問
それを楽しむ男達の下卑た笑い声
あそこはまさに”現世の地獄”のような場所だった
「一緒にここを抜け出そう」
「困った時はお互い様だ」
「助け合って生きていこう」
何度も耳にした甘い言葉
「アイツだ!俺は何も悪くねえ!アイツが全部悪いんだ」
「お前が代わりに死ね!!」
「馬鹿が!騙される方が悪いんだろ!」
何度も耳にした毎度お決まりのような裏切りの言葉 …
でも誰も責めちゃいけねえ
皆生きるのにただ必死だっただけ
あの狭い牢獄の中 日々疲弊していく心で 自分の身を守るだけで皆精一杯だったんだ
誰も…誰も悪くない…
悪いのは見世物小屋の奴らだけ
そう何度も何度も自分を無理やり納得させ
牢屋の隅で静かに涙を流す日々
そんな裏切りに塗れた日々でもオイラの心が壊れずにいられたのは
生き別れたたった一人の…”最愛の妹”の存在がいつだって心にあったからだ
思い出す妹との日々は どれも温かさに満ちていて
どんなに悲しくてもお前の事を思い出せば
自然と口元には笑みがこぼれた
お前だけはこの地獄に囚われてほしくはない
お前だけは…どうかお前のままで
もし再びめぐり会う事が出来て
お前がもし…お前のままで居てくれたら
オイラはもう一度…
”心から生きたい”と願えるのだから
「お兄ちゃん」
目を開くとそこには、いつもの見慣れた天井と心配そうに自分を覗き込む姿
「………お兄ちゃん」
白いきれいな指先がオイラの頬へとそっと触れ優しく撫でる
その感覚がなんだかとても心地良くて夢現になりながら浸っていると
そのまま親指で目元も撫でられようやく気づく
「(……オイラ、泣いてたのか)」
「…お兄ちゃん」
か細くオイラの名前を呼ぶ声
その声に再び声の主へと視線を向けると
翡翠に薄い膜をはりながら綺麗な瞳が揺らめいでいる
「(………ああ、…頼む…泣かんでくれ)」
今にも泣きだしそうな姿を目にしたら夢現だった身体も自然と動き、
目の前の小さな身体を抱き寄せただ願う
再会した妹 寧々は…”寧々”のままだった
何も変わらない あの頃と何一つ変わらない
ひだまりのように温かくて 優しさに満ちた純粋そのもの
……あの見世物小屋にはけしてなかったもの
「(……温かい)」
「……………お兄ちゃん…、泣いてるの?また怖い夢を見たの…?」
不安げに震える声を安心させるように
絹糸のような髪をゆっくりと撫でる
「…ああ、少し昔の…な。でもこの涙はちげぇ…この涙は……」
口元に自然と笑みがこぼれ、 布越しに伝わる体温の温かさが心にも染み渡る
「(この温かさえあればいい…、この温かさがあればオイラは…)」
”もう一度生きて”いけるのだから
── end
薙翔と寧々が再会してすぐ、まだ二人が”兄妹”ではないと知る前。 薙翔が寧々を喰らうほど欲する前のほんのひと時の話。
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