公爵令嬢は逃げ出した!

百目鬼笑太

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第二章 冒険する公爵令嬢

ハーレム希望カツラギ

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 その後、また馬車が魔物に襲われたら大変だからとカツラギと桃色髪、三角帽子の少女が同行する流れとなった。
 桃色の髪の子はプリムラ、三角帽子の子はアイリスというらしい。
 話してみると、カツラギマサキの一行もエル・デルスター王国を目指してグラナット公国に向かう途中であったらしい。

「エル・デルスターには聖剣があるらしくってさ! やっぱ抜けるか試してみたくない? 男のロマンって感じじゃんか」
「アタシは王国の特殊な魔術様式を学びにいくの。プリムラは社会見学」
「えへへ、そうなんです。私、これまで教区の外を見たことがなくって……まさか外にはこんなに魔物が多くいるなんて思ってもなかったです」

 三者三様に目的を語る。
 教区、ということはプリムラは教会の出身のやうだ。
 教会は孤児を保護して教育を行う慈善事業をしていることがある。
 そして魔物を何より忌み嫌うのだ。

「ジョーは? どうして王国に行きたいんだ?」
「わ……オレはオズの国に行こうと思っててさ。エル・デルスターだけだろ、あっちの国と国交があるのは」

 なんとなくハーレム希望らしいカツラギに性別を公表するのは躊躇われて男性のフリをすることにした。
 それにしても男装しているつもりは全くないのだけど。
 中世欧州風の文化に似ているせいで女性が短髪やズボンを履くことが、ほとんどないからだろうか。
 それでも騎士なんかは女性であってもズボンなんだけどね。

「オズの国!? あの魔法使いの!?」
「へぇ、そんな国もあるんだなぁ」
「なに、呑気に言ってんのよ! バカマサキ! オズの国って言ったら、伝説の7人の魔法使いの1人がまだ存命してる唯一の国なんだからね!?」
「おっ、おう……?」

 見た目からして魔術師であるアイリスが勢いよく食いついてきた。
 まあ、魔術師ならそう言う反応にもなるだろう。
 魔術師にとって魔法使いは憧れの存在だから。

 反対によくわかってなさそうなカツラギにピンと来てなさそうな箱入りのプリムラはひとまず置いておこう。

「オズの国って言ったら入国許可を貰うのがヤバ難しいって聞くけど! あてはあるわけ?」
「そこは平気。祖母がオズの出身でね、オレは年中フリーパスな訳」
「なにそれ、ズッルい……」

 アイリスの言葉の通り、他国の者がオズの国に入国するには厳しい基準が設けられている。
 規定量の魔力やら、生物植物の類は持ち込み禁止で他国出身者はオズにいる間、魔封じのアクセサリーを身に付けなければならないなど色々だ。
 その基準を満たせなければ、それが例え帝国の遣いでも門前払いにされ強制送還されてしまう。


 逆に身内にオズの出身がいれば入国のための基準の難易度は一気に下がる。
 フリーパスというのは大袈裟だけど本人であると証明するだけで楽々入国できるのだ。

 ちなみに本人確認は数代前まで遡っての血統魔術の確認で行われる。
 魔術は血統で遺伝するものだ。

「くくっそぉ~、アタシだっていつかオズの国に行けるくらいの魔術師になってやるんだからぁ~……!」
「がんばれ、がんばれ」
「何よ! 余裕ぶっちゃって! ふんだ!」

 ふん、とアイリスにそっぽを向かれた。

「なあ、もしよかったら僕らと一緒にエル・デルスター王国に向かわないか? さっきの魔物のときも他の乗客に怪我がなかったのはキミのかけた魔術のおかげだろうし、キミもそれなりにやるんだろ?」
「あぁ、うーん……理論的なことなら自信があるけどな。オレは実戦経験がないんだよ」
「なら、僕たちと実戦経験を詰んだらいい! それまでは僕らがキミの護衛として一緒にいくよ、もちろんタダでね。……で、出来ればオズの国に僕らも連れて行ってもらえないかな」

 思わぬ申し出と交換条件だった。
 別に実戦経験がどうしても欲しいわけでもないし、オズの国の入国審査だって私がどうにかできるわけでもなければ、そもそも金を積めばグラナット公国でプロの護衛だって雇えるわけだし。
 取引として成立していない。

 チラチラと、そっぽを向いていたアイリスが私とカツラギの様子を窺っている。
 プリムラはそんなアイリスを微笑ましげに見守り、時折満足そうにカツラギへ視線を送っていた。

 はっはーん、とピンと来てしまう。
 つまりカツラギはアイリスにいい顔をしたいのだ。
 なんと言うべきなのか。ハーレム希望なところといい。このカツラギという男、もしや異世界転移ハーレム系主人公なのではとゲスパーしてしまう。

 正直、私自身がハーレム要員の攻略対象なのかどうかだけ知りたいけど。
 改めてじっくりとカツラギを見る。
 濃茶と明るい茶色が混じった混合髪に明るいオレンジのつぶらな瞳。
 背は高くなく、私と同じくらいの中肉中背。
 顔自体も特別に整っているわけではないが、嫌悪を抱くほど醜いわけでもない。
 皮の防具に腰の剣と魔術師の杖というどっち付かずの格好が突飛なくらいで感想に困るくらいには、どこにでもいそうな見た目をしている。

 ちなみに性格も私の好みではない。
 いやハーレム希望が透けて見える相手はちょっと……、っていうね?

「いいよ。オズの国に着いたら出来る限りの協力をさせてもらおう。ただしあまり期待はしないでくれよな?」
「やった! ありがとな、ジョー!」
「やりましたね! マサキ様!」
「何よ、バカマサキのくせにやるじゃない!」

 喜色を浮かべるハーレム一行に私も作り笑いを浮かべてみせた。
 なぜ、受け入れたか気になる?
 そんなの好奇心に決まってんのよ。
 ハーレム主人公を間近で観察できる機会なんて早々ないもんな。
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