35 / 42
第三章 海を渡る公爵令嬢
風呂嫌いの奴隷
しおりを挟む
「ジョー。アランが動かなくなってしまった」
海賊たちと甲板で星を見ていた。
そこへ少しも慌てずに、船室へアランと消えたはずのジョンが戻ってきた。
動かなくなったっていうなら、もう少し慌ててもいいんじゃなかろうか。
「……チッ、俺の船に小汚え格好で乗りやがって……」
案内された船室には、まだまだ怒り心頭という様子のディヴィスと縄で縛られピクリともしないアランが向かい合っていた。
アランは服を着たままびしょ濡れで髪の毛から水が滴っている。
どうやら水をかけたらしい。
あんなに汚いので丸洗いしたくなる気持ちも理解できた。
ただそれでアランは動かなくなってしまったらしい。
「そういえば、タリクがアランは風呂嫌いの変な奴隷だって言ってたな」
「風呂嫌い!? 正気かよ!!」
「う~む、さきほども水はダメだと叫んでいたが……奴隷の取扱書などは持っていないのかな」
「あ、もらったよ。書いてあるかな……」
「そういう取扱書というのは総じて奴隷個人用のものだったりするからね。前の主人がきちんとした相手なら、こういうときの対処法も書いてあるはずさ」
『収納』していたマニュアルを取り出してページを捲っていく。
奴隷──アランのことだ──が動かなくなったときの対処法……。
「あ、魔力で刺激しろって書いてある」
「おお! では頼めるかい、ジョー」
「え、私ですか」
「君の奴隷だ」
「……はい」
渋々アランへ手を伸ばす。
どこかせめて清潔そうなところを、と手を彷徨わせて、ええいままよ!
そんな決意とともにアランの二の腕へ手を置いた。
魔力!
手のひらからアランへ魔力を注ぎ込んだ。
「う、……」
呻き声がして、アランの体が微かに動く。
その時である。
ぽろり、とアランの腕がちょうど私の持つ二の腕部分から外れた。
「!?」
「ほう、なるほど」
「フン、そういうことかよ」
「2人だけで納得しないで!? 説明! 求む!!」
何故かそれぞれ納得の反応を見せた2人へと叫んだ。
「チッ……うっせえな……何騒いでんだよカスど、も……」
アランが意識を取り戻す。
言いながら、自分の腕を持つ私へ視線が移ったのが首の角度で分かった。
「あ、あのこれは……違くて……」
「あーはいはい、クソの言い訳はどうでもいいから腕はちゃんと元の位置に嵌めとけよ。あと再起動ありがとさん」
「再起動……?」
人体に使うには聞き慣れない単語に首を傾げる。
持ったままのアランの腕を改めて見つめ直せば、ちょうど外れた腕の断面にコードのようなものが見える。
肉でも骨でもない。
そうだ、腕が取れたのに血の一滴も流れていないじゃないか。
「再起動であってら。俺は体の8割が機械になってるサイボーグだからな」
ニヤリ。
アランは不敵に笑ってそう言った。
世界観くんさあ……そろそろ本気で仕事しない?
海賊たちと甲板で星を見ていた。
そこへ少しも慌てずに、船室へアランと消えたはずのジョンが戻ってきた。
動かなくなったっていうなら、もう少し慌ててもいいんじゃなかろうか。
「……チッ、俺の船に小汚え格好で乗りやがって……」
案内された船室には、まだまだ怒り心頭という様子のディヴィスと縄で縛られピクリともしないアランが向かい合っていた。
アランは服を着たままびしょ濡れで髪の毛から水が滴っている。
どうやら水をかけたらしい。
あんなに汚いので丸洗いしたくなる気持ちも理解できた。
ただそれでアランは動かなくなってしまったらしい。
「そういえば、タリクがアランは風呂嫌いの変な奴隷だって言ってたな」
「風呂嫌い!? 正気かよ!!」
「う~む、さきほども水はダメだと叫んでいたが……奴隷の取扱書などは持っていないのかな」
「あ、もらったよ。書いてあるかな……」
「そういう取扱書というのは総じて奴隷個人用のものだったりするからね。前の主人がきちんとした相手なら、こういうときの対処法も書いてあるはずさ」
『収納』していたマニュアルを取り出してページを捲っていく。
奴隷──アランのことだ──が動かなくなったときの対処法……。
「あ、魔力で刺激しろって書いてある」
「おお! では頼めるかい、ジョー」
「え、私ですか」
「君の奴隷だ」
「……はい」
渋々アランへ手を伸ばす。
どこかせめて清潔そうなところを、と手を彷徨わせて、ええいままよ!
そんな決意とともにアランの二の腕へ手を置いた。
魔力!
手のひらからアランへ魔力を注ぎ込んだ。
「う、……」
呻き声がして、アランの体が微かに動く。
その時である。
ぽろり、とアランの腕がちょうど私の持つ二の腕部分から外れた。
「!?」
「ほう、なるほど」
「フン、そういうことかよ」
「2人だけで納得しないで!? 説明! 求む!!」
何故かそれぞれ納得の反応を見せた2人へと叫んだ。
「チッ……うっせえな……何騒いでんだよカスど、も……」
アランが意識を取り戻す。
言いながら、自分の腕を持つ私へ視線が移ったのが首の角度で分かった。
「あ、あのこれは……違くて……」
「あーはいはい、クソの言い訳はどうでもいいから腕はちゃんと元の位置に嵌めとけよ。あと再起動ありがとさん」
「再起動……?」
人体に使うには聞き慣れない単語に首を傾げる。
持ったままのアランの腕を改めて見つめ直せば、ちょうど外れた腕の断面にコードのようなものが見える。
肉でも骨でもない。
そうだ、腕が取れたのに血の一滴も流れていないじゃないか。
「再起動であってら。俺は体の8割が機械になってるサイボーグだからな」
ニヤリ。
アランは不敵に笑ってそう言った。
世界観くんさあ……そろそろ本気で仕事しない?
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる