貧乏メイド、官能作家に身体を資料として提供することになりました~資料のために抱かれ続けた私、いつの間にか彼の最愛に~

蜜井蜂

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第二部

☆甘やかす夜

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「――もう、お帰りになってしまうの?」


ノーナが潤んだ瞳でフェイ様を見上げた。
声には明らかな名残惜しさが滲んでいる。
「せっかく夕食をご一緒できると思っていたのに……私、とても楽しみにしていたのよ!」

彼女の手がフェイの袖をきゅっと掴む。
その様子は、幼い恋の名残を感じさせて胸が少し痛くなった。

フェイは困ったように眉を下げ、優しくその手を取って言った。
「ごめんね、ノーナ。今日は少し疲れてしまって。……また今度、ゆっくり話そう」

「うう……!」
言葉を飲み込むように唇を噛むノーナ。
その表情にフェイは微笑みを返し、「約束する」と短く告げると、彼女の頭をを軽く撫でた。

「絶対、絶対に約束ですわよ!」

今にも泣きだしそうなノーナの声を背に受けながら、私たちは屋敷を後にした。




帰りの馬車の中、フェイは一言も発さず窓の外をじっと見つめていた。
沈む夕日が横顔を照らし、瞳の奥の疲労を際立たせている。

私は彼の手にそっと自分の手を重ねた。
冷えきった指先が少しだけ動いて、フェイの視線がこちらに向く。
「……リズ」

「大丈夫です」
私は短くそう答えて、彼の手を包み込むように握った。

フェイは私の言葉に微かに頷いて、また窓の外に目を向ける。
車内にはゆっくりと揺れる音だけが響き続けた。





「……疲れた」
帰宅すると、フェイは深く長い息を吐き、そのまま私に抱きついてきた。
その体の重みがずしりと腕に伝わる。
肩に顔を埋める彼の背を撫でると、小さな声で「本当に疲れた」と零した。

「……お疲れ様でした」
私は微笑んで彼を抱きしめ返す。
背中を掌で上下に撫でながら肩口に唇を押し当てると、かすかに身を震わせる気配が伝わってきた。

フェイがソファに身体を沈めるのに合わせて、私も隣に座る。

「……頑張ったから、褒めて欲しい」
そう言う彼に、私は頷いて髪を梳くように撫でた。

「お父様とちゃんと向き合えて……えらいです」
「……うん」

「大人の対応ができてすごいし、なにより……隣で見ていて誇らしかった」
「……ん」

耳元で囁きながらこめかみから頬へと唇を滑らせると、彼の呼吸が熱を帯び、少しずつ肩の力が抜けていくのを感じた。

「もっと……」
低く甘えるように呟く声。
そのまま私をじっと見つめる瞳が、切なくなるほど真剣で。
私は彼の手を取り、指の一本一本に口づけを落としながら微笑んだ。

「もちろん、いくらでも」

フェイの頬に両手を添えて、額にそっと口づける。
そのまま頬、耳、首筋へと丁寧に辿っていく。
唇を離すたび、彼の肌に小さな赤みが広がっていくのが愛おしかった。

「否定されても怒らなかったのも。簡単にできることじゃないよ」

「……そうかな」
「うん」
囁きながら、背中を撫でてシャツ越しに指を滑らせる。
布越しでも伝わる熱に、彼が小さく息を吐いた。

やがてフェイが私を抱き上げようとしたけど、私は彼の胸に手を置いて制した。
「今夜は、私が甘やかすから」

驚いた表情を見せる彼を膝に抱き寄せる。
フェイの肩に顔を寄せ、髪に唇を触れながら囁いた。
「全部、私に委ねて?」
「……わかった」
彼は静かに頷き、私の腕の中に身を沈めてきた。


「私はずっと、フェイの味方だからね」
耳元で繰り返し囁きながら、背を抱き寄せる。
フェイが私の腕に縋りつくようにしがみついてくると、胸が熱くなった。

「……んっ……ふっ」
唇を重ねると、彼は切なげに吐息を洩らして応える。
けれどそれは激しい求めではなく、ただ「離さないで」と訴えるような動きだった。
私はその思いを抱きとめるように、頬を撫で、髪を梳き、唇を重ね続けた。

服を外すときも、急がずゆっくりと。
肩に落ちる布を指先で掬い取り、露わになった肌に唇を触れさせる。
鎖骨、胸、腹部と、慈しむように辿っていく。

ベルトをカチャリと外し、下着越しにフェイのモノに触れた。
「……くっ……あぁ」

まだ柔らかさの残るソレに触れるたび、フェイの腹筋がひくりと震える。
「……力抜いて?」
「そんな、こと……言われて、も」

私が優しく指を滑らせるのに合わせて、フェイの艶っぽい吐息が漏れる。
その口元が色っぽくて、私は思わずキスを落とした。
「……んふっ、、ぅんん」
以前フェイにされたように、わざとらしくリップ音をさせて何度も何度も。

くちゅりと音が響くたび、フェイの下腹部がぴくぴくと揺れる。
すっかり熱く硬くなったソレを手のひらで感じながら、私はスカートのすそをたくし上げ、フェイの上に跨った。

「挿入れるね?」
フェイの下着をずらし、自身の割れ目にあてがう。
「リズ……手、つないでも、いい?」
「もちろん」
差し出された手に指を絡めると、フェイは安心したようにきゅっと握り返してきた。
私は、指先の熱を感じながらそのままゆっくりと腰を沈める。

「……あぁ……っ」

互いの体が重なり合い、彼が私にすべてを委ねてくる。
その瞬間、私は全身で彼を包み込み、抱きしめ、何度も囁いた。

「大丈夫、私はここにいるからね」
「……んっ」

「フェイの全部を愛してる。頭の先か……ら、つま先までぜん、ぶ……!」
「う、ん……!」

声に熱がこもり、律動が早まる。
互いの肌がぶつかり合う音が静かな室内を満たしていく。

「ふぇ、いは、ひとりで頑張りすぎ……なんです。もっ、と、私を、頼っ……て、たくさん弱い、とこ見せて」
私の言葉にフェイが顔を上げる。
一瞬泣きそうな顔をした後、少し笑ってキスを求めてきた。
「……ん、ふぅっ、ありが、と。リズ……」


やがて彼が小さく震えるように私に縋りつき、胸に顔を埋めて息を乱した時――私は彼をぎゅっと抱きとめて額に口づけを落とした。

「……よく頑張りましたね」

その言葉に、彼は微かに笑みを見せ、「ありがとう」と囁きながら私の胸に顔を埋めた。
温もりを確かめるように抱き合ったまま、私は彼の髪をやさしく梳く。


暫くして、彼の呼吸音が寝息に変わるころ、私はもう一度彼の耳元に唇を寄せた。

「だいすき」
囁いた言葉は、彼の夢の中へと溶けていくようだった。



明日になればまた現実は追ってくる。

けれど――
今夜だけは、夢の中で羽を休めてほしい。

この夜が彼の孤独を、痛みを少しでも癒やせていますように――そう祈りながら、私はその温もりを胸に抱き続けた。



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