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第九章
65.
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あたしが鹿児島を虐めるから、鹿児島はあたしのことを皮肉を込めて愛莉ちゃんと呼ぶようになったんだ。
あたしはそんな鹿児島が余計に憎たらしくて、鹿児島に馬乗りになりながら髪を引っ張って、死ねって言った。それなのに鹿児島は笑ってて、それがまたむかついて。
「思いだした? 愛莉ちゃん。昔は色々あったよね」
「……その呼び方やめろ」
「ふふっ。嫌だよ。それに加賀さん、格好良いよね。私ならどんな異常性癖者であろうと受け入れちゃうけど」
「は?」
「放尿……だっけ。いいよ、私なら喜んでする。だって私がだした尿を舐めて綺麗にしてくれるんでしょう? それって普通の人にはできないことだよね。愛がなきゃできないことだよね」
「尿を舐めて綺麗にするのが愛だとは思えない。そんなのただの性癖で、きしょいだけ」
「いいじゃんきしょくて。いいな、愛莉ちゃん。私も舐めて綺麗にしてもらいたい」
正直、なんだこいつと思った。鹿児島ってこんなに変態だったの?
あたしの知ってる鹿児島はもっと根暗で、自分にも他人にも興味がないような子だと思ってた。
あたしが困惑していると、加賀がようやくスタッフルームからでてくるのがみえた。鹿児島は加賀をみるなり別人のように顔を輝かせると、立ち上がり自分アピールをし始めた。
「加賀さん! 私の尿も舐めてください!」
ざわつく店内。それもそのはず、仮にも此処は喫茶店で、あたし達以外にも客はいる。それなのによくもまぁそんな破廉恥なセリフを声高らかに言えたわね。
鹿児島は周りの視線を気にせず椅子の上に片足を乗せると、加賀に向かってスカートを持ち上げて自分の下着をこれみよがしにみせつけた。
「私の方が愛莉ちゃんよりスケベな下着を履いています! きっと加賀さん好みの下着です! 加賀さんが望むなら、下着をつけたまま放尿します! だから私の尿も舐めてください!」
鹿児島の下着は、確かにあたしのよりスケベだと思った。前も後ろもスケスケで色々と丸見えだ。だけどいまの言い方だと、まるであたしの尿を加賀に舐めてもらったかのように聞こえないか?
「……確かにそのようなお召し物は僕の好みですが、いまは他のお客様のご迷惑になりますので」
そこは辛辣に断ってほしかった。鹿児島なんてよいちょしたってしょうがないだろう。実際、こんなの迷惑行為でしかないんだから。
それにいまはって。いまじゃなければするのだろうか。期待を持たせる言い方をするなんて加賀らしくない。加賀はもっと、相手の精神を抉るような言い方をするはずだ。加賀はもっと、冷たくて。それこそ人を人とも思わないような、極悪非道な男のはずだ。
極悪非道って……どうしてあたし、加賀がそこまで酷い男だと思ったんだろう。
「それに僕は愛莉さんのしか舐めたくありません」
おい馬鹿やめろ、人が真面目に考え事をしてる時になにを言ってるんだ。最後のそれは言わなくてもよかったじゃんか。
それにお前はお兄ちゃんのも舐めただろうがこの嘘吐き!
なんて言えるはずもないので黙っていると、ようやく鹿児島が席に着いた。
「そうだ、愛莉さん」
「な、なに」
「あとでお話したいので、勝手に帰ったりしないでくださいね」
加賀が接客に戻ると、何事もなかったかのように鹿児島があたしに話しかけてくる。さっきまで他人に自分の下着をみせてまであんな発言をしてたとは思えないほど、鹿児島は落ち着いた様子だった。
それにしても店内に客が少ないとはいえ、よく騒ぎにならなかったわね。誰かしら警察に通報しててもおかしくないのに。こうなったらあたしが通報してやろうかな。だけど写真も撮ってないし、通報したところで悪戯だと思われるかも。
そうか、だから誰も通報しないんだ。むしろわざわざ自分から厄介事に巻き込まれに行く人なんていないだろう。もしかしたら鹿児島はそこまで見越した上であんなことを?
いやまさかね。いくら鹿児島でもそこまで頭は回らないはず。多分、恐らく、きっと。
「ね、加賀さんの連絡先知らない?」
「……知らない」
「愛莉ちゃんにしか興味ないところがまたいいよね。ああいう一途な人を快楽の波に流してあげたい。そういえば話ってなんだろうね。もしも加賀さんと最後までしたら教えてね。できれば動画で撮って私にみせて」
さっきから鹿児島は別人のように饒舌にあたしに話しかけてくるし、女子高生らしからぬ発言ばかりしていてきしょかった。あたしはそんな鹿児島を茶化す気力さえ失ってしまったようで、鹿児島の発言を右から左に受け流していた。
「じゃあ私帰るから。明日どうなったか教えて」
ラテ代をテーブルの上において帰る鹿児島。
あたしもそろそろ帰らなきゃ。
立ち上がり店をでると、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
「あ、加賀に声かけるの忘れた……ま、いっか」
なんかもう疲れちゃったな。帰ったらお風呂に入って寝よう。
流にいまから帰ると連絡しようと思いスマホを手にすると、背後から誰かに肩を掴まれはっとする。
「愛莉さん」
「わっ」
「勝手に帰らないでくださいって言ったでしょう」
「か、加賀?」
わざわざ店から追いかけてきたのだろうか。全然気がつかなかった。
「誰に連絡するんですか?」
「い、いいでしょ誰だって」
「女であろうと油断なりませんね。愛莉さんは男女問わず虜にしてしまうので心配です」
加賀の手があたしの下腹部に触れる。そっと上から下になぞられただけで、あたしの身体が反応する。
「……っ」
「可愛いですね、愛莉さん。だけど愛莉さんは舐められる方が好きですよね。上も下も、柔らかい舌で舐められたらすぐにだめになってしまう」
「ば、か……どこ触って」
加賀の手はもう、あたしのスカートの上から触れていた。他に誰もいないとはいえ、此処は外だ。いつ誰がくるかわかったもんじゃない。
まさかこんな場所でしないよね。いや、するな。しないでくれ。
加賀に常識が通じないのはわかってる。しないだろうは危険なんだ。それをあたしが一番わかってるくせに、しないよねなんて甘い考えは捨てないと。
「愛莉さん、僕ともしましょうか」
「は? なんでそうなるんだよ」
「こんな簡単に僕に触られて、触ってくださいと言ってるようなもんじゃないですか」
(背後注意)
背後からスカートの中に手を入れられ、下着の上から指の腹でなぞられる。スカートは加賀が片手で押さえているのであたしの下着は丸見えだ。
「か、加賀、当たってる」
「愛莉さんが卑猥な声をだすからです」
「ひ、卑猥な声なんてだしてない」
「顔がそう言ってるんですよ」
加賀の声が耳元でする度にゾクゾクして気持ち悪い。でも、気持ち悪いはずなのに逃げないあたしはもっと気持ち悪い。
いつの間にか下着をずらされて、体勢を前屈みにされたあたしは、壁に手をついたまま加賀が仕掛けてくるのを待っていた。
「はは、もう濡れてる。舐めなくても入りそうだ」
「や、やだ……っ加賀、いきなりは」
「嘘ですよ。ちゃんと舐めてあげますから」
「あっ」
加賀が後ろからあたしの一番敏感なところを舐めている。真っ暗とはいえ、外でこんな恥ずかしい行為……誰かにみられたらどうするの。
嫌なのに、恥ずかしいのにもっと舐めてほしくて足を開いちゃう。加賀なんて大嫌いなのに一番敏感なところを舐められてきもちいい。
「あ、あ、やば、ぁ」
「もうですか? 早いですね」
「ち、ちが、これは」
「愛莉さん、入れるね」
「え? ま、待って」
あ、コンドームつけてない。妊娠しちゃうかも。嫌だ、嫌、いまからでも避妊しなきゃ。
腰が揺れる。加賀との密な接触が始まってしまった。
「愛莉さん、ぬるぬる。可愛い、可愛い」
なんかこれ、尿意やばい。トイレ行っておけばよかった。
あ、動画……撮ってる余裕、ない。加賀となんて死んでも嫌なのに、嫌なのに。お兄ちゃんごめんね。あたしまた穢れちゃった。またお兄ちゃん以外の人と、こんな。
決して早くはない動きが夜の街に響いている。あたしはいま、加賀と繋がっているんだ。
「愛莉さん、好き」
「あ、たしっは、好きじゃ、ない」
「きっと身体の相性がいいんだね。愛莉さんがどんなに僕を嫌いでも、身体は僕を求めている」
「ち、がっ、ああぅ」
「愛莉さんは僕の身体が好きなんだ」
「う、うう」
「ああ、僕ももうむりみたい。愛莉さん、愛莉さぁん♡」
背中にぽたぽたと液体がかかるのを感じた。あたしは加賀と最後までシテしまったのだ。
弾む息を整えながら加賀の方へ視線を向けると、加賀のそれはまだ上を向いており、お兄ちゃんのよりずっと大きいと思った。
こんなのがあたしの体内に入っていたのかと思うとなんだか信じられなくて、まじまじとそこばかりをみてしまう。
あたしはもう自力では立てなくて、冷たい地面に両手をついて座り込んでいた。
「愛莉さん、後ろ向いて。その体勢だと服についちゃうよ」
加賀は丁寧にポケットティッシュで後処理をすると、取手のある小さなビニール袋に使用済みのティッシュを入れて取手口をきつく結んだ。
「家まで送ります」
「い、いらない」
「そんなところに座っていたら知らない人に犯されますよ」
「もう、どうだっていい。あんたに犯された時点であたしの人生おわったの」
「僕としたくらいでそんな大袈裟な。それに犯されたんじゃなくて、犯してもらったの間違いでは?」
「は?」
「嫌なら逃げればいいんですよ。それなのに僕をほしがった。あの女の指だけじゃ足りなかったんですよね。だから逃げなかった。違いますか?」
反論はできなかった。指だけなんて足りるわけがなかった。このまま加賀に声をかけられなかったら、自分でするつもりだった。外でやるだなんてそんな非日常的なこと、加賀にしかできないと思っていた。あたしは加賀に犯されることを期待していた。
「そんなに橋本との行為が忘れられませんか?」
「なに……言ってんの……」
「愛莉さん、橋本のこと、本当はただのお兄ちゃんとして慕っていましたよね」
「は?」
「だけどあの日突然一線を越えた。いくら血の繋がりがないとはいえ、これが誰かに知られたら。考えただけで興奮したでしょう」
あたしには加賀がなにを言っているのかわからなかった。あたしは最初からお兄ちゃんのことが好きだったし、結婚したいと思ってたはずで、加賀の言う話が本当であれば、あたしは加賀と同じ異常性癖者になってしまうじゃないか。
そんなはずはない。加賀の想像であたしを仲間だと決めつけるのはやめてほしい。
それとも加賀は、あたしのこのお兄ちゃんへのきもちでさえも偽りだと思っているの?
「なんの証拠もないくせに……勝手にあたしのきもちを決めつけないで!」
「証拠ならありますよ。例えばさっき、あの女に触られた時。他人の目があったから愛莉さんは指だけでだめになった。僕とした時も、誰がいつ通るかわからない場所で触られたから愛莉さんは逃げなかった」
「……なにが言いたいの?」
「愛莉さんは人にみられると興奮する、ばれたら後ろ指を指されるような関係、シチュエーションが堪らなく好きな根っからのド変態なんですよ」
やめて。どうしてそんなふうに言うの。
あたしはお兄ちゃんを性的な目でみてるって?
あの日のことがなければ、お兄ちゃんを好きにならなかったって?
嘘。あたしはちゃんとお兄ちゃんが好きだよ。いまでも結婚したいくらい好きだと思ってる。そのきもちに嘘はない。
「あは、無自覚だったんですね。いいですよ。そんな愛莉さんでも僕は好きです。橋本を想って身体が疼く日は僕が愛莉さんを抱いてあげます。それに僕は浮気にも寛大だ。僕も柚瑠を抱いているんです。愛莉さんも性別問わず、好きなように生きればいい」
お兄ちゃん、お兄ちゃん。会いたいよ、お兄ちゃん。こんな勘違い野郎に好かれるなんて嫌だ。こんな顔だけのド変態野郎にあたしのきもちをわかったふうに言われるなんて嫌。
「う……いた……」
「愛莉さん?」
「頭が、痛い……」
心が、頭が、ズキズキして痛かった。
動揺なんかするんじゃない。そんなのは証拠とは言えないんだから。大丈夫だから落ち着いて。加賀の話なんて聞き流して。得意でしょう、聞き流すの。
あたしは頭を抱えながらギュッと目を瞑っていた。
「だめだよ愛莉さん、頑張って。現実を受け止めて僕と一緒に生きるんだ」
無責任なこと言わないで。こんなにあたしが頭痛いのは、あんたがそんな話をするからでしょう。
そんなようなことを言った気がする。それでも加賀は、怖いくらい余裕の笑みを浮かべていた。
こいつはもう人間じゃない。人間のふりをした悪魔だ。
頭が割れるかと思うほどの痛みからようやく解放されたあたしは、目を開けると地面に仰向けになりながら涙を流していた。
あたしはそんな鹿児島が余計に憎たらしくて、鹿児島に馬乗りになりながら髪を引っ張って、死ねって言った。それなのに鹿児島は笑ってて、それがまたむかついて。
「思いだした? 愛莉ちゃん。昔は色々あったよね」
「……その呼び方やめろ」
「ふふっ。嫌だよ。それに加賀さん、格好良いよね。私ならどんな異常性癖者であろうと受け入れちゃうけど」
「は?」
「放尿……だっけ。いいよ、私なら喜んでする。だって私がだした尿を舐めて綺麗にしてくれるんでしょう? それって普通の人にはできないことだよね。愛がなきゃできないことだよね」
「尿を舐めて綺麗にするのが愛だとは思えない。そんなのただの性癖で、きしょいだけ」
「いいじゃんきしょくて。いいな、愛莉ちゃん。私も舐めて綺麗にしてもらいたい」
正直、なんだこいつと思った。鹿児島ってこんなに変態だったの?
あたしの知ってる鹿児島はもっと根暗で、自分にも他人にも興味がないような子だと思ってた。
あたしが困惑していると、加賀がようやくスタッフルームからでてくるのがみえた。鹿児島は加賀をみるなり別人のように顔を輝かせると、立ち上がり自分アピールをし始めた。
「加賀さん! 私の尿も舐めてください!」
ざわつく店内。それもそのはず、仮にも此処は喫茶店で、あたし達以外にも客はいる。それなのによくもまぁそんな破廉恥なセリフを声高らかに言えたわね。
鹿児島は周りの視線を気にせず椅子の上に片足を乗せると、加賀に向かってスカートを持ち上げて自分の下着をこれみよがしにみせつけた。
「私の方が愛莉ちゃんよりスケベな下着を履いています! きっと加賀さん好みの下着です! 加賀さんが望むなら、下着をつけたまま放尿します! だから私の尿も舐めてください!」
鹿児島の下着は、確かにあたしのよりスケベだと思った。前も後ろもスケスケで色々と丸見えだ。だけどいまの言い方だと、まるであたしの尿を加賀に舐めてもらったかのように聞こえないか?
「……確かにそのようなお召し物は僕の好みですが、いまは他のお客様のご迷惑になりますので」
そこは辛辣に断ってほしかった。鹿児島なんてよいちょしたってしょうがないだろう。実際、こんなの迷惑行為でしかないんだから。
それにいまはって。いまじゃなければするのだろうか。期待を持たせる言い方をするなんて加賀らしくない。加賀はもっと、相手の精神を抉るような言い方をするはずだ。加賀はもっと、冷たくて。それこそ人を人とも思わないような、極悪非道な男のはずだ。
極悪非道って……どうしてあたし、加賀がそこまで酷い男だと思ったんだろう。
「それに僕は愛莉さんのしか舐めたくありません」
おい馬鹿やめろ、人が真面目に考え事をしてる時になにを言ってるんだ。最後のそれは言わなくてもよかったじゃんか。
それにお前はお兄ちゃんのも舐めただろうがこの嘘吐き!
なんて言えるはずもないので黙っていると、ようやく鹿児島が席に着いた。
「そうだ、愛莉さん」
「な、なに」
「あとでお話したいので、勝手に帰ったりしないでくださいね」
加賀が接客に戻ると、何事もなかったかのように鹿児島があたしに話しかけてくる。さっきまで他人に自分の下着をみせてまであんな発言をしてたとは思えないほど、鹿児島は落ち着いた様子だった。
それにしても店内に客が少ないとはいえ、よく騒ぎにならなかったわね。誰かしら警察に通報しててもおかしくないのに。こうなったらあたしが通報してやろうかな。だけど写真も撮ってないし、通報したところで悪戯だと思われるかも。
そうか、だから誰も通報しないんだ。むしろわざわざ自分から厄介事に巻き込まれに行く人なんていないだろう。もしかしたら鹿児島はそこまで見越した上であんなことを?
いやまさかね。いくら鹿児島でもそこまで頭は回らないはず。多分、恐らく、きっと。
「ね、加賀さんの連絡先知らない?」
「……知らない」
「愛莉ちゃんにしか興味ないところがまたいいよね。ああいう一途な人を快楽の波に流してあげたい。そういえば話ってなんだろうね。もしも加賀さんと最後までしたら教えてね。できれば動画で撮って私にみせて」
さっきから鹿児島は別人のように饒舌にあたしに話しかけてくるし、女子高生らしからぬ発言ばかりしていてきしょかった。あたしはそんな鹿児島を茶化す気力さえ失ってしまったようで、鹿児島の発言を右から左に受け流していた。
「じゃあ私帰るから。明日どうなったか教えて」
ラテ代をテーブルの上において帰る鹿児島。
あたしもそろそろ帰らなきゃ。
立ち上がり店をでると、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
「あ、加賀に声かけるの忘れた……ま、いっか」
なんかもう疲れちゃったな。帰ったらお風呂に入って寝よう。
流にいまから帰ると連絡しようと思いスマホを手にすると、背後から誰かに肩を掴まれはっとする。
「愛莉さん」
「わっ」
「勝手に帰らないでくださいって言ったでしょう」
「か、加賀?」
わざわざ店から追いかけてきたのだろうか。全然気がつかなかった。
「誰に連絡するんですか?」
「い、いいでしょ誰だって」
「女であろうと油断なりませんね。愛莉さんは男女問わず虜にしてしまうので心配です」
加賀の手があたしの下腹部に触れる。そっと上から下になぞられただけで、あたしの身体が反応する。
「……っ」
「可愛いですね、愛莉さん。だけど愛莉さんは舐められる方が好きですよね。上も下も、柔らかい舌で舐められたらすぐにだめになってしまう」
「ば、か……どこ触って」
加賀の手はもう、あたしのスカートの上から触れていた。他に誰もいないとはいえ、此処は外だ。いつ誰がくるかわかったもんじゃない。
まさかこんな場所でしないよね。いや、するな。しないでくれ。
加賀に常識が通じないのはわかってる。しないだろうは危険なんだ。それをあたしが一番わかってるくせに、しないよねなんて甘い考えは捨てないと。
「愛莉さん、僕ともしましょうか」
「は? なんでそうなるんだよ」
「こんな簡単に僕に触られて、触ってくださいと言ってるようなもんじゃないですか」
(背後注意)
背後からスカートの中に手を入れられ、下着の上から指の腹でなぞられる。スカートは加賀が片手で押さえているのであたしの下着は丸見えだ。
「か、加賀、当たってる」
「愛莉さんが卑猥な声をだすからです」
「ひ、卑猥な声なんてだしてない」
「顔がそう言ってるんですよ」
加賀の声が耳元でする度にゾクゾクして気持ち悪い。でも、気持ち悪いはずなのに逃げないあたしはもっと気持ち悪い。
いつの間にか下着をずらされて、体勢を前屈みにされたあたしは、壁に手をついたまま加賀が仕掛けてくるのを待っていた。
「はは、もう濡れてる。舐めなくても入りそうだ」
「や、やだ……っ加賀、いきなりは」
「嘘ですよ。ちゃんと舐めてあげますから」
「あっ」
加賀が後ろからあたしの一番敏感なところを舐めている。真っ暗とはいえ、外でこんな恥ずかしい行為……誰かにみられたらどうするの。
嫌なのに、恥ずかしいのにもっと舐めてほしくて足を開いちゃう。加賀なんて大嫌いなのに一番敏感なところを舐められてきもちいい。
「あ、あ、やば、ぁ」
「もうですか? 早いですね」
「ち、ちが、これは」
「愛莉さん、入れるね」
「え? ま、待って」
あ、コンドームつけてない。妊娠しちゃうかも。嫌だ、嫌、いまからでも避妊しなきゃ。
腰が揺れる。加賀との密な接触が始まってしまった。
「愛莉さん、ぬるぬる。可愛い、可愛い」
なんかこれ、尿意やばい。トイレ行っておけばよかった。
あ、動画……撮ってる余裕、ない。加賀となんて死んでも嫌なのに、嫌なのに。お兄ちゃんごめんね。あたしまた穢れちゃった。またお兄ちゃん以外の人と、こんな。
決して早くはない動きが夜の街に響いている。あたしはいま、加賀と繋がっているんだ。
「愛莉さん、好き」
「あ、たしっは、好きじゃ、ない」
「きっと身体の相性がいいんだね。愛莉さんがどんなに僕を嫌いでも、身体は僕を求めている」
「ち、がっ、ああぅ」
「愛莉さんは僕の身体が好きなんだ」
「う、うう」
「ああ、僕ももうむりみたい。愛莉さん、愛莉さぁん♡」
背中にぽたぽたと液体がかかるのを感じた。あたしは加賀と最後までシテしまったのだ。
弾む息を整えながら加賀の方へ視線を向けると、加賀のそれはまだ上を向いており、お兄ちゃんのよりずっと大きいと思った。
こんなのがあたしの体内に入っていたのかと思うとなんだか信じられなくて、まじまじとそこばかりをみてしまう。
あたしはもう自力では立てなくて、冷たい地面に両手をついて座り込んでいた。
「愛莉さん、後ろ向いて。その体勢だと服についちゃうよ」
加賀は丁寧にポケットティッシュで後処理をすると、取手のある小さなビニール袋に使用済みのティッシュを入れて取手口をきつく結んだ。
「家まで送ります」
「い、いらない」
「そんなところに座っていたら知らない人に犯されますよ」
「もう、どうだっていい。あんたに犯された時点であたしの人生おわったの」
「僕としたくらいでそんな大袈裟な。それに犯されたんじゃなくて、犯してもらったの間違いでは?」
「は?」
「嫌なら逃げればいいんですよ。それなのに僕をほしがった。あの女の指だけじゃ足りなかったんですよね。だから逃げなかった。違いますか?」
反論はできなかった。指だけなんて足りるわけがなかった。このまま加賀に声をかけられなかったら、自分でするつもりだった。外でやるだなんてそんな非日常的なこと、加賀にしかできないと思っていた。あたしは加賀に犯されることを期待していた。
「そんなに橋本との行為が忘れられませんか?」
「なに……言ってんの……」
「愛莉さん、橋本のこと、本当はただのお兄ちゃんとして慕っていましたよね」
「は?」
「だけどあの日突然一線を越えた。いくら血の繋がりがないとはいえ、これが誰かに知られたら。考えただけで興奮したでしょう」
あたしには加賀がなにを言っているのかわからなかった。あたしは最初からお兄ちゃんのことが好きだったし、結婚したいと思ってたはずで、加賀の言う話が本当であれば、あたしは加賀と同じ異常性癖者になってしまうじゃないか。
そんなはずはない。加賀の想像であたしを仲間だと決めつけるのはやめてほしい。
それとも加賀は、あたしのこのお兄ちゃんへのきもちでさえも偽りだと思っているの?
「なんの証拠もないくせに……勝手にあたしのきもちを決めつけないで!」
「証拠ならありますよ。例えばさっき、あの女に触られた時。他人の目があったから愛莉さんは指だけでだめになった。僕とした時も、誰がいつ通るかわからない場所で触られたから愛莉さんは逃げなかった」
「……なにが言いたいの?」
「愛莉さんは人にみられると興奮する、ばれたら後ろ指を指されるような関係、シチュエーションが堪らなく好きな根っからのド変態なんですよ」
やめて。どうしてそんなふうに言うの。
あたしはお兄ちゃんを性的な目でみてるって?
あの日のことがなければ、お兄ちゃんを好きにならなかったって?
嘘。あたしはちゃんとお兄ちゃんが好きだよ。いまでも結婚したいくらい好きだと思ってる。そのきもちに嘘はない。
「あは、無自覚だったんですね。いいですよ。そんな愛莉さんでも僕は好きです。橋本を想って身体が疼く日は僕が愛莉さんを抱いてあげます。それに僕は浮気にも寛大だ。僕も柚瑠を抱いているんです。愛莉さんも性別問わず、好きなように生きればいい」
お兄ちゃん、お兄ちゃん。会いたいよ、お兄ちゃん。こんな勘違い野郎に好かれるなんて嫌だ。こんな顔だけのド変態野郎にあたしのきもちをわかったふうに言われるなんて嫌。
「う……いた……」
「愛莉さん?」
「頭が、痛い……」
心が、頭が、ズキズキして痛かった。
動揺なんかするんじゃない。そんなのは証拠とは言えないんだから。大丈夫だから落ち着いて。加賀の話なんて聞き流して。得意でしょう、聞き流すの。
あたしは頭を抱えながらギュッと目を瞑っていた。
「だめだよ愛莉さん、頑張って。現実を受け止めて僕と一緒に生きるんだ」
無責任なこと言わないで。こんなにあたしが頭痛いのは、あんたがそんな話をするからでしょう。
そんなようなことを言った気がする。それでも加賀は、怖いくらい余裕の笑みを浮かべていた。
こいつはもう人間じゃない。人間のふりをした悪魔だ。
頭が割れるかと思うほどの痛みからようやく解放されたあたしは、目を開けると地面に仰向けになりながら涙を流していた。
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