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第五章
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柚留は昔から変わった子だった。せっかく母が買ってくれた物もすぐに捨ててしまうような、物を捨てるということに躊躇いのない子だった。
時間をかけて色々と買い与えても、時間が経つにつれどんどんと物が減っていく。
あたしがなんで捨てんの? と聞くと、「部屋に物が沢山あるのが嫌だから」と言っていた。終いにはベットまでなくなった。
あたしがあんた何処で寝てんの? と聞くと、「床で寝てる」と言っていた。床なんて冷たくて痛いのによく寝れるよね。そんなに物があるのが嫌なら、あんたも粗大ごみにだせばいいのに。
結局、柚留の部屋に残ったのは、数着の衣類と下着を除けば学生鞄とその鞄に入る程度の小説だけだった。
小説なんてちっとも興味のないあたしは、そんな柚留を心の底から気持ち悪いと思っていた。
理由は違えど、互いに互いをいなくなれと思っていたからか喧嘩は絶えず、たまに会えば罵り合う関係になってしまい、あたしと柚留の間に挟まれたお兄ちゃんはいつもとても苦い顔をしていたと思う。
そんな中、あたしが事故に遭って記憶をなくしたんだ。そしていま、記憶が戻った。
多分、愛莉はキャパオーバーだったんだ。あたしが記憶をなくしてからというものの、精神的にショックなことばかりに巻き込まれて日に日にストレスが溜まっていった。
果歩といい流といい、鹿児島といい、それだけでは飽き足らず柚留まで。あたしはよくても、愛莉には荷が重いよね。
だから愛莉がいなくなって当然なの。いなくなった穴埋めはあたしがするの。元はあたしの身体なんだし、これが自然の摂理よね。
あたしはソファで漫画を読むふりをしながらお兄ちゃんをみつめていた。
記憶がなかった時のあたしは虫唾が走るくらいきもかった。なんなのあの偽善者は。 あたしの隙間を埋めるだけの存在のくせに、お兄ちゃんを好きになりやがって。
本当はいますぐお兄ちゃんを抱き締めたい。だけどお兄ちゃんはあの時あたしを拒絶した。自分から酔った勢いでしたくせに、それをなかったことにしようとした。
どうせ拒絶されるなら、まだ愛莉でいた方がマシだった。だからまだ愛莉でいよう。偽善者ぶるのは反吐がでるけど、それでお兄ちゃんがあたしの隣にいてくれるなら。
「……お兄ちゃん」
「なに?」
「今日のご飯、なに?」
「今日はシチューだよ」
「やったぁ」
やったぁだって、きしょ。あたしなら絶対に言わない言葉。
だけどこれでいい。あとは学校の奴等を一掃してあげないと。あいつら、調子乗ってるから。
時間をかけて色々と買い与えても、時間が経つにつれどんどんと物が減っていく。
あたしがなんで捨てんの? と聞くと、「部屋に物が沢山あるのが嫌だから」と言っていた。終いにはベットまでなくなった。
あたしがあんた何処で寝てんの? と聞くと、「床で寝てる」と言っていた。床なんて冷たくて痛いのによく寝れるよね。そんなに物があるのが嫌なら、あんたも粗大ごみにだせばいいのに。
結局、柚留の部屋に残ったのは、数着の衣類と下着を除けば学生鞄とその鞄に入る程度の小説だけだった。
小説なんてちっとも興味のないあたしは、そんな柚留を心の底から気持ち悪いと思っていた。
理由は違えど、互いに互いをいなくなれと思っていたからか喧嘩は絶えず、たまに会えば罵り合う関係になってしまい、あたしと柚留の間に挟まれたお兄ちゃんはいつもとても苦い顔をしていたと思う。
そんな中、あたしが事故に遭って記憶をなくしたんだ。そしていま、記憶が戻った。
多分、愛莉はキャパオーバーだったんだ。あたしが記憶をなくしてからというものの、精神的にショックなことばかりに巻き込まれて日に日にストレスが溜まっていった。
果歩といい流といい、鹿児島といい、それだけでは飽き足らず柚留まで。あたしはよくても、愛莉には荷が重いよね。
だから愛莉がいなくなって当然なの。いなくなった穴埋めはあたしがするの。元はあたしの身体なんだし、これが自然の摂理よね。
あたしはソファで漫画を読むふりをしながらお兄ちゃんをみつめていた。
記憶がなかった時のあたしは虫唾が走るくらいきもかった。なんなのあの偽善者は。 あたしの隙間を埋めるだけの存在のくせに、お兄ちゃんを好きになりやがって。
本当はいますぐお兄ちゃんを抱き締めたい。だけどお兄ちゃんはあの時あたしを拒絶した。自分から酔った勢いでしたくせに、それをなかったことにしようとした。
どうせ拒絶されるなら、まだ愛莉でいた方がマシだった。だからまだ愛莉でいよう。偽善者ぶるのは反吐がでるけど、それでお兄ちゃんがあたしの隣にいてくれるなら。
「……お兄ちゃん」
「なに?」
「今日のご飯、なに?」
「今日はシチューだよ」
「やったぁ」
やったぁだって、きしょ。あたしなら絶対に言わない言葉。
だけどこれでいい。あとは学校の奴等を一掃してあげないと。あいつら、調子乗ってるから。
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