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第三章 海を渡る公爵令嬢
船の行き先
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正直、私は甘やかされて育てられた元令嬢だから、心の底から優しく小動物にするみたいに接して欲しいと望んでいる。
もちろん、それは公爵令嬢という立場を捨てて逃げ出した私が言えることではないし、公爵令嬢ではなければ単なる旅人に過ぎないのだから、あり得ないことだとも分かっている。
それはそれとして、と言う話だ。
心の中では甘やかされる平穏を望んでもいいじゃない?
「やあ、ジョー。いい朝だね。昨日はよく眠れたかい?」
「あうあう、ども……」
昨晩のこともあり、会いたくなかった筆頭であるジョンと、いの一番に出会ってしまった。
物腰穏やかながら腹黒、ということなのだろうか。
関わりたくない……こわい……。
何が怖いかって、ジョンはとくに普段と変わらない調子で私へ笑顔を向けていることだ。
白い歯が太陽の光を反射して輝く。腹の中は真っ黒なくせに……。
「よ、おはよう。お二人さん」
ディヴィスはディヴィスで酔っている間の記憶がなくなるタイプなのかあっけらかんとしている。
ディヴィスは手に紙の筒をかかえていた。
「やあ船長。朝から海図を持ってどうしたんだいい。次の目的地は拠点のアヴァロ島だったろう?」
「おう、進路変更だ」
「おやおや……」
チラリとジョンの視線がほんの一瞬だけ私に移る。
ひっと肩を震わせてしまう。
何となく察しながら口を開き始めたディヴィスへ内心で祈る。
やめてくれやめてくれ。頼むから!!
「俺たちはこれからオズへ向かう」
「うっ……どうして?」
「は? 俺は海賊だ、俺が俺の船でどこに行こうが理由なんていらねえんだよ。全ての海は俺のものなんだからな」
恐る恐る質問をすれば、ふん、と鼻を鳴らしてディヴィスが胸を張る。
どこにでも好きなところへ向かう──無法者の海賊であるなら、それはそうだろうと昨日までなら思えたのに。
酔った末での告白を聞かされたあとでは、もしかして私のために? と、どうしても思ってしまう。
自意識過剰ならその方がいい。是非そうであって欲しい。
何よりジョンが怖い。
何この三角関係に巻き込まれたみたいな焦燥。
「あ。そういえばアヴァロ島が拠点て?」
「言ってなかったか? 俺とバートレットはアヴァロ出身なんだぜ」
「へえ! アヴァロの!」
話題を変えるために、気になったことを聞いた。
アヴァロ島は帝国領の自治領で、妖精国という別名のある地域だった。
以前読んだアヴァロの本には、それはそれは美しい挿絵が描かれていた。
きっと花が咲き誇り可憐な妖精が飛び交うような楽園のような場所で、一度は行ってみたいと思っていたことをディヴィスに話す。
「……へぇ、外じゃあ、んな風に伝わってんのか」
「へ」
「現実とは非情なり。夢とは醒めない方がかくも美しくあり続けられるものだ」
「妖精国なんつー呼び方が余計な想像を掻き立てんのかね?」
「すぐにでも海賊島に改名した方が賢明だろうね」
「海賊島……?」
呟くと2人で盛り上がり見せたディヴィスとジョンが振り向く。
「海賊、海賊。な?」
「いや、な? って言われても意味わかんないよ」
ディヴィスはジョンと自分を指差して確認するように私へ首を傾けた。
アヴァロ出身の海賊が多いから海賊島なのだろうか。
「ま、分かんねえならいいや。ともかくオズだ、オズ! ジョ~ン、航海のルート決めしようぜ~」
「全く、我らが船長は仕方がない人だ。悪いね、ジョー。どうもそういう訳らしい」
ディヴィスの抱えていた海図を受け取り、ジョンは微笑んでいる。
キャッキャッと楽しそうに2人は歩いて行ってしまい、私は1人で残されることとなった。
そういう訳って何やねん。
流石に気づく。
これ、ディヴィスがオズへ行くのに私は関係ないですよね?
あ~~、よかった……。
あの調子だと、知らない海を冒険したいとかそんな感じなのだと思う。
初っ端こそ商人(奴隷売り)への略奪だったが、ディヴィスたちは少年漫画のような冒険大好き海賊なんだと勝手に思うことにしよう。
色気(恋愛感情かは不明)よりも食い気(未知への冒険)というわけだ。
三角関係に巻き込まれたような焦燥から解放された気になって、ひとまずホッと息を吐く。
それはそれとして、なんだか少しだけ残念なような気持ちもあって複雑だ。
好きだと言われたら、誰だって少しは嬉しくなるものだからね。
しょうがないしょうがない。
……やっぱりちょっとムカつくなぁ……。
もちろん、それは公爵令嬢という立場を捨てて逃げ出した私が言えることではないし、公爵令嬢ではなければ単なる旅人に過ぎないのだから、あり得ないことだとも分かっている。
それはそれとして、と言う話だ。
心の中では甘やかされる平穏を望んでもいいじゃない?
「やあ、ジョー。いい朝だね。昨日はよく眠れたかい?」
「あうあう、ども……」
昨晩のこともあり、会いたくなかった筆頭であるジョンと、いの一番に出会ってしまった。
物腰穏やかながら腹黒、ということなのだろうか。
関わりたくない……こわい……。
何が怖いかって、ジョンはとくに普段と変わらない調子で私へ笑顔を向けていることだ。
白い歯が太陽の光を反射して輝く。腹の中は真っ黒なくせに……。
「よ、おはよう。お二人さん」
ディヴィスはディヴィスで酔っている間の記憶がなくなるタイプなのかあっけらかんとしている。
ディヴィスは手に紙の筒をかかえていた。
「やあ船長。朝から海図を持ってどうしたんだいい。次の目的地は拠点のアヴァロ島だったろう?」
「おう、進路変更だ」
「おやおや……」
チラリとジョンの視線がほんの一瞬だけ私に移る。
ひっと肩を震わせてしまう。
何となく察しながら口を開き始めたディヴィスへ内心で祈る。
やめてくれやめてくれ。頼むから!!
「俺たちはこれからオズへ向かう」
「うっ……どうして?」
「は? 俺は海賊だ、俺が俺の船でどこに行こうが理由なんていらねえんだよ。全ての海は俺のものなんだからな」
恐る恐る質問をすれば、ふん、と鼻を鳴らしてディヴィスが胸を張る。
どこにでも好きなところへ向かう──無法者の海賊であるなら、それはそうだろうと昨日までなら思えたのに。
酔った末での告白を聞かされたあとでは、もしかして私のために? と、どうしても思ってしまう。
自意識過剰ならその方がいい。是非そうであって欲しい。
何よりジョンが怖い。
何この三角関係に巻き込まれたみたいな焦燥。
「あ。そういえばアヴァロ島が拠点て?」
「言ってなかったか? 俺とバートレットはアヴァロ出身なんだぜ」
「へえ! アヴァロの!」
話題を変えるために、気になったことを聞いた。
アヴァロ島は帝国領の自治領で、妖精国という別名のある地域だった。
以前読んだアヴァロの本には、それはそれは美しい挿絵が描かれていた。
きっと花が咲き誇り可憐な妖精が飛び交うような楽園のような場所で、一度は行ってみたいと思っていたことをディヴィスに話す。
「……へぇ、外じゃあ、んな風に伝わってんのか」
「へ」
「現実とは非情なり。夢とは醒めない方がかくも美しくあり続けられるものだ」
「妖精国なんつー呼び方が余計な想像を掻き立てんのかね?」
「すぐにでも海賊島に改名した方が賢明だろうね」
「海賊島……?」
呟くと2人で盛り上がり見せたディヴィスとジョンが振り向く。
「海賊、海賊。な?」
「いや、な? って言われても意味わかんないよ」
ディヴィスはジョンと自分を指差して確認するように私へ首を傾けた。
アヴァロ出身の海賊が多いから海賊島なのだろうか。
「ま、分かんねえならいいや。ともかくオズだ、オズ! ジョ~ン、航海のルート決めしようぜ~」
「全く、我らが船長は仕方がない人だ。悪いね、ジョー。どうもそういう訳らしい」
ディヴィスの抱えていた海図を受け取り、ジョンは微笑んでいる。
キャッキャッと楽しそうに2人は歩いて行ってしまい、私は1人で残されることとなった。
そういう訳って何やねん。
流石に気づく。
これ、ディヴィスがオズへ行くのに私は関係ないですよね?
あ~~、よかった……。
あの調子だと、知らない海を冒険したいとかそんな感じなのだと思う。
初っ端こそ商人(奴隷売り)への略奪だったが、ディヴィスたちは少年漫画のような冒険大好き海賊なんだと勝手に思うことにしよう。
色気(恋愛感情かは不明)よりも食い気(未知への冒険)というわけだ。
三角関係に巻き込まれたような焦燥から解放された気になって、ひとまずホッと息を吐く。
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