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第二部
☆ふたり、バカンス②
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夕食を終え、食器を片づけていたときだった。
フェイがふいに「あ」と思い出したように手を打った。
「そうだ、リズ。実は君に渡したいものがあるんだ」
そう言って懐から小さな包みを取り出す。
つやつやしたリボンがかけられた、贈り物らしい可愛らしい箱。
「えっ、私に……?」
受け取っただけで胸が高鳴る。
包みをそっと開くと、真っ白な布地が現れた。
薄手で柔らかく、これまで触れたことのない感触。
「……これ、服……?」
首を傾げて尋ねると、フェイが唇を弧にして微笑む。
「水着さ。明日、海に入るだろう? 君と一緒に泳ぎたくて用意したんだ」
どきん、と心臓が跳ねた。
海に入る――そんなことを考えたこともなかった。
けれど、その新しい体験をフェイと共にできるのだと思うとうれしくて、小さく頷いていた。
「ありがとう……ふふ、楽しみ」
「……これで、外に出るの?」
翌日。
着替えを済ませて部屋の前に立つが、どうしても足が動かない。
鏡に映る自分の姿は、普段のメイド服に比べてあまりにも布が少なくて、あらわになった肌が落ち着かない。
思わず上着を羽織り、胸元をぎゅっと押さえた。
「リズ?」
コテージの外から呼ぶ声に、おそるおそる出ていく。
途端、フェイがすっと近づき、ためらいなく上着を取ってしまった。
「……ひゃっ!?」
「隠さなくてもいい。……とても綺麗だ」
真っ直ぐな眼差しに心臓が破裂しそうになる。
視線が全身をなぞるたびに火照りが広がり、私はただ頬を染めて俯くしかなかった。
「さ、いこうか」
手を取られて砂浜へ。
足を波に浸した瞬間、冷たさに思わず声が上がる。
「わっ……! つめたいっ!」
水飛沫をあげてはしゃぐ私を、フェイは目を細めて見守っていた。
指を繋ぎ、寄せては返す波に笑い合いながら足を取られる。
海風に髪が揺れ、心は羽のように軽くなった。
たっぷり遊んで戻ると、フェイが柔らかい声で言った。
「冷えただろう? 温まろう」
連れて行かれたのは浴室。
湯気の立ちのぼる湯船を前に、彼がさらりと提案する。
「そのまま、水着で浸かろう。せっかくだから」
湯に体を沈めると、水着越しに布が肌にぴたりと張り付いて余計に恥ずかしい。
そんな私の隣で、フェイがふっと目を細めた。
「この水着、特注なんだ。君の体型に合わせて仕立ててもらった」
湯気の向こうで、フェイの声はどこか誇らしげだった。
「色は――白を基調にした。君の肌は雪みたいに透き通っているからね。太陽の下でも水の中でも、きっと映えると思ったんだ」
そう言って、肩紐に指をかける。
水に濡れて張り付いた布地を軽くつまみながら、「ここから覗く鎖骨が、一段と綺麗に見える」と囁かれる。
そこだけ熱を持つようで、私は思わず身をすくめた。
「胸元には、細かなフリルをつけてもらった。君は自分を小柄で頼りないと言っていたけれど――僕にとっては、その華奢さが愛おしい。フリルがそれを際立たせてくれるはずだ」
言葉と同時に、フェイの指先が胸の縁をなぞる。
「……っ」
水着の上からなのに、布越しにそこが意識されて、息が浅くなる。
「腰のリボンは、視線を自然とくびれに導く。君のボディラインは君が思っている以上に整っているんだ。……だから、強調したくて」
腰骨のあたりを撫でられる。
お湯の熱と指先の熱が溶け合って、頭がじんじんしていく。
「それから……」
彼の視線が下へと移動する。
「裾を少し短くしてあるのは、足の線を綺麗に見せたかったから。君の足は形がいい。歩くたびに砂を払う仕草も、波を蹴る仕草も……僕は見ていたくなる」
太腿に沿って滑る手の感触に、耐えきれず小さく声が漏れた。
「ふ……ぁ……」
「可愛い声だ」
耳元に囁かれただけで、全身がきゅっと縮むような感覚に襲われる。
気づけば彼の指は胸の谷間を撫で、親指で布の境を押し広げるように動いていた。
生地越しに敏感な部分を擦られるたび、背筋がびくんと跳ね、唇を噛んで声を殺すので精一杯になる。
「ここも……小さな飾りをつけた方が似合うと思った」
そう言って、彼は胸元の飾りを指で摘み、軽く弾く。
水滴が飛び散り、ぞくりとした熱が広がっていく。
説明のはずが、ひとつひとつの言葉が甘く濡れて、ただの水着の話には聞こえなくなっていた。
耳まで熱が広がる。
そんな反応さえも、フェイは嬉しそうに受け止めていた。
「一つひとつに理由があるんだよ。全部、君のために考えた。……だけど、こうして触れてみると――理屈よりも、ただ愛おしいとしか言えないな」
最後の言葉は囁きに近かった。
腰骨をなぞられ、布の境目を指で押されると、思わず湯の中で爪先を丸めてしまう。
「んっ……あぁ」
波のように押し寄せる感覚に、抗うこともできず震えが全身に広がっていく。
「リズ……もっと聞かせて。君の声が欲しいんだ」
熱を帯びた囁きとともに、胸の先端を指先でつままれる。
「……ぅうんっ……!」
布越しに撫でられるだけで湯に溶けるような痺れが走り、喉から声が洩れた。
「やっぱり敏感なんだね。……ここに触れると、すぐに震える」
ねっとりと弄ぶように言葉を浴びせられ、さらに強く転がされる。
思わず肩を竦めると、すかさずもう片方の手が腰骨をなぞり、脇腹を撫でてきた。
逃れようと身をよじれば、今度は胸の下を撫で上げられ、息が詰まる。
「触れるたびに逃げようとするところも……可愛いよ」
低い声に耳を犯されるようで、身体の奥まで熱が差し込む。
「ほら、ここ。少し強くすると――」
「っ……んぁ……!」
指先で軽く抓まれると、ちゃぷんと湯が跳ねて全身が震える。
羞恥に声を塞ごうとするのに、彼は耳元で甘く囁く。
「隠さなくていい。もっと聞かせて。僕だけに見せて、聞かせて……」
湯気に包まれた空間で、言葉と指が同時に責め立ててくる。
「……ん、あっ……ふぇ、いっ……!」
やがて私は、水面に身を沈めるようにして、爪先をぎゅっと丸め、全身を熱に呑まれるまま震え続けてしまった。
呼吸を整えようと必死に顔を上げると、フェイは穏やかに微笑んでいた。
「――さ、体を洗おう」
そう言って、まるで何事もなかったように私の手を取る。
日常と非日常を当たり前のように混ぜ合わせる人――その自然さに、胸がいっぱいになる。
頬にかかる雫を指でそっと拭われたとき、心から「ああ、幸せだ」と思った。
フェイがふいに「あ」と思い出したように手を打った。
「そうだ、リズ。実は君に渡したいものがあるんだ」
そう言って懐から小さな包みを取り出す。
つやつやしたリボンがかけられた、贈り物らしい可愛らしい箱。
「えっ、私に……?」
受け取っただけで胸が高鳴る。
包みをそっと開くと、真っ白な布地が現れた。
薄手で柔らかく、これまで触れたことのない感触。
「……これ、服……?」
首を傾げて尋ねると、フェイが唇を弧にして微笑む。
「水着さ。明日、海に入るだろう? 君と一緒に泳ぎたくて用意したんだ」
どきん、と心臓が跳ねた。
海に入る――そんなことを考えたこともなかった。
けれど、その新しい体験をフェイと共にできるのだと思うとうれしくて、小さく頷いていた。
「ありがとう……ふふ、楽しみ」
「……これで、外に出るの?」
翌日。
着替えを済ませて部屋の前に立つが、どうしても足が動かない。
鏡に映る自分の姿は、普段のメイド服に比べてあまりにも布が少なくて、あらわになった肌が落ち着かない。
思わず上着を羽織り、胸元をぎゅっと押さえた。
「リズ?」
コテージの外から呼ぶ声に、おそるおそる出ていく。
途端、フェイがすっと近づき、ためらいなく上着を取ってしまった。
「……ひゃっ!?」
「隠さなくてもいい。……とても綺麗だ」
真っ直ぐな眼差しに心臓が破裂しそうになる。
視線が全身をなぞるたびに火照りが広がり、私はただ頬を染めて俯くしかなかった。
「さ、いこうか」
手を取られて砂浜へ。
足を波に浸した瞬間、冷たさに思わず声が上がる。
「わっ……! つめたいっ!」
水飛沫をあげてはしゃぐ私を、フェイは目を細めて見守っていた。
指を繋ぎ、寄せては返す波に笑い合いながら足を取られる。
海風に髪が揺れ、心は羽のように軽くなった。
たっぷり遊んで戻ると、フェイが柔らかい声で言った。
「冷えただろう? 温まろう」
連れて行かれたのは浴室。
湯気の立ちのぼる湯船を前に、彼がさらりと提案する。
「そのまま、水着で浸かろう。せっかくだから」
湯に体を沈めると、水着越しに布が肌にぴたりと張り付いて余計に恥ずかしい。
そんな私の隣で、フェイがふっと目を細めた。
「この水着、特注なんだ。君の体型に合わせて仕立ててもらった」
湯気の向こうで、フェイの声はどこか誇らしげだった。
「色は――白を基調にした。君の肌は雪みたいに透き通っているからね。太陽の下でも水の中でも、きっと映えると思ったんだ」
そう言って、肩紐に指をかける。
水に濡れて張り付いた布地を軽くつまみながら、「ここから覗く鎖骨が、一段と綺麗に見える」と囁かれる。
そこだけ熱を持つようで、私は思わず身をすくめた。
「胸元には、細かなフリルをつけてもらった。君は自分を小柄で頼りないと言っていたけれど――僕にとっては、その華奢さが愛おしい。フリルがそれを際立たせてくれるはずだ」
言葉と同時に、フェイの指先が胸の縁をなぞる。
「……っ」
水着の上からなのに、布越しにそこが意識されて、息が浅くなる。
「腰のリボンは、視線を自然とくびれに導く。君のボディラインは君が思っている以上に整っているんだ。……だから、強調したくて」
腰骨のあたりを撫でられる。
お湯の熱と指先の熱が溶け合って、頭がじんじんしていく。
「それから……」
彼の視線が下へと移動する。
「裾を少し短くしてあるのは、足の線を綺麗に見せたかったから。君の足は形がいい。歩くたびに砂を払う仕草も、波を蹴る仕草も……僕は見ていたくなる」
太腿に沿って滑る手の感触に、耐えきれず小さく声が漏れた。
「ふ……ぁ……」
「可愛い声だ」
耳元に囁かれただけで、全身がきゅっと縮むような感覚に襲われる。
気づけば彼の指は胸の谷間を撫で、親指で布の境を押し広げるように動いていた。
生地越しに敏感な部分を擦られるたび、背筋がびくんと跳ね、唇を噛んで声を殺すので精一杯になる。
「ここも……小さな飾りをつけた方が似合うと思った」
そう言って、彼は胸元の飾りを指で摘み、軽く弾く。
水滴が飛び散り、ぞくりとした熱が広がっていく。
説明のはずが、ひとつひとつの言葉が甘く濡れて、ただの水着の話には聞こえなくなっていた。
耳まで熱が広がる。
そんな反応さえも、フェイは嬉しそうに受け止めていた。
「一つひとつに理由があるんだよ。全部、君のために考えた。……だけど、こうして触れてみると――理屈よりも、ただ愛おしいとしか言えないな」
最後の言葉は囁きに近かった。
腰骨をなぞられ、布の境目を指で押されると、思わず湯の中で爪先を丸めてしまう。
「んっ……あぁ」
波のように押し寄せる感覚に、抗うこともできず震えが全身に広がっていく。
「リズ……もっと聞かせて。君の声が欲しいんだ」
熱を帯びた囁きとともに、胸の先端を指先でつままれる。
「……ぅうんっ……!」
布越しに撫でられるだけで湯に溶けるような痺れが走り、喉から声が洩れた。
「やっぱり敏感なんだね。……ここに触れると、すぐに震える」
ねっとりと弄ぶように言葉を浴びせられ、さらに強く転がされる。
思わず肩を竦めると、すかさずもう片方の手が腰骨をなぞり、脇腹を撫でてきた。
逃れようと身をよじれば、今度は胸の下を撫で上げられ、息が詰まる。
「触れるたびに逃げようとするところも……可愛いよ」
低い声に耳を犯されるようで、身体の奥まで熱が差し込む。
「ほら、ここ。少し強くすると――」
「っ……んぁ……!」
指先で軽く抓まれると、ちゃぷんと湯が跳ねて全身が震える。
羞恥に声を塞ごうとするのに、彼は耳元で甘く囁く。
「隠さなくていい。もっと聞かせて。僕だけに見せて、聞かせて……」
湯気に包まれた空間で、言葉と指が同時に責め立ててくる。
「……ん、あっ……ふぇ、いっ……!」
やがて私は、水面に身を沈めるようにして、爪先をぎゅっと丸め、全身を熱に呑まれるまま震え続けてしまった。
呼吸を整えようと必死に顔を上げると、フェイは穏やかに微笑んでいた。
「――さ、体を洗おう」
そう言って、まるで何事もなかったように私の手を取る。
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